NEXT TIME 仮面ライダーツクヨミ、トゥルース   作:祝井

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EP4「2019:ヒリュウ、リターンズ」

 

「月読。お前は俺が裁く」

 

〈ヒリュウ!〉

 

 ウォッチを既に付けていたジクウドライバーに装填する飛流。それを妨害することなく、アナザーキバーラは「だめだこりゃ」と脱力し溜息を吐いた。

 

「数日も止められるわけなかったか……」

 

「わかってるじゃないか。それでもごっこ遊びがしたかったのか、女王サマ」

 

 からかうような飛流の声にアナザーキバーラは目を細める。どこまで聞いていた。

 

「あなたのような偽りの王に、何がわかるというの?」

 

「お前が哀れでひとりぼっちな女王サマであることくらいはな」

 

 そう鼻で笑ってから飛流はドライバーを回す。

 

「変身」

 

〈ライダー・タイム!〉〈カ・メェーン"ライダー"!ヒーリューウゥー!〉

 

 夕陽色の複眼がはまり、ほのかに光る。

 過去の守護者・仮面ライダーヒリュウ、帰還。

 

「加古川さんも、仮面ライダー……!?」

 

「知らなかったの?」

 

 ゴロウとオーラが小声で話していることなど気にせず、ヒリュウとアナザーキバーラは対峙し睨みあう。

 

 数秒後、ヒリュウは膠着を破って駆け出した。アナザーキバーラが牽制で放った光弾を肥大化した尻尾で叩き落としつつ止まらない。

 敵の眼前に迫ったヒリュウは殴りかかるが、アナザーキバーラは既に右手から光剣・ルミナスフラクターを生成していた。それを盾にして拳を防ぐと、両者は弾かれるように離れる。

 

 即座に動いたのはアナザーキバーラ。アナザーキバーラは視界に収まり切らないほどのコウモリ型エネルギー体を作り出して前方に放つ。ヒリュウは背中から翼を開いて突風を発生させ、大半を吹き飛ばした。

 しかし、全てではない。残りは隠れていたオーラとゴロウの元に向かっていく。

 

「ぬかったわね、偽りの王」

 

 否定できないアナザーキバーラの嘲りにヒリュウは内心舌打ちすると、左腕に装着されたデバイス・アナザータイマーを操作する。

 すると、アナザータイマーが鼓動し、禍々しく輝いた。輝きはアナザータイマーを離れ、巨大な異形を形どっていく。

 

「訂正だ。俺は偽りの王じゃない」

 

 その異形はコウモリ達をその身で受け止めた。傷一つないままで。

 

〈ANOTHER SUMMON!〉〈KUUGA!〉

 

「裏の王。お前を含めたアナザーライダーの王だ」

 

 オーラとゴロウの前方に現れたのは、凄まじき生物兵器・アナザークウガだった。アナザークウガは咆哮すると、アナザーキバーラに向けて火球を発射していく。ヒリュウは更にアナザータイマーを操作していく。

 

 アナザーキバーラはルミナスフラクターで火球を軽く弾きながらもヒリュウから目線を外さない。

 火球の威力は低い、ならば本命はヒリュウの攻撃だ。アナザーキバーラは火球をその身に受けながらも駆け出し、アナザータイマーを操作中のヒリュウに斬りかかる。

 

「クッ、時間稼ぎにもならないか……!」

 

〈ANOTHER FORCE!〉〈KI……VA!〉

 

 一撃を喰らったヒリュウは針を一旦止めてアナザーキバの力を発動する。ヒリュウの片足が地面を踏み抜くと、砂利だらけの中庭なのに何故かマンホールの蓋が跳び上がってヒリュウの手に収まった。ルミナスフラクターの一閃を防ぎ、割れそうなマンホールの蓋ごとアナザーキバーラを蹴とばす。

 

 そうはならんやろ。その光景を見ていたゴロウは内心ツッコむ。一方のオーラは前の世界でも今の世界でも因縁深いアナザーキバの契約者__北島祐子のことが頭によぎっていた。

 

 倒れてマンホールの下敷きになるアナザーキバーラ。真っ二つになったマンホールの蓋をどかして立ち上がり、素直に困惑を口にする。

 

「キバの力ってそんなのだった!?」

 

「これはあくまでもアナザーキバの力だからな。もっかい頼む!」

 

 ヒリュウの命令にアナザークウガは即座に従って火球を放つ。

 

「こんなものッ!」

 

 もちろんアナザーキバーラは被弾を恐れず突っ切ってくる。そこにマンホールの蓋が回転しながら飛んできた。ちょうどアナザーキバーラの胸に当たる高さだ。

 アナザーキバーラは横に避けようとするが、思った以上に面積が広い。結果、脇腹をざくりと斬られてしまう。

 

 バランスが揺らぎ、アナザーキバーラは地面に倒れ込む。そこを襲うアナザークウガの火球。狙いが甘いのかアナザーキバーラだけでなく地面にまで当たり、土煙がアナザーキバーラの視界を遮る。

 

 いや、狙いが甘いわけではない。アナザーキバーラの視界を封じることこそが、ヒリュウの目的。

 アナザーキバーラがそのことに気付いた瞬間、その身体が宙に浮く。アナザークウガの肥大化した角に攫われたのだ。

 

「放しなさい!!」

 

 ルミナスフラクターで角や身体を斬りつけるが、アナザークウガは怯むことなく飛び続ける。よく見るとその体色は紫に変化し、角だけではなく筋肉も盛り上がり固くなっていた。

 

〈ANOTHER FINISH TIME……!〉〈GHOST……!〉

 

 雲一つない上空から禍々しい音声が聞こえ、ヒリュウが現れた。その手は、アナザータイマーのスターターに添えられていて。

 

〈ANOTHER TIME BREAK!〉

 

 スターターが押されると、ヒリュウの前の空間が裂けて巨大な瞳としか形容できない物質が現れる。ヒリュウが血走ったそれをアナザーキバーラに向けてオーバーヘッドキック。

 

 瞳は動けないアナザーキバーラに衝突し、そのままの勢いで地面に墜落する。アナザークウガは瞳が衝突した直後に消えていた。つまり、アナザーキバーラは直接地面に激突して。

 

 ヒリュウが地面に降り立つ頃には、アナザーキバーラはどうにか立ち上がれはするもののボロボロだった。

 

「無茶苦茶なッ……!?」

 

「無茶苦茶で結構」

 

〈フィニッシュ・タイム!〉

 

 軽く言い捨てたヒリュウはドライバーのウォッチを起動。腰を落として脚に力を込め、翼を再び広げる。

 そして、ドライバーを回した。

 

〈タイムパニィーッシュ!〉

 

 ヒリュウは跳び上がり、飛ぶ、飛ぶ。同時に、地上に残されたアナザーキバーラの周囲を夕陽色の「キック」の文字が十二個踊りだす。

 踊る文字たちはアナザーキバーラの動きを牽制しながら一つに重なり、最後にアナザーキバーラの胸部に飛び込む。焼き付くような痛みが、アナザーキバーラには感じられた。

 

「ハァァァァァーッ!!」

 

 気付けば、ヒリュウの右脚が迫っていた。そして、ヒリュウのブーツに刻まれた「ライダー」の文字とアナザーキバーラの胸に焼印された「ライダー」の文字が重なって。

 そのままヒリュウはアナザーキバーラを貫いて、直後に爆発した。

 

「これがお前への罰だ」

 

 這いつくばるアナザーキバーラが有日菜に戻り、アナザーウォッチが排出される。破壊はされていない。有日菜はそれに手を伸ばすが、届く前にオーロラカーテンが攫って行ってヒリュウの手に納めた。

 

「王家の力でコーティングしていたか……しぶといな」

 

 アナザーウォッチをしげしげと眺めるヒリュウ。

 

「まぁもう終わりだけどな」

 

「……そうかしらッ!」

 

 有日菜は手を伸ばしていた。オーラが何かしようとしていたが遠すぎたし遅すぎる。

 時は再び停止する。痛みをこらえながらも有日菜は立ち上がった。

 

「私は女王、時の女王」

 

 誰も聞く者はいないのに、有日菜は小さく呟きながら右腕を掲げる。ルミナスフラクターが鋭く生成された。

 

「終わりよ、歴史の管理者」

 

 数歩動いてヒリュウのドライバーに切っ先を突き付ける。そして勢いよく突き出した。

 

「どうして……!?」

 

 しかし機械と肉を貫いた感覚はない。それもそのはず、ルミナスフラクターは折られていた。他ならぬヒリュウの拳によって。

 直後に腹に来る衝撃。ヒリュウの尾だ。有日菜が地面をまた転がると、止まっていた時は動き出した。

 

 胃液を吐く有日菜に、ヒリュウはホルダーから一つのウォッチを外して見せびらかす。

 

〈3号!〉

 

「仮面ライダー3号は歴史の闇に葬られた。奴の歴史はもう進みも戻りも、止まりもしない」

 

 終わりだよ。ヒリュウは淡々と現状を告げた。

 

 だが、事実ではなかった。

 

「飛流!?」

 

 ゴロウが連絡したのか、ソウゴとゲイツとウールがやって来た。三人を見たヒリュウはひらりと手を挙げる。

 

「遅れて悪かったな、常磐ソウゴに明光院。あとウール」

 

「あっ、いやこれ、えー……」

 

 ソウゴは目の前の光景に絶句する。ボロボロの有日菜と中庭。物陰に隠れたオーラとゴロウ。

 

「安心しろ、じきにウォズも来る」

 

「どういうことだ」

 

 ゲイツがいかり肩でヒリュウに近づく。オーラとゴロウも近づいてきた。どうどう、とヒリュウはなだめながらすぐに話し始める。

 

「奴は月読有日菜の並行同位体だ」

 

「あのツクヨミが、今回の黒幕ってこと?」

 

「大体そんな感じだ。色々と状況は複雑──みたいだけどな」

 

 ヒリュウはオーラを見た。オーラは軽く舌打ちする。そんなことを言いつつもどこまで知ってるのやら。

 

「誰のせいだと思ってんのよ」

 

「アナザーリュウガとアナザーディエンドの件は悪かった。

 とにかく、まずはアイツをどうにかしなきゃいけない」

 

 ヒリュウが軽く顎をしゃくったのは地面に這いつくばったままの有日菜。そうか、とゲイツは冷静に言った。

 疑念を抱いていたからかもしれないが、ソウゴにはゲイツの声がひどく冷たく聞こえた。そもそも、どうしてゲイツはツクヨミに駆け寄ることすらしない……?

 

「なら──」

 

 

 ぐちゅ。生々しい、嫌な音がした。

 

 

「──俺のやることは変わらない」

 

「お、まえ」

 

 ヒリュウの腹に、ジカンジャックローが深々と刺さっていた。

 

「飛流!?」

 

 凶爪が抜けるとヒリュウの変身が解除され、飛流が崩れ落ちる。手からこぼれたアナザーキバーラウォッチはゲイツリバイブ・疾風に拾い上げられた。

 

 そして、囚われの救世主は我が女王の方へ向かう。

 

「大丈夫か、アルピナ」

 

「ありがとう、ゲイツ」

 

 飛流に駆け寄って名前を呼び続けるソウゴ。呆然とするオーラ。スウォルツに連絡しようとするゴロウとウール。腹を押さえて痛みにうめく飛流。

 

 そして、そんな五人を気にせず笑い合うゲイツリバイブと、有日菜──否、アルピナ。ゲイツの差し出したハンカチで口元をぬぐっている。

 

「……何してんだよ」

 

 ソウゴが絞り出した声を聞いて、アルピナとゲイツリバイブは飛流の方を見る。何が、と言わんばかりの、いつも通りの顔で。

 

「何してんだよッッ!!」

 

「無駄だ……」

 

 ソウゴの怒りの叫びを遮ったのは飛流の小さな声。

 

「洗脳されてる」

 

 もっと早く気付くべきだった、と飛流は口に出せずに悔やむ。オリジナルの仮面ライダーキバーラに変身するために必要なキバット族のキバーラには、洗脳能力があったではないか。

 

「そうでもしないと、家臣の心すら掴めないのか……」

 

「あなたが言う? それに、敗けてしまった哀れな王様よりはマシよ」

 

 ポロッと出てしまった飛流の言葉に、アルピナは一笑に付す。そして胃液混じりの唾を、飛流のジクウドライバーに吐いた。

 

「行こ、ゲイツ」

 

「ああ」

 

 二人は腕を組んで、飛び去ってしまった。友人であり、仲間であった、二人が。

 





 この話は戦闘シーンの中盤だけ(大体1000字くらい)あらかじめ6月に書いていました。時間かかりすぎです。
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