ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード8 急転直下 2

「中身雄介でしょ」

 

「…………なぜ?」

 

 

 衝撃的な一言を受けた直後、雄介が出せたのはそれだけだった。

 

なぜ正体がバレたのか、そもそもどこから見ていたのか、いつから気づいていたのか。

 

(ザイナスキーは普通の人間の視界には映らない、外見的な変化もないはずだぞ雄介!)

(わかってる、でもこれは明らかに確信的だ!)

 

「私ね、雄介とずっと一緒にいたんだよ

なかに何か変なのが入ったことなんて、最初からわかってた」

 

 彼女の細い腕が伸びる。

 

「大丈夫、大丈夫だよ、私はずっといっしょ」

 

 這いずる白い蛇のように、小鳥の腕が雄介の首を絡めとる。

 

「だから、もういなくならないで」

 

 小鳥の持つスマートフォンに保存された連絡先には、この三年で連絡のつかなくなってしまった相手も多い

クトゥルフ戦、ルガノーガー戦、ドドンコ戦、バードン戦、遡れば遡るほど失われていくそれらに、小鳥はもう耐えられない。

 

「私はどこにも行かないから、雄介もどこにも行かないで、もういなくならないで」

 

「……ごめん

俺はもう、ウルトラマンとして戦うことを選んだから

誰かに任せておくことなんてできない」

 

(雄介……無理をしなくても良い

帰る場所があるならそこに落ち着いていてもいいんだぞ)

 

 鍵から届くザインの声にも返事はせず

戦いの決意だけを意識する

そう、雄介は既に選んだのだ

戦う道を

血に染まり、骸を踏み進む鬼の道を。

 

「そう……」

 

 首に巻き付いたままの腕が、さらりと離れた。

 

「痛いよ?」

「知ってる」

 

「死ぬよ?」

「覚悟した」

 

「待つ方も、辛いんだよ?」

「それはすまない」

 

 短い問答の果てに、小鳥が雄介から離れる。

 

「ひどいよ、我慢しろなんて

女の子泣かせてさ、それで行っちゃうなんて最低だ」

「そうだな、俺は……きっといろんなものを無くして、その最後に死ぬ事になるよ」

 

 戦士なんて碌でもない物に、なった以上は

その一言を押し殺して、雄介は窓の外を眺める

きっと、今日見る月が二人の最後の月だから。

 


 

 

「ああもう、面倒くさい

みんな殺しちゃっても良いかしら」

 

 至極軽く、明るく、愛らしく

女の声が夜空に響く

近くにいるはずだ、彼がいるはずだ

だというのに一向に見つからない

そのストレスは彼女に怒りを蓄積させ、それが無差別な暴力として振り撒かれようとしている。

 

 

 ただ偶然、通り過ぎる人の一人に目を止めた。

 

「ねぇ、貴方」

 

 通り過ぎるサラリーマンに声をかけて、呼び止める、その瞳に映る姿は。

 

「ウルトラウムシンクロナイズ」

 

 


 

「エネルギー反応を感知しました!

ポイントはK-11です、カメラを出します!」

「種別確認しました!これは……円盤生物ブラックエンドです!」

 

「クルセイダーは」

「ダメです、全部修理中ですよ!」

 

 弘原海の尋ねに対し、霧島が応える

高電圧にやられた機体は、流石に二、三日で全ての修復を終えられるような簡単なものではない。

 

「隊長、俺はセイバーを使います!」

「セイバー!?無理ですよクルセイダーに機種変してからはロクに整備されてないんですよ!?」

 

「炮龍で出る」「陸上から車載砲で援護します」

 

 三者三様の声と共に走るクルセイダーズ

しかし竜弥は止められてしまったようだ。

 

 


 

(話の途中で悪い……怪獣だ)

「俺は行くよ、小鳥」

「……うん、いってらっしゃい」

 

 お互いに顔を見る事なく、一言を掛け合う。

 

「止めないんだな」

「どうせ止めても無駄でしょ、私を置いていっちゃうんだから」

 

「ごめんな」

 

 そうして雄介は駆け出した

涙ぐむ幼馴染を置いて。

 


 

 

「ごめんザイン、俺やっぱ最低だ」

「違うぞ雄介

私はお前を軽蔑しない」

 

「そうか……行くぞ、ザイン」

 

「(ザイン、イグニッション)」

 

 二人で声を重ねて、力を合わせて

心臓に突き刺さる剣は、なぜかいつもより重かった。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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