けど投稿ペースは落ちるかも。
ウルフの弾倉が底を突き始めたというのに、軍艦サウルスは涼しい顔で闊歩する。だが、同時になかなか捕まらないウルフに苛立っているようにも思えた。
「並の爬虫類より頭良いのかもね。少なくとも――」
レナが進行を一旦停止し、主砲の照準を一番効果がありそうな恐竜の頭部へ合わせた。
向こうもレナの殺気にでも反応したのか、足を止めて大砲の照準をウルフへ向ける。
……その足元では、巨大な前脚に圧し潰されながらも全身を突っ張って押し返そうとする、ダクネスの姿がある。あのドMマッスルと軍艦サウルスなら、後者の方が知恵周りが良さそうだ。
「ぐぬおぁ〜〜〜〜! こ、この重圧、もしやデストロイヤー以上だとでもいうのか〜〜〜〜!?」
圧死寸前にも関わらず、やっぱり嬉しそうなダクネス。余裕がある故か、それともやはり死にかけるぐらいキツイのが好みなのか。
いずれにしろ、レナは思うのだ。こいつを一度でも殺せたスカンクスは、実は四天王最強だったんじゃないか、と。
そうやって余計なことを考えていたら、サウルス砲の直撃を喰らってウルフごとふっ飛ばされてしまった。
「ぎゃあああああ〜! し、しまったわわわわわわ!?!?!?」
転がる車内でさんざっぱら頭をぶつけ、それでも痛いで済む辺り、レナも十分すぎるほど人間を超えている。
ひっくり返ってしまったウルフに、軍艦サウルスは追撃の大砲で狙う。
それを、真横からゲパルトの電撃が妨害するべく割り込んだ。
しかし軍艦サウルスは、電撃を受けながら叫び声の一つも上げない済ました顔のまま、ウルフを吹き飛ばすべく大砲を発射する。
「あらよっと!」
レナは咄嗟にクルマを降りて、生身の銃で砲弾を撃ち落としに掛かった。
直撃しそうだった二発を空中で爆散させ、左右に逸れた分は無視。地面を穿った爆風に煽られるも、そこは根性で踏ん張った。
「無茶をしますね!」
ドリフトしながらのゲパルトがレナの傍らに横付けされる。
「ダクネスほどの無茶じゃないと思うけど……よいしょ!」
降りたついでで、レナはウルフを持ち上げゴロンと元の位置に戻した。数十トン生身で持ち上げることが無茶でないなら何が無茶なのか。
「それよりレナ、カズマから連絡がありました。あの武装ヘリと、ついでにビチビチも始末したそうです」
「ピチピチ、ね。う〜ん、だったら一度撤退してもいいかな。
「効いていないわけじゃないですよ。船体部分や生身にも傷がついていますから。血が出るなら殺せるはずです!」
「その傷が塞がってるように見えるのがね」
そこまでとんでもない再生速度ではないものの、元の体力が桁違いだ。めぐみんが言うように無傷ではないが、さんざっぱら砲撃してもケロッとされていると、さすがにこっちの自信も揺らいでくる。
「あ。ダクネスが尻尾でふっ飛ばされました」
「満タンドリンク持たせてるから大丈夫よ。……よし、こうなら一点集中攻撃よ!! 頭が潰れればデカブツだって沈むでしょ!」
「頭ってどっちですか? 生身? 艦橋?」
「あ! ……な、生身で!!」
軍艦サウルスには、恐竜の首が艦首付近の看板から生えている以外にも、船体中央に艦橋がきちんと据えられている。そこにあるレーダーやら砲塔がキチンと仕事をしている辺り、軍艦サウルスとは恐竜を戦艦に改造した超巨大サイボーグなのだろう。
サイボーグであるなら、生身の脳が弱点であるはず。
「了解です! アイリス、照準補正を頼みます!!」
「承知しました。ジェミナイザー、プログラム修正。射撃補助プログラム『トリプルストライク*1』、『ダブルストライク*2』、同時起動」
「さあ! 喰らえ軍艦サウルス!! 通常2連射のドリルブラストⅡがトリプルストライクとダブルストライクで5連射! それを砲撃演舞で3連射すれば、お前のバースト砲を上回る15連射だーっ!!」
あまりにも連射力を付けすぎたせいで、ビカビカと視界がホワイトアウトするほどの電撃が周囲に迸る。降りしきる雨に稲光が乱反射して、美しいけど極めて危険な放電現象がウルフの方にまで飛び火した。放電用のアースチェインが無かったら無駄なダメージを負っていただろう。
そんな超速連射を喰らいながらも、軍艦サウルスは「眩しいなこの野郎」とでも言いたげに反撃してきた。
「なんですって!? バック、バック!!」
大慌てで距離を取りつつ、今度はアイリスがダブルショットで軍艦サウルスを撃つ。やはりノーダメージではなさそうだが、かといって致命打には程遠い。
むしろ無駄な怒りを買ったことで、巨体を唸らせ物凄い勢いで突進してきた。
「ひぃぃぃ〜っ!! 今度は狙いがこっちにぃぃぃぃ〜!?」
「めぐみんは運転に集中を。射撃はわたしが担当します」
「ま、任せましたアイリス!!」
そうして敵の狙いが外れ、ノーマークとなったレナは、ウルフを走らせダクネスの元へと急いだ。
「まんたーんドリンクっ! 不味い、もう一杯!!」
「無駄遣いしてないでよ!! ていうか、今の何? どうして商品名叫んだの?」
「何を言っているんだ、レナ? 満タンドリンクを飲む時の正しい作法だろう。君だって玄関で靴を脱いでから家に上がるじゃないか*3*4」
まるでそれが常識であるかのように語るダクネスにツッコむのも野暮だと頭を切り替え、レナはクルマのハッチを開く。
「まあいいや。はい、ダクネス」
取り出したのは金属製のベルトと、フック付きのチェーンだ。それを問答無用でダクネスの腰に巻きつける。
「な、なんだレナ!? こんな時に妙なプレイは止めてくれ、戦いに集中できなくなる」
「あなたが戦いに集中してる時なんてあったかしら? まあとにかく、それ付けてちょっと待ってて」
頭上にはてなマークが浮かんでいそうなダクネスを置いて、レナは車内に戻っていった。
ダクネスがチェーンを辿っていくと、どうみても主砲の砲口と繋がっている。
ドMのダクネスは、瞬時にレナの作戦を察知した。ヨコヅナオーラを全開にし、ドラムストレッチで体を解しながら、
「ダクネス!!」
レナの一声に、ダクネスは「応ッ!」と雄々しく応じて身構えた。
ウルフの主砲が火を吹く。通常の砲弾ではなく鋭いアンカーであったそれには、ダクネスが繋げられたベルトの鎖が接続されている。
ダクネスの体が、アンカーに引きずられて空中へ飛び出していった。
常人、というかカズマやめぐみんがこんな事をしたら、上半身と下半身が泣き別れてDr.ミンチの世話になっただろう。ダクネスだから耐えられたし、ダクネスだからゾンザイな扱いに悦べるのである。
「アイキャンフラーーーーーイ!! からの〜っ!!」
アンカーが軍艦サウルスの甲板に突き刺さる。当然、より軽いダクネスの体はそこで止まらない。ゲパルトにばかり目が行っていた首長竜の側頭部へ、肉の砲弾と化して突き進む。
「必殺! ジェットハーーーーーーット!! せりゃ!!」
桁外れな頑丈さを武器にして、ダクネスの一撃が炸裂した。
雨の谷間に激震が轟き、軍艦サウルスの首が半ばから直角にへし折れた。
『ギャオォォぉぉぉーーーーーーーーーーーーッ!?!?!?』
断末魔の咆哮が大気を揺らす。膝を折った軍艦サウルスは、長い首をダランと地面に付けて、動かなくな――、否。
恐竜部分は絶命したが、残った砲塔が一斉に上向き、分厚い雲を目掛けて砲弾を乱発させた。
「え……花火?」
直前まで逃げ惑っていためぐみんは、次々と上空で起こる爆発に、違和感と覚える。
あれは攻撃用の砲弾ではなく、すべて信号弾なのだ。遠距離の仲間に自分の状況を伝える古典的な手法だが、そんなものを打ち上げるということは
一瞬、グラップラーかとも考えたが、軍艦サウルスは賞金首であっても野生のモンスターだ。ヤツらの手先ではない。となると、相手は……!
めぐみんが思い至った恐ろしい考えを肯定するように、レインバレー全体が震撼するかのような、超弩級の地鳴りが巻き起こる。
いや、違う。それは地鳴りではない。あのデストロイヤーを遥かに超える巨大質量が、この場所へ向かってくる足音だ。
霧に浮かび上がった、山が動いているかの如き凄まじい巨影に、百戦錬磨のメタルマックスといえども言葉を失った。
たった今、倒したばかりの軍艦サウルスが三体(三隻?)。
そして、それらを従えるのは目測でも軍艦サウルスの優に十倍に達する、ピンクのボディの軍艦サウルス。
レナ達は誤解していた。あの軍艦サウルスなど、所詮は駆逐艦クラスに過ぎなかったことを。
ヤツこそ最大最強の賞金首*5、母艦サウルスである。
「総員、撤退ぃぃぃ〜〜〜っ!!」
リーダーの判断は素早く、メタルマックスは蜘蛛の子を散らすような慌ただしさで雨に紛れて引き上げるのであった。
ぶっちゃけ軍艦サウルスにUバースト砲とドリルブラストⅡ(トリプルストライク+ダブルストライク)で電光石火&砲撃演舞したらクリア前装備で十分……というのはナイショです。体力どころかパーツの自己修復もしないし。