この悲劇の少女に祝福を 作:アクセルの狩人
カズマとアクアが異世界転生を果たしてアクセルにやって来る1年前。カズマより300年程未来の人間だが、1人の妙年であるが外見年齢は非常に若い1人の美女が転生の間にやって来た。
「ようこそ、霞スミカさん。偉大なるオリジナルのリンクスよ。貴方は偉大なる英雄として選ばれました。我々、神々は貴方をただ死なすのは惜しいと判断し…貴方を最盛期の姿で蘇生させて異世界に送りたいと思います」
霞スミカ。そうアクアに呼ばれた女性は静かに瞳を開けた。彼女は霞スミカ、日本人であるが日本という国を滅ぼした張本人である。だがこれには訳がある。彼女の時代では軍事産業が拡大し過ぎており、国家という存在が力を喪いつつあり、軍事企業が新たな秩序の構築のために全国家に対して宣戦布告を行ったのだ。
だが考えてほしい。普通は国家に企業が勝つのは不可能だ。とは言え、それはカズマが生きていた2000年代前半の話であり、霞スミカが生きていた2300年より先の未来では訳が違う。
何故ならその時代ではカズマの時代ではスーパーロボットと言えるようなロボットが実在していたのだから。
そのロボットの名前はアーマードコア。マッスルトレーサーを発展させた全長13メートル前後の人型機動兵器であり、胴体であるコア、腕部、脚部、等々の様々なパーツを組み合わされて作られる兵器である。
アーマードコアはACとも略され、ACはパーツを組み合わせる事で様々な環境に投入する事ができ戦い方を変えることが出来る。しかし、余りにもパーツの種類が異なりすぎると最早…ガンタンクとガンキャノンほどに別種に成ってしまう為にACのパイロットは基本的に自分にそったパーツ構成を行っている。
「ふっ…私が英雄か。呆れたものだな…何も出来なかったこの時代遅れの女が英雄と呼ばれるとは、呆れ話だ」
霞スミカは呆れたように乾いた笑みを浮かべ、自虐的に成ってしまった。
「ええ、貴方は立派な英雄ですよ。アーマードコアを更に発展させたアーマードコアネクストに乗り込み、国家解体戦争では日本を滅ぼして新たな秩序の構築に貢献しました」
「その為に、仕事とは言え多くの人々を殺したぞ。それだけじゃない。ネクストは稼働すれば放射能に似たコジマ粒子を撒き散らし…コジマ汚染を広げる。間接的に被害を受けた日本人が何人居ると?私の何処が英雄だ」
霞スミカが国家解体戦争で乗ったACは普通のACではない。コジマジェネレーターと呼ばれる特別なジェネレーターで稼働し、AMSと呼ばれる脊髄神経と機体を繋ぐシステムで演算処理する事が出来るシステムで動かすことが出来る斬新なアーマードコア…ネクストと呼ばれる物に乗っていたのだ。
ネクストはアーマードコアを更に発展させた最強の欠陥兵器。なぜ、最強でありながら欠陥兵器なのか?それはAMSに適合出来る体質で無ければ乗りこなす事は不可能であり、その適正が有っても低ければ…余程の操縦技術で脳を介した演算処理ではなくほぼマニュアルで動かす程の技能が無ければろくに戦えない程なのだから。だが、その分…これまでのAC全てを置き去りとする最強の兵器と成ったのだ。理由は大きく分けて3つ、コジマジェネレーターの恩恵により無尽蔵のエネルギーと機体性能の向上、そしてコジマジェネレーターの副産物であるコジマ粒子を用いたプライマルアーマーである。
プライマルアーマーとはネクストの周囲にコジマ粒子をバリアーのように展開する透明の防御幕であり、これにより様々な攻撃を防ぐ事が出来る。だが、無敵という訳ではなく…攻撃を受け続ければ減退するし、貫通力の高い攻撃を受ければ穴が開くこともある。だが、それでも再展開が何度でも出来るのは非常に優れており、このプライマルアーマーを爆発させるアサルトアーマーと呼ばれる技も有るのだ。
そしてネクストは稼働すればコジマ粒子と呼ばれる物質を撒き散らし、コジマ粒子は放射能に似た環境被害を出す。その為かネクストの出すコジマ粒子のお陰か、霞スミカの時代では地球は徐々に汚染されていき…霞スミカが中年を迎えた時代では人類は地上に見切りをつけており企業の庇護下にある富裕層の民間人や企業の重役はクレイドルと呼ばれる空飛ぶ空中都市に移住したのだ。
汚染された地上で暮らすのは地上で過ごすことを決めた人々、地上や資源発掘施設で働く人々、そして貧困層の人々位であった。
「血の繋がりが無いとは言え、ガキ1人救えなかった老いぼれだ。
さてと、猫を被るのはよせ、演技はバレてるぞ?神とやら」
「はー、だから私嫌いなのよね。貴方のような特異点の人。平和な時代の若者と違って演技とか通じないもの」
霞スミカに猫を被っている事を見破られたアクアはやれやれと言いたげに両手を振った。
カズマのような平和な時代の若者を異世界転生させる場合に限りだが「貴方は神様に選ばれました勇者です」等々の適当な事を告げれば向こうは乗り気に成ってくれる。だが、霞スミカのように歴戦の猛者が相手なら猫を被っている事がバレるし、最悪の場合…
「まあ、良いわ。んじゃとっとと持っていく物を選んでよ。貴方の場合、シリエジオで良いかしら?」
「私が決める。だが、その前に2つ質問がある。1つ、持っていくものは何でも良いのか?2つ、可能ならばで良いが私が生きた年代の人物の内…誰が異世界に渡ったのかリストを見せてほしい」
「あー…特異点の人達は所有物だけね。リスト?まあ、良いわ」
本来なら転生特典は何でも良い。しかし、特異点(フロム作品)の年代の方々は自分達が所有していた物しか持ち込めないのだ。
だが、霞スミカと近い年代の方々で異世界に転生した人々のリストなら見せてくれた。
「有澤の社長、粗製のリンクス達、レイヴン時代の傭兵達、ジョシュア・オブライエン…彼は当然か…英雄とは彼のような人を示す。おっ…アナトリアのレイヴンも居るか!正真正銘の英雄も居るではないか!まあ、彼は英雄と呼ばれるのを嫌がるかもな。
後はメルツェル、ウィン・D・ファンション、ローディー、ウォルコット姉弟、エイ・プール、メイ・グリーンフィールド………ふぁ!?なんでオールドキングとその取り巻きの名前があるのに、あのバカ息子の名前がない!?」
「バカ息子?ああ、貴方…セレン・ヘイズって名乗ってた時が有ったわよね?その時に貴方が拾い、育てた人類種の天敵 ヴィンセント・ヘイズなら地獄に堕ちたわ。裁判なんて必要ないわよ、アイツは殺しすぎたわ」
霞スミカは国家解体戦争を終え、それが終わって暫くして発生したリンクス戦争後、セレン・ヘイズという偽名を名乗った。
その時に地上のスラム街で1人の少年を拾う。その少年は身元が無く、かつてアナトリアと呼ばれたコロニーの生まれだった。
その少年は名前がなく、セレンの手でヴィンセント・ヘイズと名付けられて一端の傭兵に成長した。
だが、ヴィンセントが15歳に成って暫くたった後。ヴィンセントは人類を1つに纏めあげて救うために…地球と人類を双方を将来的に救うために人類種の天敵へと自分から成り果て…15歳の若さで此の世を去った。
しかし、ヴィンセントの真実を知っているのは手紙で直接知らされたセレン、そしてセレンから後に真実を知らされたアナトリアの傭兵とリリウム・ウォルコット、ウィン・D・ファンション等々の極僅かしかいない。
その為か、世間体にヴィンセントは人類全てを敵に回した犯罪者でしかないのだ。
「オールドキングは?アイツもだろ」
「ボーナス出るし、数的にはヤツより少ないわ」
その瞬間…何かがキレたセレンは目にも停まらぬ速さでアクアに襲い掛かり、片手でアクアの首を鷲掴みにして持ち上げた。
「あぎゃぁ!?」
「数しか見てないだと?私の息子の生きざまと決断を見ずに、数だけで判断するなぁぁあ!!
人間を嘗めるな!!神風情が!!そんなに異世界に転生させて魔王を倒したいなら、貴様等が魔王を倒せ!!
私は異世界にはいかん!!但し、来世が有るならヴィンセントを私の子供にしろ!!」
「異世界に行ってよ!!ボーナスが…私のボーナスが!!」
「知るか!!人間を嘗めるなよ、私の息子が護ろうとした人類と地球を嘗めるな!!神風情が!!私がネクストに乗って滅ぼしてやろうか!!」
その後、アクアは余りの恐怖にチビりかけ…セレンに脅されるがままヴィンセントの生きざまを映像として視認。その結果……
「びぃえぇぇぇえーーーん!!ごめんなさーい!!ヴィンセント・ヘイズ!!貴方は人類種の天敵ですが、人類を愛した英雄でした!!」
「おい、早く私の息子を連れてこい」
その後、霞スミカ改めてセレン・ヘイズは息子であるヴィンセント・ヘイズを連れて異世界に行ったのだった。
「えーと…次はリリウム・ウォルコットさん15歳ね」
「リリウムはリリウムの夫であるヴィンセント・ヘイズを要求します」
「もう、行ったわよ…母親と共に」
ではそんなセレンお母さんに連れられた人類種の天敵ことヴィンセント・ヘイズはと言うと…
「いらっしゃいませ~」
アクセルに有るイェルネフェルト教授のラボ…の地上にある喫茶店 レイヴンの止まり木で冒険者兼店員として働いていた。
因みに店長はアナトリアの傭兵、料理長はジョシュア・オブライエン、チーフはセレンであり、バイトはヴィンセントとリリウム・ウォルコットである。
ヴィンセント・ヘイズ 冒険職 冒険者 レベル48。
スキル 魔力放出、上級魔法、中級魔法、下級魔法、回復魔法、血の意思、ビーストハンド、リゲイン、人間性、スティール、気配探知、千里眼、等々……
次回…カズマくん、ようこそ…ACの喫茶店へ。
そしてジョシュアがギャグに染まる!!(中の人ネタ)
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