この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

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 ただ世界観のせいで聖騎士もろともキャラ崩壊してる部分があったりしまして。


第五話 次なる町、それはエルニニョ!

 レナの熱もすっかり下がり、もう峠は完全に越えただろうという日の未明。

 カズマとアクアはナイル老人に付き添って、北を目指すトレーダーの一団に同行していた。

 本当はアクアは町から出たくなかったようだが、首輪の呪力のせいでカズマから一定距離置くと自動で引っ張られることが判明し、渋々付いてきていた。

 今回の旅の目的は、エルニニョというマドよりも大きな町で、バギー修理の資材を手に入れることだ。

 

「それはいいとして。本当にイリット一人にレナを任せて良かったんですかね?」

「ほっほっほ。心配性じゃな、カズマよ。容態はとっくに安定しておったろうに」

「そりゃもう体は健康でしょうね。連日のようにセクハラしてくるし!」

 

 ぶーたれ顔のアクアによれば、ドサマギで抱きつかれる、胸を揉まれる、スカートに手を突っ込まれる、そうでなくとも口説かれるなどの被害に遭っているそうだ。どうやら完全に異性に食指が向かない人種らしい。もったいないなとカズマも嘆く。

 明るい金髪に白い肌、スタイルも抜群で胸もほどよく大きいと、レナの容姿は世紀末どころか現代日本の大都会でも目を引くほどだろう。女性に免疫のないカズマにはシゲキが強すぎるレベルだ。

 それが褐色黒髪スレンダー美少女であるイリットと、日増しに親密になりながらイチャイチャしているのだから、眼福には違いない。男性からすれば大いなる損失でもあるが。

 

「というかナイルさんは孫娘が変な方向に目覚めちゃってもいいの?」

「それもまた人生。こんな時代だ、人の価値はどれだけ遠くへ行ったか、どれだけの人に出会ったかが全てじゃろう」

「お孫さんは戻ってこられない彼方に光速で突き進んでるけど」

 

 それはそれで、と受け入れてしまうナイル老人であった。

 

 

 朝日に煌めく砂漠を横目に進み、昼にはエルニニョに到着した。

 マドの町とは比べようもなく、人も建物も残っており、辛うじてだが「都市」の面影が残っている。町の中央には地上五階程度だが、鉄筋コンクリート造りのビルまであった。かつてはオフィス街だったのかもしれない。

 ナイル老人の目的地はこのビル一階のクルマ修理屋で、バギーの修復に必要な道具を探しに来たのだ。

 しかし。町が賑やかな分、同時に物騒な臭いがあちらこちらから立ち込めていた。

 声を潜めたアクアが、カズマの服の裾を引っ張った。

 

「か、カジュマさ〜ん……あれ、あそこ……」

「げっ。グラップラーまでいるのかよ……」

 

 キャラバンと別れ、中央のビルへ向かう短い間に、あのマドの町を襲った連中と同じ装備の兵士達を何人も見かけた。

 

「め、目を合わせちゃダメよカズマ!」

「言われるまでもない……」

 

 息を潜め、二人はナイル老人の影になったかのように後ろに続いた。

 ビルの中にもグラップラーはいた……というより、このエルニニョ・センタービルこそが近辺のグラップラーの本拠地らしい。

 

「まさかあのテッド・ブロイラーもここに!?」

 

 本当にいたら何をどうしてもどうしようもないが、思わず周囲を警戒してしまうカズマ。その声を聞きつけて、近くのグラップラー兵士が歩み寄ってきた。

 

「安心しな、坊主。あの方はグラップラーのカリスマ、四天王の筆頭よ。こんな辺境の拠点に居座ったりはしねえさ」

「は、はあ。そうですか……」

「お前ら、ハンターには見えねえな。トレーダーか? だったら安心しろ、トレーダーは襲うなって言い含められているからな。せいぜいオレ達の役に立つことだ、そうすりゃ甘い汁も吸えるぜ」

 

 言い方は乱暴だが、グラップラー兵士はカズマの肩を親しげに叩くと、元の配置らしき入り口の左右へ戻っていった。

 グラップラーといえども人間の集まりなので、中にはああいった気さくな類もいるのだろう。

 

「ちっ。寄生虫どもが」

 

 カズマとアクアにはむしろ、小声で吐き捨てるナイル老人の静かな凄みの方が恐ろしく思えた。

 

「カズマ、それにアクアよ。どんなに人が良さそうでも油断するなよ。一見するとワルっぽいヤツが友好的に出てくると『あれ? こいつ意外といいヤツじゃね?』と感じるのは、古来より『映画版のジャイアン現象』と呼ばれておるものじゃからな」

「存じております……」

 

 果たしてジャイアンが何者なのかは伝わっているのだろうか。どうでもいい部分が気になるカズマだった。

 

 

「う〜、トイレトイレ」

 

 今、トイレを求めて全力疾走している俺は一般的な転生者。ちょっと違うところを上げるとするなら、舞台が異世界ファンタジーじゃなくって世紀末救世主伝説なところかな。

 などと脳内でナレーションを再生しつつ、センタービル横の仮設トイレでカズマは用を足した。このビル、屋内の水道管などが破損していて、トイレはあれど水が流れないらしい。なのでビル横に汲取式トイレが作られたのだった。

 

「田舎でも絶滅しつつあったのに、ぼっとんトイレ」

 

 すぐ横には泥水が吹き出す水道もあるので、直そうと思えばセンタービルの中も修繕できるだろうに。不満を堪えつつ、ビル一階の修理屋へ小走りで戻ろうとした、そのときであった。

 

「わっ!?」

「うをわ!」

 

 角を曲がった拍子に、誰かと正面からぶつかってしまった。

 相手はカズマの胸元ぐらいの身長しか無い、黒髪か非常に濃い茶髪の少女だった。カズマはちょっとよろけたぐらいだったが、相手の少女は思いっきり尻もちをついてしまった。

 

「ご、ごめん! 大丈夫か!?」

 

 慌てて助け起こそうとすると、少女もカズマを見上げた。

 右目に眼帯を着けた少女は、差し出されたカズマの手をキョトンと見つめ、次に足元に視線を落とした。

 

「あ」

「ん?」

 

 つられてカズマも自分の足元を確認した。

 

(何か踏んでる?)

 

 恐る恐ると右足を上げると、転がっていたのは黒い台形の物体だ。中央にドクロを象ったボタンが添えられたそれは、どこから見ても自爆スイッチ。

 

「し、しまったぁ!!」

 

 少女が慌ててその場で地に伏せた、その一秒後。

 エルニニョの中央を横切る大通りで、強烈な爆音と閃光が迸った。




 魔法が無いなら物理的に爆裂させるっきゃない!
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