ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード9 同調と協調 5

「……あぁ、()()()()()

 

 小鳥と同化したソリチュラはゆらりと微笑むと同時に、ただ一言を放った。

 

「雄介から離れてくれて」

(狙いは雄介の方かっ!?)

 

 一本の太さがゆうに腕一つを超えるほどの触手が次々に噴出し、ザインを素通りして背後の雄介を狙う

だが。

 

「ゼィァァッ!」

 

スペシウムソード

 

 

 光の力によって延伸されたスラッガーが刃を振るい、次々に触手を切り落としていく

切り落とされた端から再生していっているが、流石に瞬時に完全回復はできないようだ。

 

「私の相棒に手は出させん!」

 

「は?」

 

 

「そっちこそ、何言ってんの?雄介はわたしの王子様なんだけど?」

 

 剣が鈍る、いや違う

光の力が衰えたのではない、もっと単純に

触手の力が増しただけだ。

 

「死ね」

 

融合能力(フュージョン)
「ジキタリス」

 

 小鳥とソリチュラの持つ植物の組成が変化して、より毒々しい色を帯びる

見た目通りに有毒なそれはオオバコ科の植物ジキタリスの性質を宿した心臓を冒す槍。

 

「死ねぇっ!ウルトラマンッ!」

 

「デヤァァァッ!」

 

 投擲された槍、まともに回避したら背後の雄介を貫きかねないそれ

しかし、今のザインは雄介よりもたらされる地球の祝福を失いスペシウムソードも持って10秒程度の維持しかできない。

 

「くっ……!」

 

 スペシウムソードが光を失うより早く、槍を迎撃するために鋒を当てるザイン

しかし、鋭い槍は見た目以上に硬く

ザインのソードと競るほどの勢いがあった。

 

「グァァァッ!」

 

 直撃こそ免れたが右腕は完全に使用不能となり、最大の奥義であるザイナスフィアを失ったザイン、だがたとえ命を落とすその時であっても、ウルトラ戦士に絶望はない。

 

「……デァッ!」

 

ウルトラ念力

 

 万全ではない肉体、万全ではないエネルギー、万全ではない精神

それがどうした、私はウルトラマンだ、そう言い放つかの様に

現状唯一の武器を放つザイン。

 

「ふん」

 

 めきり、という音と共に

ゆらめく空間へ拳が突き刺さる、鍛えてもいない女の子の片手が空間を捻り潰し、そのまま現実へと干渉する前に塗りつぶした。

 

「さすが肉体のあるなしは違うな

雄介……待っててね」

 

 草原の全ては彼女の下に隷属し、花冠戴く女王が空間すらも支配する

今の状況で勝ち目などない

今の状況では、だが。

 

「なに?!」

 

 轟音と共に、爆発が起こった。

 

「そちらは上手く隠形していたようだが、あれだけ盛大に力を使った以上……私の方を感知するさ」

 

 ザインの一言と共に、飛翔してきたバオロンとケルベロスが爆撃を開始、周囲の土地に広がるソリチュラの根を焼いていく

ソリチュラとて植物、木石のみならず生物とでも同化する能力を備えていても、さすがに炎とは同化できない。

 

「やめろ……!やめなければこの女が死ぬぞ!」

「その状態では放っておいてもどのみち死ぬだろう?」

 

 アストラル体の憑依や肉体の物理的な操作であればなんとでもできたが、生体そのものが融合してしまっている状態ではどうしようもない

たとえソリチュラを分離しようとも5分と保たない体になってしまっているのだ。

 

「やめろぉおおおお!」

 

 


 

「日本支部へ、こちら炮龍、攻撃対象の本体を捕捉した。」

 

〈攻撃を許可します〉

 

 ソリチュラは早く処理しなければ星を取り込むほどの規模の力を有した大怪獣

早期に処理するためならば……たとえ、それが人を取り込んでいてでも。

 

騰蛇(トウダ)焼夷弾、投下

 

クソ……やってられねぇ……」

 

 もはや助けることは叶わなくても、元がなんなのかもわからなくても

それが人ならば助けたい

だが、彼の職務に甘えは許されない。

 


 

「うわぁぁっ!!」

 

 雄介の体に熱が掛かる

焼け落ちる木々、燃える黒い獣

周囲の全てを焼き払うと決めたのだろうか、ザインと対峙するソリチュラにも炎が降り掛かっていく。

 

振り返った雄介にあたる熱波は、その中心にいる小鳥とは比べ物にならない

ソリチュラと同化している彼女がそう簡単に死ぬとは思えないが、そう言った手合いを殺すことだって彼らの職掌なのだから、できないとは思えない。

 

「くそ……!」

 

 握りしめた手の中には、何もない

愚か者には何も残らない。

 


 

 

「ぎぁあああああっ!」

 

 ケルベロスのオプション武装、地獄の炎(カノ・エッド)に焼かれた根が失われ、周囲の森そのものと一体化していたソリチュラの隠蔽が解除された

消えない火が徐々に根を伝って迫ってくる中、炙り出されたソリチュラが周囲と接続している触手を自切して小鳥を取り込み、本体を顕現させる。

 

「まぁ、そう来るだろうな」

 

 ザインも巨大化してソリチュラのブロッコリーめいた頭部へと鉄拳を叩き込む。

 

「ジュェアアッ!」

「ギシャァァァッ!?」

 

 拳が突き刺さったことでソリチュラは大きく体勢を崩し、そのまま転倒

ザインはすぐさま必殺技の構えに入った

そう、怪獣と一体化した生物はもう救えない、本来ならセパレーション能力を有する外部の力を借りるのが正しい対処だが、ソリチュラの能力規模は厄災級であるため、そんな悠長な方法をとる事はできない。

 

「……」

 

力を左腕に収束させ、スラッガーへと青のスペシウムマイナスエネルギーのみを取り出す

同時に生成されるプラスエネルギーは処理できないために腕に蓄積し、スラッガーがソリチュラの体表に衝突したところで拳に集めたプラスエネルギーの光を叩きつける。

 

ザイナスフィア.extra edition

 

「グ……ジィぁぁぁぁっ!消える……私が……けて……」

 

 滅びを具現化した原始崩壊の力が、ソリチュラの体表からその奥までを爆散させた。

 


 

 随分と燃え盛っていた火はソリチュラの体表に接続していた仮足部分のみを焼き払ったようで、概ね鎮火してきていた

単独でザインが戦う姿を見ながら、雄介は走り出した

目の前の燻る炎の中へ、そして戦う二人の元へ。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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