「オムライスとは、なかなか凝ってるな」
「でしょ?先生に食べて欲しくて色々勉強したの、やっぱり先生も男の人なんだから、満足感あるもの食べたいでしょ?」
「まぁ、確かに、コンビニのサンドイッチとかパスタは多少物足りないね」
最近コンビニの棚に並ぶそれら惣菜は異様なほどに『リニューアル』を繰り返してその度に小さくなったり軽くなったり皿の形に“工夫”を凝らしたりして利率を上げているため、往時のそれよりも遙かに小さくなっている
18歳の新成人である雄介にとってそれらは耐え難いまでではなくとも厳しいものだ。
「はーい、どうぞ」
色味鮮やかなチキンライスを使ったオムライスとコンソメのハニーブラウンが透けるオニオンスープ、千切ったキャベツにコーンビーフ+ポテトサラダと品数こそ少ないが主要な所を押さえたプレート、普段は質にこだわったフレンチやイタリアンなど、およそ一般的とは呼べない物を食べている彼女だが、掛かる時間と量の観点から作るのは敢えて家庭料理を選択したらしい。
「おお……意外なほどに手際いいな」
(これは明らかに……いや黙っていよう)
実は雄介が何を言おうと最初から昼食自体は用意するつもりだったようで、二人が赴いた時には既に厨房で白米が炊けていたあたりに周到な用意の痕跡を感じるザインもそれについては敢えて言及をしなかった。
「でしょう?練習したの、食べたら感想と先生の好きな味付けも教えてね?ちゃんと反映するから」
「ではいただきます」「はい、召し上がれ」
有彩自身の分は雄介よりもだいぶん少ない
中学生と大学生という年齢に基づく体格差と性別の差、それに普段の食事やそもそもの運動量の違いが相俟って二人の食事量は全くと言っていいほど違う物だ。
「じぃーっ」
「なんだよ」
擬音付きでこちらを見つめてくる有彩の視線を感じながら目を上げると、慌てて向こうは目を逸らす
それを何度か繰り返すとやがて飽きたのか見てこなくなった。
「……ん、美味しい」
さすが頭脳明晰にして眉目秀麗、才色兼備の彼女の事だ、事前の練習も欠かさずに朝から仕込みまでしていた甲斐もあって、雄介に取っても満足のいく味に仕上がっている。
「ほんと!?よかったぁ」
「使ってるのは普通のトマトケチャップにチキンブイヨン、マーガリン……いや無塩バター?」
「正解!先生そういうのわかるんだ」
「まぁ細かいところまでは分からないな、ワインのブラインドテイスティングとかはやめてくれよ?」
「漫画とかのあれは半分意地悪だし普通に誰でも外すよ、正答の方を先に教えられてるとか最初から銘柄年代産地まで注文してる方が多いから大丈夫」
「なんで知ってるんだそんな事……」
微妙に知りたくなかった真実を知らされて落ち込む雄介だが、僅かな時間で思考を切り替え、ひたすら目の前の飯を掻き込んで皿を置く。
「ご馳走様、美味しかった、ありがとう」
「えへへ、こちらこそ」
量の差から先に食べ終わっていた有彩は笑顔と共にお皿を片付けていく。
「それで、ここからどうする?」
「あぁ実はね、今日は学校の方が半休で、カリキュラムも空いてるんだ
なんでも一斉の健康診断だかでね
それで今日の午後は丸ごと空きなんだけど……今日はちょっと遠出しようと思っています」
「え?どこ行くの?」
雄介は空中に伸ばした左手で大きく左側(東)を指差した。
「向こうの東京〜神奈川の方、怪獣被害が頻発してるから瓦礫撤去とかがあんまり進んでないんだそうだ、ちょうど今日の午後1時から災害復興ボランティアの開催があるからそこに飛び入りで参加するつもり」
「……うん」
「それで、良ければなんだけどボランティア兼社会研修ということで、一緒に行かないか?」
雄介の言葉に対して、一瞬表情をこわばらせた有彩と、その顔色の変化を感じ取った事でまだ早かったかと考えを変える雄介、しかし。
「私、行くよ」
「……わかった、じゃあ骸塚さんに車を回して貰おう」
彼女の下したその決断を尊び、雄介は繋げる言葉を変えた。
「ねぇ、雄介」
「どうした?」
「私、やっぱり雄介のこと、好き」
「俺もだよ、小鳥」
「おめでとう、これでずっと一緒だよ」
「よかったじゃん」
「ご成婚おめでとう、小鳥ちゃん」
「二人とも、お幸せにね」
「みんな、ありがとう!」
「これからはずっと一緒にいられるよ!」
今後の作品展開の方針は?
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ニュージェネ系統
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昭和兄弟系統
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ンネェクサァス(ねっとり)