この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

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 ちょくちょくゲームにおける装備品の法則を無視しています。


第三十六話 格の違い

 冷静かつ迅速にクルーザーの壁面を駆け上ったレナは、ホルスターから引き抜いた44マグナムをテッド・ブロイラーの眉間に突きつけた。

 

「おっと」

 

 しかし撃鉄が雷管を叩く寸前、テッド・ブロイラーのゴツい手がマグナムごとレナの手を握り込む。飛び出した弾丸も、鋼鉄よりも頑強な掌に防がれてしまった。

 外見通り腕力の差は歴然、振りほどくなど出来なかった。

 

「んのぉ!!」

 

 大きく足を上げ、タイトスカートから黒い派手な下着が見える勢いで顎を蹴り上げる。

 金属の壁に鉄球を叩きつけた重低音が響くも、テッド・ブロイラーは微動だにしない。逆にレナの足には焼け付くような痛みが走っていた。

 余裕の笑みを崩さないテッド・ブロイラーは、レナを軽く突き放すように解放する。尻もちを継いたレナを、デッキチェアから横向きに座り直して見据えた。

 

「落ち着きたまえ、ガール。オレは今、久し振りの休暇中でね。戦いも殺しもする気はないのだ」

「やかましいわ、賞金首!!」

 

 ハンターに賞金首の事情など知ったことではない。銃が駄目なら、次はめぐみん特注の爆裂手榴弾を自爆覚悟でお見舞いしてやる。

 

 レナの殺気を浴びたテッド・ブロイラーは、美女が口許に持ってきた果物を口にしつつニヤリと歪に微笑んだ。星型サングラスも合わせ、余裕がありありと現れている。

 その刹那。寸前までテッド・ブロイラーの両脇に侍らされていた美女二人が、ショートワープと見紛う速度でレナを取り押さえ、甲板の床板に叩きつけた。

 

「むぐっ!?」

「そのまま押さえておけ、マリリン達。どうだね? 我がグラップラーの開発したアンドロイド兵士『マリリン』は。美しいだろう?」

「アンドロイド……!?」

 

 身動きできないレナは、辛うじて首だけを上向かせた。僅かに触れ合う肌の感触、息遣い、似てこそいるが造形の異なる顔立ち、揺れる瞳の動き。どう考えても生きた人間のソレだった。事実だとすれば、荒野をさまよう画一化された量産型(人間タイプ)とはレベルが違う技術力だ。

 

「感情表現に難はあるが、うちの()()()()()()()()が完成させた自信作でね。もっともコストが高すぎて、前線に配備などできないがね」

「……ハッ。天下無敵のテッド・ブロイラー様とあろうものが、人形遊び? 随分と可愛らしい趣味をお持ちですこと!」

「悲しいけどその通りだ。()()()()()()()()()()()()()のお陰で人間狩り部隊が壊滅してしまってね。戦力補充まで暇なんだ」

 

 虚勢を張るしかないレナに、テッド・ブロイラーが皮肉めいた笑みを返した。

 

「へえ。そんなスゴ腕がまだいただなんてね。会ってみたいわ」

「ががががーっ! 冗談が言える程度には肝も太いか」

 

 どういうワケか機嫌が良くなるテッド・ブロイラーだが、発言の意図が分からず無意識に眉が上がった。

 実のところ人間狩り部隊全滅の原因は、めぐみんのやらかしたグラップルタワー自爆事件なのだが、その因果関係を正しく知る者は犯人含めて地球上のどこにもいない。他でもない神だって知らないのだから。

 なのでテッド・ブロイラーは、レナが自分達を罠に嵌めて大損害を与えながらも大胆不敵にすっとぼける大物だと勘違いしてしまったのだった。

 それが幸運とは限らないが。

 

「気に入ったぞ、小娘。どうだ、グラップラーに入らないか? お前ならスカンクスの後釜ぐらいにはすぐになれるぞ?」

「あら本当? じゃああなたの首をくれるなら入ってあげてもいいわよ?」

「いいぞ、取れるものならな! がががーっ!!」

 

 ますます上機嫌になったテッド・ブロイラーは、トロピカルジュースの残りを飲み干すと、フッと息を吹き掛けるように口から火炎弾を放ってグラスを消滅させてしまった。

 

「ところでレナ君。オレの目的はバカンスだが、運良く君達に会えたら確認したいことがあったのだ」

「答えてやると思う?」

「君の仲間にいる水色の髪の女だが、なぜあの女神様が地上におられる? あの方は天界からこの世界を見守っておられるはずだ」

「……………………は?」

 

 突然改まった言葉遣いに思考が固まりかけたが、即座にレナは思い至った。アクアを指して「女神」と呼ぶ相手の共通項目。それは!

 

「まさかお前、転生者ってヤツ!?」

「やはり知っているか。そう……オレは大破壊前の世界で一度死に、そして慈悲深き女神アクア様のお導きによってこの世界に生まれ変わった!! この天国(パラダイス)のような世界にな!!」

 

 テッド・ブロイラーは恍惚と呼んでも良いような、この恐ろしい男にはあまりにも似つかわしくない澄んだ瞳で、レナにそう語った。

 

 

 

 何隻かの船を渡り歩き、そろそろ諦めようかというムードが漂い始めた頃。カズマ達が最後にたどり着いたのは、町外れにポツンと取り残された廃船だった。

 中を覗き込んでも、ゴミや廃材が山と積まれた廃棄場だ。とても人が住む場所ではなく、なんだったら隠れ場所としても遠慮したいとカズマは思った。

 しかし、この中で実は一番旅慣れしているめぐみんの意見は違った。

 

「使えそうな物資が山程あります」

「そうなのか?」

「食料はともかく、直したりパーツ取ったり出来そうなものがチラホラと。ひょっとするとサルベージ屋が客の放棄したものを玉石混交で放り込んでいるのかもしれません」

 

 無造作に転がっている電子レンジを手に取っためぐみんは、それをカズマに()()()()()。顔面直撃コースだったのを咄嗟に受け止められるぐらい、カズマの体もすっかり世紀末に順応していた。

 

「うぎゃああ! あ、危ないだろうが!! ……あ、ほんとだ。これ使えそう」

 

 そして手元で電子レンジをバラバラに分解し、電子回路を回収するぐらいには技術的にも進歩している。後は白兵戦を鍛えさえすれば、戦闘中に戦車をバラバラにできるかもしれない。

 

「どうせゴミ捨て場だし、拾えるだけ拾ってっちゃう?」

「そうだなー」

 

 アクアもめぐみんの真似をして、状態の良さそうな電化製品を探し出した。

 

「動くな!」

 

 それを静止させたのは、しゃがれた声の老婆と、彼女が構えた拳銃だった。アクアが速攻で「ひえっ!?」と情けない声を上げてカズマを盾に身を潜ませた。

 

「それ以上近づいたら撃ちます! ……あなた達、グラップラーね? そのエンドスケルトンは、ヤツらの兵力のはず!」

「……もしや、エバ・グレイ博士ですか?」

「っ!! やっぱり私を追ってきたのね!! 迂闊っ、ここまで接近されるなんて!!」

 

 カズマ達は互いに顔を見合わせた。どうやら彼女こそが探していたグレイ博士に間違いないようだ。話し合って、一番警戒心を抱かれなさそうなめぐみんが前に出た。

 一つ深呼吸してから、体に捻りを加えたいつもの決めポーズを取った。

 

「我々はハンターチーム・メタルマックス! グラップラーを滅ぼし、アシッドキャニオンに平和をもたらす者! そしてこちらのキールさんはデビ……デビ? デ、デビルメイクライから逃げ出してきた兵士さんです!」

「めぐみん、違う! デビルアイランドだ、デビルアイランド! その何でも屋さんは俺達の手に余る!!」

「デビルメイクライですって! あの伝説のデビルハンターから逃げおうせるなんて、まさか上級悪魔だというの!?」

「しかも通じてるよ、あの婆さん!」

 

 おほほ冗談よ、とたおやかに微笑んだグレイ博士は、やっぱり世紀末らしくタフなメンタリティをお持ちらしい。そして銃こそ下ろさないが、警戒を僅かに緩めてくれた。

 

「メタルマックス……噂は聞いているわ。四天王スカンクスを倒し、人間狩り部隊を壊滅させた最近売り出し中のチームね」

「はい! その通り――カズマ、わたし達って人間狩りと戦いましたっけ?」

「知らないけど、グラップラーは積極的に狩ってるからな。それじゃないか?」

 

 結局この先、メタルマックスのメンバー達が自分達が上げた戦果を正確に把握することは、この先もずっとないのだった。

 

「そしてリーダーは女たらしの可愛い女の子だって。ハッ!! まさか、この熟れた体が目当てで!?」

「二つの意味で違いますから!! わたしはめぐみん! 紅魔族のアーチストであり、メタルマックスの砲撃手です!! ていうかあの金髪レズビッチ、噂になってるじゃないですか、恥ずかしい!!」

 

 あっちこっちに粉を掛けて回るレナの悪名は、この先もメタルマックスの活躍と一緒に広まっていくことになる。それを逐一記録し、イリットに報告しているカズマも一苦労だ。

 リーダーのアレっぷりを再認識し、自分のアレっぷりを棚上げしためぐみんの陰から、カズマが続けて呼び掛けた。

 

「と、とにかくグレイ博士なら、話を聞いて欲しい。あなたに頼みがあって来たんだ」

「大変恐縮なのですがグレイ博士。私のメンテナンスと外装の取り付けをお願いできないでしょうか」

「……最後にもう一つ、質問してもよろしいかしら」

 

 一旦はカズマとキールに少しだけ気を許した風を見せつつも、グレイ博士はより険しい声で身を隠した。

 

「入り口で身を潜めている方は、あなた達のお仲間?」

「え?」

「ふっ。カリョストロフラーーーーーッシュ!!」

 

 カズマ達が入り口を振り向いた瞬間、超高電圧の電撃ビームが廃棄場を貫き、カズマ達を一網打尽にしたのだった。




○世紀末女神レナ Part3
レナ「はぁぁぁぁ♡ カエルの粘液でヌレヌレのカズマ(♀)、可愛いぃぃぃ〜っ♡」
カズマ(♀)「お前だって油断して食われかけのヌレヌレじゃねーか!」
レナ「はあ、はあ、はあ、か、カズマ!? 一緒に個室のお風呂屋さん行かない? ヌレヌレで気持ち悪いでしょう? あ、あ、洗ってあげるわっ♡」
カズマ「今のお前のが二兆倍気色悪いわい!!」

ダクネス(な、なんだあの娘は!? 粘液濡れに加えてあの罵倒っぷり……す、素晴らしい素質だ!)
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