この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 125ミリサイガンとデリック砲の☆☆☆があるだけで最終決戦までの戦車装備は揃ったも同然ですので、前回でレナとめぐみんが買っていたのは機銃やS-Eが主です。


第三十話 彼の名はミツルギ

 ネメシス号の船長ことキャプテン・ミツルギは、孤独な青年だ。

 元の彼は、やや自己陶酔が激しいながらも正義感が強く、困っている人を見れば助けに入ってしまうお人好しだった。ようするに、世紀末では格好のカモである。

 

 世紀末の環境は、下手な異世界より格段に過酷だ。

 発展途上な文明圏ゆえの素朴さは無く、魔法のような便利な技術はメンテナンス不可能な過去の遺物に頼り、モンスターよりも理性を失った人間が主な外敵となる。

 なにより諸悪の根源と呼べるような「絶対悪」など存在しないし、巨悪を討っても荒廃した大地には何の影響もないのが現実だ。

 

 それでもミツルギは、自らの使命を胸に戦い続けた。

 どうか世界を救って欲しい。あの美しい水色の髪の女神から与えられた言葉(リップサービス)を果たす為、転生特典として授かった魔剣グラム(ビームサーベル)を手に世を乱す悪を斬り続けた。

 そんな彼を心から慕う者達とも出会い、ミツルギの活躍は少しずつだが彼の周囲に影響を与えていったのだ。世紀末の大地にも花が咲くように、人々の心に希望が戻ってきた。ミツルギは心からそう感じていた。

 

 そんな物がただの気の所為で、吹けば飛ぶベニア板のように薄っぺらい夢だと知ったのは、とある島へ攻め込む途中の船が機械化ザメによって仲間ごと全滅してからだった。

 

 

 

 気絶したアクアを引きずってレナ達と合流したカズマとダクネスは、その後ミツルギが借りているドッグのサロンにて商談を行っていた。

 ミツルギからメタルマックスへ提示された条件は実にシンプルで、かつレナ達にとっても非常に旨味のある話だった。

 

「つまり、賞金首のU−シャーク討伐に協力したら賞金はいらないし、船も譲ってくれるってこと?」

「ああ。僕にとってはもう、ヤツをこの手で殺すことだけが全てだ。トドメの一撃さえ譲ってくれるなら、報酬にこの首だって差し出そう」

「分かったわ。首はいらないけど、その提案乗った。よろしく、キャプテン・ミツルギ」

 

 その流れで固い握手を交わそうとしたレナとミツルギだったが、さすがに話が簡単すぎるとカズマが待ったを掛けた。

 

「ちょい待ち、レナ! さすがに即決しすぎだって!」

「そう? 賞金首が相手ってこと以外は美味しい話だと思うんだけど」

「新参者が口を挟んで申し訳ないが、私も同意見だ。ミツルギ船長、会って間もない我々にそこまで差し出せる理由をお聞きしても?」

「……ふっ。くっくっくっく」

 

 カズマとダクネスからの懐疑的な物言いに、ミツルギのドロリと濁った黒い瞳が真っ向から睨み返してきた。そしてズボンの裾を託し上げ、義体に換装された左脚を見せつける。

 

「理由なんて僕が今言ったのが全てさ。仲間と、この左脚……僕から大事なものを奪ったあの化け物を生かしちゃおけない。単純だろ?」

「はあ、そうですか……」

「大切な人を失えば、嫌でも理解出来るさ。くくくくっ」

 

 暗い笑みを浮かべ、まるで「何も知らない素人」に物を教えるようなミツルギは、確かに多くの地獄を見てきたのだろう。席を立ったミツルギは、わざわざカズマの側まで歩み寄ってきた。

 

「君もあの女神……いや、邪神に堕とされたなら今に解る。ここはね、地獄なんだ。かつての世界の常識は崩壊し、暴力だけが支配する。そんな世界でたった一つだけ信じられた仲間達を奪ったヤツだけは、絶対に生かしちゃいけないのさ」

「はあ……」

 

 気のない返事を返すばかりなカズマだが、返事をするだけまだミツルギに理解を示している。めぐみんとダクネスは「なに当たり前のこと言ってんだ?」と眉を潜めていた。

 

「どうやら君はまだ、この世界がどういう場所なのかよく知らないみたいだね。どうかな? 同郷のよしみだ、何だったら少しレクチャーしようか?」

「いいえ結構です」

「遠慮することはない。同じ転生者として、僕は君の力になりたいんだ」

 

 そうしてやたら距離を詰めてこようとするミツルギ。反射的に押し退けて距離を取ったカズマは、露骨に残念がられてる気がしたのを全力で無視して協力に合意した。

 不思議とニマニマ楽しそうなレナよりも、めぐみんとダクネスから注がれる同情的な視線の方が心理的ダメージの大きい。違うってあいつホモじゃねーし、と繰り返し唱えるカズマ君であった。

 

 

 

 デルタ・リオの港の地下ガレージを間借りしたメタルマックスは、明日未明の出撃に向けてクルマの装備を整えていた。

 主砲は相変わらず拾い物を整備し直したが、新たにシーハンターという多段装填ミサイルをウルフとバギーの両方で扱えるようにした。現地のメカニックに協力してもらってシャシーとエンジンにも大幅な改造を施し、戦闘能力の大幅な向上に成功したのだった。

 出撃前の最終チェックで、別物レベルにまで昇華されたウルフとバギーの性能に、カズマはただただ舌を巻く。

 

「すごいもんだな〜、改造屋って」

「カズマさんだってメカニックでしょ? なにを他人事みたいに」

「俺と改造屋だと分野が違うの」

 

 よく分かっていないアクアに説明すると、カズマの本業は修理と解体だ。メカニックとして順調にレベルアップはしているものの、機構の能力アップといった改造の場合は全く別の技術なのだ。

 

「あのミツルギって人、悲劇のヒーローでも気取ってたんですかね?」

「ん?」

 

 ウルフの125ミリサイガンに特殊砲弾を詰め込み終わっためぐみんが、なんとなしにアクアに尋ねた。

 

「レナは無害だし利用できるからって特に気にしてはいませんけど。アクア、あの人もあなたがテンセーとやらをさせて、こっちの世界に引きずり込んだんですよね。相当恨まれていたのを感じました」

「出会い頭にドロップキックだもんな」

「……私だって別に、あの人が憎くてやったわけじゃないもの。仕事よ、仕事」

 

 アクアは首元に手を置き、蹴られた調子を確かめるようにグルリと巡らせた。露骨に話を逸らそうとしている仕草を見るに、こんな駄犬でも思うところがあるらしい。

 

 とはいえ、喋り方からして自分に酔ってる節があるミツルギという男は、どうも自分の内側ばかりで外を見えていない節があった。

 レナだって実の両親も育ての親も目の前で殺されているし、ダクネスだって実兄を焼き殺されて自分も一回死んでいる。肉親を喪う悲劇なんてものは、世紀末にはいくらでも転がっている。

 二十一世紀の日本から来た転生者であるミツルギにとって、近しい者との死別……それも殺害されるというのは一大事件には違いない。しかしそんなもの、世紀末にはありふれた悲劇にすぎず、何だったら死んだ親兄弟より自分の食い扶持の方が優先度が高いぐらいだ。

 だがあのミツルギという男は、自分が世界で一番不幸であるかのような……いや。自分に降り掛かった不幸に酔っているように見受けられた。

 

「あのピチピチもそうだけど、そもそもどんな基準で転生者を送り込んだんだよ」

「基準なんてないわよ。天国へも地獄へも逝けなくて、ちょうどこの世界への経路が開いたタイミングで死んだから送ちゃってただけだもん」

「んな無責任な。過酷な世界だってのはお前だって分かってただろうに」

「う、うるさいわね! こんなになったのだって、そもそも人間の驕りが原因なんだから! 技術を過信しすぎて、自分の造ったシステムに反逆されちゃったとか、天界にだって予想つかなかったもの!」

「本当かよ……?」

「あの〜、盛り上がってるところ悪いんですけど、いいですか?」

 

 割って入っためぐみんが、泣きそうな顔のアクアに向かって小首を傾げながら再度訊く。

 

「女神だとか天界って部分の真贋はこの際置いておくとして。どういった目的で転生者はわざわざこの時代に送り込まれるんです? 元の平和だった……大破壊以前の時代からしたら、今はまるっきり地獄ですよね」

「だ、だから天国にも地獄にも逝けない――」

「その部分、嘘ではありませんけど事実でもありませんね」

「うぐ……っ」

 

 鋭い指摘に、アクアの顔色が目に見えて変わる。めぐみんは爆裂癖こそ重篤だが、チームの中では一番の頭脳明晰で、絶対に自爆装置を組み込もうとするのを黙認すれば独力で戦車を改造できる知識も有している。

 本人も言う通り、神の真偽については問題視していない。だがそれはそれとして、カズマ、ミツルギ、ピチピチといった複数の転生者と出会い、その全員がアクアを「この世界に自分達を突き落とした原因」と指を差す。何かしら関わりがあると察したのだろう。

 

「カズマ、言っていましたよね。ノアを倒すよう言われてこの世界に来たって。でも実際は無関係のグラップラーと戦っています。状況がそうせざるを得ないのはもちろんですけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が疑問だったんです」

「…………」

「もしかしてアクア。あなた、いいえ天界にとってはノアも、この世界も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 めぐみんの突きつけた言葉にアクアは最後まで答えなかったが、その沈黙こそが何よりも雄弁な回答だった。




世紀末ミツルギ
職業:キャプテン
サブジョブ:ソルジャー
 カズマと同じく転生者にして、レナと同じ復讐者。転生当初は原作のように「ノアを倒して世界を救う」という理想に燃えていたが、過酷な環境と別にノアを倒したって今更何も変わらない現実に直面して絶望。そしてようやく手にした二人の少女との安らぎすら失って精神を病んでしまっている。U−シャークを倒した後の事は何も考えていない。
アクアについて一言:世界をこんなになるまで放置した唾棄すべき邪神ですね死ね!
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