この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 日頃からかなりの量の誤字報告、ありがとうございます。
 ストックが尽きてから一日一話を書き上げてますので、結構粗が残っているようです。
 この場を借りてお礼申し上げます。

 あとソウルハッカーズ2のフィグちゃん可愛い。


第五十六話 狂気の科学者! その名は……!!

 島にあった大型の動体反応が消えたことを確認してから、レナ達はデビルアイランドへ引き返してきた。

 ネメシス号の接岸した浜辺からでも分かるほど、島の中央付近ではデストロイヤーの残骸が天に届くかという火柱を上げている。噴出した黒煙が上空で滞留し、分厚い雲が形成されつつあった。

 あの巨大だったデストロイヤーが指先で隠せるぐらい距離を取っているのに、風に乗った熱と鉄が焼ける臭いが伝わってくる。

 

「あれはしばらく消えませんね。ポリマーリキッドは可燃性や爆発性もそうですが、酸化剤も含んでいますので一度火が点くと延焼しまくるんです」

 

 眼帯型iゴーグルで現場を望遠しながらめぐみんが蘊蓄を傾ける。もう白ワンピースからいつもの服(マントなし)に戻っており、じっくり近くで見たかったカズマは心の中でガッカリしていた。

 

「危険物ではありますが、油圧シリンダとかの素材として優れた素材です。軽くて絶縁性もゴムの比ではなく、真空状態であれば経年劣化にも強い。何事も使い方ですね」

「ですが一口にポリマーリキッドと言ってもいくつも種類があるでしょう。なぜ正確に固有振動波が分かったのですか?」

 

 つらつらと語っていためぐみんは、アイリスからの質問にますます得意(ドヤ)顔になった。

 

「爆発の色や音、衝撃波を肌で感じれば、識別ぐらい訳ありませんよ。カズマが2回も爆裂させてくれましたからね!」

「お前も大概人間辞めてるな……」

「う〜ん……ありゃ駄目そうね。近づくだけで丸焼きになりそう」

 

 他方、レナもiゴーグルの望遠機能で、主に破壊された施設回りを確認していた。

 デストロイヤー起動の影響で崩落していたのに加え、爆発で炎の海と化したグラップラーの基地は見る影もない。それ以前に基地の痕跡すら判別不能だ。

 

「あれじゃバギーもウルフも回収は無理かぁ……はぁぁぁぁ〜」

 

 ガックリと肩を落としたレナは、その場で両足を投げ出して座り込んでしまった。彼女にとって初めての愛車と、本格的な重戦車。搭載していた武装も含めて、失ったものはあまりにも大きい。

 見たこと無いほど気落ちするレナに、顔を見合わせたカズマとアイリスが何でもないように言った。

 

「どっちも回収してますよ、レナ」

「え゛っ!?」

「念の為、全車にドッグシステム積み込んどいただろ? 脱出する時ついでにマドに帰還させて――」

「きゃーーーーー♡」

 

 最後まで聞き終えるより先に、レナがカズマに抱きついた。同等の体重なのに腕力にチワワと土佐犬ぐらいの差があるので、カズマは情けなくも押し倒される。

 アクアとダクネスが豆鉄砲を喰らったように目を見開き、めぐみんとアイリスは凍りついた。

 

「もう、あなたのそういう抜け目ないところって素敵よ♡ このこのっ、色男め♪」

「ぐへぇ! れ、礼はいいから、は……離れて……っ」

「な、な、何してるんですか、レナぁ!! あなた、男もイケる口だったんですか!? つーか離れろ!」

「それ以上の暴挙はいくらレナでも看過できません強制引き剥がしモードを実行します」

「おっと♪」

 

 アイリスの怪力で無理やり引っ剥がされる前に、レナはカズマから飛び退いた。サービスついでにちょっとからかったつもりが、思ったより際どい反応を引き出してしまったようだ。

 

「カズマもニヤニヤしていないでください! 相手はレナですよ、レナ!」

「正気に戻れないなら気付け薬でも使いましょうか?」

「に、ニヤけてねーし!!」

「……お前達、何しに戻ってきたか忘れていないか?」

 

 カズマを挟み、左右から詰め寄るめぐみんとアイリス。なかなか楽しい構図だったが、ドMに窘められては中断せざるを得なかった。

 

 デビルアイランド基地へ突入したクリス達の捜索、及び基地からグラップラーの情報のサルベージが目的だったのだが……見ての通り、どうしようもないほど敵拠点は壊滅している。

 ハンターオフィスでもクリス達の情報を集めているが、最後に連絡を取ったのは他でもないレナだ。司令部への突入するという一報から、彼女達の足跡はパッタリ途絶えていた。

 直後にブルフロッグがデストロイヤーで襲ってきたことからも、突入した第一チームの半分と第三チームは全滅した可能性が高い。無論、クリスも含めてだ。

 

「デストロイヤーにふっ飛ばされた分も含めると、参加チームの約半数が壊滅したって。まだテッド・ブロイラーだって残ってるのに、今後の大規模な作戦展開は難しいみたい」

「勝つには勝ったが……犠牲も大きかったか」

 

 レナの話に、ダクネスは難しい顔で腕を組む。こいつはドMとはいえ、他人が傷つくことを平然と許容する人格破綻者ではない。敵と傷つけ合うのが好きなだけだ。

 

「せめて敵の情報ぐらいは手に入れたかったけど、あの燃えっぷりじゃね……」

「いいえ、情報ならあります」

「アイリス?」

 

 カズマを助け起こしたアイリスが、デストロイヤーの残骸を真っ直ぐ見つめる。

 

「デストロイヤーの起動を確認した際、メモリーの一部が復旧しました。バイアス・グラップラーについてもある程度の推察ができる情報がいくつか見つかりました」

「……先に言ってよ、それ」

「言うタイミングがなくて。ではこの場で展開してよろしいでしょうか?」

 

 カズマから「頼む」と促されたアイリスは、両目から光を放って空中に立体映像を投影した。

 ビシッとしたスーツを着こなした、壮年の白人男性だ。やや神経質そうだが、目付きが鋭く渋みの出たいぶし銀のオジサマであった。

 

「誰、このオッサン?」

「バイアス・ヴラド。大破壊前後の世界で最大規模の複合企業連合ヴラド・コングロマリットの総帥であり……人工知能ノアを開発した天才科学者です」

「なんですって!?」

 

 その場の全員が、立体映像の男性に驚愕の目を向けた。アイリスの話は続く。

 

「ヴラドは企業家としても科学者としても、政治家としても稀に見る天才でした。地球環境の改善を訴え、ライバル企業だった神話工司と提携して地球救済センター……すなわちノアを生み出したのです。

 わたしも、デストロイヤーも、彼の作品です」

 

 映像写真自体はアイリスが開発された頃、50年前の大破壊期のものなので、本人はとっくにこの世のものではないだろう。だが、彼の残した足跡は、この世紀末にも色濃く残り続けていた。

 

「バイアス・ヴラド……バイアス・グラップラー……それは偶然、じゃないんだな?」

 

 ダクネスの問いに、アイリスはハッキリと頷いた。

 

「バイアス・グラップラーとは本来、ヴラド・コングロマリットの中にあった私設部隊です。元々、わたしやデストロイヤーはそこに配属され、ノアの軍勢と戦う予定でしたが……ヴラドは彼らを引き連れて本社ビルを中心とした企業都市に籠城しました。

 何らかの理由で博物館に放置されたわたしには、なぜヴラドが人類軍を裏切る真似をしたかの記録は残されていません。ですが、彼らが本拠地とした企業都市……バイアス・シティの所在地は分かります。レナ、めぐみん、iゴーグルを」

 

 差し出された二人のiゴーグルにアイリスの指が触れると、それだけでデータがダウンロードされた。

 マドの町の東側、大破壊で隆起した山脈に隔たれた先に、新たな光点が浮かんでいる。

 

「こ、この場所が!?」

「バイアス・シティです。おそらくここがグラップラーの中枢として最も可能性が高い場所。であるならば……」

「テッド・ブロイラーも、ここに!?」

 

 再度頷くアイリスに、レナは無言で口許を歪に吊り上げた。

 彼女が時折覗かせる復讐者の顔だが、今日は一段と凄みが深かった。




 ポリマーリキッドと言いつつ、設定はボトムズのポリマーリンゲル液を参考にしています。
 気分的に長丁場だったデビルアイランド攻略戦は今回で終了。攫われたクリスは死んだものとして扱われています。やっぱこの人(女神)不憫枠……!
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