この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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ダクネス(チーム『メタルマックス』か。略してMM……なぜだ、こんなにも心惹かれるのは!?)
クリス(あ、ダクネスがまたロクでもないこと考えてる顔してる。作戦前だし、ほっとこっと)
めぐみん(どうしてカズマとレナがアイコンタクトしただけでモヤモヤしてるんですか、私は!? くっ、こんな不純な気持ちでは爆裂ゲージツなんてできる――あ、できた)


第二十五話 進撃のメタルマックス

 その日はよく晴れた日曜日だった。

 もっとも曜日を正しく認識していたのは、ある程度のハイテク装備が支給されたグラップラーの上級兵――グラップルアーミーだけで、大多数の一般兵にとってはなんてことない一日のハズだった。

 

 日常の終焉を告げたのは、空に咲いた大輪の火の華だ。

 

「キキッ!?」

 

 基地司令にしてグラップラー四天王末席・スカンクスは、空に現れた青白いもう一つの太陽と、大気中を伝わる放電現象に顔色を変えた。

 即座にマイクを引っ掴み、金切り声で叫んだ。

 

「敵襲だ! 全員、戦闘配備!! 迎撃システムを手動に切り替えろ! 敵は強力なEMPを展開した! ウキキーッ!!」

 

 一拍置いて。グラップルタワー中の兵士が、一斉に雄叫びを上げて銃を手に取った。

 

 

 

 開戦の第一射が自動迎撃システムを停止させ、それを見届けためぐみんは重戦車ウルフの砲座で鼻を高くした。

 

「どうですかっ! 普段の爆炎とは一味違う電磁パルスの爆裂は!! 超広範囲の電子機器を動作不能にして、通信網を切断してやりましたよ!」

『聞こえてる、めぐみん?』

「ええ! 予想通り、iゴーグル同士の量子通信は良好なままですね!! でもあまり離れすぎないでください、レナ。有効範囲はかなり狭いハズですから」

 

 分かってる、と短く返事をした直後、ウルフと並走していたバギーが速度を上げて、タワーへの突撃を敢行した。

 

 今回の布陣はウルフにカズマ、めぐみん、アクアが、レナは単独でバギーに乗り込んでいる。

 作戦はまず、めぐみん特製のEMP爆裂弾で敵の迎撃システムを黙らせ、クルマの大編隊で一気に接近。後は野となれ山となれ、といった具合だ。

 最初こそ「電磁波の爆裂ですか〜?」と気が乗らない様子のめぐみんだったが、実際に製作に取り掛かると途端にノリノリとなった。どうやら新しい爆裂の境地が閃いたらしい。

 

 強力な電磁パルスは広範囲に作用し、味方の通信機器にも影響を与えた。先のめぐみん達のように量子通信は可能だが、範囲は500メートルがせいぜいだ。まずこれでエルニニョとの連絡を絶ち、敵を孤立させた。

 

 そこに足の速いバギーやパトカーが先陣を切り、正面の防備を切り崩す。早速出てきた一般兵士やガードロボットを、機銃で片っ端から撃ち払っていく。多少の被弾には構わず、とにかく正面で暴れて敵の目を引き付ける。

 その間にちょっと距離を置いた位置から、ウルフを中心とした重火力の砲身で迎撃砲を狙い撃つのだ。

 

「停車位置はここでいいな!」

「バッチリです、カズマ!! ではとくと観なさい、私の砲撃演舞を!! 1()2()5()()()()()()()、用意!!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()新装備が、連続して砲火を放つ。迎撃にもたついていた砲台が一つ、また一つと砲撃手もろとも吹き飛んだ。

 

「ひゃおう!! カズマ、この大砲ゴキゲンですよ!! 軽いし面白いぐらいよく当たります!!」

「あ! カズマ、モンスターが寄ってきてるわよ! そろそろ私も出てくるわ!!」

 

 砲撃につられて、付近のザコモンスターがぞろぞろと顔を出している。ウルフの後部ハッチからアクアがポチバイクで飛び出すと、メタルマックスから貸し出されたモトクロスと白バイを駆って、クリスとダクネスが合流した。

 最初の露払いが終わるまで、砲撃手を防衛するのが彼女達バイクチームの役目だ。突入後はそのまま階上まで駆け上がる予定である。

 

「まかしぇろーっ!! かじぇになっちぇくりゅぅ!!」

 

 呂律のおかしいダクネスが真っ先に突撃し、モンスターの攻撃を全身で受け止めながらモトクロスで体当りし、その勢いでバイクを飛び降りて暴れ始める。

 銃を使え原始人、と普段からさんざん言われているダクネスだが、射撃の腕は呪いでも掛かってるのかというぐらい最悪だ。拳銃、ライフル、マシンガン、機銃、大砲、無反動砲などなど、何を持っても弾が当たらない。

 だが一度敵の中心に飛び込むと一転、役立たずのノーコンは鬼神の強さを発揮し、モンスターや殺人マシンを素手で破壊する化け物へと変貌する。

 どこかから拾ってきた西洋風のプレートメイルとオレンジのアンダーに多少の対弾・耐爆効果があるとはいえ、ほぼ全て本人の異常な怪力とタフネスの為せる技だ。一部ではどこかの研究所で開発された対ノア用バイオロイドとも噂されている。

 

「カブキファイヤー! ジェットハーット!! 肉塊グラインダー!!」

 

 暴れるダクネス、怪獣がごとし。

 余談だが、素手でぶん殴ると反動で自分も痛いということが、彼女の攻撃の激しさに拍車を掛けているそうだ。

 

「クリス? こいつ最初からタワーに放り込んで良かったんじゃないかな。中の道筋も知ってるし」

「うん、あたしも今そう思った。けど本人が『囮だと!? 私の為にあるような役目じゃないか!!』ってノリノリだったから」

 

 アクアとクリスに出番が無いくらい、ダクネスは終始無双し続けていた。

 

『外で戦ってるみんな、聞いてくれ!! レナ達がタワーの正面玄関をぶち破った! 俺達も続くぞ!!』

 

 ウルフからカズマの合図が届いても、すっかりハイになってたダクネスはしばらく気付かないのだった。

 

 

「HeyHeyHey!! 銃弾と爆薬のデリバリーよ!」

 

 正面のバリケードを、ちょっとバギーに装着するには大きすぎるんじゃない? と言いたくなるドリル巨砲(サイクラッシャー☆☆☆)でぶち破ったレナは、敵兵士や警備マシンを時に機銃で、時に轢殺し、死体と残骸の山を築く。

 機銃をオートに切り替え、自分も車体の上に無防備を晒しながら、レナは両手に銃火器を構えて銃爪を弾き続けた。多少の被弾は携帯バリアとバリアシールで堪え、一匹でも多くのグラップラーを駆除するのだ。

 

「な、なんだあの小娘っ!? 化け物みてえに強ぇ!!」

「仕方ねえ! 一階は放棄するぞ!! 二階でヤツラを迎え撃て!!」

 

 指揮官らしきアーミーの一声で、グラップラー達が一斉に上階への階段に殺到した。その無防備な背中を容赦なく撃ち抜き、さらに追撃を仕掛けようとして……自分の役目を思い出し、止めた。

 

(いけないわ。アタシの役目は一階の制圧と死守だもの。焦っちゃ駄目よ、レナ)

 

 銃身とともに自分の頭のクールダウンを試みるレナ。彼女が操るバギーの左右を、パトカーと救急車、貸し出した装甲車が追い抜いていった。

 

「ここは任せて! 上の階は頼んだわよ!」

 

 届いたか分からないが激励を送ったレナは、結果的に殿となっているカズマ達を出迎えるべく、まだ残っているセキュリティに照準を合わせた。

 

 

 

 ――グラップルタワー、最上階の司令室はてんやわんやの有り様だ。

 これまで散発的な小競り合いこそあったものの、徒党を組んでハンターが楯突いてきたことはなかった。複数のクルマまで持ち出され、すでに3階の半分が制圧されていた。

 もちろん、司令官のスカンクスはおカンムリだ。

 

「キキキキーッ!! どいつもこいつも……オイ! コッチのクルマはドウシタ!?」

「ひぃぃっ!! え、エルニニョとデルタ・リオに配備してしまっていて残ってません! それにき、強力なEMPで外部との連絡も取れましぇぇん!!」

「ウキィーッ!!」

「ぐえぁ!?」

 

 聞かれたから答えただけなのに、報告した兵士は怒ったスカンクスに脳天を吹き飛ばされてしまった。

 タイミングの悪いことに活性化しつつあるエルニニョとデルタ・リオの反乱分子制圧にほとんどの戦力を回してしまっている。加えて先日襲撃してきた気持ち悪い女レスラーによって僅かに残ったクルマも破壊し尽くされている。

 それでも迎撃装置と重武装の歩兵と、何より自分がいるからタワーの防備に穴はないと考えていたスカンクスだったが、戦局は早速劣勢だ。

 

 蹂躙される自分の本拠地。

 思い通りに動かない部下達。

 その全てが自分の無能を物語っていると、この改造されたサルは理解している。

 

『ケロケロ〜、どうだいスカンクス? お前の戦闘力を丸ごとコピーしたクローンを作ったよ。これでお前もいつ死んだって平気だね、ケロケロ♪』

 

 ふとスカンクスの脳裏に、先日の会合で他の四天王から受けた蔑みの視線が蘇った。

 

『所詮は数合わせのヒトマネザルか。こうも簡単に再現できてしまうとはな。哀れすぎて言葉も出ない』

 

 名前だけは同じ四天王、しかし実力において天と地ほどの差がある同僚達。

 

『どんなに知能を強化しようとも、やはりサルはサル。人間様に勝てる道理はないわ! がががーっ!』

 

 ゴミや虫ケラのように侮られ、大して重要でもない拠点の防備を試験的に任せられているだけの実験動物。それがスカンクスだ。

 

『スカンクスのヤツ、ボスの座を追われてからすっかり大人しくなっちゃったな』

 

 そして、怪物になるよりさらに以前の屈辱が、頼みもしないのにジワジワと染み出してくる。

 

『でも、新しいボスザルはどうしてスカンクスを生かしておいたんだ?』

『そりゃ脅威じゃないからだろ。生きてたってなにもできないと侮られてるのさ』

『可哀想に。あとでおやつでも差し入れてやるか』

 

 猿山の担当職員から浴びせられた同情の籠もった視線……周囲の部下が自分に向ける蔑みよりも、より深く記憶に根付いた疵が呼び覚まされる。

 

「ウッキィィィィィッ!!」

 

 衝動的に銃爪が弾かれる。また二人の兵士が挽き肉に変わり、それを踏みつけたスカンクスはヒステリックに命令を下した。

 

「基地にあるものは何でも使エ!! 必ずヤツラを殺せ!! 無理ならオレがオマエラを殺す!! ウッキィィィーッ!!」

「ひゃ、ひゃいぃぃぃぃぃ!!」

 

 天井に銃を乱射するイカれた指揮官の姿に、兵士達はその場から逃げ出すように出陣させられた。

 そうして一人残ったスカンクスは、なおも苛立ちを発散するべく計器に当たり散らし続けるのだった。




サイゴン「雑に処理された」
カズマ「二回も戦闘シーンあったんだから満足してもらわねえとな」
めぐみん「ちなみにグラップルタワーでアーチストが砲撃演舞を使えるのは、どう考えてもレベル上げ過ぎです。でもほら、私はエリートなので」
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