ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

12 / 109
エピソード5 心に降る雨 2

「この異様な気配……ザイン!」

(無理だ!よせ雄介!

体力が限界の状態で変身なんて自殺行為だぞ!)

 

 胸に掛けられたザイナスキーは光を放つ事なく揺れて、止まる。

 

「だがこれは……!」

(だとしても無理だ、大人しくBURKに任せるしかない)

 

 肉体疲労が限界に来てしまった雄介はザインに変身できず、しかし怪獣がそれで手を緩めることはない。

 


 

 

「ホーッ!」

硫酸怪獣ホー 住宅街に実体化。

 

 


 

「ポイントK-27 周辺空間エネルギー値、急速に低下!マイナス域突入、なおも低下中

これは以前のディノゾールと同じです!」

「なに!クルセイダーズ、聞こえたな、K-27に出撃、ただし手を出すな

住宅街の夜中ともなれば人が多い筈だ、警察当局にも連絡して避難誘導を急げ!」

 

「カメラ画像からドキュメント照合しました、ドキュメントUGM及びGUYより硫酸怪獣ホーと断定、観測された通りマイナスエネルギー怪獣です!」

 

 マイナスエネルギー怪獣の厄介なところは2つ、通常方式によって感知を行う一般的なレーダーでは発見できない逆位相のエネルギー体であるということと

非物理的な存在であるということ

つまり既存の兵装による物理攻撃・エネルギー攻撃の悉くが真っ当な効果を発揮しないのである

 

BURKの基地本体に備えられた複合レーダーは逆位相のエネルギーにも対応できるが、流石に航空機であるクルセイダーにそんな御大層な装備はない

つまりは現代的なレーダー観測射撃ではなく、化石の如き第二世代戦闘機の得意とした有視界戦闘を強いられるということだ

さらにはミサイルなどの誘導兵装の一切が機能しない

これがどういうことかというと。

 

「2番機ハードポイント急いでピアッシングパルサーに換装してくれ!」

「今からですか!?無理ですよそんなの!ジェネレーターとの兼ね合いもあるんです、予備運転もしてないような武装に交換なんてとても出来ません!」

「いいからやるんだ!必要なんだよ非実体兵装が!」

「できませぇぇん!」

 

 ロックオンしてからでなければ撃つことができない精密誘導ミサイルも、備え付けの小火器もどちらも無意味となってしまったBURKクルセイダー2番機は実質的に戦闘不能になってしまったということだ。

 

「仕方ない、3番機、先に出るぞ」

 

バオロンも実体兵装に偏重している武装構成からお役御免となってしまい

空に飛び上がったのは普段の三機編成から残った3番機のみとなってしまった。

 


 

 

「BURKが来たか……」

(しかし数が少ない、前のエレキングの時の新型機体もいないようだ

大丈夫だろうか?)

 

 変身できずとも走ってホーの近くまで来たが、流石にナイフ一本でチグリスフラワーやら改造ベムスターやらに挑むような気概はない雄介にとって、硫酸の雨による高い物理破壊力を有するホーは生物機械問わずに破壊の危険を撒き散らす凶悪な存在

これ以上接近することはできない。

 

「少年だけでも……っ!」

 

 ウルトラマン特有の超視力で捉えたのは、公園で気絶している子供

変身できずともエネルギーの流用くらいは造作もない。

 

「ザインっ!」(ああ!)

 

 両脚に稲妻混じりの光が宿り

金色の軌跡を描きながら駆け抜ける

雄介がホーの足元を通り過ぎた時には、その腕には少年が抱えられていた。

 

 だが、やはりこれでは根本的問題は解決できない

BURKも攻撃しているようではあるが、そもそもホーとは虚な影に過ぎないため実態が伴わずに物理的攻撃が当たらないのだ。

 

激しく荒れ狂うマイナスエネルギーが硫酸の雨となり都市を穢してゆくなかで

雄介は身を守るために屋内へ身を隠した。

 

「流石にこりゃあ無理だ……」

 

 極悪な酸性雨を避けながらコンクリート製の天井に祈りを捧げる雄介は

しかしホーへと対処を諦めていなかった。

 

(どうすれば良い……どうすればホーを…)

逆にザインはマイナスエネルギー怪獣の厄介さを熟知するが故に焦り

変身できない事実と街を守らんとする使命感に板挟みされていた。

 

「ザイン、念力だ

念力で幻影を作るぞ!」

 

(よくわからんが何か策があるんだな!)

 

念話の密度を上げ、一瞬にして雄介の思惑を理解したザインがウルトラ念力を展開

上空に現像を作り出し、投下する。

 


 

「デアァッ!」

 

幻像ウルトラセブン 出現

 


 

 片膝をつくヒーロー着地したセブンの幻に湧く人々の声を聞きながら、ザインはセブンの幻を操作する

硫酸の雨に焼かれることもなく大きく踏み込んでファイティングポーズを取り、ホーへ駆け寄って殴り飛ばす

当然実体がない幻同士であるためぶつかることはないが、その勇姿は人々に歓声を上げさせる

ホーの動きを先読みして、よろけたりのけぞったりと不安定に揺らぐそれを攻撃の成果のように見せかけているだけの人形劇(グランギニョル)は進んでいく。

 

(本当にこれでいいのか雄介!?)

「あぁ、聞こえるだろう、この声が

セブンの攻撃が当たるたびに上がる歓声が」

 

(だが決定力はないんだぞ)

「ウルトラマンが戦っている、派手に光や音を出しながらカッコよく

だから、勝てる『かもしれない』

倒せる『かもしれない』

そんな根拠もない空想のことを、人は『希望』って呼ぶんだよ」

 

周囲の歓声が、応援が

精神エネルギーを増大させ

黄金の光がセブンへと集う。

 

「デアァァァァッ!」

 

ワイドショット

 

 肩胸部プロテクターから両腕に黄金の光が収束し、そこから解放された光帯(きぼう)負の精神エネルギー(かなしみ)でできた怪獣を掻き消していく

そして、跡形もなく、消えた。

 

 

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。