この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

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 新章の導入編。

 4のDLCにてテッド様の声優は杉田智和氏ですが、この話のテッド様のイメージCVは稲田徹氏で書いています。


Part4 しゃーくとらっかー・りゔぇんじぇんす
第二十九話 新天地へ


 最後に騒々しいオチがついたが、グラップルタワー攻略作戦は大成功に終わった。

 四天王スカンクス死亡と立役者チーム・メタルマックスの名前は大々的に喧伝され、アシッドキャニオン西部では救世主として知れ渡った。メンバーの顔も売れることとなり、今やメタルマックスは一般ハンターを含めた多くの人の希望だ。

 当然、宿敵のグラップラーからの評価も相応だ。一般兵にまで手配書のようなものが出回り、出先で顔を見た瞬間に襲ってくるか回れ右して全力で逃げるかのどっちかだ。

 

 もちろんカズマはレナ、クリスと並んだ反逆者筆頭として名指しで狙われることとなった。

 

「なんでだ!? 俺ってそこまで目立ってなくないか!?」

「そう思ってるのは本人だけだったんじゃない? まあ、レナとかめぐみんが『メタルマックスのブレイン』だってあっちこっちで言いふらしてたし」

「あいつらぁぁぁ〜……はぁぁぁぁぁ」

 

 今更どうしようもないのだが、やるせない気持ちをため息に乗せてカズマはテーブルに突っ伏した。

 ここはエルニニョ。昨日までグラップラーに支配されていた町だが、今や英雄メタルマックスのお陰で自由と平和を取り戻した。

 その英雄の一員であるカズマは、町を歩けば黄色い声が飛び、町の外では「一番弱そうだから」とグラップラー兵士がワラワラと襲ってくる。

 つまり当初予定していたメカニックとして細々と暮らすプランは、最低でもグラップラーを壊滅させない限り不可能ということだ。

 

「レナのヤツ、こうなるのが分かってたから強く引き留めようとしなかったんだな」

 

 レナがイタズラっぽく「これからもよっろしく〜♪」と言っていた意味を痛感しつつ、酒場の隅でダラダラしているカズマの元に、長身で外見だけは見目麗しい女レスラーがやって来た。

 

「人生とはそういうものだ、カズマ。一度初めてしまうと後には引けないことが山ほどあるのだ」

「何をしたり顔してるんだよ、ダクネス」

「なぁに、これから一緒に戦うことになるサブリーダー様に挨拶だ。さっきレナと話して、私もメタルマックスに加えてもらった。これからよろしく頼む」

 

 そう言って差し出された右手を反射的に取ってから、カズマは握った手とダクネスの妙に熱っぽい笑顔とを二度見して眉を潜めた。

 

「えらく急だな」

「そうでもないだろう。メタルマックスとは何度か関わっているし、これからエルニニョを治めるクリスやウィンディと違って、私は生粋の戦闘員だ。平和になっていく町には馴染めないのだ」

「戦闘員っていうより蛮族じゃないの?」

 

 アクアからのチャチャに満更でも無さそうな笑みのダクネスだが、そういう評価で嬉しいものなのか。

 

「外見だけは貴族っぽいのにな、アンタ。中身が度し難いド変態なのがな」

「……っ、ふ。その言葉、歓迎の挨拶と受け取ろう」

「悦んでんじゃねえよ、否定しろよ」

 

 世紀末に来て以来、つくづく変な女に縁のあるカズマなのであった。

 

 

 

 マドの町とエルニニョ間での交易が正常化したお陰で、復旧に必要な物資や人材の行き来が格段に楽になった。グラップラーの残党も順調に狩られ、西側一帯の敵はほぼ掃討されたと言える。

 となれば、メタルマックスは北部方面――デルタ・リオ周辺へ足を伸ばすこととなる。

 

「という訳だから、しばらく会えなくなるかもしれないわ。寂しくなるけど、待っててねイリット?」

「ええ。それじゃカズマ、レナがナンパしたりしないよう、見張りお願いね。バカなことしそうになったら撃っちゃっていいからね」

「笑顔で言うなよ、怖いぞ!?」

 

 最近、癒やし系だと思っていた褐色美少女にヤンデレ属性が生えてきて、世紀末にはやはり神も仏もいないのだと、カズマはガレージの外で楽しそうにはしゃぐアクアを睨んだ。

 

「あはははははー! なにこれ楽しいーっ!!」

 

 アクアが猛スピードで乗りこなしているのは、再起不能となったポチバイクに代わる新たな乗り物、ポチカーだ。

 ウィズから提供されたそれは、一見すると遊園地にありそうなゴーカートだ。だが搭載された謎の動力機関とバリアジェネレーターの出力は並のクルマを寄せ付けない。固定武装はないものの、アクアに手持ちの火器でも持たせれば充分な戦力として運用できそうだった。

 しかし、傍目には子供用のおもちゃで遊ぶ痛い美少女というのが……どうせアクアだし、実際に痛い女だが。

 

 新メンバーを加えたメタルマックスは、お馴染みバギーにレナとダクネス、ウルフにカズマとめぐみん、物資運搬用の牽引車として装甲車を持っていく。バイクは今回留守番だ。

 一人一台クルマを充てがっての運用も考えたが、運転センスも射撃の腕も絶望的なダクネスと、生身での戦闘能力が壊滅的に低いカズマという両極端な二人がいるのを鑑みて、常にある程度固まった行動が取れることを優先させた。

 

 準備の整ったチーム・メタルマックスは、どうせドッグシステムがあるからしょっちゅう帰ってくることになるだろうマドの町を出発し、新たなるバトルフィールドへ旅立っていった。

 

 

 

 崩壊したグラップルタワーを横切って、陸路での現地入りを果たしたデルタ・リオは、以前と異なり活気のある町へと変わっていた。グラップラー(ゴミ)が消えただけで、景観に大きな違いが現れている。

 しかし、世紀末においてグラップラーは確かに巨悪だが、ヤツらが消えただけですべてが丸く収まるほど、世紀末だって単純ではなかった。

 現地のハンターオフィスにて、妙に歓迎されるな〜というカズマの嫌な予感は、スカンクスと同等かそれ以上の賞金首討伐依頼という形で現れる。

 

「レナ、スカンクスの賞金っていくらでしたっけ?」

「25000Gよ、めぐみん。でも見てよ、それ以上の超高額賞金! 一匹狩るだけでも文字通り一攫千金よ!」

「まさにレベル違いって感じですね。特にこいつ……ふっ、ついにここまで来ましたか」

 

 iゴーグルにコピーした賞金首情報を確認し、獰猛な笑みを浮かべるハンター系美少女✕2。特にめぐみんは拳を震わせて「ふふふふふっ」と押さえきれない声が出ている。取らぬ狸の皮算用……と呼ぶには、些か物騒だ。

 両眼を明るい未来に曇らせながら、戦車装備を見繕うレナとめぐみんの姿こそ、世紀末を強かに生きる狩人のあるべき姿である、悲しいけど。

 

「しかし、どうするんだカズマ。ポスターにあった賞金首の半分は海――いや湖を棲家にしているようだぞ。戦うには船が必要だ」

 

 物欲で頭が茹だってるのがいる一方、カズマと普段は常識人よりなダクネスは、目の前に広がるなんとも情緒のない緑色の湖を眺めて途方に暮れていた。さらにその横ではポチカーに乗ったアクアが呑気に釣りをしているが、こいつに何事か意見を出せというのは酷だ。

 

「そうなんだよな〜。さっき港で聞いてみたけど、戦車を乗せて戦闘まで出来るような大型の船なんて、いくらなんでも売ってないってさ」

「やはりか。商品が無いのでは金があっても……だな。ならレンタルはどうだ?」

「そっちも駄目。けどいい情報が手に入った。『ネメシス号』って船の船長が、賞金首の『U−シャーク』を倒すためにすげえ船を持ってるって話だ。その人と協力できないかって考えてるんだ」

「ネメシス号……って、あれか?」

 

 ちょうど港に入港しようとする一隻をダクネスが指差した。分厚い金属板で補強された船体に、デカデカと「ねめしす」と書かれた、ほぼ戦艦と呼べるほど改造された高速船だった。

 大きさは漁船と定期船の間ぐらいだが、戦車を搭載できてかつ小回りのことも考えると、あのサイズは一番理想的かも知れない。

 

「よし、交渉してみよう!」

 

 カズマは早速立ち上がり、ネメシス号の入港したドッグへ足を向けた。

 

「リーダーに言わなくてもいいのか?」

「こういう判断は俺に一任されてるの。まったく、冷静で頼れる男は辛いぜ」

 

 セリフの割にどんより表情が曇っているのは、実のところ面倒な外交全般を丸投げされているだけだからだ。適材適所で考えると、カズマ以外に適任がいないのも事実だが。

 

 カズマとダクネス、ついでにアクアがドッグへ赴くと、ネメシス号の船長らしき男性がラッタルを降りてくるところだった。

 どこぞの宇宙戦艦の艦長みたいな服装だが、意外にもカズマと同年代の若い青年だ。日焼けして浅黒くなった肌や無精髭が、元からイケメンだった面構えをますます精悍に見せていた。

 

「ま、まさかあなたは!!」

 

 そのネメシス号の船長は、カズマ達が声を掛ける前にこちらに気付き――否、視線が向くのは水色の髪をした駄犬だ。アクアに向かって走り寄ってきた。

 

「女神様! 女神アクア様ァー!!」

 

 カズマが視線で「知り合いか?」と尋ねると、アクアは本心から首を傾げて「記憶にございません」と頭を振った。

 そうこうするうち、船長は満面の笑みだった表情を一瞬のうちに憤怒に切り替えて跳躍。空中でグルっと縦一回転した勢いを乗せ、アクアにドロップキックを炸裂させた。

 

「死ねぇぇぇぇーっ!!」

「ビートラッ!?」

 

 アクアが吹っ飛んだが、船長も勢いを殺せずコンクリート打ちっぱなしな埠頭の地面に背中から落下した。苦悶の声も出た辺り、完全に勢い任せの行動だったようだ。

 

「この駄犬へのリアクション、ひょっとして転生者か?」

「え……?」

 

 助け起こしながらカズマが尋ねると、船長は目を見開いて見返してきた。

 ついでにダクネスも、顔面に靴跡を作って白目を剥いたアクアを、物欲しそうに見つめていた。




 ネメシス号の船長、一体何ツルギなんだ!?
 この時点で嫌な予感がした人はだいたい合ってると思います。

○おまけ
世紀末ウィズ
職業:なし(今は非戦闘員の為)
サブジョブ:なし(今は非戦闘員の為)
 思っていたより出番がないDr.ミンチの助手その2。マッドサイエンティストの助手だけあって感性が外れており、原作にあったようなネタ方向へ吹っ切れた遺物を集めている。ちなみに拾い物が大半なので仕入れ値はタダ。フィールドで調べる連打。
 ミンチとの出会いは彼女の死体をイゴールが拾ってきたことから。電撃で蘇ったのはいいが、過去の記憶をさっぱり失ってしまっている。
 抜群のスタイルを誇る彼女だが、服の下の皮膚には赤い入れ墨のようなラインが走っていたり、腕にバーコード(1313という数字にも見える)があったりと、生身の生物なのは確かだが謎が多い。
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