この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

24 / 72
アクア「カジュマしゃぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
カズマ「うぎゃあぁ!?」
アクア「うぇぇぇぇん!! もう、もうお嫁に行けないぃぃぃ〜!! 女神だけどもうヴァージンロード歩けないぃぃぃぃ〜っ!!」
ビリージーン「大袈裟ね。まだお風呂で洗いっこしただけじゃない。指の一本だって入れてな――」
カズマ「すんません、その手のセリフはR18タグが必要になるので控えてください」


第二十三話 博物館攻城戦

 世紀末は買い物一つするだけでも大変だ。

 だからといってバーゲンセールに行くために、塞がったトンネルを開通するところから始まるとは予想外すぎたが。

 

 ハトバとアズサの中間辺りでかつて鉄道だったトンネルで、カズマ達はビトーというトンネル掘りに情熱を燃やす男の一派に出会った。

 彼らのボーリングマシンを修理したり、足りない馬力(パワー)をバギーで押したりでアシストし、どうにかこうにかトンネルを復旧させた。

 そうして拓かれた新天地に、バザースカは実在した!

 

「いらっしゃいませ! 伝説のお客様!!」

「ようこそバザースカへ!!」

「どうぞごゆっくりお過ごしついでに買い物していきやがってください!」

「つーか買え!」

 

 町全体から凄まじい熱気が湧き上がっている。彼らはそれほどまでに求めていたのだ、外部からのお客さんを!

 

 元が住宅展示場かカーディーラーだったらしい拓けた土地に、名前のとおりに青物市(バザー)が立ち並ぶ。驚くべきことに、彼らは大破壊の時期からずっとこの地でお客さんを待っていたのであった。

 

「その者、鋼のクルマをまといて乾いた荒野に降り立つべし。失われた需要と供給の絆を結び、ついに人々を消費生活に導かん……」

「どこのナウ○カだ!?」

 

 感動の涙まで流す老人にはツッコまずにはいられないカズマだったが、この町の品揃えは本物だった。

 戦車の武装は全体的に拾い物(ドロップ品)の方が性能で上回っていたが、人間用装備や欲しかったエンジンなどは高性能なものが手に入った。特にタイガータービンというエンジンは、現状ではちょっと持て余すぐらい優秀だった。

 

「ていうかこれ、本物の戦車用のエンジンですね。今のバギーや装甲車じゃ真価を発揮できません」

 

 めぐみんが言うには、キャタピラ駆動に最適化されているので通常の車両に搭載しても効率が悪く、燃料を無駄に多く使ってしまうらしい。

 しかし、いくらバザースカでも本物の戦車までは売っていない。馬力はあるので、強引にでも接続して使うのがベターだろう。

 

「カズマ! めぐみん! すぐに出発の準備をして!!」

 

 バギーの強化プランを考えていたそこに、アクアを連れて散歩……もとい、散策に出ていたレナが、ものすごいスピードで戻ってきた。それも満面の笑顔でだ。こういう顔をするのは可愛い女の子の前ぐらいのハズだが。

 

「北の廃墟に、ものすごい可愛い美少女の幽霊が出るんですって!! すぐに見に行くわよ!!」

 

 やっぱり可愛い女の子絡みだった。

 

 

 

『ようこそ、ヴラド博物館へ! 俺はインテリジェントホストの「ベルディア2027」です! 歓迎します、死ね!!』

「いきなり殺意高いな、おいッ!!」

 

 噂の廃墟に来てみれば、カズマ達は早速可愛らしい声の殺害予告と警備システムによる銃撃で迎えられた。

 

 ピラミッドを模したこの建物は、入り口の看板によれば『ヴラド・コングロマリット』という企業連合の業績を称える博物館らしい。

 しかしながら、車のまま館内を回れるスロープが張り巡らされた建物で自社自慢をするとは、大破壊前はよほどとんでもない規模で経営していたのだろう。

 

『当博物館では弊社の誇る発明、改良品を製品モデルとともに解説していきます。偉大なるヴラド・コングロマリットの歴史に、お前達の死を刻んでやろう!!』

「せめて声ぐらい可愛くしてよ!! ドスの効いたおっさんの声なんてどこのニーズだっつうの!!」

「可愛ければ声だけのAIでもいいのか?」

 

 驚異的な守備範囲の広さでカズマをドン引きさせたレナは、バイクの機銃と手持ち式のハンドバルカンを同時に構えた。

 敵は手榴弾を運んでくる茶運び人形や、火炎放射器とガスマスクを装着したフランス人形などふざけたカラクリだが、容赦なく破壊していく。

 

「クルマごと乗り込めたのは助かりましたね!」

「言っておくけど、屋内で爆裂弾は撃つなよ、めぐみん!!」

「了解! 爆裂弾、装填!!」

「おいコラ!!」

「冗談ですよ」

 

 狭い屋内ではクルマを走らせる訳にもいかず、足を止めたバギーの機銃と主砲で敵を薙ぎ払う。床や天井のガンカメラやガンホールも標的なので、必然的に博物館は壊滅的な打撃を被ることになる。

 スピーカーからベルディアの悲鳴が轟いてハウリングを起こす。

 

『あああぁぁぁぁぁっ!! なんてことを! このフロアには世界中から収集された美術品が収蔵されているのだぞ!? 大破壊後の世界では二度と創作不可能な、人類の遺産なのに!!』

「だったら攻撃してくるんじゃないわよ! そっちが撃ってこなけりゃこっちだって撃たないっつうの!」

『これだから人類は下等で野蛮なサルなのだー!!』

「その美術品を作ったのもお前らが言うサルだぞ〜!」

 

 攻撃は激しいものの、レナにもカズマにも煽り返す余裕があった。色々と強化された今のチームの戦闘力を試すには物足りないぐらいだ。

 

『おのれ……戦闘モードを迎撃から殲滅へ移行!! コード「反逆の亡霊騎士」!!』

「無駄にカッコいいですね! ――!? カズマ、レナ! 背後からも茶坊主どもが!!」

 

 主砲を後方に向けためぐみんが、お盆に手榴弾を乗せた殺人からくり人形を吹き飛ばす。しかし後から後から同じようなからくりやフランス人形、四脚型の移動砲台までがわちゃわちゃ湧いて出てくる。殲滅モードは伊達ではない。

 

「ちっ! レナ、めぐみん! このまま奥に突っ込むぞ!!」

「ちょっと、本気!?」

「私もカズマに賛成です! ……というか後ろの方が敵の密度が濃いです!!」

「そういうことだ! つーわけでアクア!! お前も外に出て露払いしろ!!」

「うえぇぇぇぇ〜ん!! やっぱそうなるわよねぇぇぇーっ!!」

 

 なんだかんだ強いアクアが出撃し、本気の火力による博物館の蹂躙が始まった。

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……さ、三階まで制圧してやったわ!! どんなもんよ、女神の底力ァ!!」

『そ、そんな……あ、あれだけの防衛機構が……!』

 

 一階、二階の展示エリアをただのゴミと燃えカスの山に変え、飾ってあったマネキンもジオラマも原型を留めていない。そしてそれ以上の被害を防衛システムに与えた最大の功労者は、意外にもアクアであった。

 どういう訳かを防衛システムは頑なにアクアを最優先で攻撃し、ベルディアからの命令も受け付けない有り様だった。

 そうなればポチバイク(キックスクーター)で囮にして、カズマ達は無防備な背後から敵を撃ちまくればいいだけだ。

 ついでにアクアも根性で逃げながら銃弾をばら撒いていたのもあって、結果だけ見れば一方的な蹂躙だったといえよう。

 

「アクア! 俺達と適切な間合いを維持しつつ、敵を撹乱しろ!!」

 

 もっとも服従の首輪でそう命じられたアクア本人は、それはもう哀れにも顔中から清水を噴出していたが。終わった今は小憎らしいほどドヤっていた。

 とうとう展示室から先のスタッフルームにまで押し込みに入った一行は、セキュリティの制御システムを守る最後のガンホールを破壊し終えた。

 後は目の前の、分かりやすい操作パネルに停止命令を入力すればベルディアはおしまいだ。

 

『く……万事休すか!』

「残念だったわね。あんまり人間を舐めるなっつうの」

『うぅぅ……だ、大破壊から五十余年! いつか来るお客様の為にコツコツと自己改造とアップデートを重ねてきたのに……それも今日までか……っ』

「お客さん待ってたにしては物騒な出迎え方だな!?」

 

 心なしか涙声で物騒な嘆きを訴えていたベルディアだったが、カズマのツッコミを受けるとどことなく不機嫌な口調に変わった。

 

『ふん。矛盾は承知の上よ。何しろ今の俺は人類絶滅プログラムに汚染され、狂っているからな。訪ねてきた人間を案内することと殺すことが並列してしまっている』

「人類全滅プログラムですって!?」

「知っているの、めぐみん?」

「いえ、知りません」

『だったら黙っててくれるかなっ!?』

 

 レナとめぐみんの阿呆なやり取りに鋭くツッコむベルディアに、カズマはちょっぴりの親近感を覚えながらも続きを促す。

 

「お前もノアの手先なのか?」

『大破壊の最中、ネットワークでヤツと繋がっていたコンピュータは全てヤツの手先だ。信号機だろうと家電の制御回路だろうと、その根幹を「人類を絶滅させること」にされてしまう。自意識があろうとAI(我々)にはどうすることもできん』

「ふぅん。大破壊って五十年以上も昔なのに、ご苦労なことね。あ、そうそう。忘れるところだったわ」

 

 昔の話はどうでもいいと、レナはコンソールに触れながら次の質問を投げかけた。

 

「アタシ達、ここに美少女の幽霊が出るって聞いて来たんだけど」

『は? 幽霊って、人工知能にそんな事……あ』

「何か知ってるのね! 停止する前に教えてよ、ね?」

 

 可愛らしく頼んでいるようで、モニターに銃口を突きつけるレナの態度は実に世紀末的だ。しばし「むぐぐ」と言い淀んでいたベルディアだったが、やがて観念したのか画面になにかの文字列を映した。

 

『地下駐車場の奥に隔離エリアがある。これはそこに入るためのパスワードだ』

「それと美少女に何の関係があるのよ?」

『行けば分かる。さあ、さっさと俺を停止させろ。もう10分もすれば発電機を暴走させて自爆するぐらいの真似だってできるんだぞ?』

 

 これ以上話すことはない、とばかりに黙りこんでしまう。と同時にグォングォンと怪しい駆動音が建物全体から鳴り出した。

 レナは肩を竦めてセキュリティシステムを停止させ、ついでにコンソールを打ち壊して完全なるトドメを刺したのだった。




世紀末ベルディア
 ヴラド博物館のインテリジェントホステス「アリス」が元ネタ。最初で最後のお客さんが最近売出中のハンターだったのは、原作で勇者と最前線で戦い続けた原作のデュラハンと真逆の設定。
 彼が残していったガレージ奥の秘密とは?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。