この素晴らしきメタルマックスに祝福を! 作:無題13.jpg
楽しみにしてくださってる方、申し訳ありません。
合体したピチピチの姿は、以前に対峙した改造ガルシアに酷似していた。
ゾンブレロとポンチョを身にまとい、右手がガトリングガン、左手がショットガン、右肩に大砲を担いだ、単純で分かりやすい戦闘ボディだ。
『うひょひょひょひょひょ! 驚いたザンスか? オトピチの持つチートアイテム「シンクロナイザー」は、心・技・体の揃った相手と合体し、力を何倍にも高めるのザンス!! つーかお前が授けたんだから当然覚えてるザンスよね、女神アクア!』
何故かボディビルダーみたいなポージングを決めて、マッシブなメタルボディを強調してくる合体ピチピチ。自信こそ溢れているものの、いかんせん昭和のギャグ漫画に強者の威圧感はあんまりない。
「あんまり強そうじゃないわね」
アクアからも身も蓋もない感想を述べられる。カズマからはコメントの代わりに、主砲と多段ミサイル、電撃の特殊武装を片っ端から撃ち込むダーティなラッシュ攻撃が放たれた。
『ほげーっ!! おまっ、えーかげんにせーよ!! 不意打ちばっかじゃねーか、おんどりゃー!!』
「悪党が言うことかよ、それ」
構うものか、と続けてもう一回のダーティラッシュが放たれた。
『あだだだだ!! こなくそ! ピチピチキャノンを受けるザンス!!』
砲撃にさらされながらも、合体ピチピチが肩の大砲で反撃してくる。
着弾予想地点から急発進して砲撃を回避しつつ、カズマは電撃S−Eを中心に攻撃を仕掛けていく。
ポチタンクからも搭載された強力な火炎放射による攻撃が顔面に加えられ、合体ピチピチの顔で爆発した。特殊な燃料による炎は土砂降りの酸性雨にも負けずに燃え盛り、ピチピチの顔周辺を燃やす。
『ギャーァァァァッス!!』
負けじとガトリングガンとショットガンを撃ってくるが、顔面が大炎上中のせいでロクに照準も合わず、明後日の方向を撃つばかりだった。
「カズマさん、カズマさん? あいつ、あんまり強くなくない?」
「元があのピチピチだしな。さっさと倒して、レナ達の方に戻るぞ。まだ戦闘が続いているみたいだ」
『み……ミー達を侮るんじゃあナイ、ザンスよぉぉ〜っ!!』
コケにされたら憤るぐらいの矜持は持っていたらしく、合体ピチピチがアクアに向けて銃器を構える。狙いも適当に、当たるを幸いに乱射し始めた。
『すべてはテッド・ブロイラー様とグラップラーの為! 何より憎き女神アクアを打ち倒す為!! ピチピチブラザーズはいざ往かん!!』
「まだあんなこと言ってんのかよ、あいつら」
合体しようと、物語が佳境に入ろうと、ある意味ブレないピチピチは、狙いをアクアに絞ってガトリングガンとショットガンで集中砲火を浴びせる。
野バスにもショルダーキャノンで牽制を忘れず、一発の命中精度よりも連射力と爆発で大雑把に攻めてくる。意外と装甲の薄い野バスには、結構痛い戦法だった。
直撃弾が怖い程度の攻撃力も有しており、カズマは回避主体の戦法に切り替えざるを得なくなる。
「思ったよりも火力高いな、あいつ! アクア!!」
「えっ!? な、な、なに!?!?!?」
こんな状況で突然呼ばれ、嫌な予感しかしないアクア。悪い顔をしたカズマは、服従スペルを通じてアクアに命じた。
「ドリルで突撃!!」
「そんなこったろーと思ったーっ!!」
ポチタンクの砲塔部分が縦に裂け、逞しいドリルが展開する。地中に埋まった敵を地面ごと破砕する、強力な接近戦用武器だ。
当然、近づかなければ当たらないので、アクアは砲火の中を真正面から合体ピチピチへ突撃せざるを得ない。
「あだだだだだこれめっちゃ痛いぃぃぃぃ!!」
下手なクルマの機銃よりも強力そうなガトリング&ショットガンでも、ポチタンク……というより、アクアの桁外れな防御力を貫くには至らない。痛いと叫んではいても、血の一滴も流れないなら実戦においては「効果なし」と同義語なのだ。
ただ、普段のアクアにはその痛いのを我慢して戦う根性が無いので、最大限に活かすには外部から強制的に命令を実行させる必要があるのだが。
「痛いって言ってるでしょうが〜〜〜〜〜っ!!」
『ぎゃぼーぉぉぉっ!?』
せっかくドリルがあったのに、脳天から合体ピチピチの土手っ腹に突っ込んだアクアは、質量の差をものともせずに相手の体をふっ飛ばした。
「こ、ん、のぉぉぉぉ〜!!」
そのまま敵に組み付いて、謎のエネルギーをまとった右の拳を振りかぶる。
「ゴッドブロォォォォォォーッ!!」
アクアの拳が装甲を貫き、圧縮されたエネルギーを敵の内部にて解放。指向性のエネルギーが合体ピチピチの背中側まで突き抜けていく。
上下半身が分断された合体ピチピチは、元のオトピチとステピチへと戻って吹き飛んでいく。そしてより損傷の激しかった下半身担当のオトピチが、地面に接するよりも先に大爆発して跡形もなくなった。
比較的無事なステピチも無傷ではなく、激しく地面に衝突して何度も弾み、全身がスパークして内部骨格が露出するほどの損傷を受けていた。
「あわわわ、しまった! 髪が! 女神の髪が傷んじゃう!」
勢いで飛び出してしまったポチタンクに慌てて戻ったアクアは、浴びた酸性雨を真水に変え、ほっと一息吐いた。
「お前、あんな技なんて持ってたのかよ……」
カズマにとっても初見の技だ。驚きの声に、駄女神は鼻をフンスカ膨らませてこれでもかと胸を張った。
「ふっふーん! 女神パワーを一点に集中すればこれぐらい、余裕余裕! ちょっとチャージに時間が要るけどね。もっと信仰心の厚い世界でだったら連発も可能なんだけど、この際だから贅沢は言わないであげるわ」
「ちなみにチャージ時間ってどれくらい?」
「今の一発分の神力だったら丸一ヶ月くらいかしら。使うタイミングがなかなか無かったけど、これならスナザメぐらい素手で――」
「アクア、その場で腕立て伏せでもしてろ」
「あれー!? カズマさんどうして!? どうして服従スペルなんてイヤーァ!! 服が!! 生身はともかく服が傷む! 髪もゴワゴワになっちゃうぅぅぅぅぅ!!」
「そんな大技があるんだったら先に言え!! ついでに、使うんだったらあんな小物にぶっぱしないでテッド・ブロイラー相手に取っておけド阿呆!!」
一ヶ月どころか、メタルマックスはこの後数日以内にバイアス・シティへ乗り込まねばならない。クリスを見捨て、かつヴラドの研究とやらを黙殺するならその限りではないが、絶対にそれをしてはいけないとカズマの直感が告げている。特に後者。
テッド・ブロイラーがわざわざカズマに自分達の目的とリミットを伝えに来たのは、本人の言う通りゲームのつもりだったのだろうが、同時に「お前らに阻止なんて無理だけどな!」という大前提があるからこその挑発だ。使える武器は一つでも多いに越したことはない。
それを、たかだか賞金額8000Gの小物相手に浪費するなどと……。
「だ、誰が取るに足らない小物ザンスか……ゲフッ」
そこで、アクアにツッコミを入れるのに夢中で忘れかけていたステピチが、ボロボロの体を引きずって現れる。銃口を向けてくる辺り、まだやる気のようだが……ほとんど死に体だ。
「み、ミー達だって、この世界で必死に生きてきたザンス! 泥をすすりながら今日まで頑張ってきた人生……小物と断じられる謂れはないザンス!」
割れたサングラスの奥から覗くカメラアイから、ステピチの憎悪がアクアに突き刺さる。しかし、猟犬の女神からの反応は極めて冷淡だった。別に腕立て伏せに集中しているからではない。
「そういうセリフは、真面目で善良に生きてから口にしてよ」
「は、はァァ!?」
「世紀末でだって、良い心を捨てずに生きてる人が大勢いるのに。カズマとか、あのミツルギ……だっけ? 一線を守り抜いてる人の前で、外道に走った分際で頑張ってるとか口にしないでよ」
「ん、ん、んなにをおぉぉぉぉぉ〜っ!!」
「あんたが今そうなってるのだって、所詮は自業自得でしょ。二度目の人生を棒に振ったのも、悪党に堕落したのも」
元はと言えばお前のせいだ。そんな想いで銃口をアクアに向けたステピチだったが。
引き金を弾く暇もなく、野バスの砲弾を受けて勢いよく転がっていった。
断末魔の悲鳴もなく爆発し、サイボーグからただのスクラップに成り果てたステピチは、このまま酸性雨に腐食されて朽ち果てるばかりだ。
「今回は随分とバッサリ切ったな」
黙々と腕立て伏せを続けるアクアの傍らに野バスを寄せる。
すでに服従スペルの効果は切れているのだが。自戒の為か、アクアはカズマに答えず、しばらく腕立て伏せを続けていた。
グラップラーと魔王軍、画面に映っていないだけでやってる悪事は同等なんじゃないかな〜……と思ってましたが、やっぱ前者の方が悪質なんでしょうね。軍事力持ったただ愚連隊ですし、グラップラー。