この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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アクアハンブラビの復刻まだ?


第六十七話 ありったけの火薬、かき集め

 砕け散る巨悪の肉体、足元まで転がってきた無骨な頭部に、レナは追い討ちを仕掛けるようにワンハンドガリルを撃ち込み続けた。

 すでに事切れていると解っていても、空になった弾倉に補充してまで凍てついた欠片を撃ち尽くそうとする。

 

「れ、レナ! ストップ、ストップ!!」

 

 こんな時でもどこか能天気な猟犬に制止されなければ、レナはきっと何時までだって撃ち続けていた。

 

()()もう動かないから! 落ち着いて!?」

「……分かってる。でも、ちょっと殺し足りなくって」

「何を言ってるの……いや、言いたいことは分かるけどね!?」

 

 呆れるアクアに微笑んで、レナは殺気こそ引っ込めないものの銃を収めた。代わりに回復ドリンクを取り出して一気に飲み干し、体力の回復とともに気持ちを落ち着けた。

 

「アクア、ノビてる二人にも回復薬を飲ませておいて。その間にウルフを整備しておくから。またいつ敵が集まってくるか分からないし」

「それはいいけど……あなた、本当に大丈夫? えっと、おっぱい揉む?」

「吸っていいの!?」

「そこまで許してないわよ!!」

 

 様子がおかしいと感じたが、取り越し苦労のようだとアクアは首を振った。頭を切り替えたアクアは、当然体を触らせるサービスも無しよとダクネスの元へ向かう。脳天から地面に突き刺さった彼女を、急いで引き抜かねば。

 

 走るアクアの背中を見送って、レナはiゴーグルのメンテナンスモードを立ち上げた。だが、後ろ髪を引かれるようにテッド・ブロイラーの残骸へと振り返る。

 

「……なーんか、呆気なさ過ぎない? ……いやいや、まさか……」

 

 理屈など無い、ハンターの本能に基づいた直感が囁く。レナはそれを理性で否定しながら、iゴーグルのモードを切り替えた。

 

「リスト称号。賞金首、テッド・ブロイラー……」

 

 音声認識によって、すぐにiゴーグルのレンズに賞金首情報が投影される。

 ……テッド・ブロイラーの情報は、すでに「討伐済み」に更新されている。レナの戦闘記録が、早くもハンターオフィスのデータベースとリンクしたらしい。

 

「テッド・ブロイラーは倒した……のに、ようやく憎い仇を討った達成感が湧いてこない……なんで?」

 

 自問への答えを求めるように、レナはバイアス・シティへ一足先に敵本拠地に潜入した参謀の少年を思い浮かべた。

 

 

 

 同じ頃。

 ではその、潜入したチーム・メタルマックスの参謀兼サブリーダーと、破壊工作員……もとい爆裂アーチストはというと。

 

「……行った?」

「はい。周囲には兵士も警備ロボットもいません」

「よし。GO!」

 

 ダンボール箱を被った不審人物が二人、バイアス・シティ中枢へと下る通路をコソコソと進む。クルマを一旦隠して、かなり深い区域を探索中のカズマ&めぐみんだ。

 不審なダンボール箱が列になって移動していたら逆に目立って仕方がないのだが、兵士達はみんな頭グラップラーなので目の前で動かなければ気付かない。ここまでノーエンカウントで辿り着けた。外で満身創痍なレナ達とはえらい違いである。

 

「しかし……カズマ、この間抜けな姿はどうにかなりませんか?」

 

 何度目かの不満を口にするめぐみんは、何の変哲もないダンボール箱を被るという行為が我慢ならない様子だ。せめてこう、もうちょっと機能度外して装飾したいらしい。もちろん、これ以上の悪目立ちはいくらグラップラー相手でも誤魔化せなくなる、却下だ。

 

「失礼だぞ、めぐみん。この潜入方法は伝説の傭兵だって好んだ、由緒正しきものだぞ」

「伝説の傭兵……はっ! まさかソリッド・スネークですか!? 大破壊の最中、たった一人でノアの軍団を幾度も退けたという……!」

「な、なんでめぐみんがそれを知ってるんだ……!?」

 

 偶然にもかの傭兵と同じ多機能眼帯を操作するめぐみんは、声を抑えながらもテンションを上げていた。ひょっとして、この世界にはかの傭兵が実在していたのだろうか……と、カズマのテンションも釣られて高まった。

 

「あ。カズマ、突き当たったら右へ。そのまま直進した先がフェイルセーフロックの解除装置です」

 

 道中で手に入れた施設の見取り図を照会するめぐみんが、珍しく壁役として先を行くカズマに指示を出す。

 

「システムへのアクセスは、これまで通り例のアレで」

「よっしゃ! にしても……いいタイミングで良いもの拾ったよな〜」

 

 カズマは武器(スパナ)と一緒に、めぐみん曰く「アレ」を取り出す。一般的なカードキーと同形状のそれが、ピチピチの残骸から回収した彼らのチートアイテムである。

 

「シンクロナイザー、でしたか。使い方を間違えると何が起きるか分かりませんが、便利ですね。銀行の大金庫でも解錠できそうです」

「……ど、泥棒はよくないと思うよ?」

 

 冗談です、と言っためぐみんの口調がいつも通りなので、どこまで本気か判断できなかった。

 やがて突き当たりに到着したところで段ボール箱を脱ぎ、認識装置にシンクロナイザーを当てる。本来なら登録されたカード情報を読み込ませるところに、持ち主であるカズマの「開け」という意思を機械に直接送り込む。

 装置が一瞬だけ赤いアラートランプを点灯させるが、すぐに電子ロックが解錠され、扉がスライドした。

 

 と同時にデンジャラスなマイクを片手にめぐみんが室内へ飛び込み、カズマも大量のスパナをいつでも投げられるよう身構えて彼女に続く。

 常駐していた警備の兵士数名が侵入者に気付いた時にはもう、大きく息を吸い込んだめぐみんが、マイクに向かって叫んでいた。

 

『ボエ~♪』

 

 デストロイヤーを破壊した破壊音波による先制攻撃が、瞬く間に兵士達を蹴散らした。うるさいとか喧しいとかそういう次元ではない、スーパーソニックによる物理攻撃であった。

 うっかりするとカズマも巻き込まれかねないが、そこは音に指向性を持たせることで敵だけを狙っている。

 

「あらよっと!」

 

 カズマもスパナをぶん投げ、部屋の四隅に設置された警備システムを破壊。これにて制圧完了、戦闘時間は10秒にも満たなかった。

 

「ふっ。チートも無しでこの時代に降り立った時はどうなるかと思ったが。俺も随分とレベルが上がったものだ」

「アホ言ってないでさっさとハッキングしてください、カズマ。時間を掛けては瞬殺した甲斐性がありません」

「正論だけど、そういうことをめぐみんから言われると腹立たしいぞ」

 

 腑に落ちない思いを抱えたまま、カズマはシンクロナイザーを握り込む。適当なモニターを拳で叩き割った。そして先程のドアと同じく「止まれ」という意思を送信する。

 数秒と経たずに全てのセキュリティシステムがダウンして、あっちこっちの扉のロックも解除された。

 

「オカルトですねぇ」

「まあ天界から持ち込まれたハッキングツールだからな。やってる事も文字通りのチート行為だし」

 

 文明が残っている場所であるほど、シンクロナイザーは凶悪な使い方が出来そうだ。オトピチがもうちょっとでも賢かったら、もっと上手くズルく立ち回れていただろうに。

 一応、アクアによればチートアイテムは本人でなければ十全に力を発揮できないそうだ。それでもフィーリングでハッキングできると言うのは恐ろしい、と現代っ子のカズマは思った。

 

「さてカズマ、セキュリティを解いたなら今はバイアス・シティの中枢へ急ぐのが先決です。外ではレナ達が、あの化け物と戦っているのですから」

「そうだな。けど、意外ととっくにテッド・ブロイラーを倒してたりしてな」

「残念ながらその通りだよ、カズマ君。彼女達は良くやってくれた」

 

 カズマの軽口に答えるよう、透明感のある女性の声が上空から響いた。その直後に天井の一部が破られる。

 咄嗟に臨戦態勢を取ったカズマとめぐみんの間を割るようにして着地したのは、銀髪に小柄な体型が特徴の少女だ。その顔を見て、二人が同時に目を見開いた。

 

「クリス!? 脱出したのか!?」

「なんとかね。テッド・ブロイラーがいないお陰で、色々とやりやすかったわ」

 

 クリスは得意げに鼻をすする。見たところ、外傷や衰弱の様子はない。それどころか、血色も肌艶も良好であった。

 

「良かった。アクアも心配していたぞ?」

「先輩が心配、ねぇ。普段と立場があべこべだわ」

「そんな日もありますよ。それよりカズマ、セキュリティも解除しましたし、一旦クルマの場所まで戻りましょう」

 

 めぐみんの提案に、カズマは「おう」と頷く。すると、クリスが率先して部屋の出入口に向かっていった。

 

「なら、私が安全なルートを確保するわ。スカウトの本領を見せてあげる」

「せっかくのご提案ですけど、私達の目的にはクリスの救出も含まれているのです」

「だな。そんなことされたら本末転倒だ」

 

 気遣う言葉に、クリスは大丈夫よ、と後ろ手に手を振って答えた。しかし歩きだした彼女に二人は続かない。

 

「意地張ってないで、協力しましょ? ほら、さっさと行くわよ」

「逝くなら独りで逝ってください、このニセモノ」

「--え?」

 

 めぐみんの一言に、クリスのような何者かがキョトンとした顔で振り返った。

 その刹那。めぐみんは構えていたグレネードランチャーから榴弾を発射。指向性を持たせた爆裂を浴びせ、壁際まで吹き飛ばしたのだった。

 クリスのような何かは、全身を爆炎に包まれながら床を転がった。

 

「やっぱり案内は俺達がするぜ。ただし、地獄へのな」

「カズマ、かっこつける前に全力でクルマまで逃げますよ。私のスカウター……じゃなかった、iゴーグルのエネミーセンサーがレッドアラートしてます。こいつ、最低でも四天王クラスです」

「マジかよ!?」

 

 そうと聞いたらノンビリしてはいられない。二人は蹴破る勢いで部屋を脱出すると、ダンボールも被らずに走っていった。

 二人が去った後、倒れていたクリスっぽい何かはゆっくりと立ち上がった。体に火が着いたまま、電源の落ちたモニターを覗き、自分の顔を映す。

 

「……おっと。顔に傷跡をつけ忘れていた。しかし、だからと言っていきなり撃つヤツがあるかな? オレでなければ死んでいたぞ、()()()()()

 

 ニヤリ、と本来の彼女であれば決して浮かべない(本体のエリスだったら悪魔に対して向けそうな)獰猛な笑みを浮かべ、クリスっぽいものは焼け落ちた衣服を乱暴に脱ぎ捨てた。

 貧相な体を包むのは、ピッチリした青地の全身タイツ。赤いベルトとグローブとブーツをアクセントとして、ついでに髪の色まで銀髪から赤髪へと変貌させた。

 

 その出で立ちは、背中に火炎放射器のボンベがない以外、ついさっき狩られたハズの最強最悪の賞金首そのものだ。

 

「さて、と。鬼ごっこ開始としようか、カズマ君。この新しいボディの調子を試すには、少々小者だがね、君は。ブロロロローッ」

 

 そうしてカズマ達を追おうと部屋を出ようとして、クリスっぽいものが室内へ振り返った。

 

「う、ぐ……」

 

 視線の先には、めぐみんの音波攻撃から辛うじて生き残ったSSグラップラーが、呻き声をあげて転がっていた。

 クリスっぽいものはスーッと片手を伸ばし、指先を兵士に差し向ける。

 

「テッドファイヤー!!」

 

 残忍な笑みで叫んだ瞬間、火の気の無かった指先から灼熱の炎が放出された。

 あまりの火勢に、兵士どころかセキュリティルーム全体が一瞬にして炭化してしまった程である。

 これには、炎を放った本人も驚いて、自分の指先をまじまじと見つめてしまった。

 

「我ながら恐ろしいな。これが魔法……いや、女神の力か。がががーっ!! そうでなければ、こんな小娘の肉体に生まれ変わった甲斐が無い!」

 

 炎の威力にご満悦の様子で、クリスっぽいもの……新生した炎の魔神エリス・ブロイラーは、悠々と歩いて出撃した。




エリス・ブロイラー
 捕獲したクリスのクローンボディに、テッド・ブロイラーの人格を移植したグラップラーの最終兵器。女神の本体から強引に力を引き出し、強力なパイロキネシス能力を獲得している。開発にはテッド・ブロイラーが持ち込んだチートアイテムが使われているらしい。
 本人と精神がリンクしているが、厳密にはレナに倒されたテッド・ブロイラー本人ではない。しかしその魂を受け継いだ巨悪である。
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