この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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【タイトルだけ考えてみたシリーズ】
■ありふれたメタルマックスは世界最強
→世紀末に召喚されてしまったクラスメイト一同が金輪際リゾートする
■メタルマックスの勇者の成り上がり
→腕に戦車が付いてる勇者が自由すぎる
■メタルオーバーマックスロード
→ナザリックに賞金が掛かって頭のおかしいハンターがなだれ込んでくる
■僕のメタルマックスアカデミア
→個性『テッド・ブロイラー』とかなヴィランが暴れてる


第四十六話 変態に持たせてはいけないタイプの道具

 最初に異変に気付いたのはめぐみんだった。

 

「あ」

「どうした?」

「マダムマッスルのステータスが『defeat(撃破)』になっていません。あいつ、まだ生きています」

「なんだって!?」

 

 カズマは未だ燃え盛るリング跡を睨みつけた。何しろ賞金は「DEAD Only」でしか支払われない。きちんとトドメまで刺したことをiゴーグルなどで記録し、初めて撃破と認められる。ファンタジー世界で例えるなら冒険者カード的なシステムだ。

 

「任せろ。ふんっ!!」

 

 ダクネスが豪腕の一振りで炎を吹き消してみせる。やっぱコイツ人間じゃねえ、と内心でビビリ散らしながら、カズマ達はリング跡を取り囲むように移動した。

 ここに来てもアマゾネス達は微動だにせず、じっと佇んだままだ。一部のアマゾネスが形状崩壊している以外に動きはなく、もしかすると命令がなければ行動できないのかもしれない。

 

「穴が空いてますね」

「爆発でっていうか、最初からリングの下に通路を隠してた感じ? カズマ、どうするの?」

 

 めぐみんとイリットは、手投げ爆弾を片手に穴を覗き込んでいた。爆破する気満々なのはいいとして、めぐみんはともかくなぜイリットまでガンギマリなのだろうか。

 

「……じゃあアクアとアイリス、俺と一緒に来てくれ。残りは帰り道の確保を。クローンが動き出した時の対処もよろしく」

 

 珍しく自分から虎穴に飛び込もうとするカズマは、前にアイリス、後ろにアクアの布陣で床にぽっかり開いた隠し通路を下っていった。

 外見年齢12歳のアイリスを矢面に立てせる構図は非常に情けないが、彼女は高い戦闘能力を持つアンドロイドだ。何もおかしな点はない。

 仮にレーザートラップに対する盾としてアイリスを突きだそうとも。通路の先でボロボロになったマダムマッスルを発見したので、咄嗟にアイリスの陰に逃げ込もうとも。カズマの心には一片の曇りも迷いも後悔も無いのであった。

 

「ふぅーっ! ふぅーっ! お、追いついて……来たアルか……」

「観念しろ、マダムマッスル! だが死ぬ前に、俺とこの駄犬を恋仲だとか抜かしたことをキッチリ訂正させてもらおう!! こいつは俺の飼い犬だ! それ以上でも以外でもない!!」

「ここまで来たのはそれ言う為!? ていうか待ちなさいよ、それだと私がフラれたみたいになってるんですけど!?」

 

 心外なのはアクアも同じで、残り銃弾一発もあれば首が取れる賞金首を他所に、飼い主と犬が睨み合う。無表情なアイリスからも呆れた雰囲気が漂った。

 

「フッ、フハハハハハハッ!!」

 

 それがよほど可笑しかったのか、マダムマッスルは血を吐きながら大声で笑う。鬼気迫る表情に、カズマだけでなくアクアまでもがアイリスの背後で身を縮こませる。

 

「犬カ! そりゃイイネ!! 女神様が畜生に堕ちるとは!! ゲホッ、ゲホッ」

「やっぱこいつも転生者だったのかよ」

「カズマ、転生者とは?」

「ああ。それはな――」

 

 アイリスは照準を外さないまま訊いてくるので、カズマが簡単に説明する。

 

「死後に第二の人生、ですか?」

 

 背中を向けたままだが、アンドロイドであるアイリスからハッキリとした困惑が伝わってきた。ついでにアクアが服の裾を掴んでくるが、こっちは無視する。

 

「なんでわざわざ? カズマ、人間は死ねば楽になるのではないのですか?」

「そこんところはこの水色に訊いてくれ。俺だって世紀末になんて転生したくなかったっつうの」

「当たり前アルよ。誰が好き好んでこんな地獄に……ガフっ」

 

 限界の近いマダムが、ついに片膝を付いた。地面に溜まった血は黒く、そこに白い謎の液体――おそらく電解質液が混じっている。純粋な生身の身体ではないようだ。

 

「賞金首? フン、悪事だってそりゃ働くネ。こんな世界に放り出された小娘一人、誰も守っちゃくれないヨ。女神アクア、お前がやってきた事は転生じゃない、ただの処刑アル! ワタシ達をただただ苦しめただけアル!」

「かっ、勝手なこと言わないでよ!! 私だって好きでこんな世界の担当なんてしてないもの!! だいたい……だ、だいたい……っ」

 

 言葉の途中で突っかかったまま、続く言葉は出なかった。

 服の裾を引っ張る力が強まって、さすがに変に思ったカズマがチラリと振り向く。アクアは歯を食いしばり、泣くのを必死に堪えていた。

 お前が泣くのかよ、とツッコむ寸前で飲み込んだカズマは、心の中で「しょうがねぇな」と呟いて、アクアを下がらせてマダムに向き直った。

 

「クククッ、やはりどう言い繕おうと女神が大切か」

「違げーよバカ。こいつは俺のペットなの。泣かして良いのは俺だけ。それにさっきから聞いてれば自分が悪党になったのをアクアのせいみたいに言ってるけど、道を踏み外したのはお前の意思だろーが!」

「なんだと!?」

 

 カズマはさり気なく、アイリスにいつでもマダムを撃ち殺せるよう待機させつつ、ビシッと自分を親指で差した。

 

「俺を見てみろ! 転生してから結構好き勝手やってるけどなぁ! 賞金が掛かるどころか今じゃ一角のハンターだぜ!!」

「そ……っ、それはお前が状況に恵まれてただけネ!」

「そーかもしれねーが、ミツルギって男は結構酷い目に遭っても真人間を保ってんだよ! お前はどうだ? 地下に籠っていい歳してクローン人間(お人形さん)遊びか? 情けねえな、おい! 前世の頃から引きこもりのニートだったんじゃね、お前? ……うぅ」

 

 自分の言葉で心にダメージを負いながらも、カズマはさらに捲し立てた。

 

「つーか『アイヤーッ』とか『アチョー』ってお前どこ出身だよ!? そんなコッテコテなキャラ付けとか世紀末舐めんな! 俺の知ってる大悪党はモヒカン投げてくるんだぞ!」

()()を基準にするのやめるネ!! この喋りは搭載した補助脳がバグってたせいアル! ワタシだってもっと普通に喋りたいヨ!」

「じゃあ喋れるように修理したか? 自分で出来ねえなら誰かに聞いたか? 世紀末だって人は助け合って生きてんだよ!! 外との関係を自分から絶って、攫った人を奴隷にする前に、一度でも誰かと助け合おうって考えたかよ!? 出来るわけねーわな、コミュ症のヒキニートなんかに……うぅぅっ」

「さっきから何を自滅してるネ、オ前!?」

「カズマの言うことは正しいです、マダムマッスル」

 

 自分で自分を打ちのめしてしまったカズマに代わって、今度はアイリスが言葉の刃を突きつけた。

 

「機能停止して放置されたわたしを、カズマは修理してくれました。その技術を教えてくださったのはマドの町の修理工ですし、彼がカズマに技術を教えたのもカズマが町のために働いたからです。あなたのように自分本位に他者を傷つけるような人間に、わたしの仲間を批難する資格はありません」

「で、でもワタシは――」

「黙れ、悪党。前世がどうだろうと、この世界であなたが犯した罪には何の因果もありません。そして、わたし達はハンターです。同情よりも、その首に掛かった賞金を優先します。覚悟なさい、マダムマッスル」

 

 アイリスの両手がエネルギーをまとって光輝く。接近戦用の武器で確実に仕留めるつもりだ。その気になれば一秒と掛けずにマダムの首を刎ねるだろう。

 

「うぐっ……な、ならせめて、せめて次はもっとマシな世界に転生させるネ!」

「……ごめん、それ無理」

「は――」

 

 その場から一歩も動かず、アイリスが左腕を横一文字に振り払った。五指から放たれたビームは、マダムの背後にあった機械には傷一つつけない精密さで、彼女の肉体を六分割にせしめた。

 部品と生体組織、血と電解質とを撒き散らし崩れ落ちたマダムだが、アイリスの足元に転がってきた首から上はまだ、辛うじてだが活動していた。

 なので、どこか上の空で呟くようなアクアの宣告も、最後の最期まで聞く羽目になった。

 

「転生させたのは前世で積んでこなかった徳や業をこっちで積む為だから、この世界で悪行を重ねたあなたの向かう先は地獄しかない」

「な――」

「でも安心して? 本物の地獄は、この世界よりずっとまともだから」

 

 何の救いにもならない言葉を(はなむけ)に、残った頭部をさらに細かく寸断され、マダムマッスルは今度こそ撃破された。

 

 

 

 マダムが逃げた先にあったのは、タンクローリーの荷台を二つほど強引に連結したような、大型の機械だった。

 

「解析します。5分ほどお待ちを」

 

 そう言って、アイリスがコンソールのコネクタに指を突き刺した。瞳の奥を点滅させ、虚空を見つめる姿はちょっぴり不気味だ。

 

「……ねえ、カズマ」

「なんだよ。つーかいい加減に服を放せ」

 

 ウエストが締まるぐらいに生地が引っ張られているので、そろそろ本気で苦しくなってきた。

 

「……カズマはさ、私のこと、恨んでる?」

「別に? いいから放せ」

「うん……」

 

 ようやく解放され、ほっと一息吐いたのも束の間。今度は背後から前触れもなく抱きつかれた。

 

「はぁっ!? おま――」

 

 細腕とは思えない怪力やら、外見だけは良いと思っていた柔らかさやらで、カズマの頭が真っ白になる。そこへ追い打ちを掛けるよう、背中に顔を埋めたまま、囁くようにアクアは伝えてきた。

 

「――ありがとう」

「……おう」

 

 何に対する礼なのか分からないが、カズマはぶっきらぼうに返すのが精一杯だ。背中越しに、飼い犬相手に激しくなってしまった動悸を聞かれないか不安に駆られながらも、振りほどくことも出来ないのだった。

 

「これも『愛』なのですね」

「あ、アイリス!? 解析は終わったのか!!」

 

 不穏なセリフとともに戻ってきたアイリスだが、甘いのにどこか重い空気を払拭したいカズマは、とにかく話題を変えてもらいたくて縋り付いた。

 なんとなく生暖かい視線を向けながら、アイリスは機械について分かったことを掻い摘んで説明していく。

 

「この地下施設入り口から続いていたベルトコンベアの大本がこれです。やはり旧型のクローン人間プラントでした」

「じゃあ、アマゾネスはこれで?」

「はい。ただイリットが求めていた機能はありません。人工授精などではなく、飽くまでもサンプルとして収集したDNAデータをプロテインに転写するだけです。人類の子孫としては機能しません」

「……てことは、手に入ったのはマダムマッスルの首だけか。十分っちゃ十分だけど――」

 

 呑気に戦利品を漁っていられたのはそこまでだった。

 カズマ達が来た方向、リングに続いている隠し通路の向こうから、いくつもの爆発音が轟いたのだ。何度も実験に付き合ってきたカズマだから分かる、めぐみんの爆裂弾だ。

 

「な、なになになにっ!?」

 

 アクアが慌てながらも、真っ先にポチカーを駆ってバルカン砲を向ける姿は意外だったが、通路の向こうから大慌てで走ってきたのは、退路の確保に残してきた仲間達だった。

 

「あなた達!?」

「アクア! カズマ達もいるな!! 大変なことになった!」

 

 凄まじい気迫で先頭切っていたダクネスは、どんなピンチも快楽に変える彼女には似つかわしくないぐらい焦燥していた。

 

「クローン達が突然ドロドロに崩れて、一塊になって襲って来たんです!! 溶けたプロテインの津波ですよ!!」

「銃も爆弾も効果が薄いの! 通路を壊して足止めしたけど、急いで逃げないとわたし達も呑み込まれるわ!」

 

 めぐみんとイリットが簡潔に状況を説明した直後、目の前にあった装置のタンクが、内側からズガンと振動し、一部がひしゃげて盛り上がった。内部から相当な衝撃が与えられたのだろう。

 

「なるほど。オリジネイターが死亡したことで、クローン細胞のシンクロニシティが切れたのでしょう。早い話が暴走です。おそらく、養分となる生体細胞を求めているのでしょう」

 

 こんな時でも冷静なのはアンドロイドの美点であり、欠点だ。淡々と状況のヤバさを伝えられると、人間返ってパニックになる。

 

「どどどどうすんだよ!?」

「迎撃よりも撤退を推奨します」

「どこから!?」

「――緊急アラート。着弾まで3、2、1――」

「えっ、何言って――」

 

 そこで再びの大振撃が走る。今度は隠し通路とは真逆の方からだ。直上の施設でいうなら、ちょうど倒壊させた本館の位置だろうか。

 崩落した天井の瓦礫がタンクを押しつぶし、内部からピンクパープルの蠢くプロテインが漏れ出すが、同時に地下空間に陽の光が差し込んでくる。

 陽光を背にして現れたのは、衛星レーザーの誘導機を肩に担ぐ、凛々しい金髪の美少女ハンター。

 

「おっ待たせ〜♪ みんなのリーダー、レナちゃん参上ぉ!」

 

 実に良いタイミングで味方の退路を切り拓いたのは、イスラポルトで箱詰めの刑に処されていたハズのレナであった。

 仲間達にドヤ顔を決めたレナは、用済みになった誘導機を投げ捨てると、早速イリットへと駆け寄った。

 

「イリット〜♡ 無事でよかった〜♡ 怪我してない? 怖くなかった? ちゅっ♡」

「やぁん♡ みんなの前よ、レナ? そういうのは――」

「いや、そういうのは脱出してからにしてくれませんかねぇ!? もうプロテインがそこまで来てるんですけど!?」

 

 めぐみん渾身のツッコミで我に返った百合バカップルも含めて脱出後、プロテインパレスはめぐみんが持ち込んでいたありったけの火薬によって地上から完全に消滅したのだった。




 ……ちなみにダクネスとカズマにはフラグ立っていません。
 次回からデビルアイランド決戦編です。
 そして……申し訳ありません。デスクルスは(本編では)やりません!
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