この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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謎の多面体「お前の守備力は確かに素晴らしい。だが私の前にはベニヤ板も同然」
ダクネス「何だと!?」
カズマ「オーパーツと張り合うな、ドM」
※MM4のアイーダの交易所に設置されてるアレです。


第五十三話 最終滅殺殲滅兵器! 進め僕らのデストロイヤー!

 ハトバに寄港したネメシス号から、次々と人員輸送用の大型車両が出発していく。それぞれにデビルアイランドから助けられた虜囚が乗せられ、受け入れ体制の整ったエルニニョやマドの町へと向かう算段だ。

 カズマもまた、野バスに虜囚を乗せてマドの町へ向かう予定だった。ところが、ここから事態は大きな変化を見せる。

 

「お兄様ーっ!!」

「あれは、アイリス!?」

 

 出発寸前で、背中にスクランブルな紅の翼を装着したアイリスが、文字通りカズマの元まで飛んできた。二人きりの時以外は使わない約束の「お兄様」呼びな辺り、相当慌てている。

 

「お兄――カズマ! すぐに私をレナ達の元へ連れて行って!! 緊急事態です!!」

「どうしたんだ!? 別に言い直さなくてもいいんだぞ?」

「デストロイヤーの起動を検知したんです!! 対ノア用特殊戦略決戦兵器が起動しました!! おそらく、デビルアイランドで!!」

「……え、なにそれ!?」

 

 名前だけでも絶対ヤバいと伝わった。なにしろデストロイヤー(破壊者)で、特殊戦略決戦兵器だ。真っ先に思いついたのは核ミサイルだが、アイリスは大きく首を振った。

 

「デストロイヤーは多脚歩行型機動要塞! わたしと同時期に設計されていました大型兵器の一つです! 開発途中で放棄されたのですが、もし完成していたらアシッドキャニオンどころか、日本列島そのものが破壊されかねません!!」

「おいおいおいおい! 冗談じゃねえぞ!? 逃げ場なんてないじゃないか!」

「はい! ですからカズ……いいえ、お兄様!!」

 

 これまでに見せたことのない熱量でもって、アイリスはカズマの手を取った。

 

「逃げ場が無いので、戦いましょう! 戦って、勝つんです!!」

「やっぱそうくるよな〜……いよいよもってクライマックスじゃねえか……」

 

 心底嫌そうに口をへの字に曲げるカズマだったが、こういうときの答えは決まっている。彼は「しょうがねぇな〜」と吐き捨てて、ハンターオフィスへ駆け込んでいった。

 

 

 

 デビルアイランドが真っ二つに裂け、巨大な基地が地割れに飲み込まれていく。

 脱出を果たしたウルフは、即座にエンジン全開で崩落から距離を取った。

 

「ちぃぃぃっ!! 何なのよ、デストロイヤーって!? 自爆装置か何か!?」

 

 バリバリと音を立て、巨大な亀裂がウルフを飲み込もうと背後から猛スピードで迫るのを、レナは培ってきたドライブ技術で躱しながら、アクセルを目一杯踏み込んだ。

 

「レナ!? て、敵基地の下から巨大熱量が!? お、大きいです!! 何かが這い出して来ます!!」

「だから何かって何よ!!」

 

 亀裂が追ってこなくなる位置までたどり着き、即座に180度ターンしてめぐみんが言う「何か」に備える。

 敵基地が、真下にぽっかり口を空けた崩落孔に消えていく。代わりに孔の底から聞いたこともない大きさでモーターの駆動音と、それに負けない大音量の足音が迫ってくる。

 半壊した基地を押し退けて姿を現した()()は、金属で造られた超巨大な蜘蛛だった。

 

「た、多脚型戦車ぁ!?」

 

 驚きすぎて心臓が止まりそうなめぐみんに、レナとダクネスが同時に訊ねた。

 

「戦車なの、あれ?」

「理解しがたいと思いますけど、荒れ地や山道を踏破できるよう改良された戦車です! けど以前に読んだ大破壊前のライブラリによれば、整備性の悪さが祟って実戦配備されず、試作品が多少残っただけだとか……」

「それにしたって大きすぎるだろう!? ちょっとしたビルぐらいあるぞ!?」

 

 謎の多脚戦車は、ついさっきまでそこにあったデビルアイランド基地と同程度の全高があった。

 本体と思われる戦車部分がウルフなどの重戦車より二回り以上は大きく、そこから設地用の脚が六本、前方に向かって大型ブレードと一体化している攻撃用と思われる脚が二本。真上から見たらまさしく蜘蛛に見えるだろう。

 

『アー、アー。マイクのテスト中〜。聞こえてるかな、ハンター君達? ケロッ』

 

 一旦動きを止めた機械の蜘蛛から、甲高くてねちっこい、聞いているだけで腹が立つ声を発した。レナには聞き覚えのあるその声は、ブルフロッグのものだ。

 

「あなた、四天王の!!」

『ワタシもいるぞ、メタルマックスの諸君!! どうだね? 我らの切り札「デストロイヤー」の雄姿は? カッコいいだろう? ハーッハッハッハ!!』

「カリョストロも乗ってるの!?」

 

 大きな機体に乗り込んで気が大きくなったのか、これまで以上に馬鹿笑いがうるさいカリョストロに、因縁があるはずのめぐみんすら辟易した顔を見せる。憎悪でも怒りでもなく、純粋に死んで欲しい人間へ向ける感情とはなんだろうか。

 

「デストロイヤー……それがその巨大な玩具の名前ね?」

『玩具とは心外だね。こいつはバイアス・ヴラドが対ノアを想定して設計した究極無敵殲滅兵器さ、ケロッ』

「バイアス……ヴラド? 誰よ、それ?」

『おっとっと。知らなかったのか、げふふふ。じゃあこれ以上何も知らないでいいよ。どうせこの場で死ぬんだから♪』

『光栄に思うがいい!! この超兵器の威力を地上で最初に味わえるのだからな!! 今度こそ! 今度こそ!! 死んで潰えろ、メタルマーーーーックス!!』

 

 デストロイヤーがブレード付きの前腕を高く掲げ、威嚇するように咆哮した。純然たる機械であろうに、なぜ恐竜のように吼えたのか。そんな疑問も失くすぐらいの圧力で、超巨大戦車がウルフに向けて照準を合わせた。

 

「クソッタレ!!」

 

 ウルフを急発進させたレナは、直感を頼りにジグザグに走らせる。

 デストロイヤーの対地機銃掃射が地上を穿ち、ウルフにとって際どい位置で地面が弾け飛ぶ。砕けた岩盤の有り様が、喰らえばただでは済まない威力を物語っている。

 

『げふふふふふっ!! いつまで逃げ切れるかな? セット、ハット、はぁ〜♪』

『機銃だけで勝負が着いてしまいそうだな! ハハハハハッ!!』

 

 悪党二人が早くも勝ったつもりで余裕綽々なのが腹立たしい。あまりにも腹が立っためぐみんが、砲塔に移動していつものヤツを装填してしまった。

 

「じゃかしいですよ、コノヤロー!! いい気んなって見下ろしてんじゃねー!!」

「ちょい待ち、めぐみん!! まだ早――」

「ファイヤー!!」

 

 お約束の「耐ショック・閃光防御」の下りも忘れて爆裂弾をぶっ放す。ほとんど真上に向かって発射された砲弾は、充分な速度も出ないまま敵の機銃であっさり迎撃された。

 酷く中途半端な高度で大爆発させられたせいで、危うくウルフまで巻き込まれるところだった。

 

「ぎゃあああああっ!! あつ! あっつぅぅぅ〜!!」

 

 自分で自分の爆裂に炙られるめぐみんの悲鳴が砲座から聞こえたが、無視してレナは多段連装式S-E「W−トルネード」を連続発射する。

 一度に放つ弾数が多いので、迎撃を掻い潜って何発かは本体まで届いた。

 しかし着弾寸前で薄い光の膜が直撃を阻む。続く爆炎も弾かれ、装甲には煤の一つも付着しなかった。

 

「な、バリア!?」

『ケロケロッ♪ 予想通りのリアクションをありがとう♪』

「ざけんなっ!!」

 

 もう一発W−トルネードを撃ち上げるも、やはり機銃とバリアで完全に無効化されてしまう。しかもこっちの射撃の間隙を突かれ、主砲の砲身に直撃を喰らってしまった。

 コンソールに真っ赤な文字が浮かぶ。まさかの一発大破である。

 

「しまっ――めぐみん、無事!?」

「わたしはいいですけど、Uバースト砲が……!」

「ええい! 埒が明かん!! レナ、私も外に出て戦うぞ!」

「…………」

「おい、何だその養豚場の豚を見るような目は? 可哀想だけど数分後にはミンチ送りなのねってか? 興奮するぞ」

 

 ドMの馬鹿(ダクネス)は置いておいて。

 埒が明かないのは事実だ。手持ちの武器では迎撃を掻い潜りながらバリアを抜く方法がない。このままでは徒に砲弾と装甲を浪費した挙げ句の嬲り殺しだ。

 

「迎撃さえなんとかすれば、今度こそ爆裂弾を撃ち込んでやるのに!!」

「その砲身じゃどうにもならないでしょ……こりゃ一時撤退も已む無しかしら」

 

 レナも珍しく弱腰ではあるものの、敵の機銃と、隙あらば踏み潰そうとしてくる6本の大脚からは巧みに逃げ続けている。勝負そのものは諦めていない。

 強大な敵に臆せず立ち向かうウルフの姿に触発されてか、無数の砲火がデストロイヤーを狙い撃った。

 

『ぬっ!?』

 

 苛立たしいカリョストロの声がスピーカーから響く。

 海岸線まで退避していたハンター達のクルマが、デストロイヤー目掛けて一斉攻撃を開始したのだ。

 

「うおぉぉぉ! メタルマックスに続けーっ!!」

「あのデカブツさえ倒せばオレたちの勝利だ!」

「出し惜しむな! ありったけの弾を注ぎ込めーっ!!」

 

 一個中隊規模にまで膨れ上がった集中砲火に、バリアの上からでも衝撃を殺しきれなかったのかデストロイヤーの巨体がぐらりと傾いた。

 

『げふふふ! ザコどももやってくれるね。プラズマカノン砲、用意!!』

 

 蜘蛛型の頭部先端に設置されていた一対の鉄身にエネルギーが収束していく。機銃で砲撃を撃ち落とし、6本の脚で踏ん張るように姿勢を低く身構えた。

 

『プラズマカノン砲、発射!!』

 

 鉄心の間から、眩いオレンジ色の閃光が放たれた。

 雄叫びを上げて突っ込んでくるハンター達を薙ぎ払い、一拍遅れて超高熱で灼かれた地面が沸騰し、大爆発が生じる。たった一撃で半数以上のクルマが搭乗者ごと消し飛んでしまった。

 

『ケロケロケロ〜ッ♪ 気持ちイイネ〜♪』

『ハハハハハ!! この火力があるなら、ハンター……いや、ノアの軍団、何するものぞ!! この地上の支配者は、我らバイアス・グラップラーだ!!』

「そうは問屋が――」

 

 相変わらず馬鹿笑いがうるさい悪党二匹の注意が他所へ向いている間に、メタルマックスは次の行動に移っていた。

 ほんの一瞬、意識が自分達から外れた隙を突き、ダクネスは車外へ飛び出すと、大破した砲身から爆裂弾を引っ張り出していた。

 

「許さんぞ、グラップラーッ!!」

 

 円盤投げのフォームで全力投球された特殊砲弾が、なんだったら主砲から撃つより勢いよく突き進む。

 薄くなった機銃の弾幕を掻い潜り、デストロイヤー本体に肉薄したまさにそのタイミングで、ハッチからレナが爆裂弾の信管を、電磁ライフルで正確に撃ち抜き、強制的に起爆させた。

 

 地形を変えてしまうほどの大爆発を、デストロイヤーは今度は至近距離で受けることとなった。6脚の支える巨体がグラつく。

 

「よっしゃあ!! やっぱりわたしの爆裂は世界一ィィィーッ!!」

 

 砲座で一人雄々しく拳を突き上げためぐみんは、直後にiゴーグルの発したアラートでせっかくのハイテンションを一気に引き下げられた。

 

「っ!! レナッ!!」

 

 爆裂の直撃で怯んだと思われたデストロイヤーは、実は前腕の大型ブレードを振りかぶる為の予備動作で。

 

「クルマを離れて!!」

『もう遅いケロ♪ セット、ハット、は〜♪』

 

 振り子のように放たれた一刀は、ウルフの車体を真横に両断するギロチンとなってメタルマックスを木っ端微塵に粉砕した。




世紀末デストロイヤー
 ヴラド・コングロマリットが対ノア用特殊戦略決戦兵器として設計し、完成しないまま現デビルアイランド地下格納庫で死蔵されていた未完の超兵器。それをブルフロッグが完成させてしまった結果、対ノアどころか人類の脅威へと成り下がった。ジャガンナートやクロモグラと同時期に開発された。
 原作では中で科学者のおっさん(CV.チョー)が暮らしていたり、カズマ達が動き回ったり結構なスペースがあったが、世紀末デストロイヤーは本体部分が大きい戦車分ぐらいしか無い、純然たる兵器となっている。
 なお、戦闘BGMは「Collective Consciousness」。
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