『サンタクロースをいつまで信じていたか?』という問いかけがある。
これ現実には存在しない『夢があるもの』をいつまで信じていられるかという人のピュアな心を計る問いかけだと言えよう。
因みに俺は、最初から信じてなどいなかった。
同じ幼稚園に通う奴等がクリスマス会でやって来たサンタさんにキャッキャッと色めきだっていても、俺の心は常にドライ。
だってあの人園長じゃん、あのお鬚だって付け髭じゃん。
家においてあるプレゼントだって両親が置いたものだと俺は知っている。
夜中に俺が寝ていると思ったサンタコスした2人が熱烈ベロチューからズッコンバッコンなプロレスをし始めたのを見たのは去年の話だ。
この世界には夢や希望なんてない、あるのは非常な現実のみ。
それが、俺が齢5歳で知った社会の現実だ。
そんな俺は、東京都練馬区光が丘の団地に住む極々普通の少年である。
今年小学校に進学したばかりの子供だが、俺は殆ど1人で暮らしている。
両親が忙しすぎて、中々家に帰ってこないせいである。
それ故、自然と簡単な家事などは出来るようになり、大抵の事は1人で出来る。
それでも子供の1人暮らしはどうかという事で、お隣さんである八神家の御両親によく面倒を見てもらっているのが現状だ。
それなら職場近くに引っ越せば良いのだろうが、あまり余裕は無いらしい。
貧乏というほど困窮してはいないが、家庭は裕福ではなさそうだ。
ま、現在の職場から通うのは何も問題無いから無理に引っ越す必要は無いのだが、それでも職場に泊まる事が多い為、なるべく近い方がいいと両親は考えたのだが、俺が1人でも生活出来る能力もあり、俺の(ほぼ)1人暮らしが始まったのだ。
まぁ、それでもやはり子供の一人暮らしは如何かということで、お隣さんに面倒を見てもらっている訳だが。
八神家も俺の一つ年上の少年と、2つ年下の妹さんがいて、子供の遊び相手が出来て喜んでいる為、問題無いとの事。
名前は、八神太一と八神ヒカリ。
まさかこのお隣さんとかなり色濃く長い付き合いになるとは、当時の俺は思いもよらなかった。
そしてある日の深夜、事件が起きた。
後に『光が丘爆弾テロ事件』と呼ばれる事件。
2匹の怪獣の大決戦だ。
一瞬、夢でも見ているのかと思ったが、とても夢を見ているとは思えない程、目は冴えていた。
避難したほうがいいのかと思い着替え、ベランダに出て外の様子を窺う。
外には、俺と同じ様にベランダから様子を窺っている複数の子供達と、2体の怪獣――――――恐竜と巨大鳥の戦いの姿があった。
思わず魅入ってしまい、手に汗握り、その戦いを見届ける。
恐竜の様な怪獣が、大きな鳥を口から吐き出した炎の弾で撃退し、2体は何処かへ去って行った。
あの2匹が何処へ行ったのかは分からない。
決着を見届けた後、しばらくは興奮で頭が覚醒し眠気なんて無かったが、夜明け頃に睡魔が襲ってきた。
眠いからそろそろ寝ようかとベッドに着こうとする。
が、ここで更に予想外の出来事が起こった。
居間のテレビが光り出したと思ったら、その中から出てきたのだ。
黒色の、掌程度の大きさの、長方形の匣だ。
「何だ、コレ・・・・・・?」
出てきたそれを手に取り、首を傾げたその瞬間、
「え?」
画面が発光し、俺はその中へ吸い込まれた。
――――――コレが俺の、デジタルワールドの最初の冒険の始まりだった。
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