この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 ねこですよろしくおねがいします。


第五十二話 目覚めし者、大地を揺るがす

「うおおおおおっ!! ゴーストドリフトからの砲撃演舞ぅぅぅーっ!!」

 

 アンカーで中央に固定したスカンクスコピーの周囲をドリフトで回り込みながら、バギーが連続で砲撃を浴びせかける。

 ほとんど思いつきで放っためぐみんの必殺コンボだが、複数方向からの砲火を浴びたスカンクスが爆裂四散した。

 

「よっしゃあ! クラッシュダウン!!」

 

 運転席のめぐみんは、息を切らせながらガッツポーズで自身の勝利を称えた。

 以前は奇襲と奇策でどうにかこうにか勝った相手を、今は真正面から一対一で葬り去った。成長を実感して握った拳に自然と力が籠もる。

 

「ははははは! 如何に力を付けようと、サルが人間に勝てるものですか!!」

「その通りだ!!」

 

 また少し離れた位置では、ダクネスが両脇にスカンクスを抱えて同時にヘッドロックを仕掛けていた。ギチギチと小気味良い音を響かせ、ついにはそのまま頭部を粉砕してしまう。

 

「く……あの時*1は不覚を取ったが……ククク! どうだ、もはやグラップラー四天王も私の敵ではない!! だがこうなると、戦闘中に激しいダメージが受けられなくなってしまうのではないだろうか。これ以上強くならない方が気持ちよくダメージを受けられるのでは……ああ、悩ましい!」

 

 全身がサルの脳漿と血でゲドゲドなまま、恍惚と頬を赤らめて身悶えしているダクネスだった。敵を倒したいのか倒されたいのか分からない。

 そんな悲しいモンスターの相手をしてもSAN値が削れる一方だ。めぐみんは、同じくスカンクスコピーを爆殺し、敵の持っていたアサルトライフルだかを回収していたレナのウルフへバギーを向かわせた。

 

「レナ、クリス達がどうなったか分かりますか?」

「ちょっと前に司令室に突入するって言ってから音沙汰なし。まだ戦闘中じゃないかしら」

「カズマが戻ったら、わたし達も上に向かった方が良いのではないでしょうか。なんだか胸騒ぎがするんです」

「私もめぐみんに賛成だ」

 

 ゲドゲドのダクネスも、正気を取り戻して駆け寄ってきた。正直、近づいてほしくないし、クルマには絶対に乗せたくない。

 

「無駄な犠牲を出さない為にも、最強戦力である我々が立ち向かうべきだろう」

「落ち着きなって、二人とも。クリスだけじゃない、上に行ったハンター達はみんな一流よ。アタシ達が超一流ってだけで、数を揃えれば決して四天王にだって劣らないわ」

『随分と大きく出たな! メタルマックスのレナ!!』

「っ!! この声は!!」

 

 突如として地下ドッグに響き渡ったのは、自慢の船と一緒に湖の藻屑となったかに思われたあの男――カリョストロのものであった。

 

「はははははは!」

 

 カリョストロはバカ笑いしながら、ネメシス号が入ってきた洞窟から、なんと水面を全力疾走して戦線復帰を果たしたのだった。

 これにはヤツをよく知るはずのめぐみんさえ「うっわ気持ち悪ッ!!」と戦慄させられた。

 水面を蹴って跳躍し、スーパーヒーロー着地を決めたカリョストロは、早速戦闘態勢に入っていた。

 

「一度ならず二度までも一杯食わせてくれたな!! その成長を認めよう、めぐみん!」

「うるさい! お前にどーのこーの言われなくったって、わたしがスペシャルなのは分かりきってるんですよ!! つーかいい加減しつこい!」

「ははははは! では決着といこうか!! 死ぬがいい、メタルマックス!!」

 

 初手から電撃をチャージするカリョストロに、レナとめぐみんは素早くアクセルを踏み込み、左右に散って標的を散らす。それとともにダクネスが真正面からタックルを仕掛けていく。

 

「先手はもらった!」

「イノシシレスラーめ! おだま~♪ ぼんぎり、ぼ~んぎりっ♪」

 

 突然の五木節子守唄とともに、カリョストロの両手から催眠レーザーが放出。向かってくるダクネスへ照射した。

 

「催眠波動だと? そんな攻撃が効くふにゃぁぁぁ」

「効果テキメンのようだね」

 

 あっさり眠りに落ちたダクネスは、突進した勢いそのままに無防備なままカリョストロの眼前に躍り出てしまう。マントを投げ捨てたカリョストロが拳を構える。

 

「見るが良い! 我が暗黒舞踏を!!」

 

 全身に攻撃的なオーラで包み、極まったアーチストにのみ可能な奥義が無防備なダクネスに炸裂する……その寸前、レナのウルフが両者の間に割り込み、必殺の連続攻撃を装甲で受け止めた。

 左右の拳、飛び膝蹴りからの流星脚。生身の攻撃とは思えぬ衝撃力に、ウルフの車体が吹き飛んだ。

 

「んなぁ!?」

 

 床の上で一回転し、鉄骨の柱に砲塔から激突。凄まじい騒音がドッグに轟く。ウルフが横転し、キャタピラと底部を晒した。運転席のレナもキャノピーにしこたま頭をぶつけ、気絶こそしてないが意識が朦朧とする。

 

「ば、化け物めぇ! 生身のが強いんじゃないの、アイツ!?」

 

 呆れた怪力と戦闘技術に、ウルフの装甲タイルが大きく削られていた。一刻も早く戦線復帰しなければと、レナは色々と操作を試みる。

 その間、めぐみんはひっくり返ったウルフを追撃しようとするカリョストロを、砲撃演舞で迎え撃っていた。

 ダクネスも銃弾程度は生身で受け止めるが、カリョストロに至っては主砲の砲弾に一歩も退かず電撃をチャージする。

 

「カリョストロ、フラーーーーッシュ!!」

 

 至近距離からの電撃ビームは、以前にトータルタートルから回収した蓑が受け流し、バギーは装甲表面を多少焼かれるに留まった。

 ビームの中を無理やり突っ切り、第一武装に搭載した打撃用兵装――タイソンアームによる強烈な打撃を叩き込む。

 速度の乗った質量攻撃が、カリョストロの身体の真芯を捉える。

 

「うぐっ!?」

「もう一丁!!」

「舐めるなと……言ったぞ、めぐみん!!」

 

 血反吐を吐きながらも踏み止まったカリョストロと、タイソンアームの第二撃とが激突。暗黒舞踏の打撃力で、ウルフよりも軽いバギーの車体は縦回転しながら殴り飛ばされてしまった。

 

「ぬぐぅっ!!」

 

 だが、カリョストロの方も無傷では済まない。タイソンアームと殴り合った両拳の皮膚が裂けて血が滲む。負傷は骨にまで達しているだろう。

 必殺の暗黒舞踏をたかが原始的な質量兵器で相討ちに持ち込まれ、自称カッコよくも恐ろしい男は怒りに燃えた。

 

「許さん!! このまま車体をバラバラにし、運転席から引きずり下ろしてやる!!」

 

 天地逆転し、屋根を地面に設置してしまったバギーに、恐ろしい形相のカリョストロが迫る。その進路を、ウルフの機銃が阻んだ。

 ひっくり返ったウルフの車体は、埒が明かないのでレナ自らクルマを降りて持ち上げて、強引に元に戻した。テコの原理ってすごいね、とは後にこの戦いを振り返った彼女のセリフだ。

 

 しかし、カリョストロはウルフの銃撃を耐えながら、バギーにのみ狙いを定めていた。ここで確実に敵の戦力を削るつもりだ。

 

「ううっ、チクショウ!!」

 

 暗黒舞踏がバギーに炸裂する寸前で、めぐみんは運転席から脱出する。せっかく修理されたバギーは、カリョストロの猛攻によって武装ごとシャシーを粉砕されてしまった。

 文字通りバラバラという見るも無残な姿に、めぐみんもまた怒りを籠めてカリョストロと向かい合い、愛用のマントを脱ぎ去って身軽になる。

 

「はっ! 無駄な真似はよすんだな、めぐみん! お前の暗黒舞踏ではワタシに傷一つ付けられんぞ!! 大人しく灰燼と帰せ!!」

「暗黒舞踏? 馬鹿言うんじゃねーですよ!! わたしのゲージツは!!」

 

 大きく振り被っためぐみんは、脱いだマントをカリョストロ目掛けて全力で投擲した。

 か細く甲高い金属音が無数に響く。カリョストロが聴力を強化していなければ、聞き逃すほどの小さな音は、マントの内側に仕掛けられた無数の爆裂弾から一斉にピンが外れる音だった。

 

「爆裂にだけ、全振りしてるんですよ!!」

「き、貴様ァァァーッ!!」

 

 防御も回避も間に合わないまま、カリョストロはテッドファイヤーにも匹敵する獄炎に呑み込まれる。

 だが、ほぼ至近距離で自爆覚悟の爆裂を放っためぐみんも無事では済まなかった。マントに仕掛けた爆裂弾は効果範囲を狭くし、その分威力を高めるよう調整している。それでも、発生した衝撃波はめぐみんの小さい身体をさっきのバギーより激しく吹き飛ばして余りあった。

 

「危なーーーーーーいっ!!」

 

 その落下地点に先回りしていたダクネスが、めぐみんを受け止めた。

 

「へぶしっ!?」

 

 鎧を脱いだダクネスは、その大きくて豊かな母性の象徴でめぐみんを優しく包み込むが、この女の防御力はすでにカミカゼ一族*2の領域に片足を突っ込んでいる。そのまま床に叩きつけられるよりマシとはいえ、結局大ダメージを受けるめぐみんだった。

 

「おい、しっかりしろ! これを使え、まんたーんドリンク!」

 

 回復ドリンクの中でも最大の効力を持ち、死んでなければ完全復活するとも言われる満タンドリンクを、めぐみんに頭からぶっかけていくダクネス。使用時に商品名を叫ぶのは普通のことだ。何もおかしなことはない。

 

「うぅぅ、助かります、ダクネス。これならミンチ送りは免れ――マズッ!? なんですかこのクソマズイの!!」

「良薬口に苦しだ。我慢しろ」

「いやこれ、苦いっつうかすごくマズイですよ!? 口に入れたら駄目なオエッ!?」

 

 ダークマター卵焼きなど目じゃないぐらい恐ろしい、混沌とした味覚がめぐみんを襲う。すっかり元気にはなったが、精神には新たなトラウマが植え付けられた。

 

「まだよ! 油断しないで!!」

 

 レナの叫び声に、まったりしかけていためぐみんの意識が戦闘モードに引き戻された。

 カリョストロを包み燃え盛る炎へ、ウルフからの容赦ない砲撃が加えられる。だが炎の中に飛び込んだ砲弾は、内にまだ蠢いていた巨悪の拳に弾かれた。

 

「とうっ!!」

 

 炎から飛び出したカリョストロは、連続バク転で華麗にウルフの砲撃を回避しながら、ドッグの桟橋から水面へと跳躍する。

 

「あ! こら、逃げるなー!」

「ハハハハ! 逃げはしないさ! すぐにまた会おう!!」

 

 死体だらけの水中に潜ったカリョストロの気配は、そのまま急速に遠ざかっていった。

 それと同時に、今度はデビルアイランド全域に緊急警報を告げるアラームが鳴り響いた。

 

『警告。警告。デストロイヤーの起動を確認。デストロイヤーの起動を確認。グラップラーは直ちに当基地を放棄して脱出せよ。繰り返す。デストロイヤーの起動を確認――』

 

 無機質な合成音声からでも、尋常でない異常事態が伝わってくる。

 

「クソっ!! めぐみん、ダクネス! ウルフに乗って!! 脱出よ!!」

「だけどレナ、バギーは!!」

「遺憾だけど放置!! 運が良ければ回収して、カズマが直してくれるって!! いいから急いで!!」

 

 後ろ髪を引かれる思いのめぐみんだったが、結局ダクネスに抱えられて、ウルフの車内へ連れ込まれた。

 即座にウルフはドッグシステムの量子ワープで脱出する。その直後、デビルアイランド基地が地下からの衝撃で真っ二つに裂け始めた。

*1
第二十話

*2
防御力と回避率がバカ高い、走る爆弾




 次回。世紀末デストロイヤー出撃。
 まんたんドリンクを使う時に叫ぶのは真理。古事記にもそうある。
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