皆さんには夢があるだろうか。特に男子ならお金持ちになりたい、結婚したい。なんならエロい事したい。色々あるだろう。 なんかもう夢というか欲なのではと思えてしまう。 『夢は一歩間違えれば欲になり、欲張ると身を滅ぼす』って死んだ親父が言ってたけどそれでも夢は持ちたいものである。そんな俺にも夢はある。それは……
「小さい女の子にベッドで馬乗りにされながら恍惚な顔で『貴方の可愛い顔もっと私に見せて』って言われながら顎クイされた事ないんですけど、コレって何かのバグですかね?」
「ロリコンは死んでくれないかしら?」
「何かのバグですかね?」
「仮にも芸能人の私に普通に言葉でセクハラ出来るのは貴方だけよ」
「金髪のチビが俺に辛辣なんですけど」
「去勢する?」
「すみませんでした」
今俺とカフェで会話しているのは
クリーム色か、あるいはブロンズか、よく分からない色の髪という現実で見かけたらドン引きするけど、何故か俺の通ってる花咲川という学校は金髪とか緑色とかなんなら近くの羽丘学園に赤とかいるので違和感ない。しかも、その女の子達みんな可愛いし、何故かほぼ全員バンドやってるし。何かのバグですかね?
かく言うコイツも『
「そう言うわけだから俺は一人で珈琲を飲みたいんだよアララギさん」
「白鷺よ。それ何回目のボケかしら?」
「5回目かな。白鷺さんって言いづらいからさ。前にも言ってるけど鷺さんでも良い?」
「せめて最後まで呼びなさいと言ってるでしょ」
「だから言いづらいんだって詐欺師さん」
「眼の中にフォーク突っ込むわよ」
「それだけは勘弁してくれ……千聖さん」
「……寒気がするわ」
「うるせぇ白鷺」
シラタキさんは毒舌である。まぁ、素の彼女がコレだから別に良いけど。
「白鷺です。別に、いいじゃない。芸能人とカフェでお茶なんて一般人の貴方には滅多にないのだから」
「逆にそれが大問題なんよな。ファンや記者が見たらパパスプラッタじゃん」
「パパラッチよ。お父さんに恨みでもあるの?」
「親父は死んだから現役スプラッタ済みだ」
「ごめんなさい。触れていい話じゃ無かったのね」
そう言って謝る彼女だからこそ憎めないところがある。
そもそも俺と白鷺が会ったのは少し前だが、元々は彼女が俺に話しかけるのをやめなかったのだ。
俺は芸能人とかどうでもよくて、適当にあしらっていたけど、彼女としては気に入らなかったらしい。
そりゃ確かにあの大女優の白鷺千聖だもんな。男も女も下心で近づこうとする奴は多いだろう。
でも、俺にとってはそいつもただの人間だ。飯も食うしトイレも行くし、こうして店で何か飲む。そして、人間だからこそ……
「……親父だろうが芸能人だろうがなんだろうが所詮は人間だ。いつか死ぬ。当たり前の事だろう」
「……いつもそう言ってるわね」
「まぁ、俺はそれを知ってるからな……それじゃあ、俺はこの後バイトあるから。これ出しとく。釣りは取っておけ」
彼女の言葉を聞かず俺はそのまま店を出た。
「本当に不思議な人ね」
♪♪♪
彼と出会ったのは少し前。たまたま行きつけの喫茶店でお茶にしようとしていた時だった。カフェには多くの一般人もいたけど、変装をしているおかげか、バレてはいないようだった。
そんな時私の隣の席に座った男がいた。ちらと目を向けると身長は180いかないくらいだろうが、整った顔に黒髪で清楚な男子高校生だ。しかも、私と同じ花咲川の生徒だった。
でも、それだけなら私は声をかけないしなんなら興味も示さない。
そう、彼の眼が死んでいなければ私は見過ごしていた。
彼の眼は全てを諦めた眼、絶望していた眼であった。人の顔色を伺い、生きてきたような……これは昔の私の眼だった。
子役の頃からテレビに出ていると、番組スタッフや有名芸能人の裏の顔とかが見える事がある。それを幼少期から知っていた私は社会の裏に絶望しながら全てを諦めた。そんな眼を私も持っていたのだ。
だからだろうか……
「……眼、死んでますよ?」
「……初対面に対してははっきりと物事がいえる意味不明な奴には言われたくねぇな」
「初対面だからこそ、次に会うことは無いですから。強く言えるんです」
「……そうか、じゃあ俺も一つ」
そして彼はお前は確か、と一言言ってから
「俺と同じ花咲川で、
ここで私はしまったと思った。彼がそこまで知っているならば熱烈なファンの可能性がある。このまま大声で名を言われたら……そう思ったが、彼は小声で……
「……|
「|
私が二度目のしくじりをした。だが、奇跡的に時間が経ち、あまり人もいなくなったおかげでこっちを見てる人はいなかった。いや、普通は人が減った分聞こえるんだけど、ガールズバンドの知り合いが大半だったので運が良かったと言える。お願いつぐみちゃんこっち見ないで。
「……ごめん、白鳥なら結構いるけど白鷺ってあんまいないから五感で覚えて勘違いしたぜ。後、彩が千聖ちゃんとしか言わないから苗字もあやふやだったんだ。許してくれ」
「……まぁ、名前に関しては別にいいわ。というか彩ちゃんと知り合いなの?」
「前に会話したら懐かれた。それで、しららぎさんは俺に何の用だ?」
「白鷺よ。それよりも彩ちゃんファンの人達が貴方を襲うなんて事もあるでしょう。アイドルと一般人が仲良くしてていい思いをする人はいないわ」
「本音言ってみろアララギさん」
「彩ちゃんとイチャイチャしてるのが羨ましいわね。後、白鷺よ」
「完全私情じゃねぇか」
しまった。私としたことが、完全に彼のペースである。一呼吸おいて聞きたかった事を聞いてみる。
「そういえば貴方に声をかけた理由だけど、眼が死んでたから声かけただけよ」
「少し嫌な事があっただけだ。時期に治る」
「あくまで言わないつもりね」
「不知火さんには関係ないしな」
「白鷺よ。芸能人の私にでもできない事って逆に気になるわね」
「芸能人でも所詮はただの人間だろ。死ぬ時は死ぬ」
その瞬間、私は彼の大切な誰かが亡くなったのだろうと思ったが、彼は
「お前の思ってる事とは違うぞ。ただ、夢が叶わなくて悩んでるだけだ」
「……夢? ロマンティックね」
「まぁ、叶えられそうで叶えられないんだよなこれが」
「……もしかしたらアドバイス出来るかもしれないわよ。芸能人の私が話しかけるなんて天変地異もいいところ。最後の夢の機会に、貴方の夢話してみなさい」
「……まぁ、たまには誰かに頼るのも悪くはないか」
「いいか、白旗さん」
「白鷺よ」
「俺の夢はな……」
そう言って彼は自分の夢を語った。
「小さい女の子にベッドに押し倒されて耳舐められながら『貴方の可愛い顔もっと私に見せて』って言われる事だ」
「マスター、お会計お願いするわ」
「おい如月」
「白鷺よ」
そんなくだらない出会いがあっただけだった。
♪♪♪
その後は話しかけるつもりはなかったが、彼とはカフェでよく会う。しかもこの前財布にカードしかなかった時は
「一般人が芸能人に奢るなんて無いからな。夢の一つと考えて取っておけ」
と言われて奢ってもらった。そのせいで私は彼に借りができた分離れるのも気持ちが悪かった。
だから、今こうして会話をしている関係だが、
「私に対して欲が無いのもそれでムカつくわね」
そんなふざけたプライドも持ってしまったのも原因かもしれない。