この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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第四十三話 ふしゅるるるっ! マダムの逆襲!

「肉塊グラインダー!!」

「うぎゃあ! マダムぅーっ!!」

 

 上空から加速しつつ体当たりする、足からジェットでも出しているのかというレスラーの必殺攻撃が、砦を守るハイレグ軍団を蹴散らした。雑だが手っ取り早く、効率的な方法だ。

 ……世紀末では時間効率が良い=最高効率なのである。

 

「ふーっ」

 

 激しく地面に衝突したダクネスは、やや物足りなさげな表情で倒れたハイレグの一人へ歩み寄った。さり気なく落ちていた電撃鞭を拾いつつ、比較的元気で口の聞けそうな一人を取っ捕まえる。

 

「ううっ、酷いヤツだ! いきなり襲って来るなんて!」

「賞金首の手下だろ? それよりお前達、こんな羨ま――けしからん真似をして、なんのご褒美――目的だ?」

「なんだこいつ、気持ち悪いヤツだ……むっ? お前は女か?」

「おいコラ、質問に質問を返すな。訊いてるのは私だぞ」

「女なら、なぜ我々と違う顔をしている? どういうことだ?」

 

 会話が通じていない? ダクネスがそう疑問を覚えたところに、ハイレグ軍団に虐げられていた男達の一人が代わりに答えた。

 

「こいつらにまともな返答を期待しても無駄ですよ、姐さん。こいつらは下級のクローン兵士です。命令のみを遂行するよう、知能を意図的に下げられているんです」

「なんだと? それじゃこいつらは人間じゃなくて」

「マダムマッスルのクローンです。ヤツはこの先にある研究所を根城にして、クローン・アマゾネス軍団を造っているんです。ちなみに俺達はこの砦で石油を掘る鉱夫として誘拐されてきたトレーダーでさ」

 

 聞いてないけど自己紹介を挟んだ男は、多分助けてほしいのだろう。他の捕まっていた男達も同じようだ。

 そこへカズマ達も合流したので、ハイレグ軍団改めアマゾネス達を全員縛り上げていった。何度かカズマやめぐみんが尋問を試みるも、やはり真っ当な返答はなかった。言葉の端々から彼女達がマダムマッスルから生み出されたのは間違いなさそうだが。

 

「詳しく知りたければ本拠地に乗り込むしかないってことか」

「だな。よし!」

 

 トレーダー達には引き続き砦に待機してもらい、カズマ達は進路をプロテインパレスへ向けた。

 

 

 

 プロテインパレスという名前とは言え、西洋風の宮殿ではないだろうと予測はしていた。そして実際に目の当たりにすると……想像以上に無味乾燥な建物が待ち受けていた。

 

「大学?」

 

 損傷が激しく、植物の侵食を受けて傾いてしまったものの、それは高等教育機関の建物で間違いなさそうだった。

 

「なにかの研究所でしょうか。……ヴラド……生、……究所?」

 

 めぐみんが入り口の石碑をiゴーグルで精査するも、風化しきった文字を読み取ることは出来ない。と、そこで辛うじて読み取れた部分にアイリスが反応した。

 

「キーワード検索……ヴラド生体工学研究所。ヴラド・コングロマリットの経営していた大学兼研究所です」

「ブラドコング!? なんだその強そうな怪物の名前は!」

「違います、ダクネス。コングロマリットというのは様々な業種が一つにまとまった企業グループのことです」

 

 アイリス曰く、ヴラド・コングロマリットは揺り籠から墓場まで、医療から殺人兵器まで、と節操なしに手広く商売していたらしい。アイリスを造ったのも、そしてアイリスを発見した博物館の経営も、ヴラド・コングロマリットだそうだ。

 

「コングロマリットの総裁にして創始者であるバイアス・ヴラドは、研究者としても経営者としても超一流の天才でした。大破壊より以前、彼は世界すら動かせる巨大な富と権力を持っていました」

「それも大破壊で失われたってか? リア充もリアルで爆発したとなると笑えない――ん!?」

「ち、ちょっと待ってくださいアイリス! 今――」

 

 カズマとめぐみんが、同時に何か重大な引っ掛かりを覚えた、まさにその時だ。

 

「わきゃあぁぁぁぁぁぁーっ!!」

 

 おおよそ、女神を自称する女性が出してはいけない悲鳴に、全員一斉に振り返った。

 殿を務めていたアクアの姿がない。

 

「か、カジュマしゃんたしゅけてぇぇぇぇ〜!!」

「上か!! ……って、何だあれ!?」

 

 見上げた空には、クレーンゲームのアームがアクアを捕らえて研究所の方へと連れ去っていくところだった。

 それと同時に、研究所の入り口から新体操リボンで武装した、同じ顔をしたアマゾネス達がゾロゾロと走り寄って来る。どうやら、完全に敵に察知されてしまったらしい。

 すぐにダクネス、アイリスの前衛二人が飛び出した。

 

「エルボー乱気流!」

「コード2332!」

 

 強烈な打撃の応酬と殺人レーザーを受けたアマゾネスの先頭集団が蹴散らされた。

 後続が鋭利な刃物であった新体操リボンでダクネスを集中攻撃し、跳ね除けたダクネスが猛烈な回転力のダブルラリアットで反撃。さらに多くのアマゾネスを一撃の元に粉砕する。

 クローン兵士といえども、人型の生物が肉片となって四散し、さらにグズグズに液化していく様は非常にグロテスクだ。

 

「うっわ、同じ顔があれだけ並ぶと気持ち悪いですね。ダクネス〜、アイリス〜、さっさと全滅させちゃってくださ〜い!」

「あの二人、本当に強いな〜。カズマはスパナとか投げなくっていいの?」

「……やっぱ俺、世紀末には馴染めないのかも……」

 

 気分を悪くしているのが自分だけという事実に、カズマはちょっぴり自信を喪失しかけつつも飛んでいったアームロボを目で追った。

 建物の中へ入っていくかと思いきや、そのまま屋上を通り越し裏手へ消えていく。どうやら外観通り大学本館は使われておらず、本命はさらに奥側である様子だ。

 

「正面の建物を突っ切りますか? 回り込んでいくとなると、ちょっと面倒くさいです」

「……いや。めぐみん、()()を試してみよう。最短ルートを切り開く」

「え……えぇぇぇぇっ!? いいんですか!?」

 

 みるみる笑みを煌めかせていくめぐみんが、罵られたときのダクネスのように鼻息を荒くし、顔を紅潮させた。横目に見たイリットは、無性に嫌な予感がしてカズマを見る。

 

「カズマ、アレって何?」

「試作の兵器。危なっかしすぎてマドの周辺じゃ試せてなかったんだ」

「武器じゃなくって兵器なんだ」

 

 楽しみなような、怖いような気持ちで、イリットは準備に入っためぐみんを眺めていた。マントの下にどう収まっていたのか不明なパーツを取り出し、鮮やかな手付きで組み立てていく。

 1分程度で完成したソレは、一見するとただのロケットランチャーだが、砲弾の代わりに巨大な銛が装填されていた。

 

「発射ーっ!!」

 

 電磁力によって射出された銛は、研究所の二階と三階の中間の壁に突き刺さった。同時に、銛の柄尾部分で何かのランプがチカチカと点滅を始める。

 そこから放たれたある特殊な信号は、同質の回路を有していたアイリスにも察知される。

 

「――あ! ダクネス!!」

 

 両手をマシンガンに変形させてアマゾネスを薙ぎ払っていたアイリスが、戦闘を中断して敵集団から大きく距離を取った。

 

「ダクネス! すぐに後退してください!! この場所は危険です!!」

「くぁぁぁぁっ!! そ、その程度では私に血を流させることは出来ても、私を倒すことなど出来んぞーっ!!」

「ダクネス! おーい、ダクネスーっ!! ……駄目だこりゃ」

 

 戦いの熱に浮かされたダクネスに、アイリスの言葉は届かない。敵の攻撃で傷付くこと、自分の攻撃の反動で自分が傷つくことにばかり熱中している。恍惚と上気した頬には狂喜のみがあり、潤んで揺らめく瞳には敵の姿すらまともに映っていない。

 アンドロイドであるアイリスは、人間の「性癖」を理解不能だ。無理に理解しようとすれば電子頭脳がショートする。故に性癖に耽った人間に対して取る行動は一つ、撤退だ。

 一人だけ戻ってきたアイリスに、カズマは「うわ〜」と眉根を寄せた。

 

「アイリス、ダクネスは?」

「わたしに彼女は救えません」

「えっ、本当に置いてきちゃったんですか!? ……駄目です、もう間に合いません。惜しい人を亡くしました」

「お前ら諦めるの早いな!?」

 

 めぐみんもアイリスの報告に瞠目しつつ首を振る。カズマがツッコミを入れるのも已む無しな見切りの早さだ。

 

「ねえカズマ? 一体何をするつもり――」

 

 そうイリットが訊ねるのと、天空より神々の怒りがごとき雷霆が研究所の建物に突き刺さり、入口付近で暴れていたダクネスを巻き込んで大爆発が生じたのは、ほぼ同時の事だった。

 対象にビーコンを打ち込み、大破壊前の攻撃衛星から対地レーザービームを誘導して薙ぎ払う。それこそめぐみんが新たに目覚めた爆裂の一形態なのだ。

 

 

 

 上層部の施設がBSレーザーによって大打撃を受けている一方。プロテインパレスの中核である地下施設に損害は無く、多少揺れた程度で稼働を続けていた。

 

「こ、ここどこ……?」

 

 得体の知れない機械が低い唸り声を上げる薄暗いハンガーへ連れてこられたアクアは、球体型の格子に閉じ込められ、文字通り転がされていた。

 強制ワープが作動しない辺り、カズマからそう遠くには離れていないらしい。でも、出来るなら即座に召し寄せてもらいたい。

 

「檻に閉じ込められていると、まるで自分が世界から取り残されているような気分になるの……カズマさぁん、早く助けに来るか呼び出してよ〜……」

 

 格子を掴んで薄暗い周囲の景色を恐る恐る見回していると、カツーン、カツーンと固いブーツが床を叩く音が近付いてきた。かなりゆっくりとした歩調で、何者かは闇の奥からアクアの前に姿を現す。

 緑の髪にサングラスを着用した凛々しい顔付きの女だ。鍛えられ引き締まった肢体をレオタードで包み、ミドルグローブとレスリングブーツを着用した姿は、誰がどう見ても女子レスラー、それもヒールレスラーだった。

 賞金首マダムマッスルその人である。

 

「ふしゅるるる。久し振りアルな、女神アクア」

 

 重く響くような声で、マダムがアクアに呼び掛けた。

 このパターンは……と、普段は頭の鈍いアクアでも、今の一言でピンと来た。

 

「……えっと、私が送り出した転生者、だったりする?」

「分からないのも無理ないネ。転生した時からワタシ、変わったヨ。このクソッタレな世界で、どうにかこうにかやってきたヨ」

「それはその、なんというか……」

 

 サングラス越しでも感じられる、深い闇をはらむ視線。怒り、憎悪、憎しみなど、剥き出しのあらゆる負の感情が、アクアに向かって突き刺さっている。

 それでいて静かな口調と雰囲気が崩れないことが、マダムの不気味さに拍車を掛けていた。

 

「どうしてオ前が地上にいるかは知らないネ。でもこうして捕まえた以上、ワタシ味わタ苦痛と絶望の万分の一でもオ前に与えなきゃ気がすまないアル」

「な、なに言ってるのよ!? た、確かにこの時代に送り出したのは私だけど、転生させるって決めたのは私じゃないのよ!? てかあんたらが前世で善行も悪行も積まないから、この世界に投棄されたんじゃないの!!」

「八つ当たりとでも言いたいか? ふっ、それ何が悪いネ。ワタシ、この世界で力つけたネ。世紀末、力あるヤツが偉い。暴力だけが正義アル。だからワタシすること、全部正しいネ」

 

 落ち着き払ってはっきり口にしたマダムは、本心からそう思っているのが嫌というほど理解できた。ゴツい手がゆっくりと格子に伸びる。

 

「ひっ……!」

「安心するね。まずオ前の仲間から殺す。オ前の目の前で一人ずつ、バラバラにしてやる。特にあの、一人だけ混ざってる男、あれオ前の恋人ダロ。とびきり惨たらしく殺してヤル」

「は、はぁ!?」

 

 その勘違いは、とても心外だ。訂正しようとしたが、サングラス越しにギロリとにらまれ、言葉が出なくなってしまった。実にヘタレな女神様だった。

 

「誤魔化しても駄目ネ。オ前、さっきから何度も『カズマ、カズマ』と呼んでるヨ。ふしゅるるるっ、リア充死すべし」

 

 そういう意味で呼んでいたのではないのだが。認識の齟齬からターゲッティングされてしまったカズマに、一応心の中で謝っておくアクアであった。




※世紀末女神レナ Part3
レナ「カズマちゃん、すっかりヌレヌレねぇ♡」
カズマ♀「カエルの粘液だ! 指をワキワキさせて俺のそばに近づくなァァァ!!」
レナ「も、もう我慢出来ないか……! カズマちゃん、今日で身も心も女にしてあげるわァァァァッ♡♡♡」
カズマ♀「た、助けてぇぇぇぇぇ!!」
めぐみん「エクスプロージョン!!」
レナ「ほげーっ!!」

めぐみんorz「ふう。間一髪間に合ったみたいですね。大丈夫でしたか?」
カズマ♀「め、女神様……ポッ♡」
めぐみんorz「へっ!?」
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