この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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 叛逆ノ狼火の情報が全然出てこない。
 あとFate/EXTRAのリメイクの情報も出てこない。


第六十九話 妄執の果てに得たものは

 装甲車に詰め込んでいた物資と予備パーツを使い切り、ウルフの修繕はギリギリ叶った。これで一戦闘ぐらいならどうにかなるだろう、その後は知らんが。

 

「ついでに搭乗員もいっぱいいっぱいだけどね。狭いからもっとこっち詰めていいのよ?」

 

 そう言って、レナはダクネスが気を失ってるのを良いことに遠慮なく抱き寄せ、豊かな金髪に顔を埋めて大きく深呼吸をした。

 ドMでもゴリラでも、美女は良い香りがする……かと思えば、血と硝煙の臭いしかしない。炎の匂いが染み付いてむせ返りそうだった。

 

「変態さんですね」

「イリットへの報告件数がプラス1、と」

 

 それぞれ砲塔とコントロールユニットに収まったアクアとアイリスから反目で見られるのも意に介さず、レナはウルフのイグニッションキーを回す。

 先行したカズマ達の信号は、数分前に途切れてしまっている。倒されたか、シェードのある場所に入ってしまったか。いずれにしろ急がないとエビフライ二人前が完成してしまう。

 

「よし。んじゃま、ラストスパートと行きますか!」

 

 汗ばむ掌でハンドルを握り直し、レナはアクセルを全開で踏み抜いた。

 その時だ。

 

 真下から突き上げてくる衝撃に、ウルフの車体が宙に浮いた。

 

「ひっ!?」

「え、ちょっ!? ななな何ごとぉ??」

「……湖底から急速に浮上する超大型反応……! メガフロートを突き破ります!!」

 

 アイリスが警告を発した、ジャスト1秒後。

 コンクリートの地面に亀裂が走り、支柱の砕けたメガフロートが中央のバイアス・シティを残して崩落を始めたのだった。

 

「っ!! エンジン全開!」

「やってます! レナ、走って!!」

 

 微かに残る、しかし現在進行系で崩れていく僅かな道を、ウルフはバイアス・シティを目掛け限界速度でかっ飛んで行った。

 

 

 

「……さん。……マさん」

 

 暗闇の中で自身を呼ぶ声を聞き、カズマは無造作に片手をシッシと振った。

 

「なんだよアクア、エサならレナかめぐみんにでも貰え……」

「私はあなたの飼い犬ではありません。というか、女神を犬扱いする不届き者なんて後にも先にもあなたぐらいじゃないですか?」

「……え、誰?」

 

 聞き覚えがあるような気がするけど馴染みのない声に、カズマは慌てて身を起こした。

 

 そこはいつかの、市松模様の床がどこまでも広がった生と死の狭間。死後の人間が沙汰を受ける女神の間であった。

 

「あっれ? なんで俺、こんなところに……?」

「臨死体験のようなものだと考えてください。緊急事態故に、あなたの意識が途切れた隙にお呼びしました」

 

 鈴を鳴らすような清廉な声に振り向けば、高級そうなゲーミングチェアに腰掛けた見覚えのある美女が、神妙な面持ちでカズマを見つめていた。

 誰だ? ともう一度訊こうとしたカズマは、そこではたと思い出す。この女性は確か!

 

「アクアの後任になった天使の人!?」

「ほう。私のような一発キャラをよく覚えていましたね。ちなみに、現在は正式に女神に昇格しました。アクアパイセンにはもう、戻ってきても椅子はないと伝えておいてください。……そんなことより」

 

 覚えてもらっていたのが嬉しかったのか、ゲーミングチェアの電飾が鮮やかな緑に輝いた……かと思えば、急に物悲しい青紫に変わってしまう。光度も若干落ちた。

 元天使な女神の表情は作風に似合わぬシリアスさで、カズマも居住まいを正して聞きに入った。

 

「悠長に話している暇はありません。単刀直入に申します。テッド・ブロイラーが天界に攻め込む前に、一刻も早く退治してください」

「ウルトラマン呼べよ」

 

 そして身に余る無理難題を吹っ掛けられ、即効で断った。メカニック独りでテッド様攻略とか、難易度ノーマルでもレベル(レベルメタフィン)が足りない。

 

「すみません、説明が足りませんでしたね。あなたが倒すべきは地上で造られた、女神エリスのクローンボディを持った新生テッド・ブロイラーです」

「ちょっと話が見えないんですけど」

「そうですね。では図で解説します」

 

 女神は不思議な力でクリップボードを取り出して、マジックで図を描いていく。椅子といい、小道具にイマイチ威厳が足りない。

 

 女神は上手いんだか判断に苦しむ画力で解説する――、

 

 

 

 されました。

 

「なんてこった。クリスの正体がアクアの後輩女神で、あのクリスっぽいヤバいヤツは女神のクローンボディに人格を移したテッド・ブロイラーだったなんて!」

 

 一通りの説明を聞き終えたカズマは、とりあえず女神に「理解できたよ」と示すべく繰り返した。

 女神は、一先ず話が伝わったことに安堵の表情を浮かべ、そしてすぐにキリッとした真顔に戻ってクリップボードをしまった。

 

「我々はヴラドという男を侮っていました。人間の脳構造を完璧に模したエミュレーターを作り上げるならまだしも、世界の摂理の外側に在る女神の肉体をクローニングするなど」

「やっぱりヤバいんすか、それ?」

「ヤバいなんてもんじゃありません。人の頭脳を加えた魔神、悪魔の体に人間の心、愛を知った魔剣士。そういった存在が完全な悪として暴れまわるのですから」

「地球脱出用のチートアイテムとか持ってませんか?」

「残念ながら大魔王からは逃げられません」

 

 恐ろしきは人の業である。

 幸いにして、テッド……いや、エリス・ブロイラー本人は、自力で天界へ乗り込める能力があることにまだ気付いていない。もしかすると知らないまま地上で暴れ続ける可能性だってある。

 だが万が一にもテッド・ブロイラーが女神エリスとしての能力を完全にものにしたら最後、天界を滅ぼし尽くのは火を見るより明らかだ。

 そして天界を乗っ取ったテッド・ブロイラーは、誰をどこの世界に転生させるのも、どんなチートを授けるも、自由に出来るようになってしまうのだ。

 

「それを防ぐには、捕らわれのエリス様本人……つまりクリスを解放し、そしてエリス・ブロイラーを倒すしかありません」

「けどあれ、あの最強無敵のテッド・ブロイラーより強いんじゃないのか? 俺一人じゃ絶対無理だ」

「いいえ。アクア様とあなたの仲間はテッド・ブロイラーを倒してのけました。あなた方の力を結集すれば、必ずや彼奴を誅滅することも不可能ではありません。それに、私も助力します」

 

 女神は再びクリップボードを取り出して、またもやサラサラっと微妙な腕前の絵を描く。それが完成するとひっくり返し、ボードの裏をポンと叩いた。

 すると不思議なことに、ボードの絵が実体化して飛び出して、カズマの足元に転がってきた。

 なにかすごいアイテムかと思いきや、出てきたのは机やロッカーに使うような小さな鍵だった。

 

「なんですか、これ?」

「アクア様の従属の首輪を外す鍵です。それを外せば、アクア様も世界観を無視した異能の行使が出来ます」

「大丈夫なんすか、それ!?」

 

 最近はマシになったとはいえ、アクアは「飲む打つ買う」のチャランポランである。そこに今以上の強さが加わったら、新たなグラップラーになりかねない。

 そんなカズマの危惧を、女神は「取り越し苦労」だと一笑に付した。

 

「ご心配なく。あの方も性根は慈悲深く穏やかな女神。人を傷つけることを良しとする外道共とは程遠い。あなたの気苦労が増える以外に実害は無いでしょう」

「それが一番の大問題っすよね!?」

「何だったらカズマ様の男気でコマしちゃえばよろしいかと。あれで意外と旦那様には尽くすタイプだと思いますし」

「嫌ですよっ!?」

 

 思わず素で即答してしまったところで、周囲が徐々に白っちゃけてきた。どうやら夢から覚める時間らしい。

 

「では、ご武運を。ついでにノアも倒してボーナス貰っちゃっても良いのですよ?」

「世界の命運をついで感覚で託すなーっ!!」

 

 女神ってこんなんばっかなのか!? そう思わずにはいられないカズマであった。

 

 

 

 薄っすら瞼を開くと、カズマは紅い瞳に至近距離から顔を覗き込まれていた。

 一瞬、誰だこの美少女は? と頭に無数の「?」が巡ったが、なんてことないチームメイトの爆裂アーチストだった。

 カズマは野バスの車内で運転席に身を沈め、めぐみんに介抱されているようだった。

 

「ほっ。目が覚めましたか。よかった……」

「めぐみん……あれ、どうなった?」

「地面が崩落し、ユニットの最下層まで落ちてしまったみたいです。カズマ、一瞬呼吸が停止していましたよ」

「いましたよって、お前の無茶が原因……って、それは?」

 

 文句を言いかけたカズマは、めぐみんが手の中でもて遊ぶ空の瓶に気づく。あのラベルは確か――、

 

「まんたーんドリンク! ですけど。死んでなければ一発で完全回復する奇跡の栄養剤。副作用は知りません」

「そ、そうか。この口の中のエグ味はそれか……」

 

 食べられない雑草みたいだとか、溶けた粘土を口に含んだとか言われる欠点こそあれど、効果の方はお墨付きだ。

 

「マッチポンプっぽいけど、とにかく助かった」

「ふっ。素直に感謝してもらうと、私もこんな不味いのを頑張って口移しした甲斐がありました」

「――ごめん、今なんつった?」

 

 すっごい単語がめぐみんの口から飛び出したような気がするが、カズマが確かめる前に彼女は野バスを飛び出し、ゲパルトへシュパッと乗り込んでしまった。

 

『ではカズマ、進みましょう。クルマにダメージがないことは確認済みです』

「めぐみん、口移しって――」

『奥から未知のエネルギー粒子が検出されています。きっとバイアス・シティの心臓部です』

「口移し――」

 

 残念ながら通信は一方的に切られ、カズマの胸には悶々ともどかしい何かが残ったままとなった。

 

「やれやれ……ん?」

 

 ゲパルトに続いてクルマを発進させたカズマは、ふとフロントガラスの内側にテープで固定された、小さな鍵に気が付いた。紛れもなく、夢の中で女神に託されたアクアのプロテクト解除キーである。

 

「……あれ? ひょっとして、俺っていつのまにかすっごい岐路に立たされてないか?」

 

 背中を嫌に冷たい汗が伝う。それは、この地下空間に漂う不気味な雰囲気のせいだけではなかった。




※出したら収集つかなくなるのでボツったネタ
「狂い咲くは鮮血の芸術! カリョエリス!!」
「ガスとスパナのカプリッツォ! ブル・エリス!!」
「大灼熱の恐怖を知れ!! エリス・ブロイラー!!」

スカンクス「……オレは?」
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