この悲劇の少女に祝福を 作:アクセルの狩人
新人冒険者の1日は早朝、寝泊まりしている宿から始まる。しかしそれはクエストやバイトを行い、お金を多少持っている冒険者の話である。
冒険者ギルドにはクエストの受注、冒険者としての登録、職の斡旋、冒険者向けの飲食店等が原則的に備えられておりアクセル等の多少大きめの街のギルドでは駆け出し冒険者向けの宿泊サービスも存在している。だが、冒険者ギルドの宿泊サービスは多少の金があるルーキーが利用できるのであって、お金が全くない駆け出し冒険者はどこで寝泊まりするのかと言うと…
「俺の思ってたカッコ良い異世界主人公ライフじゃない。そりゃそうか…」
アクセルにある牧場が馬小屋の使ってない部屋を無料で貸してくれるので、その馬小屋を使っては寝泊まりするのだ。勿論、寝床としての使用感は最悪と言っても過言ではない。透き間風はビュンビュン吹くわ、ウマのオソマ(ウ◯コ)の臭いはするわ、夏は蒸し暑いと言って散々である。当然、宿等の宿泊施設とは雲泥の差だ。柔らかい布団で寝るのと枯れ草で寝るのは比べる程でも無いだろう。
当然、カズマとアクアにホテルを利用するお金も有るわけがない。駆け出し冒険者向けのギルドの宿泊サービスを受けたくてもそれさえも受けれる金銭は全くない。
カズマとアクアは冒険者として登録する為のお金や武器のレンタルサービスのお金もギルバートから借りた物なので、ぶっちゃけると6000エリス程の借金がある状態と言えるだろう。
昨日だって、簡単な筈のカエル討伐でさえなす術がなくアクアは食べられてしまい…カズマも食べられる寸前に成ってしまった。もし、ギルバートからの依頼を受けて救援にやって来たヴァイオレットが来なかったらカズマとアクアは仲良くカエルの血肉と成り果てて居ただろう。
「良い天気ね!!カズマ!!今日こそは頑張るわよ!!勿論、カエル以外でね!!」
「昨日の夕飯だって、ギルバートさんに奢って貰わなかったら無かったんだからな」
勿論、昨日のクエストは当然ながら失敗。お金は1ミリも入らずカズマとアクアは転生者という事でギルバートから夕飯を奢ってもらってお腹を潤した。ギルバートさん、ゴチに成りました!!
働かなければ生きていけない。ギルバート曰くだが、ギルドでは危険が常に伴うクエスト以外にも日雇いのバイトも斡旋しているとの事であり、カズマとアクアは空腹で腹の虫が鳴る胃袋を我慢しながらアクセルの冒険者ギルドにやって来た。
「うわ…朝から人が多いな」
だが、冒険者ギルドは朝から大にぎわい。それもその筈、日頃から冒険者として夢を見ては難しいクエストを達成して高額報酬を何度も稼いでくる人はクエストをこなさなければお金が入らないので…高額クエストを早い者勝ちとして我先に受注していくのだ。
ゴブリンやランポス、そしてカズマとアクアに明確な死の恐怖を植え付けたジャイアントトードは数が数の為なのか売り切れる心配は全くない。しかし、古龍や討伐報酬が高額なモンスターのクエストは売り切れる可能性が高く、有力冒険者の皆様はクエストの張り紙が更新された瞬間に我先へと目当てのクエストを持っては受注して冒険に駆り出すのだ。
「おい!!このクエストは俺達の物だぞ!!」
「早い者勝ちだろうがよい!!」
「へへ、俺…今日こそは豚を倒してやるよ!!」
「俺はこのサイクロプスだな」
と有力な冒険者達は次々とクエストを受注して冒険者ギルドを後にしていき、気が付けば冒険者ギルドに残っているのはカズマとアクアのへっぽこ駆け出しペア、クエストを受注したのは良いが先に腹拵えを行うためにギルドの食堂で朝食を食べる御一行、クエストを受注したのは良いが携行品に不足がないか念入りに確認する冒険者と言った有り様であった。
「クエストって早い者勝ちなんだな…」
興味本位でクエストボードを見てみれば残っているのはカエル討伐、近くの村の下水道に出てきた人食い豚の討伐、ドスランポスの討伐、化物キノコの討伐、報酬は最も低いゴブリンの討伐位であった。冒険者となり、難解なクエストを達成すれば大金は勿論…名声だって手に入れる。名声が手に入れば、詩人の手で歌として広まれるだろう。そうなれば英雄の仲間入りと言える。
そんな夢を見ては冒険者達は今日も冒険に向かっていく、金、名誉、ただ純粋に闘争を求めたり…理由は人それぞれだ。
「ねえ、カズマさん。お腹空いたんだけど」
「そう言っても俺達、金がないだろ。流石にギルバートさんにこれ以上迷惑は掛けられないって」
しかし、腹が減ってはなんとやら。カズマとアクアは朝食を食べてないためか既に腹の虫が鳴っている。とは言え、2人には金銭が1円…失礼、この異世界での単位は$でも円でもなくエリスだった。1エリスさえもなく、朝食を食べることが出来ない。
仕方なく、朝食は我慢して日雇いのバイトでも探そうかと思った矢先…カズマとアクアは有ることに気付いた。それは…
「洗濯物取り込んでたら遅くなったな。やっぱり良いの無いな…昼過ぎまで待とう」
クエストボードに新たな人物がやって来た為だ。その人物はカズマとアクアは忘れるわけがない、ギルバートと同じく異世界でのカズマとアクアの恩人。その人物が居なければ、カズマとアクアは今頃カエルの手でドロドロに消化されていたのだから。
そう、狩人のヴァイオレットちゃんである。
「あっ!!あの時の!!」
「行くぞ!!アクア!!」
ギルバートに迷惑は掛けられない。だが、ヴァイオレットはカズマと歳が近い…恐らくはカズマより年下だろう。そう判断したカズマとアクアはヴァイオレットに近づき…
「「朝食奢ってください!!」」
潔く土下座した。そして朝食を奢って貰った。
「というか、訓練所で訓練受けてバイトしてお金を貯めて装備を整えたらカエルごときに負けることは無いのに」
「「ぎぐ!!」」
「2人ともこの街の事を知らないでしょ?序でに案内してあげる」
そしてヴァイオレットの手でフロムinアクセルを案内して貰える事に成ったのである。
アクセル。そこは始まりの街だった…そうだった筈だ。本来の歴史ならアクア達女神連中がチートな特典を与えた地球人の方々が始めに来訪し、魔王を倒すために物語を始める駆け出しの街。
だが、この世界ではフロム・ソフトウェアの皆様が次々とやって来ている。そうなってしまえば駆け出しの街であっても、色んな意味で様変わりしてしまうのも仕方がないだろう。
異世界なのにライフラインとして電気が通っているし、下水道や上水道も完備されている。令和の日本も真っ青な発電システムが組み込まれているし…平原には5メートル程のロボットがカエルを乱獲したりと異世界ってなんだっけ?ファンタジーってなんだっけ?と言う有り様であった。
「この人はアクセルのギルドマスター。まあ、ギルドの一番お偉いさん。たまにパワードスーツに乗り込んで大暴れするけど」
「諸君。私が副業でギルドマスターをやっている大統領のマイケル・ウィルソンJr.である!!」
先ず最初に紹介されたのはアクセルのギルドマスター(副業)であり、アメリカ大統領であるマイケル・ウィルソンJr.。元軍人であり、30代でアメリカ大統領に就任した超絶エリートである。最強の大統領であり、アクセルでも絶大な支持率を誇る大統領である。
「アメリカ大統領ぉぉぉ!?なんで此処に居るの!?」
「気が付いたらこの街に来てしまってな。色々有ってギルドマスターに成ったんだ」
ハッハハと笑う大統領。
「そう言えば君は日本から来たのだったな。ヴァイオレット君、イェルネフェルト教授のラボに案内させなさい。きっと彼は喜ぶぞ!!私が許可する!!」
首輪で繋がれた人類種の天敵がそこで待っていた。
次回はACキャラが続々登場。
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