この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

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 魔法使いより魔法使いなのがMM世界のハンター達。


Part1 うぇるかむとぅーくれいじーわーるど
第一話 ああ、世紀末……!


 気が付くとカズマは、荒涼とした風が吹く赤茶けた荒野に立っていた。

 乾燥した空気に、突き刺すような日差し。ふと足元を見ると、風化したしゃれこうべが転がっていた。思わず「ヒェッ」と飛び上がる。

 

「そ、想像していたよりも未来は悲壮感に溢れていました……」

「そうよ、絶望的よ……どうして女神である私が、こんな崖っぷち世界に降りてこなくちゃいけないのよ……」

 

 呪詛の声に振り返ると、青い髪の見た目だけは美しい(女神)が、虚ろな目つきでブツブツうわ言を繰り返していた。

 カズマは無視して、埃臭い空気の中で目を凝らす。

 

「見事に何もないな……おい、犬。地図とか持ってないのか?」

「そうか、これは夢なんだわ……でなけりゃ私がこんなディストピアに堕とされるだなんて……」

「おいこら。いつまで現実逃避してんだ犬」

「うるさいわね! あなたはこの世界がどういった場所か知らないから呑気してるけどね! ……ここは本当にヤバイのよ……」

 

 この短時間で目の下に隈ができ、頬もこけて別人のような不健康となったアクアに、カズマがまたもや「ヒッ」と息を呑んだ。

 

「いい? 50年前の大破壊からこっち、この世界の人間はわずかに残った前文明の遺産を食いつぶす形で、どうにかこうにか生き残っているのよ! 物資は枯渇して、インフラもライフラインもズタズタ! あまつさえ暴走した機械やバイオモンスターが地上を闊歩しているの!! 本物の地獄が何百倍もマシに思えるほど、この世界は地獄なのよ!」

「そんな世界に転生させようとしてたのかよ、お前!?」

「だから転生特典を与えてたんじゃない! 戦闘用の能力を授けておけば、上手くすれば1年は生き残れる目算だったのにぃ!」

「は? い、1年? 1年て……最低1年――」

「最長で1年!! ……はぁ……終わったわ、私の神生……」

 

 絶望を深めるアクアに、カズマも状況のヤバさを理解して色を失っていた。

 てっきりチートを持って転生すれば、世紀末救世主の如き大活躍が約束されているものだと考えていた。それが最長で1年以上生き延びたものがいないとくれば……カズマは目の前の犬が、ますます憎らしい相手に思えてくる。

 しかし、残念ながら二人には絶望に浸るだとか、仲違いする余裕など無かった。

 

「ん?」

 

 2メートルほど離れた地面がウゾウゾと動き、何かと思えばネズミだかリスだかっぽいげっ歯目が顔を出した。

 あ、プレーリードッグじゃん、かわいー! なんて思ったのは目が合うまでの一瞬だけ。げっ歯目が穴の底から対戦車ミサイルランチャーを引っ張り出した瞬間、カズマの脚は意識とは無関係に走り出していた。

 

「ぐえっ」

 

 アクアもまた、首輪から伸びた視えないリードがカズマに引っ張られ、訳も分からず逃走劇に巻き込まれる。

 

「あだだだだっ!? ちょっとこら、ヒキニート! 首が締まる! 締まっちゃう!!」

「うるせー! 死にたくなかったら走れぇぇぇーっ!!」

 

 状況が読めずに文句を垂れたアクアも、背後でのロケット発射音、照準の甘いミサイルが数メートルほどズレた場所に着弾して爆発したの見るや、飼い主(カズマ)を置き去りにする勢いで走り出した。

 

「ぎゃあああああああ! プレーリーゲリラぁぁぁぁぁ!?」

「おいぃぃ!? なんだその可愛らしさと狂気が同居したクリーチャーは!?」

「大破壊後に現れたモンスターって、だいたいみんなアンナの――うぎゃああ! 前、前ぇぇぇぇぇっ!!」

 

 見たくないけど正面に目を向けると、進行方向上に新たなプレーリーゲリラ、耳がパラボラアンテナのネズミ、顔がカメラのコウモリなどがウゾウゾと出現していた。

 転生直後から濃すぎるメンツだ。

 

「もうヤダぁぁぁぁ! おうぢがえるぅぅぅぅぅぅっ!!」

「現実逃避してる場合かぁぁぁぁぁっ!!」

 

 狂ったデザインの怪物から体力の限界を超えての逃走劇。それが佐藤カズマがこなした最初のクエストであった。

 

 

 その町は、ほんの数時間の全力疾走で見違えるほど痩せこけたカズマとアクアの目の前に、蜃気楼がごとく突然に現れた。

 逃げるのに夢中で存在に気づけなかっただけだが、今にも死後の世界へ再送還されそうなほどくたびれ果てた二人には、まさに地獄に仏に出会った気分だ。

 

「ああ、神様仏様……」

 

 薄汚れた犬の様相のアクアは、自分の立場も忘れて天に拝んでいた。カズマにはもう、それにツッコむ気力もない。

 

「『マドの町へようこそ』……本当に日本語で書いてある……」

 

 これなら言葉も通じるだろう、という安堵感とともに、この荒涼とした大地が平行世界とはいえ未来の日本だという実感が湧き上がり、寒気を覚えるカズマであった。

 

「おい、(ポチ)。今って西暦で言ったら何年だ?」

「へ? 知らないわよ、下界の年号なんて。あんたのいた時代から百年は経っていないハズだけど」

「じゃあ大破壊が50年前ってことは……俺が死ななかった場合、ジジイになる頃には結局こんな世界になってたってのか」

「かもしれないし、違うかもしれない。一つだけ確かなことは、世界をどう形作るかを決めるのは人間よ。技術に溺れて心を失えば、こういった絶望の未来だってあり得るでしょう」

 

 達観しているというか、まるっきり他人事なアクアだが、彼女も今や下界に生きる人間と大差ない自覚はあるのだろうか。

 

「お、おいアンタら! そんなとこで何を呑気に突っ立ってるんだ!?」

 

 そこへだ。町の中からスキンヘッドの大柄な男が、ひどく慌てた様子で駆け寄ってきた。ただでさえコワモテなのに、よほど切羽詰まっていたのかメチャクチャおっかない。

 

「ん? お前ら、見かけない顔だな。ひょっとして流れのハンターか?」

「ハンター? いいえ、俺達は……なんだろうな。おい、犬」

「私に振るんじゃないわよ! 旅人的なあれでいいんじゃない? 知らないけど」

「流れ者ってことか。運が無いな、こんなタイミングでこの町に来てしまうなんて」

 

 大男は憐れむ顔で二人を見つめて、神妙な顔で語った。

 

「もうすぐここに、グラップラーの人間狩りがやって来る。今から町を離れても、ヤツらのクルマからは逃げられまい」

 

 男の語る『グラップラー』なる連中が何者かは不明だ。しかし人間狩りというのはいくらなんでも物騒すぎる。カズマとアクアは、互いに真っ青な顔を見合わせた。

 砲撃によって町の一画が吹き飛ばされたのは、その数秒後のことであった。




 前話でカズマに天国へ逝くとか記憶を消しての通常転生などの選択肢が無かったのは、大破壊後の世界にこのすば!原作異世界ほどの余裕が無いのも一因です。
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