この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 読み直すと内容が薄い気がしましたが、今回で章区切りとします。


第六十三話 同調式開閉ナントカ

 レインバレーの酸性雨の中で、ひっそりと佇むSFチックな未来型都市、メルトタウンには、ヒタヒタと死の影が近づきつつあった。

 建物が酸性雨に耐えられても、中で暮らす住人はそうもいかない。強酸を真水にろ過して生活用水を得なければ生きていけないのだ。

 

 そのろ過装置が、長年の酷使の影響で機能不全を起こし始めていた。

 浄化しきれない成分が水道に混ざり、微妙な濁りと生臭さが現れるようになった。

 浄水装置を修理したいが、装置があるのは地下下水道の奥。そこには凶悪なモンスターが棲み着き、手出しが出来ない。

 このままでは近い内に清浄な水が手に入らなくなってしまう。そんなタイミングで、満身創痍のメタルマックスがメルトタウンを訪れた。

 

 

 

「すげえ! みるみる水が澄んでいくぞ!?」

「水色髪の姉ちゃん、本当に浸かるだけで水を浄化しちまいやがった!」

「浄化用アンドロイドか? すごい技術だな……」

 

 事の次第を聞いたカズマは、早速アクアを貯水槽に放り込もうとした。

 しかし猟犬の女神は命じる前からスクール水着(酸耐性&電気耐性80)に着替え、自分から貯水槽に飛び込んだのだった。

 無論、最初は住人達も大驚愕であったが、みるみる水質が改善されていくと、上記のリアクションでアクアを称えたのである。貯水槽でクロールしている女神とはこれ如何に。

 

「じゃ、この勢いで地下の浄化装置の修理もやっちゃいますか!」

「いいのか? 正式な依頼が無いんじゃ、下手すりゃタダ働きだぞ?」

「それ、あなたが言うことカズマ?」

 

 ニマニマとした笑みで、レナはカズマを見上げた。水の不浄を聞いて真っ先にアクアを放り込もうとしたことも、リーダーにはお見通しだ。

 なお浄水装置を直した場合の報酬は、すでにメルトタウンのハンターオフィスと交渉済みだった。賞金の換金ついでで、正式な依頼を受けていたのだとか。

 

「なるほど。メモリーセンターのお姉さんを口説くので時間を食っていただけではなかったのですね」

「……なんで知ってるのめぐみん。見てた?」

「フラれるとこまでバッチリと。早いのは仕事だけにしてください」

 

 地の果てまで来ても、相変わらずのリーダーだった。

 

 

 

 地下下水道を闊歩していたワニやらヒルやらのモンスターは、一般人には確かに凄まじい脅威であるのだろう。実際、マドの町やデルタ・リオ近辺のモンスターと比べたらハムスターとヒグマぐらいの戦闘力差がある。

 が、今となってはそんな凶悪モンスターですら、カズマは全力投擲したスパナの一撃で倒すことが出来る。

 

「うおるァ!!」

 

 よく分からないプリンみたいなモンスターにレシプロスパナを投げつければ、半固形の謎物質が飛散する。ヤドカリならば甲羅が砕け、三つ首の蚊は叩き潰れた。プラチナカラーの亀にはさすがに効果がないが。

 クルマが持ち込めなくても、超一流のハンターは十分戦えるのだ。

 

「むむむっ。カズマ、いつの間にそんな強肩になったのですか。変な養成ギプスでも装着してました?」

「いや、なんか気づいたらいつの間にか……って、なに触ってんだよ!?」

 

 めぐみんが、これまでの経験で逞しくなった上半身を無遠慮に触って……というかまさぐってくる。ほうほうと目を輝かせ、爆裂アーチストは何やらブツブツ呟いた。

 

「ちょっと、二人とも? そういうのは宿の部屋に戻ってからにしてちょうだい。一応危険地帯よ、ここ」

「レナの意見に賛成します。めぐみんは周囲の警戒に戻ってください。カズマを触る役目はこのわたしが引き継ぎます」

「あなたも張り合わないの、アイリス。筋肉触りたいなら、ダクネスにしなさい」

「拒否します。筋肉ではなくカズマを触りたいのです」

 

 アンドロイドが恥ずかしい事を言っている気がするが、ほどほどに戦闘をこなして一行は先へと進んだ。

 

「あ。ここよ、ここ。浄水装置って看板が出てるわ」

 

 先行していたアクアが、天井付近を指差した。掠れたプレートが寂しく残っている。

 電源の死んだ電動ドアをダクネスの怪力でこじ開ける。残っていたセンサーが反応して自動で明かりが灯った。

 低く唸りながら運転を続ける、平屋の一戸建てぐらいはありそうな機械。これが酸性雨の浄化装置だろう。

 

「修理できそう?」

「見てみないと分からん。調べるから、モンスターが来ないか見ててくれ」

 

 カズマは仲間に見張りを任せ、メカニックキットを担いで部屋の奥へと進んでいった。

 

「お待ちを、カズマ。ここの機械もヴラド製です。わたしが役に立てるでしょう」

「む……コンピュータの操作なら、わたしの方がカズマより得意ですよ」

「二人も来る必要はありません。それに高度演算機能を持ったわたし以上のエンジニアなど、今の地球上には存在しないでしょう。同型機が残っていなければ」

「そうですか。じゃあカズマの代わりに修理してきてください。カズマ〜、機械の修理はアイリスがやってくれるそうなので、一緒に休憩しましょう!」

「だから、張り合うなっつうの!」

 

 結局、リーダーの判断で二人ともカズマに随伴する形となった。過保護なようだが、部屋の奥にモンスターや暴走警備ロボが無いとも限らない。

 

「そ・れ・に♪ 可愛いと思わない? 三人とも初心で、擦れてなくって♡」

 

 ニンマリ笑顔でカズマ達を見送ったレナのコメントは、きっちり三人に届いていたが……敢えて無視したのか、リアクションは特になかった。

 

 

 

 小一時間ほど経過して。

 一度修理の様子を見に行ったアクアが戻ってきた。

 

「なんかふぃるたー? の自動洗浄機能が壊れてて、根詰まりしてたんだって。もう一、二時間の作業って言ってた」

「オッケー。じゃ、こんなところでなんだけど、ゆっくりしてましょうか」

「うん。……あれ、ダクネスは?」

「どっかそのへんで亀と戯れてる」

 

 下水道のモンスター達も、彼女達が獲物とするには危険すぎると判断したのか襲撃が止んで久しい。ダクネスが自分から獲物を探しに出る程度にはヒマだった。

 レナがiゴーグルにどこからかコピーした旧時代の動画を観て一人ニヤニヤしているので、アクアも何かヒマを潰せないか周囲を見回す。しかし特に何も見つからなかったので、下水に足を浸して浄化し始めた。

 ただボーッとして体を浸けるだけでも効果が出るが、意識を集中すると気持ち浄化速度が早くなる……気がした。

 

「珍しいわね、アクアが気を急かしてるなんて」

「ぎゃあっ!?」

 

 深緑の水がみるみる透明度を取り戻していくのを眺めていると、iゴーグルを外したレナが後ろから抱きついてきた。美少女同士のスキンシップは画になるが、抱きしめられるアクアは割と本気で怯えている。

 

「そんなにクリスが心配? 意外と良い先輩だったのね〜」

「あばばばばばっ!! いやぁ〜、食べないでくださぁぁぁ〜い!!」

「そんな本気で嫌がらなくても。傷つくわねぇ」

 

 完全に日頃の行いのせいだが、レナは渋々アクアから離れた。

 当然、テッド・ブロイラーから聞かされた話はレナ達とも共有済みだ。その割にはのんびりしているが、メルトタウンからバイアス・シティまでクルマなら半日の距離も無い。到着して暴れて全てを終わらせるまで、長くても丸一日と掛からないだろう。

 だったら数日のリミットに慌てるよりも、ここで万全の準備を整えておくことが重要というのがレナとカズマ、二人の判断だった。

 アクアも納得はしている……と自分では思っているが、傍から見てると落ち着きが無いように思われたらしい。そりゃそうだ、普段の彼女なら自分から汚水に飛び込んだりするはずがない。

 

「仲良かったの、クリスと」

「そうね〜。天界って横の繋がりがほとんど無かったから。あの子ってば真面目だけどそそっかしいというか天然だから、よく私が面倒見てたわ」

「アクア、それきっとあなたの妄想よ。事実はきっと面倒見られてたのはあなただわ」

「ひどくないっ!?」

 

 見てきたかのように断言されるのも、日頃の行いであった。

 

「けど、クリスが女神なんだったら何でまた地上に?」

「さあ? 地球の歴史にはもう、天界は極力関わらないって――レナ!!」

 

 会話の途中、突如としてアクアがレナを突き飛ばし、彼女を背中に庇った。

 直後、アクアを数発の弾丸が直撃し、顔をガードした腕や、腹に喰らってしまう。だが、実はダクネスよりも防御力で上回る頑強ボディにダメージは無かった。

 

「ちっ! 油断したわ。ありがと、アクア」

「ふふん! どういたしまして……って、あいつは!?」

 

 通路の向こうからゾンビのように体を引きずり現れたのは、ボロボロに朽ちかけた古めかしいロボット……いや、サイボーグだった。

 

『あ、あに、きぃ〜……』

 

 声に混じったノイズが酷いものの、この妙に甲高い声には聞き覚えがある。死んだはずだよ、オトピチっつぁん。

 

「な、なんでまだ生きてるのよ!? 確かに私のゴッドブローで!」

「う〜ん。生きてる感じじゃないわよ、こいつ」

 

 戦闘態勢を取ったアクアに対し、レナは武器こそ構えたが飽くまでのんびり身構えていた。

 

「生体反応なし。本来の脳みそが死んで、機械部分だけが暴走してるのね。ただの死に損ないだわ」

「そ、そんな悠長に言ってて大丈夫!?」

「平気よ。ほら」

 

 レナは冷静に自動小銃で関節部分を撃ち抜くと、前のめりに倒れて藻掻くだけとなる。そのまま立てなくなってしまった。追い打ちにブラストハンマーで頭部や胸部などを叩き潰し、完全に息の根を止めに掛かる。

 

「あら?」

 

 しかし、破壊されたパーツ同士が磁力で引き合うかのようにくっつき、元の形に戻ろうと蠢いている。叩いても叩いても、その細やかな自己修復能力が途絶えることはなかった。

 

「おっかしいわね。動力炉も予備バッテリーもぶっ壊れてるのに。てか、動力炉そのものが再生してない?」

『あ、に、き、ぃ……』

「ん〜?」

 

 腕を組み、どうやって殺せばいいのか分からず頭を捻るレナの肩越しにオトピチのボディを覗き見たアクアは、胸の中央付近、人間で言えば心臓部分に天界の神力が吹き溜まっているのに気づく。

 何かと思って素手で引っこ抜くと、それはキャッシュカードぐらいの大きさの金属板だった。実物を手にすれば、さすがのアクアも思い出す。オトピチに与えたチートアイテムだ。

 チートを抜き取られたオトピチのボディは、それでようやく動かなくなった。

 

「なんなの、それ?」

「えーっと……なんだったかな。かなり便利なアイテムだったハズなのよね」

 

 思い出せなくて今度はアクアが頭を捻るが、カズマ達が修理を完了して戻ってきても、そして翌朝になってバイアス・シティへ出発するタイミングになっても、結局それが何だったのか分からずじまいだった。




 次章から、ついにあの御方との決戦パートです。
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