この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 デビルアイランドの内容が内容なのでシリアスシーンが続きます。


第五十話 逆襲! 猿の軍団!

 第一、第二チームによる陽動は上手く働いているようだ。洞窟をくり抜いたデビルアイランドのドッグ付近には自動警備システムこそ稼働しているが、兵士やモンスターの姿はない。

 その警備システムも、いつものEMPを撒くまでもなく、遠距離からウルフが狙い撃ちしてあらかた片付けてしまった。

 ただ、砲撃する際にレナが運転席ではなく、砲塔に足を乗せて腕組していたのはクリス達から首を傾げられていた。格好つけるのはともかく、狙われやすい車上で目立つ意味は無い。

 

「あーっはっはっは! どうかしら、このアタシの命中精度は!! なんだったら惚れてもいいわよ〜、クリスぅ?」

「そっちのケは無いっつってんでしょ!? それより、洞窟に入る前にガスマスクを忘れないで! ガスが充満してるって言ったでしょ!」

「おっとっと!」

 

 うっかり丸腰で突入するとシャレにならない有毒ガスに襲われる。先行偵察時にもハンターが一人再起不能になったというので、侵入者用のトラップだろう。

 

「けど変なの。船着き場に毒ガス撒くとか、グラップラーは普段からここを使ってないのかしら?」

「裏口なんじゃないかな、こっちは。偵察中に船が通ったことなかったし」

「……使ってないなら何のために?」

 

 使用していないドッグを残せば、今回のように敵の無駄な進入路を増やすだけだ。グラップラーの知能は平均してアクア級だが、四天王などの指揮官までその程度の頭脳とは考え難い。

 ……実のところ、ここは人間狩り部隊が連れて来た人間を搬入する専用の出入り口なのだが、グラップラーが人間狩りを停止して久しい。クリス達が偵察した頃には、誰も利用しない入り口だけが残っていたのである。

 事実はどうあれ、ネメシス号が余裕で通れる侵入口はありがたい。

 

「ところでクリス? このメディカルマスクってただのガスマスクなのに、妙に色っぽいと思わない?」

「だから流し目向けないで!!」

『レナ、その辺で止めてください。メタルマックス全体の品性が疑われます』

 

 めぐみんのツッコミは言葉だけでなく、機銃の銃口がキラリとレナに向いていた。今のレナなら二、三発喰らっても死なないとはいえ、本当に撃たれたくはないので大人しくウルフの車内へ引っ込むのだった。

 

(むぅ。クリスって押しに弱そうだから、グイグイいったらコロっとなりそうだったのに。そしたらイリットとまとめてぐふふふふふ♡)

 

 そんなピンクい妄想で茹だっているレナの脳みそも、洞窟に入っては一分もしないうちに冷水を浴びせられたようにクールダウンすることになる。

 

 光源の無い洞窟を、ネメシス号に積み込んだナイター用の証明が照らし出す。岩肌の露出した壁面や、監視カメラとコウモリが融合したようなモンスターの姿が浮き彫りになる。それと同時に、水面に漂う無数の影も光の中に浮かび上がった。

 

「……なにこれ?」

 

 呆然と呟いたクリスは、漂う()()について疑問を抱いたわけではない。人間の水死体が水路を埋め尽くしている光景がどうやって出来上がったのか、そこが理解できなかった。

 強酸性の水に浸かった死体はどれもボロボロに朽ちており、立ち込める有毒ガスの発生源なのは間違いない。性別も年齢もバラバラな彼らは、おそらく人間狩りで連れてこられた者達だった。

 

「死体をそのまま水路に捨てているのだろうな。どうやらグラップラーには死者を弔うという文化や風習が無いらしい」

 

 ダクネスの苛立たしい声と、メカの低く唸るエンジン音だけが反響する中を、ネメシス号が進む。やがて、前方から別のエンジン音と、ライトの光が近づいてきた。

 

「お出でなすったわね」

 

 レナは静かに呟くと、ウルフを攻撃位置へ移動させる。そこにバギーも並び、ハンター達も配置についた。

 

『侵入者を発見! これより攻撃に移る!!』

『チクショー! あっちからもこっちからも攻撃かよ!!』

『デビルアイランド勤務は安全だって聞いてたのによぉ〜!』

 

 グラップラーの巡回艇は三隻。しかし足並み揃っていない様子から、襲撃を感知してから慌てて飛び出してきた様子。巣を刺激されて飛び出した蜂のようだ。

 そのような烏合の衆が、統率されたモンスターハンターを迎撃したところで何ができるものか。一分も経たないうちに、巡回艇は水路の藻屑となり、水面に浮かぶ死体が増えた。

 

 

 

 上がってくる凶報の数々に、デビルアイランドの司令室はてんやわんやの大騒ぎだ。

 

『正面にハンターどもの大部隊が上陸! 防衛システムを破壊しながら基地に向かっています! 抑えられません!!』

『島の後方から挟み撃ちにされています! 分散した戦力では対応不能です!!』

『ち、地下ドッグからも侵入者です!! 収容所を襲撃し、素体どもを奪取されました!』

 

 狼狽えるばかりの兵士達に、司令官であるブルフロッグは丸い顎を撫でながら溜め息を吐いた。「ウシガエル」を意味する名前の通り、でっぷりと太ったような体型の強化人間である。

 

「う〜ん。やっぱり面倒くさがらないで軍事教練ぐらいしておけば良かったカンジ? ケロッ?」

「ブルフロッグ様! 戦線にマリリン投入の許可を!! 一般兵士では持ち堪えられません!!」

「あ〜、はいはい。好きにすればいいんじゃない?」

「は、はあ! マリリン部隊を稼働させろ!!」

 

 やる気の感じられないブルフロッグの指揮に疑念を抱きながらも、兵士達は従うしかない。配置に戻ると、通信機に向かって怒鳴るように指示を飛ばした。

 

「はぁ〜〜〜(´Д`) まったく、徒党を組めばボクらに勝てるとか思っちゃってるワケ? どうせ結果は変わらないんだし? 手こずらせないでホシイ、みたいな? ケロ」

 

 心の底から面倒だと余裕を崩さぬブルフロッグは、手元の専用通信機から司令部の頭越しにさらなる指示を飛ばした。

 

「お前達、地下の収容所に向かっちゃって? 顔に傷のある白髪で小柄な女と、水色の髪の女以外は皆殺し。特に赤い戦車の女がマスコット的存在だから、徹底的に殺すよーに! ケロケロッ」

 

 通信機からは「キキッ」と甲高い返事があったが、ちゃんと理解できているかは疑わしい。

 監視モニターの映像を観れば、すでに一階内部にまで戦線は広がっている。爆発の振動が、七階の司令室にまで微かにだが伝わっていた。

 

「げふふふふっ。せいぜい今のうちに夢見ておくといいよ、ハンターくんたち? お前らがここに乗り込んだ時点で、こっちの戦略的勝利は確定? みたいな?」

 

 ニヤニヤと卑しい笑みで独り呟き、ブルフロッグは踏ん反り返ってモニターをただ眺めていた。

 

 

 

 ネメシス号が侵入した地下ドッグは、なんと人間狩りで捕らえられた人々の収容所と繋がっていた。早くも戦術目標達成である。

 ウルフとバギー、ダクネスとアクアが中心となって見張りや警備マシンを蹴散らし、一方でクリスら第三チームが人員輸送用に持って来ていた野バスに収容者達を片っ端から詰め込んでいた。

 

「オラァ、メタルマックスよ! 殺されたくなかったら自害なさいグラップラーども!!」

 

 メチャクチャ言いながらウルフを爆走させ、自分はまたしても砲塔の上に陣取ってレナは敵の注目を一身に集める。囮寄せにしてももうちょっとあるんじゃないか。

 

「レナ、あまり先行しすぎないでください! 本格的に暴れるのはクリス達が一度撤退してからでいいですから!」

 

 作戦を無視して上階へ行ってしまいそうなレナに、めぐみんから通信が飛ぶ。その傍らでは「ほわぁぁぁぁぁ〜」と嬌声を上げながら銃弾の嵐の中をダブルラリアットで飛行するダクネスの姿があったが、こっちはもう精神的にこの世のものから外れているので、誰もツッコまない。

 

「……仕方ないわね。カズマ、収容状況はどう?」

『おう! あと野バス一往復で全員収容できる!』

「オッケー! 詰め込んだら予定通り、一度マドまで帰還して! でも、なるべく急いで戻ってきてね♡」

『了解だ!』

 

 現状、カズマは前線に出ず、ネメシス号の防衛と回収した捕虜を真っ先に逃がすことを重点に動いている。確保した捕虜はドッグシステムでマドの町へ輸送する手筈だ。

 

『アクア、そろそろ戻ってこい! バスの護衛を頼む!』

「分かったわ!」

『……こいつがハツラツとしてるの、やっぱ慣れないな……』

 

 カズマが帰還すればアクアも引っ張られてワープするので、戦場に穴を空けないよう、アクアは遊撃要員としてポチカーで走り回っていた。相変わらず間抜けな格好に似合わない戦闘力を見せつける。

 野バスに群がろうとする警備ロボを蹴散らして、颯爽と退路を切り拓く。

 

「ウキィーッ!!」

「ッ! させないってぇーの!!」

 

 バスを狙ったグレネード弾を、屋根に陣取ったソルジャー達とともに撃ち落とす。何発か撃ち漏らして車体の脇を爆撃したが、野バスは強い子なので直撃しない限りは足を止めたりしないのだ。

 それよりも問題は、グレネードを撃ってきた相手の方だ。

 ベレー帽を被った四本腕のサル……グラップルタワーで敗死したスカンクスが、四匹連れでアクアを取り囲んでいる。

 

「またクローンってヤツ?」

 

 野バスは逃したが、代わりにアクアが取り残された。ウルフやバギーは位置がやや遠い。一人で凌ぐしかなさそうだ。

 

「キキキキッ! 水色髪の女! 捕獲対象!」

「捕まえロ!! ブルフロッグの命令!!」

「ふぅん。たかだかおサルさんの分際で、このアクア様を捕まえようっていうの?」

 

 にじり寄るサルの軍団に、アクアは自分を鼓舞するよう口の端を強引に吊り上げる。右手に火炎放射器、左手に冷凍砲、背中に担いだバズーカ砲と完全武装し、水の女神から「猟犬の女神」にクラスチェンジしそうな勢いで叫ぶ。

 

「ナメんじゃないわよ!! どっからでも掛かってきなさい、へなちょこバイオモンキーどもが!!」

「ウキィィーっ!!」

 

 威勢よく啖呵を切ったアクアがネメシス号とともにマドの町へと帰還したのは、そのジャスト一秒後のことだった。

 

「……えぇぇ……」

 

 キョロキョロと敵を見失ったスカンクス達と一緒に、急いで救援に来ためぐみんもバギーの中で途方に暮れていた。




量産型スカンクスコピー
 本編ではデスクルスに登場したあいつが、大量に増殖して戻ってきた。こいつの場合、デッドコピーでなくてステータスがオリジナルなままなので、普通のハンターには大変な脅威。
 改造スカンガンを大量入手するチャンスではある。
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