「ついたぞ、ここだ」
「うん」
後方、左右を確認しつつバックギアを入れ、後ろに注意しながら慎重にバック、初めて使う車なので緊張しながらもうまく枠内に収め、安堵しながらギアをパーキングに入れてシートベルトを外し、エンジンを切って鍵を抜き取りながら有彩に降りるように促しつつ自分も車外へ出て、バタンと扉を閉める。
「大丈夫か?」
そう声をかけながら彼女の座る左側後部座席の扉を開けて手を差し伸べる雄介。
「無理なら待ってるか?」
「ううん、それは嫌」
(流石に車の中で二、三時間は辛いだろう)
(まぁ……そうだな)
「暑いか?」
「大丈夫、最近はほら、ちゃんと涼しくなってきたから」
雄介の手をとって車外へ降りる有彩。
「雄介先生、ありがとう」
「おう」
しばらく歩いた二人はボランティアの皆さんと合流して手袋とペットボトルのお茶を受け取り、こまかな砂礫や建材の破片などの撤去を有彩、雄介はライセンスホルダーなので大規模なままのコンクリート塊や柱などの撤去を行うことになった。
「じゃあ俺は向こうでショベルカー動かす方に行くから、がんばってくれ
……あまり無理はしないようにな?」
「うん」
「オーライ、オーライ、オーライ!」
「はーい止まってー」
「シャベル下します!」
「はーい!」
瓦礫撤去として行政から貸し出されたはいいものの、重機を扱える免許の持ち主は割と希少であり、宝の持ち腐れといったところだったのだが、雄介がライセンスホルダーだったことで一気に活気ついている。
一方有彩も参加者のおばさま達に指南を貰いながら砂礫の撤去を行うのだが、一般用品の厚い軍手は排熱には適さず、そこだけに熱がこもっていく。
「あつい……」
流石に夏盛りほどではないにせよ、直射日光が長時間当たったコンクリートは尋常ではない高熱を帯びることになる、軍手をしていても焼けてしまいかねないほどに。
「はぁ……」
わらわらと集まってきた有閑マダム達はどうやら自分達自身で好き好んで参加に来たわけではないようで、先ほどから有彩の周りに座って話し合うばかりで動いていない
一応数人の働きアリ達はいるが、半分近くはどうやらキリギリスな様子だ。
(この人達も、冬になったら死んでしまうのかしらね?)
童話に準えて微笑みながら、有彩は黙々と作業を続けた。
「予定よりだいぶん早く進みました!先生のおかげです!」
「いえいえ、わざわざショベルカーを貸してくれなければこうはいきませんでしたよ
こちらこそ、ありがとうございます」
大きく頭を下げた町内会長さんにこちらも会釈を返した雄介は有彩のいるであろう方角へ顔を向ける。
「……あれ」
そこに先ほどまでいたはずの数人のマダム達の塊がなくなっていた。
「……」
連絡用のスマートフォンを見てもやはり一件の着信もない
通話を掛けてみても返信してくれない。
「まずいな」
(探すぞ)
言葉少なくウルトラ念力を発動し、超視力と透視、念写の複合技能で場所を探る。
「……いた」
コンクリートの破片やさまざまな色の残骸が転がる住宅街の跡地を歩いている
ここから約800メートル程度、少し遠いが追えないほどに遠いわけではないようだ。
先ほどのマダム達と一緒だが、なぜか様子がおかしい
全員が一つの道を進んでいるにもかかわらず全く会話や交流、譲り合いなどの行いが見られず、まるで同じ方向へ進んでいるだけの他人であるかの様に無言で歩いている。
「これは一体……?」
(わからない、だが急ぐ必要はありそうだ)
ザインのエネルギーを転用する高速疾走ではなく、通常の自動車での移動
しかし離れていても1キロ程度であるはずの彼女たちの歩みは妙に早い。
「本当に速度メーターあってるんだよな?」
(合っていないなら整備不良で警察行きになるぞ、なんら問題ない……いや、これは一体)
割れたコンクリートの塊、それ自体は散々見てきたものだ、しかし
コンクリートの破片とは、そんな簡単にあるものではない
怪獣災害の被害ならば頷けるものではあるが、その中心地点からはむしろ遠ざかっているというのに、柱や車の残骸など転がっているはずがないのだ。
「ここは一体どうなっているんだ……?!」
今後の作品展開の方針は?
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ニュージェネ系統
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昭和兄弟系統
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ンネェクサァス(ねっとり)