この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

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 このすば!らしからぬシリアス展開となってしまった前回ですが、MM2の幕開けと言ったらテッド様の暴虐ですので。


第三話 束の間の安らぎ 嵐が去って

「……、行った?」

「ああ……車の音が遠ざかってった」

 

 外から聞こえていた怒号やら悲鳴、車のエンジン音がしなくなった。カズマとアクアは、咄嗟に隠れていた床下の収納スペースから外に出る。

 一、二時間もの間、密着状態で身動き出来ないでいたが、カズマは直前に見てしまったテッド・ブロイラーの暴虐を恐れるあまり、幸か不幸かアクアの体に意識がまったく向かなかった。

 アクアもまた、水の女神の本能からテッド・ファイヤーに凄まじい恐怖を抱き、借りてきた猫か冬のナマズのように一言も発せず大人しくしていた。

 そのお陰か、何度か近くをグラップラーが通り過ぎたが、床の蓋にも気づかれることはなかった。

 

「お互い、なんとか生き残ったようだな」

「うわぁぁぁぁ!? ……で、デヤークさん?」

 

 どうやって巨体を収めたのか、近くのダンボール箱からデヤークも姿を見せた。

 

「意外と体が柔らかいのね」

「まあな。それより二人とも、手が空いているのなら手伝ってくれ。もしかすると町にまだ生き残りがいるかもしれない」

 

 グラップラーはどうやら、住人を敢えて全員攫わずに残すことで、後々また人口が増えたタイミングで襲撃を仕掛けようと目論んでいるようだった。ならば、わざと見逃されたシェルターもあるだろう。

 なので、若くて体力がある(ように見える)カズマは労働力に駆り出され、アクアもアクアでこういうときに見てみぬふりは出来ない性分なので、なし崩しではあるが二人はマドの町に居着くこととなった。

 

 

 それから早くも三日が経った。

 

「ナイルさん、溶接終わりました」

「どれどれ。……ほっほーう、上手いもんだな。やはりワシの目に狂いはなかったか」

 

 マドの町で修理屋を営むナイルという老人に手先の器用さを見出されたカズマは、彼の指導を受けながら見習いとして働いていた。ナイル曰くメカニックの才能があるらしく、今は町の復興に従事する傍ら廃棄されたバギーを修復しようとしていた。

 

「一人だったらもっと時間が掛かっとったが、優秀な助手が見つかってよかったわい」

「いや〜、それほどでもないっすよ」

「単純なヤツじゃのう。ホッホッホ」

 

 おだてに乗せられやすいカズマは、他にも外壁工事だとか、見張り櫓の修繕だとか、とにかく人数が必要な力仕事に駆り出されている。毎日ヘトヘトだが、間借りしているナイルの修理ガレージには寝袋もあれば空調も設置されているので、原作の馬小屋よりも快適だったりする(本人には知る由もないが)。

 

 そしてもう一人。マドの町……いや、大破壊後の世界でならどこへ行っても重宝され、ありがたがられる存在も忘れてはならない。

 彼女は町の片隅にて、なぜだか町の倉庫に眠らされていたスクール水着に着せ替えられて、強酸性の雨水を貯めたタンクにティーパックよろしく沈められていた。

 理由は単純に、水の女神の能力で破損した浄水設備の機能を肩代わりさせられているのだ。

 

「ガボッ!? も、もうむりぃぃぃ〜! 溶けはしないけどお肌が限界なの! 髪が傷むの〜っ!! かじゅましゃ〜ん、もうヒキニートとか童貞ネタで擦らないから許してぇぇぇぇ〜!!」

 

 などと悲痛な叫びも、大破壊前から大事に整備され、先日もグラップラーから敢えて見過ごされた貯水タンクの外には届かない。

 だが、彼女のお陰で清浄な水が飲めることには住人一同が感謝している。夕方にはタンクから回収され、雨水の酸で色々と酷いことになってるアクアとすれ違う度、住人は口々に礼を述べていた。

 こうなると応えずにはいられないのが笑いの神――もとい清く美しい水の女神であるアクア様だ。一晩ぐっすり寝て体力が回復するや、イリット――ナイルの孫娘が作った食事もそこそこ、自分から貯水タンクに向かっていった。根本が善良な神なので、こいつも大概おだてに弱いのだ。

 意外とこの女神、ポストアポカリプスだからこそ光るのかもしれない。

 

「本当だったら私、死後間もない命を蘇生させる超強力な回復魔法だって使えるポテンシャルがあったのよ? でもこんな、神も仏も信じられていない、奇跡も科学で代用できる世紀末じゃ、せいぜい肉体に備わってる異能を『超能力』として発揮するのがせいぜいだわ」

 

 と、カズマに対して愚痴ってもいるので、浄水器扱いに不満がないわけではないのだろう。

 剣と魔法のファンタジー世界で、アークプリーストとして回復や浄化魔法を使いこなしてブイブイ言わせているのとはえらい差だ。

 

「けど、アクアさんの力で町の衛生面が保たれているのは本当ですよ。お陰で彼女の容態も安定してきましたし」

 

 ぶーたれるアクアを励ます為か、イリットが居住スペースの片隅のベッドに寝かされた少女に視線を向ける。

 イリットは名前も知らないが、その少女はグラップラーから町を守るべく戦ったハンターの一人だった。まだ見習いらしく前線には立っていなかったが、あのテッド・ブロイラーの猛火を唯一の生き残っていた。

 それでも全身に重篤な火傷を負い、一命こそ取り留めたものの高熱が続いている。

 

「アクアさんがいなかったら、水不足でもっとみんな困っていたと思うんです。カズマさんだって、あなたが頑張ってるのを認めてましたよ」

「あんなのに褒められたって嬉しくないわよ。……ごちそうさま。それじゃ、今日も張り切って浄化作業に励みますか!」

 

 両手で頬を叩いて気合を煎れたアクアが席を立った、その時だった。

 

「う……く、あ……っ」

 

 これまで浅い呼吸を繰り返すだけだった生き残りの少女が、咳き込むような声を発した。




 次回、もう一人の主人公が登場。
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