ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード10 BURK - 沈黙 -

 

 夢が覚める、霧が晴れて、風が流れ出す

夜明けの蒼い日が差して、私の指に蝶が止まった

あぁ、また、新しい一日が始まる

永遠だったはずの幸せが溶けて、秘匿のベールが破られたから、敗者は過去へと去っていく。

 

 

「ソリチュラ……わたしたち……負けちゃった……ね」

 

 ずるり、ずるり、体が崩れ始める

植物で作られたドレスが腐り果ててちぎれ、すぐに土へと還っていく

私の体は半分以上彼女のそれとなっていて、彼女が死に始めてしまったから

常に頭上に吊られ続けた、ダモクレスの剣が落ちてしまったから。

 

「ごめんね、雄介、助けてあげられなくて」

 

 体にヒビが走って、指先から感覚がなくなっていく

赤い視界は燃えていて、煽りを受けているはずなのに寒くて、私の体はもう、震える力も残っていない。

 

 指に止まった蝶が飛びさり、私の左手が落ちる

もう痛みも感じないくらい

黒く煤けたその手には、もう白い手袋(約束の証)はなかった。

 


 

 

 あれから数日、なんともひどい目にあったがなんとかソリチュラに囚われていた人たちは救助され、平穏な日常が戻ってはきていた

ソリチュラの方も直接本体に人間を同化するのではなく、触手に接続してゆっくりと同化するつもりだったらしく、ソリチュラが短時間で死んだのもあって同化そのものの影響は殆ど無いと言っても良かった。

 

「…………」

 

 雄介と小鳥の二人を除いては。

 

 小鳥はソリチュラと半分ほど肉体そのものが融合している状態、生体同化状態にまで同化が進行していたため、ソリチュラの爆散に巻き込まれてしまい、連鎖崩壊による死亡こそ免れたものの昏睡、植物状態に陥っている。

 

「これでもまだマシな方、というのが救いないな……」

 

 まさか出先でこんな目に遭うとは誰も思ってもいなかったが、大怪獣級との戦闘にしては被害は少なく済んだというところだろう、だが。

 

「……割り切れるかよ」

 

 連続変身を繰り返した影響は厳しく、既に雄介の肉体が持たない時が来ているとはいえ、自分さえもう少し頑張れば小鳥を救えたかもしれないというのも事実、そんな事を雄介にたやすく割り切れるほどの精神的な強さはなかった。

 

(雄介、無理に割り切れとは言わないが、覚悟しなければならない

我々とて神ではないんだ、まったく犠牲を出さずに勝つことはできない)

「分かってるさ……そんなこと」

 

 血を垂れ流すように痛む全身を恨みながら、雄介は眠り続ける小鳥を想う。

 


 

「……被害を報告しろ」

「はい」

 

 駒門のまとめた報告書がBURK日本支部長、朽木竜胆(クチキ・リンドウ)の手に収まる。

 

「宇宙植物ソリチュラの出現・地球落着時期は測定できませんでしたが、今回出現した個体のエネルギー波長と過去のガイズが遭遇した個体のデータに類似する点がないことからおそらく過去100年以上前に落着していた、あるいは現防衛能力を超えた技術を持つ宇宙人によって持ち込まれたと推測されます、

被害についてですが、人的被害が重症2名、死者0名、軽傷・現場遭遇42名となっております、このうち軽傷のものは既に記憶埋没処理もしくは規約に基づく補償及び誓約の締結後に解放しています、重症の方は後に記載しておりますが、打撲傷や骨折・火傷等の治療中1名、同化に巻き込まれたと思しき未知の生体損傷が1名となります、こちらも基地付属病院のICUに収容しており現在集中治療中です、土地資源損傷等の被害についてはS-7地区及びS-12地区に大規模な地下空洞が発生、おそらくソリチュラの根による侵食活動が原因と思われます

また地下水脈の流量が大きく増加しており、これは地下根の吸水が停止したことが原因と断定されました

この環境変動に伴って地質が多少変化しており、今後の土壌質変化を随時監視するとの報告があがっています」

 

「…………」

 

 ペラペラと15頁にも及ぶ資料をめくってため息をつく支部長、それを流し見しながら駒門は状況の報告を続ける。

 

「環境変動への対応は関係各所と協議中ですが、概ねいつも通り人工土による土壌補填と改質コンクリートによる表面舗装で道路を復旧しつつ空き空間はシェルターやビル地下へと転用する方針です

その件についてのコストはいつも通り環境省と国土交通省から出すことになるとの事ですが、いかが致しますか?」

 

「……その点についてはいつも通りの対処で良かろう、問題はこの一点だ」

 

 ペシペシと4頁めの一条を指で叩く支部長の子供っぽい仕草に若干呆れつつも駒門はその辺りに書かれた内容に目をやる、そこには。

 

「重症者、ですか」

「ここ2ヶ月は出ていなかったものだ、こりゃあ国からまたせっつかれるぞ、防衛省(ウエ)とかから特にな

隙あらば予算がどうこうと聞こえよがしに愚痴を漏らす輩だ、こいつは長いコトになる」

 

 デスクには既に山と積まれた書類の塊が出来ているが、それに輪をかけて忙しくなる可能性があると呟きつつ手元の書類に次々に目を通し始める

これから忙しくなる前に庶務が積み上げる書類達を一掃するつもりなのだ。

 

「環境変動にも面倒なことを言われそうだな、しかも出てきたのがソリチュラだろう?これさ、農林水産省にも植物ならウチの管轄とか言われかねないよ、BURKはあくまで防衛省管轄なんだから林業の営業許可なんてないしな」

 

「……はぁ」

「まぁ……うん、現場はよくやったよ

レーダーにも掛からんような敵相手に基地から戦うのは並大抵じゃ出来ん

俺じゃ良くて現場特攻だからな」

 

「特……!?」

「あぁ、今じゃ禁句なんだっけ?

昔はよくやってたんだ、取り敢えず人突っ込ませて『強行威力偵察』ってな……実際たしかに有効ではあるんだが、それで殉職が出過ぎてなぁ、今じゃ明示的に禁止されてる作戦でもあるってんだ

俺も何度もやったし、その度に一緒にメシ食った連中は減ったよ」

 

 竜胆支部長は軽く片手を振って駒門を制しながら目線を戻した。

 

「それは……心中お察しします」

「いま良いよそんな事

それより今の事にどう対処するかだ、わざわざ災害(ディザスター)級の兵器まで使った以上はそれなりの説明責任ってものがある」

 

 そう、支部長クラスからの許可が必要になるディザスター級は使用する自体が危険な兵器、最悪の場合自らの首を絞めかねない

必然的にその使用そのものも甚大な負担となる。

 

「最悪切れるカードなら良かったが、ローマからの借り物でもあるからな、それに今回はデカい損失がある、上には俺から被害は最小限に抑えたって事で説明するが、やっぱ予算がどうこうは避けられないと考えてくれ」

 

 重い雰囲気はどこまで行っても変わらなかった。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)
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