ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード34 塵芥 1

「あぁゆーくん、ゆーくん格好良いよ……」

 

 彼女の纏っていた虹の粒子状物質は完全に消失しているが、そんなことは気にも留めずに天を仰ぐ。

 

「神よ、大いなる神よ、盲の愚者を救いたまえ、愛したまえ、未だ目覚めぬ蒙昧を啓き高次の視座を与えたまえ」

 

 地球を守り続けていた大いなる意思、それによるバリアが完全に砕けてしまった今、もはや彼女のシンクロに寄らずとも宇宙から怪獣どもは降り注ぎ、邪悪は再び訪れる

闇の時代が始まろうとしていた。

 

「光を滅ぼし闇を臨む、我らが愛し我らが讃える、夜と宇宙の神秘の頂、深海に眠る我らが王、彼方の星より来たりて眠る、かつて降り立ち、今は眠りし、そして未来を支配する王よ」

 

 彼女の邪神賛歌は続く。

 

「愚昧なる瞳に映したまえ、信ずる者らに示したまえ、宇宙の超越と海の王土と永遠の生を下したまえ

はるか遠き我らが王よ」

 


 

「ようやく起きたか」

 

 数日後、自宅にて目を覚ました雄介は、ついに再覚醒したザインの意識へと語りかける。

 

(すまない、私の意識の覚醒まで、どのくらい掛かった?)

(……5日は待った、その間に起こった事も説明するか?)

 

(いや、問題ない……後で記憶の方を見るさ、それよりまずは先の話をしよう、以前は雄介の体の方が限界に近かったが、先日のダイナマイトを使った事で逆に私の方が限界寸前の状態だ、当分変身不能、あるいは変身後即座にエネルギー切れに陥ると考えてくれ)

 

(変身はできる限り控えるのは変わらないか、わかった)

 

(あぁ、だが出来る限りで良い、無理に渋って結果を悪化させては元も子もないからな)

 

 ザインの意識は再び雄介の感知できないレベルにまで低下する、完全に休眠状態になる事でエネルギーの消耗を抑え、同時に自己修復に努めているのだ。

 

「どのくらい掛かるか分からんが、まぁ、流石に一日二日のスパンでポンポン連続出現するってことはないだろうし……」

 

 雄介は一人、牛丼をレンチンするのだった。

 


 

 翌朝、雄介が目を覚ましたのはけたたましい怪獣警報ではなく、普通の目覚ましの慎ましやかなアラーム音

今日も出だしは平穏だ。

 

「うっし、今日は……1限からか」

 

 予定を見れば今日出席すべき講義が並んでいる、防衛隊所属という事である程度融通は効くのだが、それが許されるのはひとえに優秀であるが故

あまり成績を下げればその言い訳も効果を失ってしまうだろう

幸い時間的に余裕はあるため、まずは朝食を摂らんと棚を漁り、その中で見つけたパックのミートソースと乾麺パスタを茹で始める。

 

「朝に食うべきじゃなかった……」

 

 パウダーチーズとミートソースのパスタの味は流石に朝食には向かなかったようだ

さっさと朝食を食べ終わった雄介は皿を手早く洗って乾燥ラックに置き、歯を磨いて髭を剃る

手間ではあるが、身嗜みの一環として欠かせないポイントだ。

 

「よし、行ってきます」

 

 駐車場に停めてあるバイクのエンジンを掛け、残燃料のゲージを確認しながらアクセルを回し、左足を踏み切って走り出す

これまで何度も繰り返した朝の通例事項、大学への道程が始まった。

 


 

「霧島さん、今日のお昼はなにか予定とかありますか?」

「え〜……予定は無いですね、今日は12:00まで監視任務で……12:50まで休憩なのでその間に食堂で済ませるつもりですが」

 

「なら、私もご一緒して良いですか?」

「わかりました」

 

 陸戦隊のオペレーター、槙島さんに尋ねられたのは昼の予定、いつも通りの監視任務に明け暮れるつもりで予定なんぞ存在しなかった霧島にとっては驚くべき珍事だった。

 

「……あ、生体エネルギー感知しました!」

 

 しかし、監視任務をその程度の事で疎かにはしない、彼はプロフェッショナルなのだから。

 

「このパターン、おそらく不完全体のケルビムですね」

 

 槙島も一気に仕事人の表情になり、弘原海へと内部回線を繋ぐとケルビムの出現報告を始める。

 

「弘原海室長、こちらオペレーターの槙島です

先ほど不完全体ケルビムと思しきエネルギー反応を感知しました、出現座標は」

「エリアK-7、横浜港付近です!」

 

 朝早くから活動する漁港の付近、それも平日ともなれば活気ある場所だ

そして被害の出やすい場所でもある。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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