この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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世紀末いい男「やらないか?」
カズマ「よかったな、レナ。お前の同類だぞ」
レナ「よかったわね、カズマ。あなた、あの人のお眼鏡に叶ったようよ?」
※タイトルといい男は特に意味はないです


第二十四話 突♂入 グラップルタワー♂

 博物館から帰還した、その日の夜。

 

「レぇナぁ〜? 先に言っておくけど、言い訳があるならよく考えてから口に出してね? わたし、ちょっと理性が摩耗してるから」

「ひぇ……き、キチンと話すから! まずは落ち着いてイリット!?」

 

 修羅場になっている美少女カップルを放置して、カズマは博物館の地下から回収してきた本物の重戦車を整備していた。

 なぜレナとイリットがまた仲良く喧嘩しているか。それを説明するには、博物館で手に入れた戦利品について解説せねばならない。

 

 

 

 ベルディアから受け取ったパスワードで地下車庫奥の格納庫を開け、死蔵されていた物資を前にした一同は思わず唸った。

 高出力のエンジンと、保存状態が非常に良好な赤い躯体の重戦車、そしてレナにとって一番の収穫である美少女アンドロイドであった。

 

「うおぉぉぉぉっ!! カズマ、戦車ですよ! 乗用車に武装と装甲取り付けたなんちゃって戦闘車両じゃない、正真正銘の戦車ですよ!!」

「見て見てカズマ!! 白い肌! 飴細工のような金髪!! 愛くるしい顔!! 紛うことなき美少女アンドロイドよ!!」

「二人とも、頼むから落ち着け」

 

 テンションが振り切れた美少女二人に左右からもみくちゃにされる。片や真正のレズ、片や最近仲良くなってきたけど根本的には爆裂狂い、あんまり嬉しいと感じないのはカズマが疲れているせいだけではない。

 

 ざっと調べたところ、戦車は長いこと整備されていなかったが、これまでに手に入れたエンジンやCユニット、各種武装を組み込めば充分運用可能だった。

 アンドロイドも電子頭脳と動力炉が休眠状態というだけで、その場での処理で簡単に再起動させられそうだった。それを伝えた瞬間の、レナのだらけきった笑顔といったら……。どこぞのドMレスラーを彷彿とさせた。

 起動と同時に襲いかかってきても大丈夫なよう準備しつつ、カズマは美少女アンドロイドの電源を入れる。これまた先日のダクネスのように全身を痙攣させつつ、アンドロイドは覚醒した。

 

「……起動シークエンス、完了しました。記憶領域にエラーが発生。対応のために初期化作業に入ります。しばらくお待ち下さガーーーーッ」

「ち、ちょっとカズマ? 変な音してるけど大丈夫なの!?」

「知らねえよ!? あ! こらめぐみん叩こうとするな! 古いテレビじゃないんだぞ!?」

 

 やがて異音が収まると、少女はゆっくりと立ち上がった。全員が固唾を呑んで見守る中で、美少女アンドロイドが虚ろな眼を開く。

 

「お……はようご、ざいます、お兄様、お姉様方……当機は『ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス』。人類の妹となる、べく……生み出されまし、た」

「また尖ったコンセプトだな!?」

 

 こうして外見年齢12歳ぐらい、かつ超精密にデザインされた美少女アンドロイドがカズマ達の所有物となった。重戦車も合わせて、これ以上無い戦果だった。

 

 だが調子に乗ったレナが開発コード『BSSアイリス』に可愛い服を着せようと不用意に愛の巣へ運び込み、結果レナとイリットの間で先の修羅場が巻き起こった。

 予想できたがわざと見過ごしたカズマいわく、「ちょっとは自重しろ、アホリーダー」だそうだ。

 

「イリット。なぜそんなにレナを責めるのですか? レナが憎いのですか?」

「……違うわよ、アイリスちゃん。わたしはレナが大好きなの。でもレナにはそれが伝わっていないみたいだから、ちゃんと分からせてあげないといけないのよ?」

「そう。それが人間の『愛』なのですね」

 

 とはいえ、イリットもアイリスがアンドロイドであることは理解している。傍目にはともかく、これも愛情表現が重くて嫉妬が強烈なだけの痴話喧嘩でしかない。

 なのでカズマ達はスルーを決め込み、新戦力となる重戦車……ウルフの整備に集中していた。

 

「懐かしいのう。大破壊の頃、ワシはまだ若輩の整備士だったから、本物の戦車は触らせてもらえなかったのじゃ」

「……ナイルさんっておいくつなんですか?」

「さあのう。細かいところは忘れてしもうた」

 

 青春の夢が老いらくに叶ってよほど楽しいのか、ナイル老人は終始笑顔で作業を続けていた。この分なら明日には試運転ができるかもしれない。

 

「チーム・メタルマックスのみなさーん!」

 

 そこへだ。メモリーセンターのお姉さんが、大きなたわわを盛大に弾ませながら駆け寄ってきた。

 

「……メタルマックス?」

 

 作業の手を止めためぐみんがカズマを見上げた。聞き覚えのない単語だが、ばいんばいんの受付嬢は明らかに自分達に用がある雰囲気だ。

 

「あ〜、確かハンターオフィスに登録する時、レナがテキトーに名付けてたっけ」

「ふぅん。……彼女にしては良いセンスですね。鉄と硝煙の香りがします」

「ああ。ドギツいピンクネームにされそうなのを軌道修正したんだ。イリットも手伝ってくれたっけな〜」

 

 まだ一、二週間ぐらい前の話をやたら懐かしく感じながら、カズマは受付のお姉さんから話を聞くために席を立った。レナも呼ぼうかと思ったが、取り込み中だしチームの窓口はカズマの仕事(になってしまっているの)だ。

 

「どうしました?」

「サースティから連絡が来ました。決行は二日後、メッセージは以上です」

 

 電報を事務的に手渡して、受付のお姉さんはまた足早に走り去っていった。良くも悪くも深入りしないタイプの人間らしい。

 決行は二日後。新戦力が加入した直後という申し分ないタイミングでの連絡に、カズマは一人武者震い―――、

 

(はぁぁぁぁぁぁ〜……どどどどうしよう!! ついに本格的な抗争が始まっちまう……っ!! やっべ、冷や汗が止まらねぇぇぇぇぇ〜っ!!)

 

 訂正。心の底から恐怖に震え上がっていた。

 

 

 

 サースティの酒場に集められた腕利きのハンターは、レナ達を含めて二十名を超えていた。チーム数は5つで、だいたいどこも4人〜5人組みなようだ。

 いつもはグラップラーを含めて多くの客でごった返すキャバレーは臨時休業となり、面構えの違うハンター達が出撃の号令を今か今かと待ちわびていた。

 あまりの殺気にビビりまくったカズマとアクアは、めぐみんの小さな背中に隠れているぐらいだった。何やってんだ、こいつら?

 

「カズマ、レナ、めぐみん、アクア……っ、よく来てくれたわね!」

「きっと参上してくれると信じていたぞ!」

 

 そんなチームメタルマックスをクリスとダクネスが出迎えると、店中の視線が一斉に彼女達に注がれた。

 

「あれが最近売出中のチーム『メタルマックス』か」

「リーダーのハンドレッドキラーのレナ、噂によると真正のレズらしい……」

「魔影参謀のカズマか。あの男がチームの実質的な中枢だという」

「爆裂紅魔娘のめぐみん……地形を変えるほどの砲弾ゲージツの使い手……」

「名犬アクア……カズマの『犬』に徹して献身的な忠義を尽くすとか」

 

 いつの間にか有名になったようだ。一部微妙なコメントながら、歴戦のハンターから客観的な評価を受けて、ちょっといい気分なレナだった。

 

「役者は揃ったようね! じゃあミーティングを始めるわ!」

 

 いつの間にか舞台にウェンディとリサの姿があった。スクリーンとプロジェクターで、ダクネスが持ち帰ったグラップルタワーの見取り図を映し出す。

 

「作戦は大きく分けて3フェイズ。まずクルマで砲撃を仕掛けつつ突入するフェイズ1! 白兵戦でセキュリティを掌握するフェイズ2! セキュリティ奪取後、貨物用エレベーターでクルマごと最上階に乗り込み、四天王スカンクスをブチのめすフェイズ3! この中でフェイズ1と3の中核は、メタルマックス! あなた達に務めてもらうわ」

 

 今度は指導者から名指しされ、レナはますます凄味のある笑みとなって拳を鳴らした。めぐみんも緊張からか唾を飲み込み、カズマとアクアは冷や汗を垂れ流す。

 

「フェイズ2はダクネスとクリスを中心としたメンバーで行ってもらうわ。フェイズ1が終了後、まず一階フロアを制圧。メタルマックスのみんなには待機してもらって、その間に上階を白兵戦で制圧する」

「ふっ。任せろ、リベンジだ!」

「うっわ〜、責任重大ね」

 

 好戦的なダクネスはともかく、クリスも殺る気充分な気構えが見て取れた。

 

「セキュリティを制圧したら、メタルマックスは一階奥にある貨物用エレベーターに乗り込んでクルマを最上階へ運んで、スカンクスを倒す。制圧部隊も状況を見てメタルマックスの援護に。これが作戦の大枠よ。何か質問は?」

「あの〜……」

 

 誰も手を挙げない中、恐る恐るとカズマが口を開いた。

 

「作戦に使えるクルマって何台あります?」

「そう多くないわ。というか、あなた達のバギーと装甲車と重戦車にバイク二台ってので全体の三分の二以上あるわ。残りは救急車とパトカーが一台ずつよ」

 

 ウェンディの説明で、会場がまたしてもどよめいた。何事かと思えば、レナ達のクルマ持ちすぎ問題が浮上していた。

 

「チームメイトより車両の方が多いってどういうこと!?」

「重戦車!? ほ、本物の戦車を持ってるっていうのか!」

「どうりで強い……恐ろしいぞ、メタルマックス!!」

 

 いい感じに評価が上がっているが、今はそれに浸っている場合ではない。カズマはレナに呼び掛けた。

 

「なあ、レナ?」

「構わないわ。アタシも同じこと思ったし」

(むっ)

 

 視線を交わしてツーとカー。リーダーとブレインの間で交わされた無言のやり取り。それを察しためぐみんは、なぜだか胸の奥にチクリと刺さるような痛みを覚えた。だが戸惑う彼女がその原因を理解するには、些か経験が不足しているようだ。

 少女の心の内には気付きようのないカズマは、その場の全員に届くように告げた。

 

「じゃあ、俺達から装甲車とバイクを貸し出そう。運転に自信があるなら使ってくれ」

 

 良すぎる気前に三度目のどよめきが起きたのは言うまでもない。




世紀末アイリス
 美少女アンドロイドだが、本質は電子ドールとか宇宙ドールみたいな存在。……つまり?
 幽霊と思われていたのは機能停止する前の彼女が博物館の外を出歩いていたからだが、実はそれは大破壊から間もない時期の話。時間が止まったようなバザースカでは何十年も前の噂話がいつまでも「最近の出来事」として語られていたという、バカバカしいオチがついた。
 人類絶滅プログラムに罹患しない、スタンドアローン仕様。

世紀末受付のお姉さん
 マドの町のメモリーセンターの受付嬢。こっちの世界のルナお姉さん。ハンターオフィスの受付も兼任している。テッド・ブロイラー襲撃後に赴任して来たので、あの事件には遭遇していない。

サースティのモブハンター達
 このすば!に出てきたアクセルの街の冒険者と思ってくだされば。
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