「……本当に二週間で訓練終わりか」
入隊試験も筆記98/100、実技89/100と高得点でパスした雄介は晴れて入隊試験待機の扱いから脱却し訓練生扱いになった、毎日少しずつ明からの手解きを受けて講習訓練と並行してこなす事で練度を高めるつもりだったのだが、クルセイダーズのような精鋭の部隊という訳でもない一般訓練生に与えられる要求ラインは予測以上に低く、雄介はすぐに隊員としての待遇を得ることができた
実際は雄介のレベルが高いだけなのだが、BURKの全ての支部の中でもトップクラスの練度を持つ明が相手ではそうは思えなかったようだ。
(この程度の水準でBURK隊員とはな、少し才能がある程度の人間ならすぐにでもなれるんじゃないか?すこしBURKの戦力が不安になってきたな……)
諸々と手続きを終えてBURKジャパンに入隊、配属先の支部振り分けで希望を求められたが流石に宇宙だの南極だのには行けないので雄介は普通に日本支部を選択していた。
(正確には予備隊員だがな、一応配置はされるようだが、扱いとしては非常召集の時のみの増員戦力、急場凌ぎのための応急的な存在と考えたほうが良いだろう)
この予備隊員の扱いはいわばアルバイトであるようで、別職とBURK隊員を兼業両立している人も割といるらしくシフト等も無し
初期教育訓練を終えた同期が配属されるまでは本格的な配属はされないため、本当に何もすることがないようだ。
(それにしたって随分と雑だよ、これじゃあまるで無理矢理に欠員を埋めようとして必死になっているブラック企業か何のようじゃないか)
(それは否定できないな、戦う以上は一定の犠牲はどうしようもないという部分もあるだろうし、その人員補充も考えなくてはいけないのが組織だからな)
ザインは応用に理解を示したが、雄介はそうもいかなかったようで、話題をすぐに変える。
「……ガイダンスみたいなのもなかったし、初期教育とアラームの種類と緊急集合先の説明くらいか」
(あぁ、受けた説明はそんな事だ、しかし隊員が身分を公表してはいけないというのは厄介だな
親族等への危害対策というのは理解できるし、ライセンスが仮免許のような機能を持っている分言い訳があってマシかもしれないが)
そう、BURK隊員になってもそれを言いふらしたりはできない、隊員の身分については機密事項として守秘義務が課せられるからだ
当然雄介も言いふらすつもりはないが、身分を秘す事で身元バレで親類縁者や友人に攻撃が飛ぶことを防ぐというのは合理的ではあってもなかなか難しい
その点、雄介は素晴らしく有利だった。
「俺の交友関係は深く狭いタイプだからな、両親もいないし、バラすやつもいなかろう」
階級章と通信機を兼ねる隊員証バッチを指先に置いて、弾く
くるくると回転する表には階級ごとに異なる模様とBURKの刻印、そしてアルファベットで統一表記された名前
裏にはBURK日本支部の支部章である舞い散る桜の花片
これにも実はさまざまな機能があるらしいが、そのあたりはまだ知らされていない。
(さて、これがどう出るかだな)
雄介の呟きは誰にも聞かれることはなかった。
所変わってここはとあるビルの屋上
昼過ぎの暑い日差しの中でも黒コートを着込み、汗一つ掻かくことなく屋上の落下防止策へと腰掛けていた。
「ふーん……ゆーくん、向こうに行っちゃったんだ、残念……でもいいや、どうせ同じだから」
黒コートの女はビルの屋上から飛び降りて、着地することなく姿を消した
その背後にたなびく影を残しながら。
「次に会うときは何作ろっか」
時間帯は昼過ぎ、BURK日本基地を辞した雄介はT都からK県までスクーターで日帰りする驚異的な移動で大学へと蜻蛉返りし、昼飯として適当に買った炒飯を食べながら、大学の構内で思考を巡らせる
最近の社会は平和そのものだ
大気質の悪化の兆候も見られず、変な虫もいなければ天気も良く、怪獣や宇宙人の類が現れることもない。
(最近怪獣は出てきていないな
なぜだろうか?)
少し前まで毎日のように出てきていた怪獣が最近急に来なくなったのを不審がってか、ザインがその理由を考え出すが、雄介はそれを一言で切って捨てた。
(分からん、ただ怪獣なんぞは出ないほうがありがたいというのは事実だ
それに俺も忙しいし、毎度の対応などしていられない)
(それはそうだな)
二人の掛け合いにもいつものキレが帰ってきた頃、ようやくBURKジャパンのCクラス隊員となった訓練校卒業生達が揃い、雄介はめでたく陸戦課から研究課へと転属になったのだった。
今後の作品展開の方針は?
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ニュージェネ系統
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昭和兄弟系統
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ンネェクサァス(ねっとり)