ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード1

 宇宙ブーメラン、ウルトラセブンのアイスラッガーに端緒を発するそれらはウルトラ戦士達の中でも限られた数人のみが使用している武器である

その理由は単純に操作が困難である事や習熟難易度の高さ故に訓練期間が長いことであると言われている

たしかに常時装備型の実体剣装備を自在に白熱化し、飛行させるだけの念力を磨くより己の拳を磨いた方が良いのかもしれない

だが、それを差し引いても、念力感応型宇宙ブーメランには特異な利点が存在する。

 

 それは、使用者と精神的にリンクしているということ

使用者の念力を間接的に行使するための起点となったり触れたものに使用者の思念が干渉するなどの他の武器にはない特性があるのだ

そして、今目の前に落ちているそれも

その機能を宿しているに違いない!

 

「…………ッ!」

 

 左手を、スラッガーへ

その刃に触れて、告げる。

 

(聞こえてるか、ウルトラマン)

 

(あぁ、聞こえる、君の声が聞こえる

俺のスラッガーに触れているのか?)

 

 思う通りに帰ってきた返事に口の端を歪めながら、雄介は叫んだ。

 

「そうだ、ウルトラマン

俺と融合しろ!」

(相分かった!)

 

 二つ返事、突拍子もない提案だと言うのに、己の命を他に預けた

そんなお人好しのウルトラマンと

共鳴した一人の青年が繋がり、融け合う。

 

 

望め、光を

燃やせ心を

変えろ運命を

 

叫べ、その名を!

 

「ウルトラマンザインッ!」

 

 光が弾ける、稲妻が駆ける

炎よりも烈しく、鉄よりも靭く

流れる血よりもなお紅く

回路を駆け抜けた新たな光が

カラータイマーを抜けて魂へ。

 

「デェァァアッ!」

 

 石と化した肉体に光が満ち

灰色の体表に赤銀の色が戻る

溢れる光が電子回路から左腕へと流れ、その手を向けた先から飛来するスラッガーへと宿る

三千以上の原子を宿した超重元素スペシウムが加速器のサークルを巡り光速を超えて電子が剥離しイオン化すると同時に集約され

元素崩壊の青白い放射光と共にスラッガーが伸延する。

 

 

スペシウムソード

 

 

 岩に閉ざされた神殿に、一条の光が差した。

 

 


 

「……全く、心配させる……」

 

 大きくため息を吐いた弘原海、それを皮切りに数人のため息や座り込む音

そして両断された怪獣の倒れ込む音がスピーカーから届く。

 

「怪獣、殲滅を確認!」

 

 新たなるウルトラマンと、人類の勝利がまた一つ、積み重なった。

 


 

「で、だが……」

(あぁ、とりあえず自己紹介をしよう

私はウルトラマンザイン

細かい情報はもう()()()()()筈だ、後で()()()()()くれ

君は椎名雄介であっているな?)

 

 脳裏に響く声が語る内容はいささか信じ難いが、間違いはなかった。

 

「あぁ、合ってるよウルトラマン」

(『ウルトラマン』とは一般に我々M78星雲光の国に出自を由来する人物の総称だろう?

私のことは個人名として『ザイン』で良い、何よりこれからしばらくの任期を共に戦う相棒となったのだから、堅苦しく振る舞う必要はない)

 

「お、おう」

 

(それと、コミュニケーションは大切だが他を鑑みなければならない

以後の対話について手段は念話を原則としよう)

 

 頭の中に流れてくる声は明るいが、理解しがたい情報を込めた物だった。

 

「どうやるんだよそれ……」

(繰り返すが()()()()()()()筈だ、後でちゃんと思い出してくれ)

 

 思考を諦めた雄介はとりあえず避難指示が解除されたのを見計らって自分の家へと帰る

流石に今日はもう家庭教師云々という状況ではない、有彩も避難したことだし

後で連絡をすれば良いだろう。

 

(雄介、部屋が荒れているぞ

片付けが必要だな)

「いつものことだよ」

 

 去年『彼女』が亡くなってからは、まともに片付けられていない部屋の扉を開けて

ため息をつく、どうやら部屋が汚いのは『彼』にとってマイナスポイントのようだ

今日は掃除に追われることになるだろう。

 

(一時的に掃除が行き届がなくなることは仕方ないが常態化しているのはよくないな

衛生管理は大切だぞ、雄介)

「分かってるよ……はぁ……」

 

 ザインと話す自分の姿を顧みれば完全に不審者であることを思い出してため息をつく雄介

そして部屋の床に座り、座禅を組む。

 

(おお、ジャパニーズ『ゼン』!

パワードが言っていたヤツだな!)

「それはどっちかというと漫画的なフィクションの話だろう?こっちのはただのポーズだよ」

 

 意識を集中し、ノイズを遮断した雄介は記憶をたどり、融合に伴って共有されている記憶を遡る

それは己に宿ったウルトラマンの記憶、かつての戦いや振る舞い、そしてそれの操る力や技術の根源だ。

 

「よし」

(理解した)

 

 記憶からそれらの情報を『思い出した』事で扱いを習得した念話でザインへと話しかける

これならば他人に怪しまれることもあるまい。

 

(案外上手く行ったようだな

複雑な情報を念話で伝えられるようになるには技量と力量の両方を揃える必要があるが、まずは簡単な情報だけでも念話が出来るようになったのは大きな進歩だ、おめでとう)

 

(案外ってどういう意味だよ)

(簡単だよ、私と雄介の融合は不完全融合だから、知識記憶も完全に共有されてはいないんだ)

 

 完全に無音で行われる二人の対話はそのまま日が落ちるまで続いた。




 完全融合
人格や記憶、肉体など全てを統一して融合する手法
分離不可能な深度の融合である
変身しなくても融合者の能力を扱えたりする
ウルトラマンの中ではエースやヒカリがこれに当たる

 不完全融合
肉体のみ、精神のみなど、一部に限定して融合しする手法
被融合者と融合者の自我は分離しており、それぞれ別者として振る舞う
融合者の能力は変身無しでは使用不能
分離は容易で、ウルトラマンの中ではギンガやコスモスなどがこれに当たる

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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