ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード34 塵芥 2

「椎名、おい、聞いているのか」

「勿論聞いてますよ」

 

「ならこのパイプの液体輸送に要する必要圧力の相関図、書けるよな?」

「……も、勿論ですよ」

 

 朝早くに大学に来た雄介は講義の最中に寝ないように事前に体力の回復に努めていると、講義中でも無いのに突然目の前に来た教授にせっつかれて頭を全力で回す。

 

「え〜〜……」

 

 やたら複雑な公式を頭の中に浮かべながら二次関数のようなグラフを展開する雄介。

 

「……分からんなら分からんで良い、まぁ講義中ならそれで済ますわけには行かないけどな」

 

 流体の抵抗に関する公式はなんとか思い出せただが、その公式の当てはめとグラフ化の途中でけたたましいアラームが鳴り始める!

 

「怪獣警報!?」

「すいません教授!」

 

 雄介と今入ってきたばかりの明の二人が教室を飛び出して駆け出し、それに続くように屯していた学生たちは各自で情報を確認し始める、一方舌打ち一つで話を納めた煙王教授も避難指示を出すべきかの判断のために端末を取り出した。

 

 

 

「すいませんちょっと!」

「通してくれッ!」

 

 二人が廊下を駆け抜けてゆき、人とすれ違いながら大学の敷地を出るあたりで情報の確認を終えて敵の種別とその出現地点を把握する。

 

「前と同じケルビム!K-7〜K-11!」

「了解!」

 

 ケルビムの不完全体は以前から結構な頻度で出現しているが、不完全体なのは栄養不足や成熟期間不足がゆえ、後発の個体ほど十分に養分を得て、成熟期間を経ている

つまりは徐々に強くなっているのだ、如何に不完全とはいえ以前の個体と同じように軽視することは出来ない。

 

「雄介くん、乗って!」

「はい!」

 

 敷地を出てからはややもせず、以前もお世話になった車輌科(ロッジ)の山中隊員とシルバーアローが姿を現し、そのまま雄介はシルバーアローで移動を開始、一方明は潜水連絡艦スワローテイルより無人出動した自分の乗機であるシーホースを待つ。

 

「シークレットハイウェイに入るわよ、耳抜きオーケー?」

「大丈夫です!」

 

 地下道であるシークレットハイウェイは高速での突入時に空気が押されて圧縮される都合上、爆音が鳴ってしまううえに気圧変動も起こるのだ。

 


 

「来た来た、うん、良いよ、大丈夫」

 

 ケルビムの孵化を見届けた女は軽やかに笑い、コンクリートの埠頭から海面に降り立つと、次なる影がその水面から姿を現した

 

 

「本当に大丈夫なのか?」

「……あぁ、お前も来たんだ?……大丈夫だよ、ゆーくんも必ず来るし、ケルビムは力を引き寄せる

マザーケルビムの肉片やその子達の誘引能力が怪獣を次々に引き寄せてくるから、それじゃ頑張って」

 

 影の正体は千郷の体を乗っ取ったペガッサ星人、その問いに答えた彼女は影と入れ替わるように姿を消すのだった。

 

「…………全く、ゴドラもペガッサも駒扱いか、我らが神もあれほどでは無いというのに

まぁ、けど……もう直ぐだ」

 


 

「室長、椎名到着しました!」

〈よし、レボルシオンはもう回してある、直ぐに出撃しろ!〉

 

「了解!」

 

 移動中に車の後部座席で着替えと装備の点検を終え、基地の敷地に入り次第に弘原海へと通信を掛けていた雄介は最短で報告と出撃許可の取り付けを終えて即座に通信を切ると、その終わり際を見極めてか、中山が話しかけてくる。

 

「がんばれよ、戦闘機乗り(ファイター)

「ウス!」

 

 半ば飛び降りる形で地面へと降り立った雄介はそのまま駆け出して数百メートルを走り切り、息を整えながら整備科(メカニカ)の綱吉へと視線を送る

流石に息を整える最中にまで発話する余裕はないため無言になってしまうが、彼もそんなことはわかっているようで一方的に説明を終了する。

 

「いいか、メンテナンスは十分に出来てるがまだ予暖機が十分じゃねぇ、メテオールとブラスターは使えないと考えろ、ミサイルとバルカンだけで戦え!いいな!」

「はい!」

 

 その2音だけを言い切った雄介はタラップを登ってコックピットに座り、再び呼吸を整えながらシートベルトを掛けて待機状態のシステムコンソールにアクセス、音声認識ソフトがボイス入力受付を開始すると同時に宣言する。

 

「BURK JAPAN 椎名雄介 レボルシオン、出撃!」

 

 レボルシオンが飛び立つと程なくして通信が掛かってくる、霧島オペレーターによる今作戦の概要や情報の共有である。

 

〈雄介君、まず出現した怪獣はケルビム、出現地点は横浜港付近の海です、既に上陸していますが出来る限り水際で抑えてください、ストライダーの速度なら5分と待たずに到着できるはずです、今は丈治隊員と竜弥隊員が現場で時間稼ぎを担当してくれていますが手数が足りていません、落とされる前に合流してください〉

「わかりました!」

 

〈作戦は怪獣による上陸の迎撃マニュアルより水際での火力戦を展開して物理的に押し潰します、

残念ながらレボルシオンとクルセイダーの2機ではケルビムの完全体はメテオール無しには押し切れませんので、不完全状態のままで倒すことが肝要です、なのでなにより速度を優先してもらいます、2人と合流次第最大火力で胴体を攻撃、転ばせてから脳を破壊してください

一般的な頭部への攻撃が有効です!〉

 

「はい!」

 

 なんともエゲツない攻撃を提示してくる彼の声に元気よく返事をしつつ狙いを頭部に絞った攻撃の脳内シュミレーションを練る雄介

現場到着まで残り190秒

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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