この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 どうもメタルマックスの世界観って気を抜くとしんみりしてしまう。おかしいな、プレイ中はあんなに楽しくドンパチしてるのに。


第三十八話 心理的熱中症注意報

 デルタ・リオ北部に広がる砂漠地帯は、野生化したバスの群生地だ。

 かつては全自動無人路線バスだったそれらは、大破壊期にプログラムから解放されて以来、自由気ままに荒野を走り回っている。

 だが如何に野生の誇りを得ようとも、それ以上にバスとしての本能を色濃く残す彼らなので、バス停を見つけるとうっかり停止してしまう習性があった。

 

「やっぱその説明、何度聞いても納得できない……」

「奇偶ね、カズマさん。私もよ……」

 

 金属探知機を頼りに掘り起こしたバス停目掛けて爆進してきた一台の野バスは、さあどうぞ! とばかりに入り口を開けて待ち構えている。早速乗り込んだレナ、めぐみん、ダクネスの三人はコントロールユニットを取り外し、手動操縦用システムにちゃっちゃと付け替えた。

 こうしてチーム・メタルマックスは、新たなクルマを手に入れて戦力を増強したのだった。

 

「ワン! ワン、ワン!!」

 

 襲ってきたのを撃退したら懐いてきたバイオニック・ドーベルマンのベロも、野バスの車内をとても気に入ったようだった。

 

 

 

 デルタ・リオでカリョストロと遭遇して一週間。カズマとレナは現状の戦力では心許ないと、集めた情報を元にして戦力増強に駆け回っていた。

 新たに倒した賞金首、天道機甲神話から火炎、音波、ビーム*1兵器をドロップ品として入手できたので、これらS−Eをメインとして扱える車両を探していた。

 そんな折、野バスの情報を100Gで売るという奇特な善人からバス停の情報を聞き出し、無事に車両を入手したのだった。

 

「カズく〜ん♪ デルタ・リオ近辺の賞金首って何が残ってる〜?」

 

 マドの町に帰還後、野バスの武装化を終えて休憩していたカズマの元に、へべれけになったレナが酒瓶片手に訪ねてきた。再建された酒場で、またお大尽でもしてきたのだろう。

 

「カズくんって……はいよ、リーダー。この前のテントウ虫ロボで最後だ。他は湖上か、定期船でイスラポルトまで足を伸ばさないと」

「クルマ情報は?」

「いくつか残ってるけど、近辺はあらかた探索しつくしちまったよ。俺としてはイスラポルトに出て、北東にあるっていうタイシャーを目指すのがオススメかな」

 

 レナは「どうしよっかな〜」と悩む素振りを見せつつ、近くのパイプ椅子に腰を下ろした。ミニタイトで大股開いて座るのは如何なものかと思うが、この女は見られてもマジで気にしない。

 ガレージでは町の再建にともなって方々から仕事を探す職人が集まってきていて、随分と賑やかになった。今はエンジンや武装、Cユニットの改造屋まで間借りしている。

 破壊された建物も、酒場、カジノ(ただしゲーム機一台だけ)、建設中のオトナの学校(意味深)などが揃い、人間狩りに襲われる前よりも発展しつつあった。

 

「……ねえカズマ」

「ん?」

 

 せっせと働く職人達を眺めていたレナが、ふと訊いてきた。

 

「カズマが前にいた大破壊前の世界って、こんな光景が当たり前だったの?」

「いや〜、もっとすごかったぞ。エルニニョにあったビルより高いようなのがいくつもあったり、道路だって整備されてたし。……俺が住んでたのは地方だったけど」

「あなた達がカリョストロと交戦してたときにね。アタシもテッド・ブロイラーに遭ってたのよ」

「…………は?」

 

 いきなり話が変わったことと、あまりに衝撃的な内容にまともな反応が返せないカズマに、レナは淡々と続けた。

 

「全然相手にならなくって、でも休暇中だからって見逃されたわ。まあそれはそれとして、あいつも転生者なんだってさ。本人が言ってた」

「マジかよ……」

「でね、あいつが言ったのよ。この世界は『天国(パラダイス)』だって。前の世界は生き辛くって仕方なかったけど、こっちじゃ好き勝手にはっちゃけて生きていける。気に入らない相手を殺すのも自由だからってさ。どう思う?」

「頭ヒャッハーかよ……ヒャッハーだったわ」

「だからノアを倒して、女神様への願いで元の世界に帰るんだって。帰って自分が『大破壊』を起こすって言ってたわ」

「――――――」

 

 淡々とした語り口で飛び出した爆弾発言に、今度こそ完全に頭が真っ白になるカズマ。

 テッド・ブロイラーが転生者であるなら、ノアを倒したら天界はあの化け物の願いを叶えなければならない。仮に拒否しても、テッド・ブロイラーなら勢いで天界を制圧ぐらいやってしまいそうだ。

 あの恐ろしい炎の化け物がカズマの世界へ行ってしまう可能性は、楽観視出来るほど低くはない。だってテッド様だもの。

 

 レナは青いのを通り越して土気色になったカズマの顔をしばらく観察し、それから憂鬱そうに大きな溜め息を吐いた。

 

「その反応から察するに、あながち妄想や虚言じゃなさそうね」

「……それ、アクアには?」

「言わない。あの子、能天気そうでも意外に繊細だよ? ただでさえ世界の有り様に参ってるのに、あんたが最強最悪の化け物を呼び込んでアタシの母親を殺しました、なんて言える? 潰れるわよ、マジに」

 

 レナの言う通り、ちゃらんぽらんでオツム空っぽのアクアだが、本質はそこそこ慈愛に満ちた女神である。どっちかと言うと自愛の割合が強いことも否めないが、たまに荒野の行き倒れを埋葬し、供養している時の姿は、正しく死者の魂を導く女神だった。

 もっともカズマからしたら自分の死に様を散々に侮辱した挙げ句、世紀末という地獄に叩き落とした憎い相手でもあるのは否定しきれないが。

 

『私のせいじゃないもん!! 私が担当になった時にはもうノアのせいで世界がぐっちゃぐちゃだったもん!!』

 

 などと泥酔して喚いてもいたので、どうしようもなかった部分もあるのだろう。真面目に仕事してる姿が想像できないのも事実だが。

 

「あなたにもグラップラーを潰す理由が出来たわね。力を合わせて頑張りましょ?」

「……なんでそんな話したよ?」

「乙女が一人で抱え込むには重すぎるの。こっちは今日を楽しく生きるのだけで精一杯なのに、他の世界の命運まで責任持てないもの」

「俺だって無理だっつうの!」

「年上でしょう? 受け止めてよ」

 

 レナは飲みかけだった昔のウイスキーの瓶を投げ渡すと、夕涼みにでも行くのかガレージの外へと立ち去っていった。

 

 

 

 そんな二人のやり取りを、めぐみんとアイリスが隠れて見ていた。どちらかといえば熱心に覗き見していたのはめぐみんで、アイリスはめぐみん本人を観察していたのだが。

 元はカズマに声を掛けようとした寸前でレナが現れ、そのままタイミングを逃してデバガメみたいになってしまった。

 

「ぐぬぬぬ! なんでいい雰囲気っぽくなってるんです、あの二人? レナってソッチ系の人じゃなかったんです?」

「めぐみん。アレもまた『愛』なのですか?」

「はぁ!? ――――いやいやいやいや!」

 

 咄嗟に否定しようとして、どうしてそんなにムキになってる!? と自分の心にツッコミを入れてしまう。そして、そのことで余計に頭が照ってくる。なぜが腹が立つほど顔が熱い!

 

(べ、別にあの二人はリーダーと参謀ですから、これまでだって二人で話し合うことはいくらでもありましたし!? 今夜だけ妙にこう、タダゴトじゃない雰囲気でしたけど!? レナがいつものメスの顔じゃなくってか弱い乙女な顔してましたけど!?)

 

 混乱しすぎて、作ったばかりの23ミリ爆裂徹甲弾をこの場で試し撃ちしたくなってきた。

 

「……なるほど。ではめぐみん」

「な、なんですか!?」

「めぐみんがカズマをよく眺めていたり、一緒に爆裂弾の試射に行くときはいつも上機嫌なのは『愛』ですね」

「はあぁぁぁっ!?」

 

 声を裏返えらせるめぐみんに、アイリスが畳み掛ける。

 

「外まで特殊砲弾の試射へ行くとき、めぐみんはバイクのタンデムシートからカズマの背中に抱きつくのを楽しみにしている、とイリットが言っていました」

「なななななにを、なに、なに……っ!? あばばばばばっ!?」

 

 咄嗟に否定したいのに出来ない自分にますます狼狽えためぐみんは、湯気が出そうなぐらいに赤くなった顔をして、しばらく一人で悶えていた。

 幸か不幸か、物思いに耽っていたカズマはそこそこ近くで発せられためぐみんの奇声に気付くことなく、自分の寝屋へと引き上げて行った。

*1
ゲーム的には無属性武器で超便利




 レナは転生について「そういうこともあるのね」程度に受け止め、アクアについても「まあそういうこともあるわね」と流しています。ただ信仰心的なものは存在せず、仲間の言葉なので信用しているぐらいです。
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