暗い作戦室の中、声が響く
それは男女一人ずつの声
この作戦室の主である弘原海と駒門の声だった。
「……それで、彼の健康診断の結果は?」
「おそらく黒です、彼の血中からは光遺伝子と思われるF系統情報因子が確認されました
遺伝子マップはまだ作成中ですが、人間のそれとは明らかに異なる遺伝子情報が入り込んでいることは明らかと思われます」
「…………これをどう見るべきか……」
ひどく大きなため息を付いた弘原海と、それに同調して姿勢が下がる駒門
ひどい隈をろくに隠せていない彼女らはここ数日寝ていなかった
それもそのはず
最近怪獣に襲われた事件で重傷を負った事がきっかけなのか突如として入隊を志望し、成績も良く極めて高得点で入隊試験をパスした青年の健康診断結果がコレなのだ
素行調査もすればするほど潔癖じみたクリーン経歴に磨きがかかり、悲劇的事実が説得力を振り掛けるばかり。
明らかに怪しすぎる
ウルトラマンが彼にすり替わっているのか、それとも彼と同化しているのか
あるいは何かの別の理由で遺伝子が混入したのかは分からないが、とにかくこの青年は純粋な人間ではない事が明らかになったのだ。
「候補者ですら無かった所から変身者が出てくるとは……」
サードウルトラマン変身候補者のリストが突然ウルトラマンがロシアに出現するという珍事によってお釈迦になった直後に、突如として明らかな怪しさを晒しながら現れた青年である、混乱もしよう。
「ヒュウガ・ユニア精神疾患診断も陰性、特に問題点も無し、BURK式身体機能測定に於いても高得点、普段の生活態度も良く大学の出席率も高くアルバイトでやっている家庭教師としても実績ある優秀な人物で
以前の入院時の素行も問題は確認されませんでした、
高校一年生時にBURKライセンス取得、専科は陸戦科戦車隊……」
駒門が読み上げる経歴はまるで無理矢理に『真っ直ぐな人間』を表現するかのよう
いっそまるっきり捏造と言われたほうがまだ信憑性があるほどであった。
「とりあえず予備隊員待遇として研究棟の方に流しましたけれど……」
「うむ、その件では人事には迷惑をかけた……」
また、二人揃ってため息をつく。
「さて、彼の配属はとりあえず後陣にできたはいいものの、後のことを考えなくてはな」
「はい、もしウルトラマンの変身者か本人なら戦場には出てもらわねばなりませんし、仮に全く異なる人物であるなら戦場に出してはなりません、しかしウルトラマンであるかどうかを試すわけにもいかない」
「……全く頭が痛いが、暫定変身者と認識して泳がせておこう
敵ならばそのまま飼い殺しか、速やかな処刑を考えなくてはならないな」
本当にウルトラマンの変身者ならばともかく、怪しすぎる彼を疑わないという選択肢はなかった。
いつもと変わらない支部長室
安い蛍光灯と卓上LEDライトが照らすデスクの前に深深と座り込む青髭の中年が
事務の若い子が運んできた書類を取って目を通す、そこには新たに入隊した人物についての詳細報告が連ねてあった。
「ほぉう?」
その
「椎名雄介・ユウスケ-シイナ
これが彼のウルトラマンの変身者なら、我々は早期に新たなウルトラマンの変身者を確保できたということになる」
だが、逆にそれが誤りだった場合は特大の爆弾を抱え込んでしまったということになる
続く二文目はあえて口にせず、ただニヤリと笑った
不敵に、大胆に、かつ紳士的に
そうする事が有効だと知っているから。
「あぁ、君……茶を淹れてくれ
とびきりに熱くな」
事務の若い子に迷惑をかけながら飲む緑茶は美味かった。
「さて、雄介はしっかりできてるかね」
冷めた紅茶のカップに同じくらい冷めた眼差しを向けて、そこに映る整った顔を眺めながら思案する
自分のつけていた訓練は確かに高度かつハード、しかしそれが明確な有利となるかというと、否
一対一の訓練は連携訓練など、人数が必要な訓練には手が出せず、個人技術の向上に止まる。
たしかにスペックを見る書類選考や個人技術を見る入隊試験には有利になるだろう
だが現場で重要となる『和』即ち連携には力は及ばない
訓練期間の短さもあって、そこはどうしても地金が出てしまう
そしてスタンドプレイヤーはどこでも嫌われてしまうものだ。
「
深海800メートルを北へ向かって航行する連絡艦スワローテイルの中で、冷めた紅茶を喉に流し込む
地上基地以外の各基地に於いて、真水は相応の貴重品
安物の茶葉で淹れる薄い紅茶の一杯も、相応の貴重品だ。
今後の作品展開の方針は?
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ニュージェネ系統
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昭和兄弟系統
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ンネェクサァス(ねっとり)