ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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こ、公式と被った……だと……?


エピソード4 降り注ぐ罪禍 3

 日曜の深夜、また停電が起こった

 

「きゅいぃいい」

 

「あぁキング、おかえりなさい」

 

 月夜の朧光に照らされながら、水槽から顔を出したウナギを撫でる

スーツを脱ぎ捨てた女は、ペットを甘やかす事にかけては妥協しない女だった。

 

頭を撫でられて心地良さそうに鳴く白ウナギは月が雲に隠れると再び家を出て行った

己の為に、それ以上に大切なものの為に。

 

「あら、もう行くの?」

「きゅいい……きゅういいい」

 

 

 禍は再び飛翔した。

 

 


 

(雄介!また停電だ!この間から感覚が狭まっているぞ!)

 

「なんだって!原因は全く掴めないし停電も止まらないなんて!」

 

 初めて起きてから二日に一度、一日に一度、そして朝夕と徐々に間隔は狭まり

今ではもう電子機器の使用自体が困難なほどに

独立した発電機構を備える工場や施設以外はまるで仕事にならず

電気に頼った都市機能は麻痺しかかっていた。

 

(今回は近いぞ!エネルギーの流出を感知した、それがなんであれ原因を叩くぞ!)

「了解っ!ザイン、イグニッション!」

 

 己の胸に輝く鍵を突き刺し

封じられたエネルギーを解放する雄介

そしてザインが夜空を飛翔し、エネルギーが漏出した地点へ赴く

そこには。

 

「(何もいない……!?)」

 

 雷光を放っていたはずのその場所には、既に何もいない。

 

 

「デア……?」

「キュイイイッ!」

 

 突如伸び上がる白い尾がザインの左腕を締め上げる。

 

「うわぁぁぁっ!」

 

 爆発的に拡大し出現した四肢の無いエレキングがザインの体に絡みついて攻撃する

重力任せな体構造も多い陸上生物と違い、全身の挙動全てを筋肉に依って制御する必要がある海棲生物、その特有の凄まじい筋力が発揮され、ウルトラマンの強靭な肉体すらも破壊せんとしていた。

 

「キュイイイイイイ!」

 

 そして、さらに。

 

(不味いぞ雄介!こいつ、私のエネルギーを吸収している!)

「なにぃ!?じゃあこいつが停電の原因か!」

 

 バチバチと鳴る空電はザインが抑え込んでいる体内エネルギーを吸収されている証拠

ザインの全身を満たす電気エネルギーが急速に奪われ、その力を削いでいく。

 

「ザイン!変身解除だ!」

(無理だ!このまま抑え込むのが精一杯だ!)

 

 電気エネルギーとは不安定なものであり、肉体を構成するエネルギーとしては本来、適切とは言えない

ザインは己の優れた念力によって内側にそれを留め続ける事で肉体の安定を実現していたが、その安定を崩されてしまった以上、常に放出されて奪われるエネルギーを引き止めることに力を尽くさねばならなくなってしまったのだ。

 

 しかし、ザインのエネルギーを吸収していたエレキングが突如として離れる

いつものBURKクルセイダーが2機、そして中国支部新規開発型重爆撃機、BURK炮龍(バオロン)の攻撃に晒されたのだ。

 


 

【クルセイダーでは火力が足りない】

 

 現状の武装ではディノゾールに対して有効打といえる攻撃はシルバーシャーク砲のみ

そしてアステロイドバスター級の威力があるシルバーシャークを地上で使用する事は困難

故に、高火力の武装を積むフィニッシャーとなる事を計画の基礎として中国支部で作られていた新型機『炮龍(バオロン)』を強引に駆り出して持ってきたのである

無論試作機なので動作安定も微妙である為、クルセイダーがサポートについているが、

少なくともエレキングに対して使用する火力としてはそれは極めて有効だった。

 

「キュイイイッ!」

 

 ずるりとザインから離れたエレキングが道路を這い回り、山間の方へと逃げようとする

しかし、それを逃すクルセイダーでも、炮龍でもなかった。

 

「ピアッシングパルサー!」

「バリアントスマッシャー!」

 

 二機のクルセイダーからビームとミサイルが放たれ、怯まされたエレキングに炮龍がロックオン。

 

「丈晴!やれ!」

「おう!神虎(シェンフー)炸裂誘導弾(ミサイル)!発射!」

 

 火星から採掘された天然スペシウム結晶を使った液化濃縮スペシウムのシリンジが爆砕され、圧縮し、空気と混ざり、急激に活性化して原子崩壊

スペシウムの爆発が起こる。

 

 青白い爆発がエレキングの体表を焼き、苦悶の悲鳴を上げさせる、しかし。

 

「ギュシイイイイイイッ!」

 

 口から連続放射された光弾がクルセイダー二機を過ぎて炮龍へ

鈍重な爆撃機である炮龍にそれを回避する術はない。

 

「デェァァアッ!」

 

 ザインとてただ座して見ているわけではない、念力によってエネルギーの暴走を抑え込み、そのまま念力を応用して空間を歪め、放たれた三日月型の光弾を吸収無効化してのけたのだ。

 

「ジャッ!」

「よし!今だっ!」

 

 クルセイダー二機と炮龍の一斉射撃が命中してよろめくエレキング、しかし逃げようとする様子はなく、(とぐろ)を巻いて待ち受ける

その腹が光り蠢く様を、ザインは見逃さなかった。

 

(まさかあいつ、子持ちなのか!?)

 

 ザインの経験から来る推測は正しく、このエレキングは産卵を控えた母親個体

エレキングの産卵は十分な電気エネルギーの蓄えがなければ子個体の活動に支障をきたし、成熟が進まなかったり卵の中で死亡してしまうリスクがある

そのために特に電気が豊富な市街部でエネルギーを吸収して産卵に備えていたのだった。

 

「デェァァアッ!」

 

 ザインはスパークと共に一瞬で移動し、BURKとエレキングの間に入った!

 

「何っ!?」

「射線が通らない!」

 

 爆撃を中断した炮龍とクルセイダーが上昇・旋回して場を離れ

一瞬の猶予が生まれる。

 

「ザイン何で!」

(このエレキングは母親だ、親が子の為に働くのは当然、そうだろう!

それに親の行いが如何なるものだろうと、子の命まで傷つける事は出来ない

新たに生まれる命に罪はない、M78ウルトラ法でも天の川銀河連盟の共通法でもそうなっている!)

 

「だがこのままじゃあ市街地が壊滅してしまうぞ!」

(あぁ、だからこうするんだ!意識を集中しろ、雄介ッ!)

 

 ザインは左手を前に突き出し、エレキングへと向ける。

 

 バチリ、バチリ、バチバチバチバチ

空電が走り、紫の雷は白く変わった、空間に波紋が広がり、現実の次元を超越した光の道が降臨する。

 

(「トゥインクルウェイ!)」

 

 エレキングへと突撃したザインはそのままトゥインクルウェイのゲートへと飛び込み

超長距離を空間転移。

 

(ここなら邪魔は入らない……そうだろうエレキング)

 

 光の国が公認する生存可能領域を保有する惑星(ハビタブルプラネット)の中でも生物のいない星、天の川銀河系テイン太陽系第五惑星、惑星ユアンへと降り立ったザインは

その鉄腕からエレキングをそっと下ろした。

 

「キュイイイッ!」

 

(よせ、我々が争う必要はない)

 

再び(とぐろ)を巻く攻撃態勢を取ったエレキングを念話で制止し

そこから少し離れる。

 

この惑星はハビタブルゾーンこそあれど重金属の雲から常に雷が降る為に環境が厳しく、大した資源もないためリゾート星にも向かず、資源採掘もされていない半ば放棄された星、

ザインは恒点観測員に就任した友人から聞き及んでいた惑星であったためにエレキングにこの星の環境を提供する事ができる筈だと判断したのだった。

 

(この星ならばエネルギー補充にも事欠きはしないだろう?大した外敵もいないから安心して産卵できる筈だ)

「キュイ……キュウウイイイッ!」

 

 くるくると回る頭の角から感情を伺うことは出来ないが、概ね満足できる物件だったようだ。

 

 再びトゥインクルウェイによって地球に帰還したザインはそこで変身を解除した

そもそも光エネルギーを扱う事を得意としないザインがトゥインクルウェイを維持するのは困難であり、時空干渉のコントロールを失えば時の果てや宇宙の彼方、果ては別次元にまで飛ばされてしまう可能性が否定できない為にかなり神経を使っていたのだ

エネルギー消耗も疲労も尋常のそれではない。

 

「うぉ……やっべ……」

 

 エネルギー消耗の影響で変身解除直後の雄介にも疲労感が圧しかかり

思わず倒れそうになる体を支える

光がなければ回復すらままならないウルトラマンとは違い、地球環境下なら自力で回復できる人間の体を持つ雄介ならば二、三日も休めば十分に回復できるだろう。

 

(さあ、我々も眠ろう

明日は月曜だからな)

「言うなよそれ……」

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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