この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

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――転送事故でベルゼルグ王国へ飛ばされた世紀末めぐみんにありがちなこと。
・爆裂魔法に感動し、爆弾で再現しようとする
・ウィズの店にあった危険物を材料として買い占める
・ベルディア駐屯中の古城を発破解体する
・帰る際に原作めぐみんにiゴーグルをくれる

※予約投稿する日にち間違えてたァー!


第二十八話 爆炎に消ゆ

 グラップルタワーからやや南東に下った海岸線に、無骨な巨大タンカーが接岸した。大破壊前の技術で造船されたそれは、人間狩り部隊が運用する実験材料運搬用の船舶だ。

 指揮する船長は当然この男。モヒカン頭にタラコ唇の巨漢、テッド・ブロイラー様だ。

 

「グラップルタワーとはまだ連絡が取れんのか?」

 

 船長室の特注椅子にドカっと腰を下ろし、マフィアのボスのような風格のテッド・ブロイラーが葉巻を燻らす。

 対して、明らかにその辺の一般兵とは一線を画す装備の通信兵が敬礼とともに答えた。

 

「はっ! 電波障害はすでに収まっておりますものの、応答ありません。ですが電波自体は疎通しておりますので、機材の故障でないなら意図的に無視されているものかと」

「ふむ。ではこれよりグラップルタワーが何者かに占拠されたものと判断し、強襲揚陸作戦を執り行う。全体に戦闘配備を伝えろ!」

「はっ!!」

 

 ただ凶暴なだけではなく、迅速な判断力と的確な指揮力もまたカリスマの秘訣だ。

 ほんの数分でデッキには武装したグラップラー兵士が整列し、あとはカリスマの号令を待つばかりとなる。

 その様子を満足そうに眺めて顎を撫でたテッド・ブロイラーは、自らがその先頭に立って攻撃命令を下す。

 

「行くぞ、者共! 目標、グラップルタワー!! 逆らう者は皆殺しにしろ!!」

『ウオオォォォォォーッ!!』

 

 地獄の軍団は悍ましい雄叫びを上げ、地獄の軍団が一糸乱れぬ隊列で進軍を開始した。

 

 

 

 スカンクス撃破とタイミングを同じくして、クリス達からタワーを占拠したという報告がレナのiゴーグルに入った。

 

「遅かったじゃない。スカンクスならもう挽き肉(ミンチ)になってるわよ」

『えっ! ど、どういうこと!?』

「あんにゃろう、こっちが乗る予定だったエレベーターで逆に奇襲を仕掛けて来たの。そこを返り討ちにしてやったのよ」

『へぇ! すごいじゃん、メタルマックス!』

 

 えっへん、とレナは目の前にいないクリスへ可愛らしく胸を張る。もっとも彼女の胸は、もはや「可愛い」という範疇ではないのだが。

 

 クリス達の方も、作戦通り司令室とセキュリティルームを予定通り制圧できたという。味方の被害は怪我人が数人程度と、完全勝利だった。戦略的大勝利、というやつだ。

 

「なんならベッドで詳しい話を聞かせよ」

『あはは、絶対ヤダ。それじゃ、そっちが片付いてるなら、悪いんだけど急いで上まで来られる? ちょっと厄介事がね』

「分かったわ、すぐに行く。じゃね♪」

 

 通話を終えたレナはゴーグルを首元に掛け直して、カズマ達を呼ぶ。

 

「カズマー、上でみんなが呼んでるってー」

「おう。つーわけでアクア、いい加減に元気出せ。マジ置いていくぞ」

「うぅぅ〜……」

 

 アクアはカズマの呼び掛けに答えず、ポチバイクの残骸を前にして項垂れるばかりだ。相当なお気に入りだったのだから無理もない。

 仕方がなかったとはいえ罪悪感をチクチク刺激されたカズマは、ガシガシ頭を掻いて溜め息を吐いた。

 

「しょうがねえな、もう。新しいの買ってやるから元気出せよ」

「あれが良かったの……あれが良かったのよ……」

「子供か!」

 

 埒が明かないので、強引にアクアをウルフに詰め込み、さっさと最上階の司令室へ向かうことにした。

 

 

 

 上階でカズマ達を待っていたのは制圧部隊のハンター達だけではなかった。

 参加したハンターより多いぐらいの、みすぼらしい格好で疲れ果てた人々。子供と働きざかりの若者で半々ぐらいな彼らは、人間狩りの被害者達だった。

 どうやらグラップルタワーは奴らの真の本拠地か実験場へ人を運ぶ中継地点も兼ねていたらしい。

 

「なるほど、確かに厄介事だな」

 

 クリスから事情を聞いて、カズマは難しい顔で腕を組んだ。

 

「無理やり詰め込めば全員クルマに乗れそうだけどね。もう住んでいた集落も無かったり、親を殺された子供だったり。そういう人達の受け皿になれそうな場所、知らない?」

「大丈夫じゃない? むしろどこの町でも人手は常に不足してるぐらいだし、ちゃんと働くってんならマドでも大歓迎よ、きっと」

「んな能天気な……」

 

 レナの言動は正しくもあるが、世の中人手以上に食糧生産率が足りてない。ちょっとしたコミュニティ規模の人数を安々と受け入れてもらえると考えるほど、クリスは楽天的にはなれなかった。

 しかし、いつまでもここに残ったところで話が進展しないのも確かだ。ひとまずサースティに引き上げ、今後の作戦と合わせて話し合うこととした。

 

 ところがだ。せっかくの戦勝ムードを台無しにする恐ろしい情報が、けたたましいアラーム音とともに舞い込んできた。

 耳をつんざく大音量の不協和音に、緊張感が一気に高まる。

 

「カズマ、大変です!!」

 

 司令室の機械を珍しそうにイジっていためぐみんが、血相を変えて……否、激しく興奮しつつも気色ばんでカズマの元へ駆けてきた。

 

「自爆装置のプロテクトを解除してやりましたよ!! あと3分ですべてが吹き飛びます!!」

「お前、なんつーことしてんの!?」

「爆裂の匂いを嗅ぎ取る直感力、我ながら恐ろしいです。むふ〜っ」

「確かに恐ろしいバカだよ!! どういうロジックで行動してるんだてめぇ!!」

「未知の爆発物があったら火を点けるのが人情でしょう!!」

 

 司令部のモニターには、デカデカとカウントダウンの数字が映し出されていた。残り2分と50秒、めぐみんの所業にドン引きしていたハンター達も、事態の重さに顔色を失った。

 内心では爆笑しながら、レナは声を張り上げて全体へ指示を飛ばす。

 

「全員、クルマに乗り込んで!! ドッグシステムで脱出するわ!! それからめぐみんは帰ったらお仕置き!! 方法はカズマに一任します!」

「なんでですか!?」

「むしろ褒められるとでも思ってたのか、おい!?」

 

 大慌ての末に40秒で脱出の支度を整えた一同は、爆発まで1分を残して量子ワープで脱出。一度ダンジョンの外に出て……などと面倒な手順を省き、ショートカットに登録していたマドの町まで一足飛びに逃げおおせたのだった。

 

 それと全く同じタイミングで。

 グラップルタワーの防衛網が完全に沈黙していると見たテッド・ブロイラーは、分厚い口唇をニヤリと釣り上げていた。

 

「やはり襲撃に遭っていたか。だが攻撃の跡が新しいな。反逆者どもはおそらくまだタワーの中にいる」

「如何なさいますか、テッド・ブロイラー様!」

「知れたこと!! 全軍、グラップルタワーへ突撃せよ! 我らに楯突く愚か者を見つけ次第、真っ黒焦げにしてやるのだ! がががーっ!!」

 

 勢い勇んでタワーへ突入していった人間狩り部隊は、その直後。臨界を迎えた動力炉の起こす大爆発に呑まれ、炎の中に消えていった。

 不運だったのは、テッド・ブロイラーは敵戦力を最大限強力なもの――スカンクスを撃破できるだけと見積もって、手持ちの全兵隊を投入していたのだ。

 この一件で大打撃を受けてしまった人間狩り部隊は当面の活動停止を余儀なくされ、アシッドキャニオン周辺の治安を著しく回復させた。

 

 それが、とある一人の爆裂マニアなアーチストによってもたらされたということは、本人も含めて誰も知らない。

 多大な戦果を上げた英雄が、二度と火遊びはしませんという念書を書かされた上に尻を百叩きにされるお仕置きをされていることなど、誰一人考えもしなかった。

 

 全くの余談だが、お仕置きされるめぐみんをある女レスラーがこっそり覗き見し、物欲しそうに内股を擦り合わせていた姿がマドの町の住人に目撃されていたそうだ。

 

「イリット、あれも『愛』なのですか?」

「あれは性癖。人間の背負った『(カルマ)』よ」




 悲報。テッド様、埋まる。
 どうせみなさん分かりきってると思いますけど、普通に生きてますのでご安心ください。この程度で死ぬお方のはずないです。
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