我々は長い時間をかけて、文明を発展させた
野生動物を狩り、植物を採集し、皮や骨、繊維や木質を加工して道具を作った
武具を、工具を、農具を、さまざまな道に使われるそれらが文化の礎となり
それらをより高度に成長させた
鉱石資源を採集し、加工してより強度を高め、精度の高いより良い道具を作り出し
その果てに我々は牧畜と農耕からなる安定社会を実現した。
しかし、我々は時間をかけ過ぎた
祖先が生まれてから数億年、常に頭上にあった太陽はすでに赤色巨星となり
一時凌ぎの核融合はそう長くは続かないことは明白だった。
そして我々は、禁忌を行った
人工太陽 プラズマスパーク
傲慢な話だ、我々は星によって生まれ育まれ星と共に死ぬ定めであるにも関わらず
我々は太陽を捨てて新たに作り出した
果てなき永久の陽光を求めて。
そして我々は誤った
結局、何が原因だったのかはわからない
太陽が爆発した事で浴びたエーテル波動による誤作動か、人工太陽に細工が施されたのか
とにかく、我等が求め作り上げてしまったそれは求めていた機能と異なる力を発揮してしまったのだ
人工進化 アルティマエボリューション
その光を浴びた我々は進化した
己の深層心理のままに。
赤い体は力の証
戦士の肉体、至高の鉄腕
闘争の意志が目覚めし血染め色
青き体は賢者の衣
思考の果てに辿り着く境地
静寂の宇宙を映す深空色
銀の体は光の結晶
進化の力、光操る巧者
変異の果てに得た白銀の色
そして我等は-ー
「っ!」
体を起こす、横へと向いて
鎮座する時計を流し見る
時刻は午前5時、まだ早い。
「あ''〜〜」
起きるには時間的に早すぎるが、二度寝しては遅刻する微妙な時刻に目を覚ました事を悔やみながら体を起こし、ひとまず朝食を摂りに冷蔵庫へ
解したサラダチキンとキャベツベースのサラダとコーヒー牛乳を注いだグラノーラ
僅か二分で用意した簡単な朝食をゆっくりと平らげる。
「ご馳走様」
一言だけ残して皿をシンクヘ放り、水に浸けて放置
昨日の夜に残した書類を束ねてファイルへと挟み鞄に詰めて服を着替える
白いワイシャツに紺のジーパン、黒のネクタイが実にダサい印象を形作る
総評して凡庸な男となった雄介は皿を洗ってそのまま大学へ、今日は午前と午後の講義に両方出るために家庭教師はお休みだ
一応朝に家を訪ねて宿題と今日の分の授業内容だけは交換するが。
(ここから私たちの共同生活の始まりというわけだな)
「うおっ」
唐突に念話で話しかけられて驚きのあまりに声が漏れる雄介とは対照的に、構う事なく話を続けるザイン。
(私達はこれから任期の約1年の間を共に過ごす事になる、昨日も言ったが改めて
よろしくお願いする、雄介)
(あぁ、わかったよ……って)
「お前どっから話してんだよ!?」
相変わらず頭の中に響くような念話だが、その発信源は明確に昨日とは違う
その中心となっていた部分は自分の胸元に提げられた銀色の鍵
いやかつて鍵だったもの、と呼ぶべきだろうか。
(君が寝ている間に、暇だったのでハブを作らせてもらった、
これならばより効率よく会話できるだろう)
(いやそれは……)
言い淀む雄介はそのまま言葉を切り、ため息をついた。
「はぁ……もういいや」
(ん?なにか大切な物だったのか?すまない、私は雄介の記憶を限定的にしか知らないから、知らぬ内に大切なものを作り替えてしまったというのなら元に戻そう)
(いや、それはもう使われることがない物だから、気にする必要はないよ
それよりも急がなければ間に合わない、バスが来る時間だ)
彼女が持っていた家のスペアキーであったそれを諦めて、雄介は走り出した。
「今日は平和ですね……」
「全く、天気も良いし対して暑苦しくもない、こういう日はめでたい物だ
だが、気を緩めては居られないぞ」
ヒラ隊員に激を飛ばしながら書類を取り上げる弘原海、その中には予算案や抗議や通達だけでなく入院している負傷者達の容体一覧などもあった。
「奈良坂はもうじきギプスも取れるか、ありがたい
……八木はもうダメか……」
定期的に更新されるその書類
怪獣が現れる度に著しい人手不足に襲われる防衛組織に取っては極めて重要な物だ
負傷者の容体と、そして現場復帰が可能かどうかを知る為に。
「はぁ……八木さん……」
希少な女性隊員であり、B85をマークするFカップの爆乳と浅栗色のサイドテール、むっちりと肉が乗った太腿をロングブーツで締める制服に詰め込んだ彼女は既に現場復帰は絶望的
2週間前、アキレスの最終戦闘となった対クトゥルフ戦で民間人を庇って建物の崩落に巻き込まれガスに肺をやられてしまい、瓦礫に足を潰されて片足は粉砕骨折と神経断裂を併発し、不随状態という憂き目に遭ってしまったのだった。
「それでも民間人を守り通したってのは良いが……功労者に勲章だけ渡して名誉除隊、ってのは筋じゃねえよなぁ……」
「ですが我々には……なにも……」
言い淀むように言葉を切る駒門と弘原海
そう、負傷除隊者など掃いて捨てるほどいるこのご時世、一人一人に拘っていられるようなものではないのだ。
「ままならねぇ、ってことかねぇ」
弘原海は大きくため息をついた。
「ピポポポポ……」
遙か空に凶星が瞬く
しかし地上の人々はそれを知る由もない。
「はい、今日の講義ここまで
次回までにレポートを提出するように」
午前の講義を終えた雄介は大きく息をつきながらキャンパスの近くにある喫茶店《Föhn》へ。
「ブラックコーヒー、アイスで」
カウンター席に座り端的に注文をして、目を閉じる。
(ここは落ち着くな)
(だろう?俺のイチオシだ、コーヒーも美味いし雰囲気もいい
昔から彼女と一緒に来ていたよ)
(店名はなんて言うんだ?)
(
他愛無い会話の先は軽やかに
届けられた一杯のコーヒーの香りと共に、穏やかな日々を彩る
【ピポポポ……ゼットォーン】
機械のような音と共に、地響きが鳴る
宇宙恐竜ゼットン テレポートにより出現
「怪獣警報発令!特種だ!」
「特種怪獣警報発令!ゼットン出現!半径100キロメートル以内の住民に避難命令を発令、シークレットハイウェイ機密レベル5までの全道を解禁します!」
「クソッ!スペーシー何やってん!奴は宇宙恐竜やぞ!宇宙から来たんはモロ解っとるやろがい!」
「おそらくワープで警戒網をすり抜けて来たな……いつもいつもやってくれる!」
机に書類を叩きつけて叫ぶ者、マイクを慌てて握る者、警戒の甘さを詰る者、冷静に分析する者、種々様々な反応を見せるが彼らは怪獣対策を生業とする特殊部隊、その名に恥じず迅速に対応を開始した。
一方現場ではというと。
「嘘でしょ……」
明るい茶髪の少女が呟く
絶望を湛えて
そう、ゼットンがワープアウトした場所は少女が今まさに走り抜けんとしていた道の目の前
ほんの10メートル前に、ゼットンの足が出現したのだ
1000種を超えてさまざまな怪獣の中でも知名度が群を抜く特種怪獣
ウルトラマンを倒した実績のある
(雄介、『ユウスケ』という語にはどんな意味があるんだ?)
(ん?唐突だな)
(私達ウルトラマンにはそれぞれの名前一文字一文字に意味があるから
気になったんだ、例えば私のザインは三文字で『球体』を表す、日本語に直訳するなら私の名前は『タマ』になる、……文節を切り離せばザイで『雷』ンで『至高』を意味するな)
(タマって……それで良いのかよウルトラマン……)
(いや、タの音は『勇者』マの音は『拳士』を意味するから『タマ』を意訳するなら『勇気ある拳闘士』だぞ?)
(それはそれで猫とかがイカツイ名前になるけど?)
「何ぃ!?」
(怪獣警報だと!?)
スマートフォンの画面から喧しい警告音が鳴り、そのまま画面が点灯してアラームを表示する
特種怪獣警報発令の文字列は赤く
そのすぐ後に流れる文字列は『ゼットン』
「ゼットン!!」
(焦るな雄介ッ!ゼットンは倒し方がマニュアル化されている!過酷な訓練を思い出せッ!)
「あ、ああ!」
急いで店を離れ、そのまま走る
コーヒーの代金はテーブルに置いて来た
「雄介 燃やせ、心を!」
胸元の鍵から光が湧き上がり
人の身に施された封印を破る、真の姿を取り戻す為のその最後の一押しに
自らの心臓に光る鍵剣を突き立てる!
「ザイン……イグニッション!」
鍵を大きく回し、暗闇の内に火花が散る
灯された火が内燃機関を起動した。
今後の作品展開の方針は?
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ニュージェネ系統
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昭和兄弟系統
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ンネェクサァス(ねっとり)