この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 今回、本来ならば別の町で起きるイベントもイスラポルトに集約しています。


第三十九話 傷だらけの男

 レナが清々しい朝のジョギングから戻ると、ガレージ前に設置されている無線ポストに着信があった。

 これはポストというよりFAXに近く、遠方から文章データを受け取ってプリントアウトする。今の時代では貴重な遠距離通信網の一つだ。

 これ以外だと、ハンターオフィスが使っている衛星通信網が主だろうか。

 

「ん〜……ん!?」

 

 吐き出されたB5用紙の短い文章、その宛名を目にしてレナが目を見開いた。そして差出人を二度見して、あんぐりと口を開け放った。

 

 

 

「果たし状が来たわ。アタシ達、チーム・メタルマックスに」

 

 出発前のミーティングで、レナは無線ポストに届いた手紙を全員に見せた。

 

『生意気な後輩ハンターへ

 久し振りだな、レナ? 俺が分かるか?

 あの日、死にかけた俺はグラップラーどもに攫われ、改造された。

 テメェを殺せばスカンクスの後釜として四天王に取り立ててくれるらしい。

 イスラポルトで待つ。度胸があるなら掛かってきな。

 

 追伸――俺のバギーの乗り心地はどうだい?

 無敵の改造人間より』

 

 読んでいて頭が痛くなってきたカズマは、差出人の心当たりをレナに訊く。彼女が大きく頷いた。

 

「バギーの前の持ち主よ。一緒にグラップラーからマドの町を守って戦ったの。そういえば死体が見つからなかったって、ナイルさんに確認したわ」

「それがグラップラーに改造されて敵になったってことですか? レナ、そのガルシアっていうのはどういう人だったのでしょう?」

「……よく覚えてないわ。荒っぽい性格だったけど、そんなハンターいくらでもいるし」

 

 ほとんど会話もしないうちに襲撃が発生し、そのから後はカズマ達も知ってのとおりだ。交流など無いに等しい。バギーだって勝手に相続したものだし。

 

「ガルシアは賞金首ではないけど、イスラポルトは次の目的地だ。嫌でも顔を合わせることになりそうだな」

「それに、グラップラー潰しでノリに乗ってるメタルマックスが、芋引くわけにもいかないしね。遭遇したらその時は……ダクネス、サクッとやっちゃって?」

「いいのか? 決闘を挑まれているのは君っぽいぞ?」

「冗談でしょ? 中世の騎士様や荒野のガンマンじゃないのよ、アタシ」

 

 肩を竦めたレナに、ダクネスは「それもそうだな」と同意した。

 正々堂々戦う、などという概念は、大破壊の頃に途絶えてしまった。

 

 

 

 湖の三馬鹿が消えたことで、定期船も一日三回に頻度が増えた。大した待ち時間もなくメタルマックスの一行もデルタ・リオから数時間でイスラポルトに到着した。

 

「100G」

「うるさい」

 

 港の入り口で税関のように金銭をせびってきたグラップラーを躊躇なく撃ち殺しつつ、レナ&ダクネスが乗り込むウルフが上陸を果たす。

 続いてカズマ、めぐみん、アクアの乗った野バスが、牽引用の装甲車とともに船を降りた。バギーは湖からサルベージこそしたが、状態が悪くてマドのガレージでオーバーホール真っ最中である。

 

「こっちの方はグラップラーがまだまだ元気ですね」

「デルタ・リオまではほとんど一掃されたけどな。カリョストロの一件からほとんど見掛けなくなったそうだぞ」

 

 港の職員が兵士の死体を生ゴミとして処分するのを見送って、デルタ・リオよりいくらか近代風の景色を残したイスラポルトの町へと繰り出す。

 ここから北のタイシャーを目指すにあたって必要な物資を買い備え、ハンターオフィスで情報を集め――という予定だったが、どうやら敵の行動力はこちらが思っていたより高かったらしい。

 

「逃げずに来たようだな! 待ってたぜぇ、レナ!!」

 

 港の入り口には、ゾンブレロにポンチョスタイルというどっかの兄弟みたいなファッションセンスの古めかしいロボット――否、サイボーグが待ち構えていた。

 港と町を繋ぐ道路の真ん中で仁王立ちし、右腕と一体化した大口径の銃をこちら向けてくる。

 

「あのションベン臭い小娘が立派になったもんだな!」

「あんた、ガルシア? 随分と雰囲気変わったわね」

「当ったり前よォ!! テッド・ブロイラーにほとんど焼き尽くされちまって、残ってたのは脳みそぐらいだったからな!」

 

 ブリキの玩具のようになった顔のガルシアが、ガラガラと不思議な音を立てて嗤う。レナは肩を竦めた。

 

「で? 改造されて今はグラップラーの一員?」

「情けないって思うか? まァそういうなって。何しろデビルアイランドの科学者ども、せっかく残った脳みそにまで色々と細工しやがったんだ。今の俺が本当に俺かどうかも分からねえ……けど、それはお前の仲間も同じだろ?」

 

 ふと、ガルシアの視線がレナから外れて、野バスの運転席にいるカズマへ向いた。

 

「この世界に生まれ変わった……転生者、だったか? 一度死んで生き返った人間が、果たして真っ当な生物なのかなァ、おい?」

「……何が言いたいの?」

 

 レナの表情が険しくなると、鉄板で覆われて表情がピクリとも動かないハズのガルシアが、愉快そうに破顔する気配がした。

 

「なんでもねェよ。それよりだ、レナ。ここまで来たってことは、俺との決闘に付き合ってくれるってことだよな?」

「まさか。今、ウルフの主砲があんたを狙ってるし、機銃だってミサイルだって発射用意ができてるの。ついでにレスラーがウォームアップしているから、いつでもあんたを消し炭のガラクタに変えられるわ」

「容赦ないねェ。だけど……オイ、ピチピチィッ!!」

 

 ガルシアが大声で後方へ呼びかける。すると港の倉庫の影から、ガルシアと同じくメキシカンなゾンブレロ&ポンチョ&ウェスタンブーツな凸凹コンビが姿を現した。

 

「久しぶりザンスね、女神アクアと飼い主御一行! ミー達を忘れちゃいねーザンショ?」

 

 メキシカンコンビはいつぞやのピチピチブラザーズだ。しかしレナの視線は彼らに腕を縛られた儚げな美少女のみに吸い寄せられていた。

 

 腰まで届いた長い髪の隙間から、雪のような白い肌が浮き上がる細身の美少女は、非常に精密なガラス細工のように儚げな美貌の持ち主だった。一方で線の細い面立ちに反し、白ワンピースの胸元は豊かに大きく膨らんでいる。スタイルでいえばアクアに比肩するだろうか。

 

(そ、そんな……美少女指数、A+……ですって!? それも今まで身近にいなかった属性を感じる……!!)

「ケッ。目の色が変わったな、レナ。ビアンって噂は本当だったか」

「ハッ!! ……い、一体その子は何なの!? ちょっと向こうの方で二人っきりになってきてもいいかしら?」

「あいつ欲望ダダ漏れだよ、アニキ〜」

 

 まさかのステピチからツッコミを受けて正気に戻ったレナは、口許の涎を拭って気丈に身構え直した。相乗り中のダクネスからも「空気を読め」と肘で小突かれるが、レナだってこいつには言われたくないだろう。

 ステピチは、憔悴しきった様子の美少女の肩を乱暴に掴み、自分の盾にするよう突き出した。

 

「このカワイコちゃんは人質ザンス! この娘の生命が惜しかったら、ガルシアの旦那の決闘を受けるザンス!」

 

 そう言われては、レナに断ることは出来ない。彼女はいつでも美少女味方だ。ただし、人質がブサイクだったら諸共戦車砲で吹き飛ばしていた可能性も否めないのだが。

 レナはiゴーグルをダクネスに渡すと、近接戦闘用ブラストハンマーを担いでハッチを開けた。

 

「ダクネス」

「分かっている。死ぬなよ?」

「その時は速攻でミンチ博士のとこまでお願いね」

 

 クルマを降りたレナは、堂々とした歩き姿でガルシアへ向かっていく。すでに相手を「昔の同業者」から「狩るべき獲物」に認識を改めて、鋭く睨みつけた。

 

「ケッ。何ヶ月と経ってないのに、すっかり一人前の風格だな」

「落伍者に褒められてもね。おっと、その前に」

 

 レナは一旦表情を柔らかく崩して、人質の少女へ視線を投げた。

 

「巻き込んじゃってごめんなさいね。すぐ解放してあげるから、待ってて♡」

「っ…………!! は、はい……っ」

 

 破壊力満点のレナ・ウインクを受けた人質の少女が、耳まで真っ赤にさせて顔を伏せた。これは脈アリ! そう確信したレナは、ますます殺る気に満ちてガルシアへ突撃した。

 

「……アニキのがいい男だー」

「オトピチ、なにか言ったザンスか?」




 レナによる美少女指数判定(の一部)
アクア……A+
めぐみん……B+(胸があったらA)
ダクネス……S
イリット……A−
ウィズ……S+
クリス……A+

レナ「……レベル高すぎないかしら?」
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