この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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※もっと世紀末シリーズ
アクア「あなたが転生する世界はマルディアスといって、千年前に封印されたバカ――邪神サルーインのせいで結構ピンチで、エロール様から戦力寄越すよう言われているの。あ、エロール様っていうのは上級神で――」
カズマ「そんなザコがザコじゃない世界なんてお断りだ!!」
アクア「じゃあバレンヌ帝国にする? リージョン界? あ、世界の中心の塔に挑む冒険者は?」
カズマ「サガから離れて、頼むから!!」


第四十話 港町の決闘! 少女を救え、メタルマックス!

 ハンターの戦いは、常に先手必勝だ。必殺の先制攻撃で確実に獲物を仕留めるのは狩りの基本である。

 そうでないなら、十重二十重の搦手でもってジワジワ追い詰めていく。

 

「吹っ飛べ!!」

「甘いぜ!」

 

 レナのブラストハンマー――先端が丸みを帯びた円錐形に改良され、硬い物質の破砕に特化したハンマー――を構えての猛突進を、ガルシアは大きく横に跳んで避けた。

 と同時に、ガルシアはポンチョの裾から複数の発煙筒をばら撒いた。

 

「うわっ!?」

 

 瞬時にレナの視界は黒い煙に360度塞がれてしまう。iゴーグルを置いてくるんじゃなかった、と早くも後悔しながら、ハンマーを思い切り振り回して煙を払おうとする。

 しかし発煙筒からモクモクと飛び出す黒煙はすぐには収まらない。レナは姿勢を低くして、敵の気配を探ろうと全神経を集中させた。

 だが次の瞬間。右肩を熱線が掠めていき、鋭い痛みが走り抜けた。

 

「くっ!! こんにゃろう、こっちが視えてるわね!」

「あたりきよ、こちとらサイボーグだぜ!! このまま煙の外から嬲り殺しにしてやろうかァ?」

「ふん!」

 

 ハンマーを担ぎ直し、声のした方向へアシッドガンを撃ち込む。金属の装甲を持ったマシン系やサイバネティック系、そしてアリ相手に効果を発揮する強酸弾を放つ特殊な銃だ。

 手応えこそないが、ジャンプした駆動音と着地した足音から次の位置を予測。二発目の強酸を撃ち込む。

 

「ぐおっ!!」

 

 当たるには当たったが、会心の一発とは言い難い。接近してハンマーの一撃を叩き込めなければ、有効打にはならなそうだ。

 

(まったく、面倒だわ! こちとら白兵戦は専門外だってのに!!)

 

 目くらましを物ともせず、レナは熱戦や銃撃を紙一重で回避しつつ、どうにか距離を詰めようと牽制も銃撃を繰り返す。

 ……もっとも、この勝負の行方を決定付けるのは彼女ではないのだが。

 

 

 

「よーし。二人とも、上手くやってくれよ〜」

 

 カズマは野バスの運転席から、増設されているモニターを固い表情で見守っている。めぐみんのiゴーグルが送ってくるリアルタイムの映像だ。

 めぐみんとアクアを野バスの床下からコソコソ車外に出させ、煙に乗じピチピチの背後を奇襲する作戦だ。さらに人質救出と同時にぶっ放すべく、カズマは野バスの屋根に設置したUバースト砲を起動させた。

 

 めぐみんはただでさえモクモクと煙たいところへさらに発煙筒を追加し、ガルシアとピチピチを分断。ついでに自分達の姿も完全に隠れるよう、さらにもう一個追加しながら、アクアを先導して最短距離を突き進む。

 

「ゲホッ!!」

「ちょっとアクア、むせないでください! いくらあの馬鹿そうなサイボーグでも気付かれます!」

「ごめっ、ごめん……!」

 

 小声でアクアを叱りつけつつ、ふとあの先日捕まえたドーベルマンの方を連れてくれば良かったと思いながらも身を低くして進んでいく。

 

「んなろーっ!」

「ガハハハッ!! しぶといな、レナ!」

 

 ぶつかり合う両者の怒鳴り声を真横に、さり気なくもう一個発煙筒を投入する。EMPは使わない。下手に敵のセンサーにノイズが走ると、ピチピチはともかくガルシアが異常を察知する危険性があった。

 

「あにきー、なにも見えねーよー」

「そうザンスね〜。ミー達の安物センサーじゃ、この煙の中で何が起きてるかなんて分からないザンス」

「……ん?」

 

 不意に、コンテナの後ろに回り込んでいくめぐみんは、人質の少女と目が合った。大丈夫、必ず助ける、という強い意志を込めて頷いてみせる。

 

「…………ポッ」

(どうして赤くなるんです!?)

 

 何故か少女が、レナと一緒にいる時のイリットみたいなポーッとした表情で見つめ返してくる。あの子も真性のアレか! と心の中でツッコミつつ、上手いことピチピチの背後を突ける死角までは上手いこと潜り込めた。

 

「ん〜? お前、何を見てるザンス?」

 

 ステピチは少女が熱い視線を向ける方向を向いたが、とっくにめぐみん達は通り過ぎた後だった。

 

「さてと。問題はここからですよ。アクア、繰り返しますけどあなたは余計なことを考えず、こちらの指示に従ってください」

「な、何度も言わなくたって分かってるわよ!」

 

 珍しく真剣に頷くアクアだが、めぐみんはどうしても彼女を信用できない。いつもの大雑把かつ敵を倒せりゃ何でも良いバトルならともかく、慎重な行動を要求される今回のような状況で、致命的なポカをやらかしかねないからだ。

 めぐみんだってハンターの端くれ。世界観が違えば「冒険者」とか「勇者」と呼ばれる人種だ。賞金首(モンスター)から人を守るプロとして、何としてでも人質を救出せねば矜持に反する。だから爆裂だって封印し、今日のところは狙撃用ライフルに持ち替えもした。

 

「ではアクア、このまま限界までピチピチに接近してください」

「お、おっし!」

 

 頬を叩いて気合いを入れたアクアは、イマイチ信用ならないキリッとした表情で、背負っていたポチカーを地面に置いて乗り込んだ。とことん間抜けな見た目だが、こうなったアクアは並みのクルマより頑強となる。大破壊前の技術は、よく分からない。

 直線距離で20メートルちょっとの間合いを、アクアは慎重に詰めていく。そのうち気付かれるだろうが、それまでなるべく近づいてもらいたい。

 

(このめぐみんが見る限り、あのピチピチどもの知能はその辺のウシ程度。突然目の前に憎い怨敵が現れたらどうするかなんて、手に取るように分かります!)

「ん? ――あ、あああぁぁぁぁぁ!! め、女神アクアッ!!」

(ほらね)

 

 アクアがピチピチを射程内に捉えると同時に、ピチピチも気配を察知してアクアに振り返った。……振り返ってしまったのだ、人質を放ったらかして。

 心の中で「マヌケ」と叫びつつ、建物の影から飛び出しためぐみんがオトピチの脳天を狙い撃つ。

 

「ほげっ!?」

「あにきー!? うげっ!!」

 

 二発目でステピチにもヘッドショットを決めた。この程度では即死しない呆れた耐久力は大したものだが、別にこの場で倒し切る必要はない。今更スナザメより安い賞金とかいらないし。

 

「あなた、こっちへ!」

「は、はい!」

 

 怯んだピチピチを押し退けたアクアが人質の手を取って抱き寄せた。その瞬間、少女の繊細そうな美貌がものっそいだらしなく緩んだ。

 

「カズマッ!」

「アクア、『戻って来い』!!」

 

 令呪(隷属スペル)で命じられたアクアが、抱きしめた少女ごと野バスの内部へ量子ワープされる。本当に便利ですね、と呆れながら、めぐみんはさらに敵射程外からの一方的な狙撃を続ける。

 本当はさらに改良が進んだ爆裂グレネードで一網打尽にしたかったが、間違いなくイスラポルトの港が機能停止するので自制した。

 

「ぐぬぬ、小娘! オトピチ、突撃ザンス!」

「あ、あにきー!!」

 

 奇襲から立ち直ったピチピチは、もう人質も女神アクアも頭に入っていないのか、めぐみん目掛けて突撃を開始する。

 その直後、背後をUバースト砲で狙い撃たれ、ギャグ漫画みたいな吹き飛び方をして湖に叩き込まれたのであった。

 

「お、覚えてろザンス〜!!」

 

 などと決まり文句を言うぐらい余裕があるので仕留めきれてはいないようだが、ハンターオフィスの情報を聞く限り害の少ないケチな小悪党だ。そのうちまた遭遇するだろうし、そうでなくても他のハンターに狩られるだろう。わざわざ追撃する必要はない……が。

 

「えいっ!」

 

 せっかくなので泳いで遠ざかる背中に、市販品の方の手榴弾をぶん投げてやった。「ほげーっ!!」と最後まで面白い悲鳴を残し、彼らの姿は見えなくなった。

 

 

 

 そしてもう一方。

 

「あん? な、なんだ!?」

 

 Uバースト砲の発射音を聞いてようやく、ガルシアは自分の周囲が想定より遥かに多くの黒煙で囲まれていた事に今更ながら気が付いた。

 

「迂闊だったわね、先輩?」

「……あァ、まったくだな!!」

 

 声のした方向へ右手の銃を突きつける。連射された弾丸が、柔らかい肉を叩くような鈍い音を生じさせた。

 

「もう少し、楽しみたかったんだけどな」

 

 ブリキの顔で、ガルシアが嗤う。黒煙を引き裂いて自分の前に躍り出た、金髪の()()()()をビームで迎え撃った。

 

「効かぁぁぁぁん!!」

 

 すでに準備運動(ドラムストレッチ)を終えたダクネスは、鉄をも貫くビームを生身(ライフ)で受け止め、必殺の台風チョップでサイボーグボディをバラバラに引き裂いたのだった。

 

 

 

「ま、こんなもんか」

 

 日が沈みゆくイスラポルトの港で、残骸となったガルシアは独り呟く。動力炉も生命維持機能も破壊された。数分もしないうちに、彼はサイボーグからただの鉄くずに成り果てるだろう。

 レナとダクネスが歩み寄ってくるが、ガルシアは呆然と空を眺めたままだった。

 

「勝つ気無かったでしょう、先輩」

 

 確信を持ってレナが尋ねるが、ガルシアは答えなかった。ダクネスが無言で見守る中、レナは淡々と続ける。

 

「人質の管理を馬鹿に任せるし、カズマ達をクルマに残したままにするし。もっとズルくやれば、いい勝負出来たんじゃないの?」

「へっ。まるでズルく来られても負けねーって言いたげだな」

「うちのブレインは優秀なの。今回のもあいつが即興で考えてくれた。……あなたがわざと隙を晒しているってことも見抜いた上でね」

 

 ガルシアが再び押し黙る。代わりに破壊された切断面で起きていた火花が激しくなった。

 

「ソルジャーになりたかった……」

「え?」

 

 やがて、ポツリとガルシアが遠くを見ながら重い口を開いた。

 

「お前のオフクロさんみたいな、生身でクルマを蹴散らすソルジャーにな」

「だったら最期ぐらい正面から向かって来なさいよ。そしたら――」

「馬鹿言え。誰がグラップラーの為に戦うかってんだ」

 

 そこでようやく顔を上げたガルシアが、ダクネスを見て両眼を点滅させた。直後、彼女に預けたままだったiゴーグルから、データの受信を知らせるチャイムが鳴り響く。

 

「デビルアイランドの座標だ。そこに……――」

「……先輩?」

 

 言葉が途切れたガルシアは、そのまま二度と動くことはないと思われた。

 

「…………ケロッ♪」

「!?」

 

 しかし。

 

「ケロケロケロ♪ や〜っぱり負けちゃったんだケロね〜、ガルシアくん♪ ケロケロッ♪」

 

 さっきまでのガルシアと明らかに別人の声と喋り方。レナとダクネスが同時に身構えた。

 

「誰だ、貴様!!」

「ボク? ボクはグラップラー四天王のブルフロッグさ。なんというか、四天王最強の男、みたいな?」

「最強はテッド・ブロイラーでしょ?」

 

 ガルシアを通じて、相手を舐め腐った口調と態度が伝わってくる。ブルフロッグを名乗った男は、ケラケラと品性に欠ける笑い声で一方的に話し続けた。

 

「場所を知られちゃったワケだし? 来るなら来れば、デビルアイランド。ボクの首にも賞金が掛かってるし? 無駄にはならないよ、ケロッ♪」

「随分と余裕だな」

「当たり前だネ♪ キミら、スカンクス倒したぐらいで調子乗ってるみたいだけど、アイツは所詮数合わせなんだ。だって『三幹部』より『四天王』のがカッコいいでしょ?」

 

 ドMなハズのダクネスだが、こいつに対しては殴りたい気持ちしか湧いてこない。

 ケロケロ言ってる間にも、ガルシアのボディは爆発寸前だった。ブルフロッグは「言い忘れはないかな〜?」などとわざとらしくレナ達を煽る。

 

「ブルフロッグ。そのデビルなんとかって場所にはテッド・ブロイラーもいるの?」

「それは来てのお楽しみ。それじゃ、あぢゅー♪」

 

 最後の質問に曖昧に答えて、ガルシアのボディが爆発。完全に機能停止するとともに、ブルフロッグからの通信も途切れた。

 

「……次の目的地、決まったわね」

 

 水平線に沈む夕陽を睨みつけ、レナはハッキリと口にした。

 ふとダクネスが視線を落とすと、レナは震えるほどに拳を握りしめていた。




ガルシア「わたしの まけだ」
ブルフロッグ「わたしの まけだ」
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