この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

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 実は獲得した賞金が次々と借金返済に消えていくパターンも考えていたけど、世紀末に戦車持ってるハンターじゃ踏み倒し上等じゃね? ということでこの先も借金ネタは使わない予定です。


第十九話 メタルゴッデス

 アズサのハンターオフィスにて長老を交えた話し合いを終えたカズマとレナが戻ってくると、異様な光景に出くわした。

 

「あははははは! たのしー、これ! あははははは♪」

 

 心の底からけたたましく笑うアクアが、キックスクーターを乗り回していたのだ。

 ただのキックスクーターではもちろんない。現在バギーに搭載しているガトリングガンよりも大口径の機銃と火炎放射器を装備した、紛うことなき戦車(クルマ)であった。

 

 それを愛しげに眺めているめぐみんに事情を聞くと、アクアが乗っているのはアズサの物置から譲り受けた『ポチバイク』という犬用の特殊戦闘車両だそうだ。

 なぜ犬用の戦闘車両なんてものが存在するのか? どこの需要なのか? そんな疑問も吹き飛ばすほど、アクアは嬉しそうに走り回っている。リードを手放した犬のようだ。

 むしろポチバイクを装備できるということは、やはりアクアは女神ではなく最初から『犬』だったのではないだろうか。

 

 話を戻して。ポチバイクは長老の一人が「グラップラーと戦うなら必ず役に立つだろう」と快く譲ってくれたものだった。

 加えて、製作者はめぐみんの父親であるらしい。その時点で一気に不安が膨れ上がるカズマだったが、全力でネタに走っていることを除けばポチバイクの性能は下手なクルマより優れていた。メカニックとしての知識と直感が細かいことを考えるなと囁くぐらい、今のレナチームに有用な戦力だ。

 

「……じゃあアクア。これからはお前も車外で戦うってことでいいんだな?」

「任せなさい! この女神アクア様の溢れ出るゴッデスパゥワーで、グラップラーだろうと賞金首だろうと蹴散らしてやるわ!」

「その意気ですよ、アクア! 父の作品の凄まじさを世界に見せつけるのです!!」

 

 盛り上がりを見せるアホ二人だが、張り切ってるなら任せてしまってもいいだろう。リーダー(レナ)も「いいんじゃない? 可愛いし」とGOサインを出した。

 

 

 

 30分後――。

 アズサからさらに北上する道中にて。

 

「ぎょえぇぇぇぇぇぇーっ!!」

 

 大方の予想通り、アクアはサイゴンに後方から追い上げられ、女神がしてはいけない表情で必死に逃げていた。

 

「掘られる! 女神の大事なところがホラれちゃうぅぅぅぅ〜っ!!」

「意外と余裕ありそうですね」

 

 バギーと並走するモトクロスが先行し、大分遅れてアクアのポチバイク、それを猛追するサイゴンという構図だ。アクアも決して遅くはないが、サイゴンを振り切るにはあまりにも速さが足りない。

 しかし、それでいい。あまり「エサ」が素早すぎると獲物が追いつかないからだ。

 カズマはアクアを置き去りにするつもりで、アクセルを一気に踏み込んだ。

 

「めぐみん!」

「ええ! 爆裂弾、装填完了!! 目標、サイゴン! 主砲誤差修正!! 対閃光、対ショック防御!!」

 

 バギーに合わせてレナも加速し、アクアとサイゴンの姿が一気に小さくなる。

 やがて目視での確認が難しくなり、サイゴンの角がとうとうアクアを捉えた、その瞬間。

 アクアの持つ自動帰還能力が作動し、乗っていたポチバイクごとバギー内部へ転送された。

 と同時に、待ち構えていためぐみんが爆裂弾を放つ。

 

「ガンホー!!」

 

 その掛け声だと微妙に違くないか? そう細やかなツッコミを入れつつ、カズマはバックミラー越しに驚異的な破壊力を持つ砲弾がサイゴンを真正面から捉えたのを確認した。

 

 ところがだ。蹄を立てて急ブレーキを掛けたサイゴンが、地面を削りながらその場で停止。飛翔する砲弾に背中の砲台を放った。

 

 サイゴンの放った砲弾はニ発。ほとんど同じ軌道を描いて爆裂弾と衝突した砲弾は、空中にて大爆発を誘発する。

 地上に極小の太陽が出現したかのような強烈な光、バギーの車体が一瞬浮かぶほどの衝撃波が一帯に広がる。

 

「げ、迎撃ですってぇ!? あ、味な真似を!」

 

 目標の遥か手前で撃墜された自分の作品に、めぐみんが銃座をギリギリと握りしめた。

 すでにお互いに射程外となり、サイゴンもこちらの追跡を止めて走り去っていく。一撃必殺に賭けたものの、そう甘い相手ではないことを痛感させられる。獣とは思えないあの迎撃能力を掻い潜り、確実に仕留めるには、ドッグファイトしかないだろう。

 

「ドッグファイト!? ま、また私がやるの!?」

 

 (ドッグ)気質が染み付きつつあるアクアが、カズマのセリフに戦々恐々と顔を青くした。

 

 

 

 サイゴンを振り切って到達したのは、サースティというキャバレーだ。酒場とボカして宣伝しているが、カズマの目は誤魔化せない。

 店内では双子の美人ダンサー、ウェンディとリサによるショーが定期的に開かれている。荒野のド真ん中にポツンと存在するサースティに多くの人が詰めかけるのも、彼女達にアクアと比肩する美貌とスタイルがあるからに他ならない。

 二人のダンスをかぶり付きの席で鑑賞するカズマとレナは、背中に刺さるアクアとめぐみんからの冷たい視線も気にせず熱中する。

 店の中にはピチピチブラザーズがいた気もしたが、絡んで来なかったので気の所為だったのだろう。

 

 そんなサースティには、裏の顔があることを知ってる人は知っている。

 

「みんな! 新しい危ない客のレナさん御一行だ!」

 

 ショーの後、部屋に詰めかけるファンのフリをしてウェンディに例の合言葉を伝えたレナ達は、酒場の二階――グラップラーに反抗するレジスタンスのアジトへと辿り着いたのだ。

 

「ようこそ! あたしは衛生兵のクリス、あなた達を歓迎するわ!」

 

 銀髪で小柄、右頬に刀傷のある美少女から迎え入れられて、早速レナが飛びついた。

 

「キミ、可愛いね! 彼氏いる?」

「ひぇ……えっと、今はフリーだけど……」

「ちょうどよかった、アタシの隣も今は空いてるんだ。バギーで荒野をドライブぐぇっ!?」

「止めねーか、レズビッチ!! この人ドン引きしてるじゃねえか!!」

 

 首に引っ掛けたiゴーグルをカズマに思いっきり引っ張られ、レナからカエルが潰れたみたいな声が出た。そのままアクアに取り押さえさせ、カズマはクリスに頭を下げる。

 

「ほんとすいませんねぇ、うちのリーダーってば節操なしで!」

「う、ううん! 元気でいいんじゃないかな? でも付き合うなら男の人の方がいいな〜、なんて」

「ほら見ろ、レナ。この人ノーマルだってよ。諦めろっつうかイリットはどうした!?」

「な、長旅でイリットに会えない寂しさをアヴァンチュールで紛らわせたい乙女心……」

「うっわ、サイテーねあなた。カズマとは別ベクトルでクズだわ」

「おいこら駄犬! 俺とレナ(コイツ)を同レベルにするんじゃねーよ!!」

 

 わいわいと、途端に騒がしくなるレナ達に、クリスは苦笑いをますます深め、それ以外のレジスタンスメンバーからは生暖かい視線が注がれたのだった。

 その間、マイペースな紅魔族はというと、

 

「すみません、この対空砲をちょっと見せてもらっても?」

「おう! お嬢ちゃん、アーチストかい?」

「ええ。……ほう、ただ砲塔を上向きにしただけではないのですね。砲弾にも空気抵抗を抑制する仕掛けが……もしや、これを応用すれば迎撃回避能力が作れるかも!!」

「!?!?!? こ、これの良さが分かるのかい!?」

 

 などと、メカニックな人との技術談義で盛り上がっていた。

 

 こうしてサースティの「危ない客」と認められたレナ一行は、彼らが自作した武器、兵器、弾薬の取り引きを認められた。現状だとちょっとばかり資金が足りないが、生身もクルマも大幅に装備をアップグレード出来そうだ。

 

「やっぱりサイゴンを狙うべきかしら」

 

 手っ取り早く資金を得るなら賞金首を狩るのが一番だ。この近辺で二番目の高額賞金首があのシロサイだが、問題はヤツを倒すのに足りない火力を補う資金がない……あれ?

 

「ち、ちょっとカズマ! これってマズイ状況なんじゃ……」

 

 自分達の寒い懐事情にレナが戦慄していた、ちょうどそこに。レジスタンスのハンター(職業的な意味で)らしき男が、下の酒場から駆け上がって来た。

 

「た、大変だクリス!! ダクネスが一人でグラップルタワーに乗り込んじまった!!」

「なんですって!?」

 

 突然の報告に、クリス以外のレジスタンスにも緊張が走った。ハンターの男が息切れしながら続ける。

 

「さっき手に入った情報なんだが、グラップルタワーに四天王の一人がいるって話を聞いたらダクネスのヤツ――」

 

 

『極悪非道なグラップラーめ! 兄上を手に掛けただけに留まらず、多くの人を苦しめ続けて……し、四天王などと呼ばれる輩は、一体どんな責め苦を味わわせてくれるというのだ!! ハァ、ハァ! もうがまんできにゃい〜! い、逝ってくりゅ!!』

 

 

「って、色っぽい顔して走ってっちまった」

「あの子、いっぺん死んだ方がいいかもね……」

 

 クリスの顔から表情が消え失せた。部外者のカズマでも同情を覚える。

 一方、グラップラー四天王と聞いて黙ってられないのが、グラップラー絶対殺すガールことレナである。

 

「四天王ってまさか、テッド・ブロイラー?」

「いや、スカンクスってヤツらしい。でもダクネスの兄貴を殺したのはテッド・ブロイラーだ。『隼のフェイ』って名前の通ったハンターだったんだが、どこかの町で用心棒を請け負ったときにな……」

「フェイ……!! クリス!!」

 

 弾かれたように走ったレナは、死んだ表情で出発準備を整えていたクリスに駆け寄った。

 

「グラップルタワーまで行くなら、うちのバギーに乗せてくわ! そのダクネスってのを連れ戻すのよ!」

「本当に? それは願ったりだけど、いいの?」

「フェイの妹を死なせるわけにはいかないもの! カズマ、めぐみん、アクア、行くわよ!!」

 

 カズマは後で知った話だが、隼のフェイとはともにマドの町を守って戦った一人だったそうだ。

 会ったこともないダクネスという女性にシンパシーを覚えたのか、いつになく真剣な雰囲気のレナがとても印象的だった。




世紀末クリスについて
職業:ナース
サブジョブ:ソルジャー
レジスタンスでの役割:衛生兵
正体:幸運の女神エリス(ただしアクアと同じく神も仏もない世紀末では人間と変わらない)
アクアについてのコメント:「うわぁ……追放処分にされたって噂、本当だったんだ。勤務態度とか、転生者の監督不行届とか問題になってたもんね。しかも犬……あれ、なんでだろう。涙が出てきた……」
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