この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

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 カリョシップと同じく、オリジナルの兵器がちょくちょく出てきます。
 それとすごい今さらですけど、アクアが犬だったり浄水器だったり転生者から罵倒されたりしてても作者はアクア様アンチじゃありません。イジメたいだけです。勘違いしないでください。だからアクシズ教徒は石投げてこないで!


第四十九話 追撃のカリョストロ!

 足を止めているカリョシップの真ん前を、ネメシス号が横切っていく。

 被弾面積も増え、大きな隙を晒しているようであったが、こっちに乗り込んでいるのは百戦錬磨のハンター達だ。

 

「おらおらァ!! 砲弾は一発も通さねえぜェー!!」

「『人間パトリオット』をナメんじゃねぇぇぇーっ!!」

 

 名もなきモブソルジャーの奮闘により、脇腹に一発でも喰らえば致命傷な徹甲弾やホローチャージは元より、通常砲弾の一発すらネメシス号には届かない。

 

『ぐぬぬぬっ! ハンターどもめ、小癪な!! ならば魚雷弾、用意!』

 

 カリョシップの船底に搭載された多連装ランチャーが一斉に起動。それはU−シャークとの戦いでも活躍した、あのシーハンターと同種の武装だ。水上戦においてはこれ以上の兵器はない。

 何より恐ろしいのは、水中を進む兵器には迎撃装置の効果が半減してしまうことだ。ソルジャー達の射撃は言わずもがな、水に阻まれ魚雷まで到達できない。

 

『魚雷、発射!!』

 

 ネメシス号にとっては死神にも等しい砲撃が牙を剥く。

 だが忘れてはならない。ネメシス号には()()本物の女神が乗り込んでいるのだ。

 ……扱いは犬だが。

 

「ポチマリン、起動!!」

 

 冗談みたいな犬用の水中戦装備を、本来のバイオニックドック以上に使いこなしながら、アクアは向かってくる魚雷を次から次に撃沈していく。掘り出し物屋から30,000Gという超高額で買い付けた一点物だった。

 水の女神故に水中戦に秀でているのかもしれないが、同じぐらい何かが間違ってるとも思えてくる。

 

『なんだと!? 水中迎撃システムだとでもいうのか……!』

 

 カリョストロが明らかに狼狽える。さっきからマイクを切っていないので、声が全部大音量で垂れ流しだった。

 

「ハーッハッハッ!! 驚きましたか、カリョストロ!! 所詮はチンピラとモヒカンの寄せ集めでしかないグラップラーと違って、こちとら多芸多才なモンスターハンターなんですよ!!」

 

 めぐみんもマイク片手に大音量の挑発で応えている。目立ちたがりなのは紅魔族の習性なのだ。

 その間にも魚雷の第二射がアクアによって蹴散らされ、ネメシス号も無傷で射角を通り過ぎた。

 

『ぐぬぬぬっ! 船首回頭!! 奴らを追え!!』

 

 カリョシップがネメシス号の背後にピタリと付く。だが、この状態からカリョシップから有効的な攻撃はほぼ不可能と言えた。

 まず横から撃つのと後方から撃つのでは単純に被弾面積は小さくなるし、ネメシス号の方が船速においてちょっぴりでも上回っていると、艦砲射撃の命中率も極めて落ちる。逃げる相手に自分も走りながらボールをぶつけるのを想像すると、難しさが分かるだろう。

 ただし。射程距離が長く、ネメシス号の船速を余裕で上回り、かつ直線に弾を放てる兵器があるなら話は別だ。

 

『カリョブラスター、展開!!』

 

 カリョストロの号令が掛かると、カリョシップの船首が縦に割れ、特異な形状の砲身が迫り出してくる。船体とほぼ同じという恐ろしい長さの、上下に並んだ二本の金属棒である。

 大破壊の頃に実戦投入された、電磁加速によって超速で砲弾を放つレールガンだ。金属棒はそれぞれプラスとマイナスの電極で、その間を電気抵抗の低い砲弾を通すことで……詳しくはWikipediaでも読んでほしい。

 ネメシス号のハンター達も、兵器の正体は分からずとも危ない雰囲気だけはビンビン感じ取っていた。

 

 

 

 

「とおっ!!」

 

 格好つけてレールガン――カリョブラスターの砲身に飛び降りたカリョストロは、根本の砲座までこれまた軽やかな足取りで向かい、わざわざマントを翻して席に着く。

 

「カリョストロチャージ!!」

 

 叫ぶ必要があるかは不明だが、体内にあるダイナモとカリョブラスターを直結させたカリョストロは、発射に必要な電磁力をチャージし始める。

 レールガンによる砲撃には大量の電力が必要だ。しかし船から電力を得ようとするとエンジンに多大な負荷が掛かるし、発電機を積み込めば機動力が損なわれる。それをカバーするには、カリョストロフラッシュに用いる電気エネルギーを転用するのが一番だ。

 

「チャージ完了! 沈むがいい、ハンターどもッ!! カリョストロ、ブラスターーーーッ!!」

 

 収束された電気が電磁場を生み、フワリと浮き上がった砲弾を瞬時に超音速まで加速させる。直撃すれば船尾から船首まで悠々と貫き、一撃のもとに撃沈するだろう威力だ。

 だが必殺の砲弾は、大きく右斜に進路をずらしていたネメシス号を捉えることは出来なかった。船体をほんの僅かに掠め、被害は超音速衝撃波で大きく揺らしただけに留まる。

 そんじょそこらの船であればこれだけでも十分に撃沈していただろうが、ネメシス号は転生者ミツルギの怨念によって造られた、一種の怪物だ。中で色んなものが左方向に押し付けられたが、直撃でないなら問題などあるはずもない。

 

「どこまでも生意気なッ!! ……だが、どうやって避けたのだ?」

 

 気の所為でなければ、ネメシス号はレールガンが放たれる前から回避運動に入っていた。撃ってから回避運動に入っては間に合わないのだから当然だが、人間が銃弾を回避するのとは訳が違う。

 

「もしや、テッド・ブロイラーが言っていた転生者の特典(チート)か!? 未来予知でもしたというのか!?」

 

 前世やら神による転生やら眉唾だと思っていたが、他でもないテッド・ブロイラーからの忠告だ。敵の中に未知の異能者がいるのやも知れぬと、カリョストロの中で疑念と警戒心が首をもたげる。

 

「ふん。だとしても、そう何度も無茶な回避など出来まい!! 次弾装填、急げ!!」

 

 苛立ちを隠さないカリョストロの檄に、船員である上級グラップラー達が慌てて作業に取り掛かる。スカンクスのように衝動や感情で部下を殺さないカリョストロだが、代わりに無能な者には()()()の材料という、死んだ方がマシな最期が待っている。

 装填に費やす時間の試算は3分。実作業時間は3分2秒。及第点か、と内心つまらないと感じつつ、再びのチャージに入った。

 

「次は回避などさせん!! カリョストロ、チャージ!!」

 

 標的が次も同じく右方向へ回避行動を取るのは分かっていた。下手に左方向へ舵を切れば減速する羽目に陥り、イタズラに被弾率を上げるだけだからだ。

 かといって右に逃げれば安全ということもなく、ネメシス号は初撃で受けた衝撃波から、まだ完全に立ち直れていないのだ。

 

「船での戦いが……いや、船と船の戦いが経験不足だったな、ハンターども! 一度付いてしまった船の傾きはな、数分程度で元には戻らないのだよ!!」

 

 故に、ネメシス号は一度目ほど大きな回避行動が取れない。ならば次の一射を外す道理は無い! カリョストロはそう確信し、無警戒にチャージを終えた。

 

「今度こそくたばるがいい! カリョ――」

 

 砲座の銃爪を弾こうとしたカリョストロの視界を、小さな何かが通り過ぎる。

 レールガンの砲身へ向かって山なりに落ちていくそれに刻まれたマークは、見間違えようもない。めぐみん印の爆裂グレネードであった。

 

 カリョストロが咄嗟の判断で砲身を犠牲に電磁バリヤを展開、チャージしていた電気エネルギーがレールガンを中心に球場のフィールドを形成してグレネードを弾き飛ばす。

 判断の素早さに邪魔され、爆発で巻き込めたのは長大な砲身だけで船体はほぼ無傷だ。だが攻撃手段さえ奪ってしまえば、ネメシス号を歯噛みしながら見送るしかない。

 

「だけど、そこで止めてあげるほど!」

「!?」

「世紀末の女神様は優しくないのよ!!」

 

 大破し、湖中へ落ちていくレールガンの横をすり抜けるのは、ポチマリン脱ぎ捨てた一匹の猟犬だ。

 ぐっしょり濡れた水色の髪が顔に張り付いた姿は、女神というより船幽霊だが。

 

「もう一ぱぁぁぁぁぁぁーっつ!!」

 

 おおよそ屋内で使ってはいけない爆発物を、問答無用で投げつけたアクアは、直後に量子ワープでさっさとカズマの元へ帰還してしまう。

 パニックに陥る以外になにも出来ず、アクアが消えた0・5秒後、カリョシップは哀れにも湖の藻屑と成り果てた。

 

 

 

『よーっし! やったわ、カズマ!! 敵船が思っクソ傾いてるわ!!』

『わっはっはっはっは!! どんなもんですか元師匠!! これが今のわたしの爆裂ですよザマーミロ変な髪型ーっ!!』

 

 エレファント号の通信機に、見た目は可愛いのにテンションがオヤジな仲間達からの報告が届く。カズマがチラリと隣を見れば、びしょ濡れ女神がドヤ顔でサムズアップしていた。

 

「まずはワンダウンね! いや〜、体張った甲斐があったわ! 船を沈めたのもだけど、最初に大砲の発射タイミングを伝えたのも超ファインプレーよね?」

「まあな。けど、本番はこの後だ。気を抜くなよ?」

「まっかせなさい!」

 

 尻尾があったら千切れんばかりに振っていそうなアクアは、胸を叩いて自信を露わにする。と同時に、レスラーではないけどストレッチして身体を解し、次なる戦い(ラウンド)に備えて温めていた。

 ちょっと活躍するとすぐ有頂天になる悪癖が消えている。モニター越しにデビルアイランド睨む横顔は無駄にキリッとしていて油断がない。

 こいつ、こんな真面目な性格してたっけ?

 

「……なあ。お前、本当にアクア?」

「ちょっと、それどういう意味よ?」

「なんつーか……キャラ違くないかって……?」

「ふっ。一晩もあれば女は変わるのよ」

「だからそういうセリフを言うキャラじゃ……あ、ひょっとしてレナに――」

「ちーがーいーまーすーっ!!」

 

 操縦するエレファント号の車内が決戦前とは思えぬ緩い雰囲気に染まる最中、ネメシス号はデビルアイランドのドッグへ近づきつつあった。




世紀末アクア
職業:犬
 ご存知駄女神……だったのが、覚悟を決めて覚醒した超生物。少しでも世紀末の世界が良くなるよう自分なりに考えて行動し、分からなかったらカズマに聞く、やる気スイッチが入った状態。ただし頭脳がマヌケは相変わらず。
 なおカズマに対するフラグは別に立っていない。「上官」や「指揮官」として信頼を寄せるようになっただけ。パラメータで表わすと「忠義 96/100」ぐらいか。

ポチマリン
 本作オリジナルのポチ装備。黄色い犬用潜水艇。水中を75ノットという現代の平均的な魚雷並みの速度で遊泳し、小回りも利いて火力も高い。スパロボで例えるならゲッターポセイドン級。

カリョブラスター
 格好つけてるけどレールガンはMM2Rにも存在する(レイルガン表記)。迎撃されず攻撃力もそれなりに高いが、長大な砲身が必要故か重い。
 カリョブラスターもカリョシップの船体とほぼ同等の長さの砲身が必要。むしろカリョシップとはカリョブラスターを運用する為の船と言って過言ではなかった。

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