この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 ぶっちゃけ今回の話が書きたかったが為だけのプロテインパレス編でした。
某博士「本当に申し訳ない」


第四十五話 割とみんな本能で生きている

「アチョーッ!!」

 

 先制攻撃を仕掛けたマダムマッスルは、空中から白鳥の構えで急降下し、ダクネスに強襲する。特に理由もなく、空中で加速する人間がこの世紀末にはままいるが、どういった技術(テクニック)なのかをカズマは知らない。

 

「ふんぬっ!!」

 

 ダクネスはマダムの飛び蹴りを回避せず、正面から胸で受け止めた。彼女が好んで着ていた西洋風の甲冑が一発で砕け散るが、本人は多少ヨロケた程度のダメージだ。ボディライン際立つ黒いアンダースーツが露わになり、カズマの視線が釘付けになる。

 続けてマダムは着地と同時に鋭い手刀を構え、ダクネスに斬り掛かった。

 

「台風チョップ!」

「なんの! 台風チョップ!!」

 

 マダムとダクネスの手刀が衝突する。激しい火花と何故か金属音が響き渡った。

 連続でぶつかる度に、ダクネスのそれはもう豊満な胸がダイナミックに弾みまくる。カズマは両手を合わせてありがたく眼福にあやかると同時に、この場にレナがいない事を激しく悔やんだ。女だらけのパーティで、思春期男子の感性に同調してくれるのは、奇妙な話だが彼女だけなのだ。

 対する仲間達の反応はそれぞれで、イリットは生暖かく見守ってくれたが、めぐみんとアイリスからは白い目を向けられてしまった。

 

「うっわ。カズマ、その表情アウトです。かなり気持ち悪いです」

「無理言うな! ダクネスは頭はアレだが体は極上なんだぞ!? なんか固いし、前に胸で受け止めてもらった時は金属に頭ぶつけたぐらいの大ダメージ喰らったけど、観賞用としてはこれ以上無い上玉だ!」

「上玉ってあんた……」

 

 グラップラーみたいな物言いに、めぐみんの視線からますます温度が引いていく。

 その一方、自分の胸に両手を当てたアイリスは、しばし黙って瞠目していた。

 

「くっ! 肉体の再整形プログラムが存在しません……っ」

「何をしようとしてるんですか、アイリス!?」

「大きくて豊かで柔らかいボディにチェンジしようかと。統計上、あのようなボディラインこそ男性からの『愛』を最も強く受けられるハズなのに……!」

「愛といっても『性愛』ですよ?」

 

 ちなみに、もし本当にアイリスがダクネスやウィズ級のボンッ! キュッ! ボーンッ! にトランスフォームした場合、真っ先に粉をかけるのは奥手な純情シャイボーイではなく、ここにはいない肉食金髪レズビッチである。

 

 などとやっている間に、マダムとダクネスは何発目かのエルボーを打ち合わせ、余波だけでリングロープが千切れ飛ぶほどの大接戦を繰り広げていた。

 ダクネスの下半身も鎧が弾け飛び、筋肉が付きながらも丸みを失っていない、安産型の尻がアンダースーツの素地にハッキリと浮かぶ。

 高レベルレスラーの戦闘力は下手なクルマをも凌駕する。主砲の炸裂にも匹敵する爆発的なエネルギー同士がぶつかり合い、リングを中心に異常な熱が発生していた。

 

「やるアルな、オ前!」

「貴様もな! ここまで手こずったのは四天王のサル以来だ!!」

「サルと同列にするアルか!!」

 

 ガションと電車が連結したのかという重低音を鳴らし、互いの肩がガッツリとロックアップした。ここからは単純な力勝負となる。

 激しかった先程までのやり取りとは打って変わって、静かな闘気が渦巻いていた。一見して硬直状態だが、凄まじいパワーがせめぎ合っていることは、滴る汗が瞬時に蒸発しているのを見れば一目瞭然だろう。

 

「く……っ!!」

 

 徐々にダクネスの表情が歪んでいき(ついでに頬を赤く染め)、ジリジリと膝が下がっていく。腕力においてはマダムに分があるようだ。

 

「ハーッ!!」

「ぐあっ!」

 

 マダムが怯んだダクネスの顔面を、容赦なく膝で突き上げた。組み合った腕が外れて、ダクネスは大きく仰け反った。

 追撃の魔手は続く。マダムは素早くダクネスを引き寄せて左腕のヘッドロックを掛け、無防備な脳天を右肘で何度も殴打する。

 

「アイヤー!!」

「ぐあっ! ふぐぅっ!!」

 

 ダクネスの頭頂部からは血が滴り、明るい金髪が赤く染まる。

 この時、ヘッドロックから抜け出そうと藻掻いていたダクネスは、張りのある桃尻を大きく突き出すようにして踏ん張っていた。当然そんな光景を見逃すなど出来ず、カズマはリングサイドに場所を移動してまでダイナミックに揺れる尻と胸を鑑賞していた。

 

「せいっ」

「いっでぇ!!」

 

 さすがに空気を読めと、めぐみんの腰が入った強烈なローキックによる制裁が決まった。

 

「いい加減にしてください! さすがに引きますよ、カズマ!」

「す、すまん……けどダクネス、まだ大丈夫そうだぞ? ほら」

 

 と、カズマがダクネスの尻を指差すので、めぐみんも渋々とリング上を観る。そして「ありえない」とばかりに顔を引きつらせた。

 

「ハイヤー! アイヤー!」

「くぅ! ふんっ! くっ!」

 

 エルボーを受け続けているダクネスは、よくよく観察すると鼻息を荒くして、苦悶どころか悦楽に耽っている。というかいつの間にやら両足を踏ん張るどころか内腿をすり合わせ、何かを堪えるように艶めかしくくねらせていた。

 エロい。エロいが、それ以上に悍ましいまでの被虐趣味である。

 

「はあ、はあ、い、石頭め!」

 

 とうとうマダムの方が根負けし、大きく息を上げてしまった。そうしてもう満足いく攻撃を受けられないとみるや、内股気味だったダクネスは瞬時に深く腰を落とした。

 バランスを崩すマダムの腰に腕を回し、強靭な腰を活かして勢いよく仰け反る。

 全身で美しい弧を描き、局所的な地震を起こしてダクネスのバックドロップが決まった。それも受け身を取れないよう、脳天から垂直に落として。興業ではやっちゃ駄目なヤツである。

 

「アイヤーッ!!」

 

 リングの一部を陥没させて、マダムが脳天を押さえてのたうち回る。

 そんな大きな隙を見逃すはずもなく、ダクネスがマダムの両足首をむんずと掴んだ。

 

「う、おおおおおおーっ!!」

 

 しっかりと腰を入れて持ち上げ、勢いよく回転を始める。

 回る速度は瞬く間に上昇し、風圧がリングサイドのカズマ達すら吹き飛ばそうとする。竜巻がごとき破壊の渦だ。

 

「ふんぬっ!!」

 

 ぶん投げられたマダムは気をつけの姿勢で観客席に突き刺さった。微動だにしないアマゾネスを大勢巻き込み、爆発のような衝撃が建物自体をド派手に揺らす。

 

「ふっ。リングアウトだな」

 

 ニヤリとワイルドなキメ顔を作ったダクネスだが、血染めでそういう顔をされるとものすごく怖い。

 

「イヤァーッ!!」

 

 しかし敵もさるもの。マダムはプロテインを全身に纏わせながら、気合で瓦礫を吹き飛ばして戦線に復帰。恐ろしい憤怒の表情でまっすぐダクネスを睨みつける。

 

「ふしゅるるるっ!! まだだ! まだ終わっていない!! アイヤーッ!!」

 

 一瞬、マダムの全身が膨れ上がったと錯覚するほどの気迫で、今度は自分からダクネス目掛けて自分を射出。ミサイルのようなフライングクロスチョップで反撃を試みた。

 

「甘いッ!!」

 

 それを頭突きで受け止め、リングに叩き落とすダクネスも相応に人間を辞めている。

 

「そんなものか!? さあ立て! 立って戦え!! 私はまだ満足していないぞッ!!」

「あぐ……コノ、なんてヤツだ……!!」

 

 立ち上がったマダムではあるが、痛みが快楽と力に変わるダクネスとは違い、怪我と疲労で足元がフラついている。ひび割れたサングラスの下からは内側から赤く光る眼球が覗いており、彼女がもう純粋な人間でないことを物語っていた。

 

 ふとカズマは、女神が捕まった球体の檻を見上げた。デカデカと取り付けられたタイマーは1分を切っている。いい加減に助けないと危なそうだ。黙ってジトーっとこっちを見つめる駄犬も、本当に助けてもらえるのか不安になっているようだ。

 なお、アクアが静かなのはカズマが服従スペルで黙らせているからだ。声を出されると、こっちの作戦が相手にバレてしまいかねない。

 

「そろそろだな。準備はいいか、イリット?」

「うーんと……うん。()()なら大丈夫だわ」

 

 リングサイドから十歩ほど下がったイリットは、ショットガンではなく銃身の長いライフルを構え、球体檻を吊るすクレーンに照準を合わせた。

 次いでめぐみんはいつもの投擲武器を複数構えて、準備OKだと頷いた。

 爆発までの時間を確認し、カズマもセコンドの位置で待機した。今度はマダムと四つ手に組み、互角の押し相撲を演じるダクネスに叫ぶ。

 

「ダクネス!!」

「むっ! そろそろか」

 

 事前の打ち合わせを思い出したようで、ダクネスは四つ手状態からまたもやマダムに投げっぱなしスープレックスを仕掛けた。背中を叩きつける寸前で両足で受け身を取られて不発に終わったものの、これは間合いを離したいが為の一手。

 ロープが無くなったリングサイドから飛び降りたダクネスは、カズマとともに大急ぎでリングから離れていく。

 

「むむむっ! なにする気か!!」

「ふっ! 吐き出せ!!」

 

 カズマが命じるや、アクアが吐き出す大量の水が檻の中から凄まじい濁流となってリングに向かって降り注ぐ。ほぼ真下にいたマダムが、なすすべもなく水に呑まれた。

 と同時に、イリットがクレーンを第一射にて見事に破壊。檻は大水を撒き散らしながら落下していく。

 そこでめぐみんが冷凍フリーズビールを流れ落ちる水に投げ入れ、アイリスが撃ち抜いて中身をばら撒く。謎の技術によって作られた氷結液が、瞬時にして大量の水を氷の塊へ変貌させる。

 

「ノォォォォーッ!!」

 

 リング上に完成した巨大な氷の柱は、檻がマダムに激突する寸前という絶妙な位置で完成した。哀れにも氷の中に閉じ込められてしまったマダムのちょうど目の前に、爆発までの時間を知らせるタイマーが来た形となる。

 

「さ、さ、さぶいぃぃぃぃ〜!!」

「って、まだ生きてんのかよ!? まあいいや、アクア戻れ!!」

 

 マダムの生命力に驚嘆しつつも、残り2秒のタイミングで観客席まで下がったカズマは、アクアを手元にワープさせた。吐き出した直後なのでげっそりしていて、おまけに半分ぐらい凍っていたので、容赦なくエナジー注射をぶっ刺してやる。

 

「ひぐぅ!?」

 

 尻に刺したのがマズかったか、すごい悲鳴を上げながらアクアの体が跳ね上がったが、そんなことより爆発に備えて携帯バリアを二人分作動させる。イリットやめぐみんも、とっくにバリアを展開済みだ。

 檻が大爆発し、氷漬けのマダムごとリング周辺を跡形もなく吹き飛ばしたのは、まさにそのタイミングでのことだった。

 

「うをぉっ!? すっげえ威力だな……っ!!」

 

 想像していたよりも激しい火力に、結構頑丈なハズの携帯バリアが大きく揺らぎ、僅かに割り入ってきた熱風に頬が焼かれた。これでは天井で爆発していたとしても、相当な被害が出ていたのではないだろうか。

 現に観客席の二段目辺りにいたアマゾネス達が、微動だにしないままバラバラに吹き飛ばされているほどだ。三段目付近も熱でドロドロ溶け出している。

 

「……アクア、やっぱ俺、世紀末向いてないかも……」

「そんなことないわよ。あんた、多分誰よりもこの世界に馴染んでる転生者だわ……」

 

 グロテスクな光景に顔が真っ青なカズマを、復活したアクアはどういう風の吹き回しか、背中を撫でて労ったのだった。




 ダクネスで女子プロレスが書きたかった。ただそれだけだったんだ……。

転生マダムマッスル
 元女子高生。異世界モノが好きだったので転生できると聞いた時は喜んだが、蓋を開けたらごらんの有様だよ。むしろ転生後にやってることはGOLAN(北斗の拳)だよ。キャラのイメージは、デッドライジングに出てきそうなボス。
 転生特典については次回。
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