ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード11 変わり始める世界 2

 

 ロシア支部で戦端が開かれようとする、まさにその時、雄介は講義を受けていた。

 

「……えー……以下のことから、空力ブレーキおよび揚力確保のために翼の一部を展延し、安全に減速して着陸するわけです。

このために翼の面積はある程度変化しますが、確保するべき強度は面積的な最大値、すなわち着地直後の状態に耐えうる強度であり、また対衝撃性と耐熱性を兼ね備えなくてはなりません、比較的強度の低い純鉄製のシリンジなどでは捥げてしまうというわけです

……よろしいか?雄介君」

 

「はい」

 

 教授が突然生徒を名指ししてくるのはいつものことだが、今日は訳が違った

 

「では、熱膨張の観点から航空機の翼部にふさわしい材質は以下の内何か?」

 

 突然提示された5つの選択肢の中で、雄介は2番目のそれに着目して答えた。

 

「超ジュラルミン合金がふさわしいと思います、熱膨張の小ささではタングステン材に劣りますが難削材であるタングステンより加工性は高く、コスト面でも優秀で、かつ軽量であることと高硬度のステンレス材以上の強度があるため、前提として航空機に主材料として用いる事とするのならこれが最も良いと思います」

 

「まぁ、正解と言うことにしましょう、あくまで熱膨張の観点から答えてほしかったですが」

 

「……すいません」

 

 平和な講義のその裏で、大山は鳴動し海は時化、野原の悉くを焼く戦いが始まった。

 


 

 

「……第一陣、照明弾投下!

戦車部隊は特殊徹甲弾照準合わせ、のち一斉射!」

 

 爆圧が空気を震わせ、地磁気すら揺るがす砲撃が放たれ、バルタン星人の円盤へ。

 

「……無傷ですか」

 

 想定内とはいえ当たれば鋼鉄、いやエネルギーバリアさえ突破するという特殊徹甲弾を浴びるほど受けてなお健在とは涙が出てくる

苦労して開発した必殺の砲撃が足止めにもならないこの気持ちは戦車部隊によく伝わっているだろう。

 

「ハイパー級へランクを上げます」

 

 だがまぁこの程度は想定内だ

そもそも『当たった対象の時間を止める攻撃』などという一般相対性理論、熱力学、量子力学その他諸々に喧嘩を売るものを身体機能として繰り出してくる連中なのだ、アインシュタインとニュートンは泣いていい

ただもし良ければ私も泣かせて欲しい。

 

「ハウリングカノンを使って!」

 

《了解!》

 

 超兵器(ハイパー)級 狂鳴砲(ハウリングカノン) 波と粒子の二重性によってあらゆる物質が必ず持つ固有周波数の振動をぶつけることで発生する共振現象(ハウリング)を利用した自己崩壊誘発レーザー、元はなんと治療用に開発されたという技術ではあるが、軍事的に転用されてしまったと思いきや正しく地球に襲い来る病原菌を討つのだから数奇なものだ。

 

「さぁ、どうでますか?」

 

 これを塞がれたら流石にアステロイドバスターを使わざるを得ない

固唾を飲んで見守る者たちの前で滅びの光を正面から受けた円盤は……

破壊されなかった。

 

「…………」

 

 だが、反応はあった

流石にこの攻撃は脅威と認めたのか、怪獣を射出したのだ

高度800メートルから落下してくるそれは、とても見覚えのある、始まりの怪獣。

 

恐竜戦車(ディノザウリア)

そう名付けられた怪獣だった。

 

 


 

 

(雄介、なにか奇妙な感覚がする

磁場の流れが乱れているようだ)

(……それ、どうなんだ?何が影響があるのか?)

 

(何があるかはまだわからない、なんらかの影響を受けて磁場が乱れることも有れば、逆に磁場の乱れ自体が自然発生してからそれに影響を受けるものもある

だが少し妙だ、震度で言えば0と判定されるだろうが、先ほどから微弱な振動を感じる)

 

 雄介の脳内で意思が交わされ

お互いの思考はそれぞれ別の思惑へ至る。

 

(感知できない程遠い別の場所で戦っているかもしれない)(地震か何かか?)

 

 この星は銀河でも珍しいほどにプレート運動が盛んであり、地震も多い

だからこそ、雄介はそれに慣れていたがために地震を先に考え、ザインは遥か遠くで戦っている可能性を考えた。

 

(雄介はこのまま講義を受けておいてくれ、私は少し情報を探る)

 

 ザインからの念話が途絶える、それと同時に鍵のペンダントが僅かに光り、消えた。

 

「雄介君、いいですか?」

「はい、揚力を得るために翼の付け根部分に2.5度の捻りを加えつつ全体のシルエットを保つ形に削る、ですよね」

 

「……その通りです」

 


 

「シルバーシャーク砲は円盤を照準しつつ待機、先に恐竜戦車を叩きますよ、前線の戦車部隊および歩兵部隊は連携しつつ退避して、爆撃機隊攻撃用意!」

 

 私の命令と同時にCICを担当していたオペレーターから通信の報告が来る。

 

「室長、支部長からディザスター及びエクスカリバー級の使用許可が降りました!」

「……ユーリャもまだまだですね、今はまだ機ではない」

 

 おおかた恐竜戦車を見て焦ったのでしょう、などと当たりをつけながら微笑んだ。

 

「陸戦部隊の退避完了!」「機械化歩兵部隊も全隊退避完了報告が来ました!」

 

「ならば爆撃を開始しなさい、あの腐れたスシ戦車に動く間を与えるな!」

 

《了解っ!》

 

 一声と共に、一斉攻撃が幕を開けた。

 

〈ケルヌンノスを使用します!〉

「射撃管制システム偽神(ヤルダバオト)起動、デミウルゴスレンズ反応良好、狙撃ポイントはS(シュガー)とします」

 

「人工衛星よりリフレクターフィン展開!シルバーシャーク砲とリンクしました!」

 

「円盤を撃ちなさい、装甲を突破できなくても構わないわ、圧力をかけるの

雷帝(イヴァン)は?」

「ポイントSより応答なし、中継機がやられました!」

「すぐに接続を変えなさい、ただし近場は避けて、味方に当たります」

 

「ポイントZ(ゼブラ)へ接続変更、エネルギー再蓄積開始、所要時間は58秒です!」

「宜しい、その間は爆撃を維持させます

各隊に通達、アステロイドバスター級雷帝(イヴァン)発動まで残り55秒、敵を釘付けにしなさい!」

 

 恐竜戦車は戦闘機隊(ストライダー)が撹乱し、風龍(ファンロン)が爆撃を繰り出す

残弾数や周囲への被害を一切考えない全力の飽和攻撃(サチュレーションアタック)を受けてうずくまる恐竜戦車、しかし。

 

「やはりこちらも硬い」

 

 過去にカイナと戦闘した同型は旧式機とでも言うつもりなのか、尋常ならざる強度を見せつける。

 

〈こちらエアリー2、弾切れだ〉

「ドラゴン隊、エアリー隊と交代してください……シルバーシャーク砲発射!」

 

 基地のメインモニターに表示される戦況はフリズスキャルヴからもたらされる統合情報を元に次々に変化していく、その中でも味方の損耗は一際目まぐるしい

表示される機体数にこそ変化はないが、残弾数や周囲への被害を表す数値は凄まじい勢いで減っていく。

 

〈ベルクシュナイダー投下!〉

 

 エアリー隊の風龍に搭載されていた照明弾の代わりにドラゴン隊の風龍に搭載された物理弾、ドイツで作られた特殊武装である鋭利な形状の金属板が投下され、恐竜戦車の装甲を突き破った。

 

「よし!」

「仕事に集中なさい」

 

 血飛沫を噴き上げて悲鳴をあげる恐竜戦車を尻目に快哉を叫ぶオペレーターに檄を飛ばしつつ、円盤の動向を注視する

いまだに破壊できないこれが動けば、全てが変わる可能性を残しているのだから。

 

「発動までのカウント!」「残り20秒!」




おまけ 機体群

BURKストライダー
高機動戦向けの戦闘機、局地戦用にカスタムされた機体
セイバーの1世代前の汎用戦闘機
装備には規格化が施されており、旧式から最新式まであらゆる装備を使用可能

BURK風龍(ファンロン)
重装爆撃機 爆龍の1世代前の機体
爆撃機としての基礎的な性能は高いがストライダー同様にスピード型であり、搭載可能な弾数にはやや不安が残る

BURKクルセイダー
最新式の戦闘機 上昇・旋回などの格闘性能の高い機体である反面、速度ではストライダーに劣る
爆装はないがハードポイントにミサイルや爆弾を搭載可能

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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