「……んん、今何時だ……身体怠い「ことのは!」え? 千聖?」
どういうことだ? 千聖とはさっき別れて眠ったはず。だが、千聖は驚くことを言う。
「10日間、意識無かったのよ」
「……怖。あ、髪の毛全部抜けた。また生やすか」
「話聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。お前が俺に馬乗りになってキスしながら俺を睡眠姦したとこまで知ってる」
「……変態ね」
「今の間はなんだ?」
「……とにかく説明するわ」
「今の間は!?」
「……キスしたのは本当だけど」
「ちょっと千聖さん? 今の間って何ですかね?」
「聞こえてないならいいわ。一から説明するから鼓膜破いて聞きなさい」
「それじゃあ聞こえねぇよシカトさん」
「千聖よ」
千聖曰く、あの眠りから呼吸が乱れ、心拍数も乱れて危篤並みの状態になったらしい。だが、日数を重ねる内に癌が不思議と消えていって、医者も驚きの声を上げるくらいだったそうだ。今は完全に癌が消滅したとか。不死鳥とかのレベルじゃねぇだろこれ。
「……とりあえず生きてたのか俺は」
「ことのは、眼が覚めたのね」
「母さん?」
病室のドアが開くと同時に母さんが入ってくる。
「仕事なんて投げて来たわ。息子が目を覚ましたって千聖ちゃんから聞いて仕事するバカはいないでしょ?」
「……不死鳥伝説、続いたんだな」
「無事で、よかった」
そう涙を流した母さん。そうだ、俺は彼女に言わないといけない事があったんだ。
「……母さん、今までごめん。俺癌になって、自分の事しか考えて無かった。死んだやつも、生き残った俺を恨んでるとか、人なんていつか死ぬから弱いものなんだって、勝手に思ってた」
「でもさ、千聖達と会って気がついたんだ。俺が生きているから千聖達とも会えたし、こうして母さんと話ができる。だから生きてるのって割と幸福なんだなって」
「夢の中でさ、病室で死んだ人達に会ったんだよ。夢だから俺が良いようにしてたかもしれないけど、俺にみんな生きてくれって言ってくれた」
「だから、それが事実かわからなくても、俺はみんなの分まで生きるよ。死んでしまったみんなの分まで、この寿命を捨てない。だから」
「俺を育ててくれてありがとう、世界母さん」
「……ことのは」
「……ゲッホ! ゴホッ! 畜生今度は唾気管に入った!」
「しまらないわね」
「うるせぇ! ゲッホ!」
きっとこの言葉は俺が本心で思ったからスラスラと出てきたんだ。じゃないとこんなにも心が晴れたような気持ちで母さんに言えるはずなかったから。
母さんは案の定泣いてた。千聖も静かに見てたけど、なんかこういうのは恥ずかしい。
その後は癌は無くなって、少しのリハビリ後学校に復帰した。
♪♪♪
「彩、相談がある」
「ことのは君が名前を弄らないなんて珍しいね、どうしたの?」
俺は呼吸を整えながらずれたカツラも少し整えて言う。
「……この前、俺の家で千聖に馬乗りにされて『こういうの好きなんでしょう?』って言われて頬にキスされたんですけど何かのバグですかね?」
「なんでそこまでされてるのに付き合わないの?」
「うるせぇぞハリテヤマ」
「丸山だよ! 太ってないもん! ……無いよね?」
「大丈夫だ可愛いぞ」
「えへへ……ありがとう……じゃない! 千聖ちゃんが冗談でそんなことやらないってことのは君が一番わかってるよね!?」
「……まぁな」
あの件の後から千聖の様子がおかしい。俺の腕に抱きついて来たり、普段以上に一緒にいる事が多くなった。おかしいというか、俺の勘違いで無ければ……アレだな。うん。多分アレ。
スキャンダルは如何? なんて怖い事を言って脅してみたが、母さんがなんとかするから頑張れともうなんか外堀埋められてる。流石芸能人ですね。元だけど。千聖と母さんはめっちゃ仲良いので良いことなんだろうな。
「……それで? ことのは君は千聖ちゃんの事好きなの?」
「俺は小さい女の子が「答えろ」……ア、ハイ好きです」
怖、彩さんどうしたマジで。まぁ、確かに俺も千聖が好きだけどな。
想いが固まったのリハビリ中だけど。千聖が献身的に見舞来てくれるんだもん。そんな女の子芸能人でもいねぇよ。あいつ芸能人だったわ。
「だったらもう後は行け行けGOGOだよ!」
「言葉が古いよ古山さん」
「丸山だよ!」
「随分と楽しそうね、ことのは」
「……ようコウノトリ。随分とストレス溜まってんじゃねぇか?」
「白鷺よ。鷺。そうね、私と言うものがありながら、彩ちゃんとお忍びデートなんていいゴミ分ね」
「ゴミって言わなかった?」
「千聖ちゃん誤解ですわよ」
「口調変だぞ四角谷さん」
「丸山だよ! 無理に逆にしなくていいから!」
「誤解ねぇ?」
「ひぃ!? ことのは君助けて!」
「おい千聖、落ち着けよ。今日はお前休みって聞いてたから彩と話してただけだ。来るって分かってたらこのポンコツよりお前を優先するよ」
「ねぇ、私の味方いないの?」
「……買い物、付き合いなさい。それでチャラよ」
「はいよ、何買うんだ?」
「そうね……」
そう言って千聖は近づいて……俺にキスをした。
「「……え?」」
呆気にとられる彩と俺に千聖は言う。教室のみんなも俺たちに釘付けだ。嬉しくねぇ。
「コウノトリが持ってくる道具でも買おうかしらね♪」
「……え? ちょっ!? 白鷺千聖!? 何言って……」
「いいえ、名前違うわよ?」
「……桂千聖よ、私と付き合うならそれくらいの覚悟を持ってね♪」
「……嘘だろ? ってか、さっきの聞いて……」
「さぁ? どうでしょうね?」
呆然としてる俺にさらにキスをして来た千聖。さて、これから俺はどうなってしまうのか。
でも、芸能人に振り回される毎日は一般人にとって刺激的なものなのかもしれない。
俺は千聖の眼を見つめながらこう言ってみた。
「……仮にだ、数万歩譲歩して、俺とお前に子供が出来たら……名はことりでいいか?」
「そうね、鷺と不死鳥よりはマシなんじゃない? というか告白より先に子作り出てくるのは流石ロリコンの変態ね」
冗談でも、本気でも、そう言った千聖の頬は赤くなっていた。
「……千聖、いや、千聖が好きだぞ」
「合ってるのになんで言い直したのよ、そうね、ズラ君、いいえ、ことのは私も好きよ」
「ズラじゃねぇ、桂だ」
「別に髪がなくても気にしないわ、人間だもの」
「俺もお前がアイドルとか、芸能人とかしらねぇよ人間だからな」
「「……フフッ(ハハッ)」」
「砂糖吐きそう」
そう言って一つの異端カップルが出来たことに血ではなく砂糖を吐いた丸山彩がいたのだった。
最終回でしたね。今回のお話は賛否あると思うんで、次は平和な話にします。