この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 お久し振りです。人生初の遠方への単独出張、無事に終わりました。
 そしてストックは枯渇したままですが、もう終盤なので一気に終わらせます。どうか最後までお付き合いください。


第五十八話 霧の中の巨影! 決死の大攻勢!!

 アシッドキャニオンという名前の由来となった大渓谷は『雨の渓谷(レインバレー)』と呼ばれる、地獄のような場所だった。

 湖から流れ込む強酸の水は、落差数十メートルもの滝となって飛沫を上げ、谷全体が常に濃霧に包まれている。さらに谷に蓋をするよう立ち込めた雲からは希硫酸の雨が降り注ぎ、クルマといえども特殊なアルカリコート無しではあっという間に鉄くずにされてしまう。

 もちろん、生身の生物など呼吸するだけでアウトだろうが、こういう環境に適応した特殊なバイオニックモンスターや対酸化ボディ持ちの暴走メカニックモンスターが、多数徘徊していることも地獄っぷりに拍車を掛けていた。

 

 一同の最後尾で装甲車を牽引しながら走る野バス。その車内で窓を流れる水滴を見つめたカズマが、同乗者のアクアをチラリと見た。

 

「アクア?」

「いや、無理だから。いくらなんでもこんな広範囲を一気に浄化するとか、魔法でも使えないと無理だから」

 

 口調はともかく、アクアはかなり本気で拒否していた。カズマだって何とか出来ると期待したわけではない。

 しかしアクアが言うように、例えば彼女がアークプリーストか何かのジョブで、最大級に魔力を高めて「セイクリッド・ピュリフィケイション」とか何度もやったら何とかなるかもしれない。所詮は「もしも」の話だが。

 

「カズマ〜。ヒ〜マ〜」

「だったら外に出て戦うか? 前の方じゃ多少はドンパチやってんぞ」

「そうしようかしら」

 

 土砂降りと濃霧のダブルパンチにより、前を走るゲパルトの姿もよく見えていない。たまに銃火と爆発の音がモンスターの奇声に混じって聞こえるのは、先頭のウルフが片っ端から蹴散らす戦闘音だ。そこに加わってひと暴れしようとする程度に、野バスの二人は退屈だった。

 一応、後方からの奇襲に備えて警戒してはいるが、よしんば何かが襲ってきても対機械用電撃兵器と対生物バイオガス、つい先日ダイダロスからもぎ取った新主砲「ダイキャノン」の同時攻撃が可能な今の野バスに死角はなかった。

 

 このまま何事もなくメルトタウン、そしてその先のバイアス・シティへ到達しそうだな。そんな油断の隙を突くように、攻撃は唐突に始まった。

 

 霧に乗じたクラスター爆撃が、チーム・メタルマックスの車両を囲むように放たれた。爆煙と炎の壁が、土砂降りの中で壁となって立ち塞がる。

 続いて遠距離からの砲撃が、最後尾の野バスに向かって集中的に狙ってくる。

 

「アクア!」

「わひゃあッ!?」

 

 従属スペルで瞬時に車外へ放り出されたアクアだが、すぐにポチタンクを展開装着して迎撃体制を整えた。カズマも野バスを巡行から戦闘モードへ切り替え、アクセル全開で回避行動に移った。

 牽引している装甲車を含めて、装甲表面を砲弾が掠めるギリギリのところを回避していく。

 

『カズマ!!』

 

 めぐみんから通信が届く。安否の確認ではなく、作戦を催促する声だ。

 

「めぐみんは上空に集中しろ! また爆撃されたら厄介なんてもんじゃない!!」

『アタシは?』

「ダクネスのおもり!!」

 

 え〜、と不服そうなレナの声はするが、ダクネスの返事はない。酸性雨の中、敵とみるや飛び出して行ったのだろう。一見すると戦闘狂(バーバリアン)だが、むしろ戦車の砲撃を嬉々として喰らいに行ったと思われる。

 

『この環境で戦車相手に暴れられると、クルマの立つ瀬が無いわね。アシッドキャニオン最強生物じゃないかしら、あの子?』

 

 などと無駄口を叩きながらも、レナは主砲の一発で遠距離に薄っすら見えるだけの敵戦車を撃破していく。敵の形式はこの近辺でも最強と名高い量産型「T99ゴリラ」だが、今のウルフとレナには動く鉄くずと大差ない。

 めぐみんもまた、デストロイヤー戦でも活躍したドリルブラストⅡを上空の分厚い雲へ連続発射し、爆撃を牽制する。最初は、

 

「この砲身じゃ爆裂弾が撃てないじゃないですかーっ!!」

 

 と文句を垂れていたが、実際に撃ってみると、

 

「うおおおお! な、なんですかこの高速連射はーッ!! まさに雷神の化身!! タイシャーの戦神伝説は本物だった!?」

 

 満更でもないどころか、新たなお気に入りとして砲撃演舞を繰り広げていた。Cユニットに接続されたアイリスの助力もあって、今のゲパルトは雷神と呼んでも過言でない破壊力を発揮する。

 空中へ放たれる幾条もの電撃。うち一発が命中して雲の中に異形の影が浮き彫りにされた。

 

『あ! 手応えあり!! 雲の中に隠れてるのは大型のマシン系モンスターです!!』

「おう! こっちでも確認出来たぞ!! ありゃホバリング・ノラだ!!」

 

 ハンターオフィスからの情報を、カズマは手元の端末で確認する。

 先端のノーズ部分が骨を咥えた犬というふざけた外見の武装ヘリ。だがコイツの大本は戦車の天敵とも恐れられた対地攻撃兵器だ。ガトリングガンと対地ミサイルの波状攻撃を受ければ、並みのクルマなどロクな反撃も許されずに木っ端微塵にされる。

 もっとも、彼女達のチームは並ではないが。

 

『カズマ、レナ! 頭上のヘリはわたしが仕留めます! 地上の敵車両部隊をお願いします!!』

『オッケー!』

「ほ、ほどほどにな!?」

 

 レナは即答してめぐみんに任せることを決めたようだが、逆にカズマは元気いっぱいなめぐみんの声が逆に不安を掻き立てる。一応、唐突に爆裂するような装備は取り上げているものの、唄声という名のシャウトで巨大兵器を爆裂させた前例がある。

 降り注ぐ爆雷を右へ左へ回避して、ゲパルトの電撃砲が分厚い雲に隠れ潜む標的を捉える。

 

『掴まえた!!』

 

 天上へ伸びる雷撃が、強酸の雲を割る。

 直撃を受けたヘリの機体が激しく放電し、小さくない爆発がいくつか上がった。

 

『ウギャアアアアアアアアア!!』

 

 と、通信に割り込むような品のない悲鳴まで響いてきた。聞き覚えのあるような無いようなダミ声だ。

 

『や、やるザンスね! まさかミー達に攻撃を当ててくるなんて!!』

『あにき〜、ミサイルが誘爆したよ〜!』

 

 通信機器が拾った悲鳴混じりのやり取りは、あのホバリング・ノラから発せられていた。これにはレナも驚かされた。

 

『この声って、ピチピチ!? なんで賞金首が賞金首に乗り込んでるのよ!?』

『ちぃ! 気付かれたなら仕方ない!! ステピチ、降下ザンス!!』

 

 けたたましいローター音が大きくなり、スラム街の壁に描かれた落書きチックな犬の顔を持つ、ふざけたデザインの武装ヘリが舞い降りた。口の部分に骨まで咥えて、ちょっと愛嬌のある顔と呼べなくもない。

 

『ここで会ったが――』

『砲撃演舞、くらえぇぇぇーっ!!』

 

 だが、わざわざ射程内に飛び込んできた獲物と悠長に会話するハンターなどいない。めぐみんは情け容赦無く電撃を浴びせかけた。何かを言いかけていた気がしたが、どうせくだらない恨み節だ。わざわざ聞いてやる義理は無い。

 

『ギャアアア!!』

『自分から狙いやすい位置に来るなんてね!! 自殺したいなら手伝ってあげる!!』

 

 ウルフからも多段ミサイルの雨が電光石火で放たれる。敵戦車に主砲を撃つついでとは思えぬ早業だった。

 

『あわわわわ! じ、上昇ぉーっ!!』

「させねえっつうの!」

 

 カズマが操る野バスからも、ダイキャノンに搭載された特殊砲弾による狙撃がローターの付け根を狙った一撃が放たれた。

 殺傷力の限りなく低い弾だが、プロペラの軸に直撃させれば戦術効果は絶大。回転がブレたホバリング・ノラが低空でキリモミ回転を始めたところに、ウルフの多弾頭ミサイルが次々と直撃した。

 

『ノオオオオォォォォォーッ!!』

『ヒエエエェェェェーッ!! あ、あにきぃ〜!!』

 

 ピチピチ達の情けない悲鳴が、またもオープンチャンネルで放送された。ホバリング・ノラにはかなりのダメージが入ったが、撃墜には至らず。再び上空の分厚い雲まで後退されてしまった。

 

『はあ、はあ、はあ! 小癪なハンターどもめ! けど、そう簡単にはやられないザンスよ!! なにしろ今のミー達は――』

「めぐみん!」

『分かっています、カズマ!! 砲撃、演〜舞!!』

 

 たった今、カズマがヘリのローターにぶち当てたシグナル弾からの信号を目印に、めぐみんが追撃の電撃を喰らわせる。姿を隠そうと、尻が見えているようでは意味がない。

 カズマも便乗して多弾頭ミサイルをお見舞いし、激しい爆発が幾つもにも重なる。

 

『ぐぬぬぬぬっ!! そっちがその気なら! こっちも切り札を切るザンス!!』

 

 なおもしぶとく飛行を続けるホバリング・ノラは、黒煙を吐きながらもクラスター爆雷をばら撒いてきた。それが切り札? とカズマが訝しんだ直後、爆雷が弾け飛んでけたたましい金切り音と強烈な閃光が戦場を包んだ。

 ジャミングの効果も含まれていた光の中にシグナル弾の反応も消えてしまい、ホバリング・ノラの姿は霧と雨雲の向こうへと消えてしまう。

 同時に、メタルマックスを包囲していた敵戦車部隊も後退を始めた。レナ、ダクネス、アクアの三人によって片っ端から破壊してしまったので、鉄くずとなった車体が大量に放置されたが、動けるクルマは潮が引くようあっという間に姿を消した。

 

「逃げた?」

『多分……気配が消えちゃった。何のつもりよ、あいつら……ん?』

「どうした、レナ?」

『何か聞こえた。誰か、音とか拾ってない? なんか地鳴りみたいな――』

 

 レナが以上を感じたその時、まるですぐ側に岩でも落ちたような凄まじい轟音が、谷間に響き渡った。

 轟音は一度では済まず、徐々にメタルマックスへ近づきながら何度となく地面を揺らす。まるで、巨大な存在の足音であるかのように。

 

「足音……あ!!」

 

 ふと、カズマが()()()()に考えが及んだ時だった。

 立ち込める霧のカーテンに、薄っすらと巨大な影が映り込む。

 それはブロッケン現象のような光の作用ではなく、確かな質量を振りかざしてメタルマックスの前に姿を現す。

 

 大型戦艦から野太い脚と尻尾を生やし、艦橋と並び立つように長い首の生えた、アシッドキャニオン最大の賞金首モンスター。軍艦サウルスのお出ましであった。




 やっぱりコイツは外せないでしょう。
 余談ですが、ウルフに積まれた多弾頭ミサイルはW−トルネード、野バスはATMひぼたんの想定です。

【雑に処理された賞金首Part2】
[ダイダロス]
 前回のラストでメタルマックスと遭遇して、勢いで撃破された暴走無人戦車。リローデッドどころかSFCの頃から似たような倒され方をしてきたTHE・見掛け倒し。もちろん主砲は回収され、野バスの(使われない)大砲となった。
[ヒトデロン]
 ダークカナルを抜けた直後に遭遇し、その場のノリで撃破。謎の音波兵器はともかく、この耳栓は誰の私物だろうか?
[きゃたつらー]
 モロ・ポコに訪れた際、いつの間にかダクネスが倒したことになっていた。すっ転んで階段に頭をぶつけたのが原因らしい。謎の肝もゲット。
[サンディダンディ]
 道すがら怪しい熱源体を発見したが、暑さでやる気が出ずにスルー。後日、別のハンターに倒された。
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