この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 次はサガシリーズと何かを悪魔合体させてみようかしら。


第六十五話 怒りのテッドファイヤー

 超高速で飛んできたモヒカンと、アイリスのビームセイバーが激突する。

 交差させた光の刃と高速回転するモヒカンの衝突から生じた衝撃波が周囲一体に波及。やがて激しい火花を散らしてビームセイバーが砕けた。

 

「くっ!! なんという――!!」

 

 射線が逸れたモヒカンが、アイリスの肩を掠めて飛んでいき、大きな弧を描きながら引き寄せられるようにテッド・ブロイラーの頭頂部へと再装着された。誠にふざけた機構だが、威力の方もおかしい。

 

「ふっ。テッドファイヤー! がががーっ!!」

「熱バリア!!」

 

 コーティングされたメガフロートの地面ごと焼き尽くす灼熱を、またもアイリスは光波結界で防ぐ。アイリスの立つ地面も含めて、完全に炎熱をシャットアウトしてのけた。

 テッド・ブロイラーも自慢の炎を防がれて驚き……かと思いきや、むしろ凄味のある笑みで愉快そうであった。

 

「そうでなくては面白くない! 一方的な虐殺などというワンサイドゲームには飽きていたところだ!!」

「その余裕がいつまで保てますか?」

「がががー! 崩せるものなら崩してみろ、このテッド・ブロイラーの余裕をなががーっ!!」

 

 テッド・ブロイラーは両手を交互に突き出し、火炎弾を連続で放ってくる。

 アイリスは熱バリアを展開したまま、火炎弾を弾きながらテッド・ブロイラーへ一直線に走り出した。

 

「がががー! 真っ黒焦げになるがいいー!」

「効いていないのが分かりませんか!」

「効いていない? がががー、愚か者めが!! テッドファイヤー!」

 

 両手を合わせての強力な火炎放射に、アイリスは正面から切り込んだ。熱バリアを盾に業火の壁を突き破り、テッド・ブロイラーの顔面に蹴り込んだ。

 小柄ながら100キロ近い重量を持つアイリスに眉間を蹴り上げられ、テッド・ブロイラーの巨体が僅かに傾く。

 だが怯むどころかテッド・ブロイラーは逆にアイリスの足を掴んで受け止め、片手で豪快にブン回した。

 

「がががーっ!!」

 

 アイリスを力任せに地面へ叩きつけ、跳ね返ったところを全力で蹴り上げる。

 

「くぁ――っ!!」

 

 咄嗟に防御したというのに、アイリスの体がサッカーボールのように飛んでいく。無防備に空中へ放り出されたところへ、テッド・ブロイラーが両手を合わせて差し向けた。

 

「っ!! 熱バリア!!」

「ふっふ! テッドサンダー!!」

 

 だが、放たれたのは炎ではなく高圧電流のビームだった。ビームは光波を素通りし、アイリスのマシンボディに激しいショックを与える。

 

「が、ああああっ!?」

「ブロロロー! これでも本職はナースでね。AEDだって常に持ち歩いている。それをちょいと戦闘用に改造した……まあ掟破りの切り札だ。がががー」

「うぐ……が、あ……」

 

 すぐに立ち上がったアイリスだが、その意思に反して体の自由が利かなかった。熱バリアは火炎に対してのみ絶大な防御力を持つが、展開中はそれ以外の防御能力が極端に低下する。そこへマシン系特攻の電撃を受けたせいで、制御ユニットが破損してしまった。

 LOVEマシンも自己修復には数十秒を要する。その間にもテッド・ブロイラーが悠然と歩いて距離を詰めて来た。

 アイリスは体を引きずってでも距離を取ろうと試みるも、ちょうど顎にいいのを喰らったボクサーのように膝が笑っている。テッド・ブロイラーが右手の火炎放射器ノズルを構えながら、興味深そうに顎を撫でた。

 

「ほう。まるで人間の生理反応そのままじゃないか。さすがはヴラド・コープの最終生産型だな。ブルフロッグでさえ、マリリンというデッドコピーしか造れなかったというのに。まだ稼働しているオリジナルが存在したとは」

「はぁ、はぁ、そういうお前は随分と不細工なボディですね! 造形以前にツギハギだらけで、均整も統制もが取れていない。実に……醜いです!」

「手厳しいな。自分では気に入っているのだけどね!」

 

 テッド・ブロイラーの放った火炎弾を、アイリスは地面を転がって回避する。着弾地点が激しく大炎上し、地面の建材が黒い煤を吐きながら蒸発する恐るべき超高温に、さすがのアイリスも顔色が変わった。

 回避に必死となるアイリスを、テッド・ブロイラーは嗜虐的な笑みを浮かべてわざとゆっくり弄んだ。機動力の落ちた状態でもギリギリ避けられる狙いとタイミングで退路を潰していく。

 アイリスもまた、遊ばれていると理解はしていながらも、離脱することが出来ないでいた。逃げ道を一つずつ潰され、追い詰められていく。

 

「逃げろ、逃げろー! 真っ黒焦げになりたくなければな、がががーっ!!」

「この……調子に乗って……っ!!」

「ががー! がががー!!」

 

 ついには前後左右を炎の壁に阻まれ、袋のネズミ状態に陥った。

 LOVEマシンの自己修復は果たしたものの、熱バリアの展開には若干の溜めが必要だ。慎重に動かねば電撃を喰らい、今度こそアイリスのボディはオシャカにされる。

 そのうえ、じっとしていてもいずれは火炎弾か電撃が飛んでくるし、そうでなくても周囲の温度が急上昇しているせいで全身のあちこちからアラートが出ている。装甲はともかく、生体部品が焼け死ぬのも時間の問題だった。

 

「チェックメイトだな、ガール。安心しろ、すぐに仲間も同じところに……おっと、人工物である君では、あの世へ向かう魂など持ってはいないか」

「……ふっ。それはお前も同じだったのではないですか、テッド・ブロイラー」

「なに?」

 

 苦し紛れのつもりで口にした一言が、テッド・ブロイラーの何かを刺激したようだ。

 アイリスにしてみれば反撃の糸口を探す時間稼ぎの苦し紛れだった。だがテッド・ブロイラーは、以前にもレナやカズマを挑発だけして見逃している。意外とお喋り好きというのが、カズマによるこの男の性格分析だ。

 

『あいつの前世、絶対にオレと同じような引きこもりか、そうでなくともクラスの日陰者なのは明らかだぜ。自分の得意分野で饒舌になるところとか、身に覚えありすぎる』

 

 そう悲しそうに語っていたカズマの姿を思い出し、アイリスはテッド・ブロイラーを煽り倒しに掛かった。総口撃開始だ。

 

「アクアから聞いていますよ。あなたは前世で善行も悪行も足りないが故にこの世界に廃棄された、と。その意味するところは分かりませんが、ようするに前世のあなたは()()()()()()()()()()()()()()()()だったのでしょう。グラップラーの兵士のように」

「…………」

「邪魔にもされず、当てにもされないというのは羨ましいですね、気楽で。なのに、どうして第二の人生ではモヒカン頭で『がががーっ』なんてやってるんでしょう。アレですか、高校デビューならぬ『異世界デビュー』ですか? もうちょっとセンスどうにかならなかった――ああ、ぼっちにそういったセンス求めるほうが酷ですね。まことに申し訳ありま――」

「テッドファイヤー、がががーっ!!」

 

 挑発の結果は、まさかの最強攻撃だった。逆上するにしても分かり安すぎである。

 しかし連射可能な火炎弾と異なり、必殺のテッドファイヤーには明確な予備動作と「溜め」が入る。何より攻撃の属性が一目瞭然なのがありがたい。

 

「コード1232!!」

 

 獄炎の放たれるまでの一瞬で、両手足をドリルに変形させたアイリスは、メガフロートの地面を粉砕してコンクリート片を巻き上げ、猛スピードで地中へと姿を消した。

 舞い上げた粉末状の建材は、極僅かな時間とは言え防火壁の役割を果たし、アイリスに逃げる時間をちょっぴりとはいえ稼いでくれた。

 

「がががーっ!! アンドロイド風情が、人の心の古傷を抉りおって!! カズマ君の入れ知恵か、がががー!!」

 

 怒りに燃えたテッド・ブロイラーは、すぐさまアイリスの逃げ込んだ地面の穴へ駆け出し、穴の中へ火炎放射器を向けた。

 

「テッドファイヤー! テッドファイヤー!!」

 

 容赦のないゴリ押しに、建材があっという間にドロドロだ。

 総人工物のメガフロートにこんなことをすれば、当然内部の構造体、そしてそこを走るライフラインなどが大ダメージを被る。テッド・ブロイラーを中心に地面のあちこちが誘爆を始めた。

 

「ぷはっ!!」

 

 数メートル離れた地面に亀裂を生じさせ、息継ぎするかのようにアイリスが飛び出す。振り返ったテッド・ブロイラーが、ヤケクソ気味に必殺技を繰り出した。

 

「テッドファイヤー! &テッドビーム!!」

 

 両手の炎にプラスして、アイビームまでもがアイリスを狙う。

 その寸前で飛行ユニットを展開していたアイリスは、機動力を活かしてテッド・ブロイラーからの攻撃を回避すると同時に、指先マシンガンによる反撃を試みた。

 

「そんな豆鉄砲が通用するものか!!」

 

 戦車の機銃にも匹敵するアイリスのマシンガンをものともせずに、アイビームで執拗に彼女を狙い続けるテッド・ブロイラー。完全に頭に血が昇っている様子だが、それでも狙いは正確だった。しかも、少しでも距離を詰めると途端により高威力のファイヤーやサンダーが飛んでくる。

 かといってビームの出力も侮れたものではなく、直撃を許せばアイリスの装甲も容易く貫通してくる威力だ。

 お互いに埒が明かない硬直状態になりつつあった。しかしだ。

 

「戦闘車両部隊、テッド様を援護だー!」

 

 ここは敵の本拠地で、テッド・ブロイラーは押しも押されぬ大幹部。それが手こずっているというならば、当然部下が黙っていない。

 クルマと歩兵による対空砲火が加わり、アイリスの逃げ道が一気に狭まった。

 

「でかした、お前達! ヤツを地上に引きずり降ろすのだ!! がががー!」

「ヒャッハーのクセに連携を取るなどと!」

 

 分厚い弾幕を避けるべく、アイリスは敢えて地面スレスレまで高度を下げた。そこをテッド・ブロイラーが狙ってくる。

 そこでアイリスは、逆に自分から敵部隊の方向へ突っ込んだ。

 

「あっ!?」

 

 すれ違いざま、グラップラー兵士の顔色が一斉に青くなるのが可笑しかった。

 

「全体、退が――」

「テッドファイヤー、がががー!」

 

 アイリスの予想通り、部下の巻き添えを気にしやしないテッド・ブロイラーは、彼女が逃げる先にいた部隊ごと炎を放った。

 

「うぎゃあああああああーっ!!」

「テッド・ブロイラー様あんぎゃああああああああ!!」

 

 アイリスの後方、ほんの1メートルまで迫った獄炎と阿鼻叫喚の地獄絵図。パニック状態で隊列が乱れたところで、アイリスは再び上空へと逃げた。

 テッド・ブロイラーが苦々しげに舌打ちした。

 

「くっ! 戦車部隊、対空砲火を続けろ!!」

「は、はいぃぃぃ〜〜〜!!」

 

 恐怖に支配されたグラップラーには、暴虐の上官にも逆らおうなどという思考が残っていない。次に自分が焼かれるという恐怖から、一刻も早く原因であるアイリスを排除しようと躍起になる。

 

「どうしようもないですね、こいつら! 上も下も!!」

 

 明確な侮蔑の表情で、アイリスは振り返る。後ろを向いたまま飛行し、両手を変形させた。

 

「コード2332」

 

 生成が追いつかなくなってきた実弾から、動力炉と直結したビーム兵器に切り替えた。威力は跳ね上がる分、継戦能力が著しく低下する奥の手だ。

 それでも、とアイリスはテッド・ブロイラーを狙い撃つ。

 

「ぬおっ!?」

 

 頭部に直撃させ、テッド・ブロイラーを初めて明確に怯ませた。これなら、という淡い期待は、次の瞬間には砕け散る。

 

「……総員、アンドロイドに構うな!! 西区画へ逃亡したもう一人に専念しろ!!」

 

 良いのを喰らわせはしたが、相手に冷静さを取り戻させてしまった。その場から撤退していいと分かった途端に、展開していた部隊が潮が引くようにアクアの向かった方向へ移動を開始してしまう。

 

「しまっ――」

「顔色が変わったな、アンドロイドちゃん! 妙な戦い方をすると思えば、時間稼ぎだったか!」

「どうしてそのナリで頭が回るのです、お前!?」

「人を見掛けで判断するな、ということだががー!!」

「まあでも、気付くのが一手遅かったですね。わたしの粘り勝ちです!」

「なんだと?」

 

 テッド・ブロイラーの疑問に応えるように轟いたのは、グラップラー戦車部隊を襲った凄まじい爆撃音。重戦車のキャタピラ音。そして――、

 

『はーい、みんなー! 二人組作ってーっ!!』

 

 大音量スピーカーに乗せ、カズマ特製対ぼっち精神口撃を読みあげるレナの声だった。




 テッド様のキャラに解釈違いが無いか不安です。

世紀末テッド・ブロイラー
 カズマと同じく二十一世紀の日本から転生された
 前世では田舎の工業高校に通っていた鈍臭い少年。非常に大柄だったので「ウスノロ」「ウシ」などと呼ばれてつつも、大きな体を恐れた不良も直接的な危害は加えて来なかった。
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