この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 レディ・アヴァロンを宝具2にした結果、水着エリち用の石が尽きた。
 どうして……どうしてガチャは無限に回せないんだ!!
 私の財布は……こんなにも薄い!!


第四十二話 愛は無敵なり(比喩ではない)

 野バスの車内はとても広い。カズマはコツコツと居住性を上げて、そのうち運転席を格好つけて「キャビン」とか呼ばせたい野望を抱いている。現状で積み込んでいるのは医療装置とキャンプセット、迷彩シールドぐらいだが、もう野バスじゃなくて送迎バスぐらいに格上げしてもいいかもしれない。

 特に、今回のように連れて行く人員が急に増えた時にはとても有用だ。

 

「それはいいんですけど、カズマ? どうしてイリットやアイリスを連れて行くことになっているんですか?」

「……女だけの王国があるなら、女同士で子供を作れる技術を持ってるハズだって」

「へっ? じゃああの人、レナと子作りしたいんですか? ……それ、わざわざ自分が来る必要あったんです?」

「俺にも分からん」

 

 呆れとも同情とも取れる複雑な面持ちで、めぐみんは客席へ振り向いた。

 というわけで、ゴリ押しされたカズマはイリットの随伴を断れずに許可してしまい、彼女の用心棒としてアイリスまで一緒にくっついてきた。

 そして肝心のレナだが、まだドラム缶の中で目を回しているので今回まさかの欠席だ。

 

「うふふっ、こんなこともあろうかと射撃訓練は連日欠かしていなかったのよね」

 

 異様に手慣れた様子でショットガンを整備しながらトリップしているイリットと、無表情で手首をガションガション鳴らすアイリス。どちらも外見の細さ、可憐さとミスマッチな殺る気を放っている。

 

「一応聞いておくが、実戦の方は経験あるのか?」

「問題ありません。このBSSアイリス、自警団の一員として何度もモンスターやグラップラーを返り討ちにしています」

 

 ダクネスから「え、マジで?」と視線を向けられたイリットは、無言のドヤ顔で親指を立てた。

 

「と、本人達は言ってるけどさ、カズマさん?」

「賞金首のアジトに乗り込むのに素人を加えるのってどうかと思いますけど? ただでさえ生身だとかたつむり観光客なカズマがいるのに」

 

 アクアとめぐみんからも怪訝な顔を向けられて、カズマは運転中なのと視線を合わせないのと、二つの意味で正面に集中した。

 

「俺だって多少は戦えるっつーの。相手がメカならスパナ投げるぞ」

「スパナはともかく。アイリスが来るならという条件で同行を認めたのはカズマです。あの幼女ロイド、戦力としては信用できるんですよね?」

「幼女ロイドって……まあ大丈夫だ。前にアダムアントがいた蟻の巣の南に、別の賞金首がいただろ? でっかい植物の」

「千手沙華でしたね。いつの間にか討伐されてました……まさか」

「ほとんどアイリス一人で倒した」

 

 それはちょうど、カリョストロと遭遇した直後ぐらいの事だ。

 マドの町にやって来たクリスから頼まれ、入手したばかりだった野バスの試運転も兼ねて彼女と二人でハトバ西の森へ赴いた。

 

「ちょっと待ってください!! そんなことがあったなんて知りませんでしたけど!? クリスと二人!? 何の用件だったんです、コラッ!!」

「えっ!? なんでキレられてんの俺!? いや、二人っつってもアクアと、なんでか車内にいたアイリスも一緒だったし!」

 

 どうして自分が慌てて言い訳せにゃならんのだ? カズマは自分が焦っている理由も分からず、顔を赤くして噛み付いてくるめぐみんの気を逸らそうと、強引に話を進めた。

 

「と、とにかく賞金首との戦いじゃ俺もクリスも出番がないぐらいだったんだ! アイリスってば炎吐いたりビーム出したりミサイル撃ったり!!」

 

 めぐみんもアーチストのサガなのか、大破壊前の超技術には興味津々だ。特に大火力・高出力の兵器には目がなく、そういった話題への食いつきはすごい。

 ところが、今日に限ってアイリスの勇姿をいくら語り聞かせても、めぐみんの機嫌は悪くなるばかりだった。

 

「わ、わたしの爆裂の方がずっとすごいですから!! 100円ショップで売ってる材料からだってホローチャージが作れますよ!?」

「どこの部分で張り合ってるんだ、お前は!? な、なんか変だぞ、めぐみん!?」

「なな、なんだったらこの場で証明してみせましょうか!? ちょうどほら、あっちの方に大型のモンスターがいますから、新式の爆裂徹甲弾をケツに打ち込んでやりますよ!!」

「げぇ!! スクラヴードゥーじゃねえか!! 賞金を掛けたくても後から後から湧いて出てくるせいで掛けられないってハンターオフィスが匙投げてる怪物だぞ!! ウルフ抜きじゃ分が悪いっつーの!!」

 

 好戦的に嗤うめぐみんを置いておいて、カズマはアクセルを踏み込んだ。迷彩シールドの効果もあるので、気付かれる前に通り抜けられた。

 

 

 

「うわっ、ここからは徒歩かよ」

 

 荒野と平原を分断するよう配置された岩の敷居に、カズマが苦い顔をする。何者か――おそらくプロテインパレスにいるというマダムマッスルの配下が、クルマの侵入を拒む為の措置だろう。

 

「歩くしかないな、こりゃ。ダクネス、前衛頼む。殿はアクアな」

「え〜」

「ぶーたれるな。何の為にポチカーに武器を搭載したよ?」

「女の子の陰に隠れて恥ずかしくないんですか?」

「全っ然。俺、そもそも戦闘員じゃないし」

 

 カズマが飼い犬と言い合っている間に、ダクネスと一緒にアイリスが野バスを飛び出して行った。

 

「ベルゼルク・スタイリッシュ・ソード・アイリス、戦闘モードへ移行します。オーダーを」

「ほ、本当に戦えるのか?」

 

 カズマの言葉を疑うわけではないが、アイリスはダクネスから見てあまりにも華奢だ。野良の暴走アンドロイドと比べて小型かつ軽量なボディは、人間の幼女そのものだ。

 アイリスはアンドロイド的な無表情でダクネスを見上げると、両手の指をキリキリ鳴らして拳を握った。

 

「デモンストレーションをお望みですか? かしこまりました。LOVEマシン、起動。コード3213」

 

 その瞬間、アイリスの体から奇怪な音波が全周囲に放たれた。

 咄嗟に耳を塞いだのは、常人の可聴領域を超えた耳を持つダクネスとアクアだ。音は2秒程度で収まったが、超音波を聞きつけたのか何かが凄まじい勢いで迫ってくる気配がした。

 

『キシャァァァァァッ!!』

 

 顔が注射器になった鳥、それどころか注射器に羽が生えたサイバネティック、赤いメロンのような風船、アメーバなどなど。超音波はどうやら、敵モンスターを引き付けるものだったらしい。ハンターの『囮寄せ』に近い機能だ。

 アイリスは無表情なまま、向かってくるモンスターの最前線に立った。

 

「コード2211。にゃ〜〜ん」

「んっ!?」

「間違えました。2131、フレイムランチャー」

 

 両眼が怪しく輝いたアイリスは、小さな口を目一杯に広げた。そして、あのテッド・ブロイラーの炎を彷彿とさせる火炎放射を吐き出して、モンスターの群れを瞬く間に薙ぎ払ってしまった。

 

「コード2123。サンダーソード」

 

 振り返ったアイリスは、上空に逃げた飛行型モンスターと、新たに襲ってきたアリ群れを電撃のビームで撃ち貫いていく。

 ほんの数秒のうちに、周囲にはモンスターの残骸が死屍累々と積み重なっていった。

 

「こんなものでしょうか、ダクネス」

「……こうも簡単に済まされたら、怪我ができないじゃないか」

「……理解不能です」

 

 強さは認めたが、攻撃を受ける機会が減ると不満そうなダクネスを、アイリスの思考ユニットは共感することを拒否した。人間の特殊性癖を、アンドロイドが理解する日は来るのだろうか。

 

 

 

 アイリスとダクネスという強力な前衛により、戦闘とも呼べないような虐殺を行いながらカズマ達は進んだ。たまにカズマがスパナを大量に投げたり、めぐみんがグレネードをぶん投げたりはしたものの、イリットがピクニック気分になるぐらいには危険がない。

 やがて一行の前に、レンガと土で建てられた三階建てぐらいの砦が現れた。

 さすがにいきなりは突っ込まず、離れた場所からまずは様子を窺う。

 

「これがマダムマッスルの本拠地?」

「ハンターオフィスにあった情報は『プロテインパレス』という名前だけでした。それがどういった外観で、どこにあるかまでは分かっていません」

 

 めぐみんが自分のiゴーグルに移したデータを確認していると、なぜか身を乗り出したダクネスがソワソワしていた。

 

「ど、どうした!?」

 

 今にも飛び出して行きそうなダクネスにカズマが訊ねると、彼女は紅潮した潤んだ瞳で双眼鏡を差し出してくる。それを使って砦を観ると、すぐに理由が判明した。

 

 ハイレグ姿の筋肉質な女性達が、スコップで穴を掘る男達の背中を容赦なく鞭で打ち据えていたのだ。

 

「か、カジュマ、なんだあしょこは〜!? そんな素敵なご褒美をくれる場所なにょか!?」

「黙れ、変態。口からヘドロみたいな言葉を吐き出すな、アイリスの教育に悪い」

問題ありません(ノープロブレム)、カズマ。ダクネスの特殊性癖への理解はわたしの電子頭脳を著しく汚染すると判断し、彼女の存在は人語を理解するモンスターと定めています」

「はうぅぅっ!? そ、そんな目で見るな……っ!!」

 

 氷のような眼差しを受けて悶えるダクネスは、なるほど確かにモンスターかもしれない。グラップラーとは違う方向性で心を失ってしまったのだろう。

 そんなダクネスを無視して、アイリスは瞳をチカチカ光らせて偵察を続けた。

 

「それはそうと、気付きましたかカズマ? 鞭を振るう女達、全員同じ顔をしています。この距離では正確なデータが取れませんが、おそらくクローン兵士かと」

「クローン!?」

「大破壊前、わたしの開発された末期には兵士の数が足りず、クローン人間に戦闘プログラムを移植して前線に立たせていました」

「リアルスターウォーズだな……大破壊の頃ってもう、俺が生きてた時代よりよっぽど文明が進んでたんだな」

 

 カズマとアイリスが敵の配置を確認しながら攻め方を考える、そのちょっと後ろで。

 

「むぅ……」

 

 眼帯の少女がグレネードのピンを弄りながら、少年の背中を膨れっ面で見つめていた。自分でもなぜかは分からないが、カズマがアイリスと並んでいるのを見ていると何もかんもぶっ飛ばしたい衝動に駆られる。

 

「……カズマも罪な男ね」

「?」

 

 そんなめぐみんを、さらにうっとり見つめるイリットに、アクアは不気味なものを察して首を傾げた。




 人間型のLOVEマシン、アイリスちゃん。戦闘能力は「砂塵の鎖」のアルファに1行動ごとに機能を切り替えられるLOVEマシンを搭載で、2回行動可能な犬でしょうか。ただし見た目はともかくマシン系なので、パーツ破損には要注意。
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